169 / 203
第七章ー隣国ー
隣国へ
しおりを挟む『我も一緒に行く。』
ミヤさんと一緒になって、暫くの間ネージュを撫で回した後、私達が隣国に居るエディオル様の所に行くと言うと、ネージュが間髪入れずにそう言った。
『穢れによって、魔獣も出ているのだろう?ならば、我は役に立つぞ?我は魔獣の中でもトップクラスだからな?我が一気に潰してやろう─。』
と、ネージュがニヤリと嗤っている。
ー普段は見た目が犬だから忘れがちだけど、フェンリルって、レアな魔獣なんだよねー
『いつ向かうのだ?』
「特には決めてなかったんだけど…。こうやって無事にネージュとも名を交わせたし…できるだけ早い方が良い…かな?」
「それじゃあ、いっその事、明日行っちゃおうか?」
「明日!?」
「正直、今の私の浄化の力がどれだけ通用?するか気になるのよね─。それに…エディオルさんの精神的な部分が気になるしね。」
ミヤさんが少し困った様に笑う。
確かに─。まぁ…私ごときで自棄になってる事は無い─と思うけど…。
「─それじゃあ…パルヴァン様とティモスさんに相談してみますか?。」
と、ミヤさんとネージュと一緒にパルヴァンの森を後にした─。
「“ネージュ”?」
パルヴァン様とシルヴィア様とティモスさんとリディさんに、改めてレフコースと名を交わし直した事。そして、前回の繋がりは実は脆い繋がりであった事。今回は、正式に名を交わした事によって、“レフコース”の名前が“ネージュ”になった事を説明した。
「“ネージュ”とは…また女の子らしい名前だな?」
と、シルヴィア様に指摘され─
「「……」」
私もミヤさんも反応できないでいると
『我はもともとメスなのだ。』
と言いながら、ネージュがまた擬人化した。
「「「「えっ!?」」」」
ー何故だ!?ー
擬人化したネージュは、私を後ろからギュッと抱き締めている。抱き締める必要ありますか??
『我は、主がつけてくれた名を気に入っているが、お前達が慣れぬと言うなら、今迄通り“レフコース”と呼んでも構わぬ。』
ネージュが、私の頭に顔をスリスリしながら話しているが─
ー皆が気にしているのは、ソコじゃないからね!ー
と、この場に居る全員が心の中で突っ込んだ。
ー開けてはいけない扉は、もっと頑丈なロックを掛けよう!!ー
「それじゃあ、ティモスさん、明日から宜しくお願いします。」
「あぁ、こちらこそ宜しくな!」
「それと、これ、ミヤさんとティモスさんに─。」
と、ティモスさんには、日本に還る前に作ってあったピアスを。ミヤさんには、ここに戻って来る時に借りていたブレスレットを渡した。勿論、ピアスには防御と目眩ましの魔法を掛けた。そして、ここに戻って来る為に、その魔石に込めた魔力を使い切ってしまっていたから、ブレスレットにも改めて掛け直した。
「私が魔法使いってバレてるので、隠さなくても良いかもだけど、“防御”と“目眩まし”の魔法を掛けてます。」
そう言うと、ミヤさんには
「やっぱりハルは─チートだよね…。」
と言われて、ティモスさんには
「─もう、知らなかった事には…ならないんだよな?」
と、遠い目をされました。
「ネージュ…は、コレね?」
私の声にピクリと反応するネージュの左前足を持ち上げて、そこにネージュの瞳と同じ色の魔石が填まっている腕輪を着けた。
『我にも─作ってくれたのか?』
ネージュはソレを見て、とても嬉しそうに尻尾をフリフリしている。
「この魔石の色が、ネージュの瞳と同じ色だな─って。勿論、これにも防御の魔法を掛けてあるからね。着けて、手は痛くない?」
『痛くない。主、ありがとう。』
ーよし、いよいよ明日、隣国に…エディオル様の所に行くー
*****
「どうやら、ゼンとは入れ違いになりそうだな。」
隣国へ行く当日の朝、準備が整い転移する直前に、パルヴァン様の元に、ゼンさんからの魔術での手紙が届いた。どうやら、今日のお昼頃にルナさんと宮下香と共にパルヴァンに到着するそうだ。予定よりも早い到着だ。
「行く前に会えないのは残念ですけど─予定通りに、今から隣国に行きます。」
「あぁ、それで良い。ゼンにはもう少し─内緒にしておこう。無事に帰って来て、あやつを驚かせてやれば良い。」
「はい─。」
「ハル殿、ミヤ様、無理はしないように。頑張る事は良い事だが、引き際を見誤らぬように。決して─“逃げる”事は恥ではない。自身の身を第一に考える事。」
「「はい。」」
「ティモス、2人を頼んだそぞ?」
「承知してます─。」
隣国がどんな所かなんて分からない─知らないから、多少の誤差は出るだろうけど、エディオル様とリュウを思い浮かべながら、転移の為の魔法陣を展開させる。
ーあの2人の元へー
魔力を魔法陣に流し込むと、私達を囲む様に淡い水色の光が一気に溢れて─
次の瞬間には、そこには誰も立っていなかった。
「ハル殿は…本当に規格外の魔法使いだな─。」
と、グレンは楽しそうに笑いながら呟いた。
55
お気に入りに追加
2,291
あなたにおすすめの小説
夫と妹に裏切られて全てを失った私は、辺境地に住む優しい彼に出逢い、沢山の愛を貰いながら居場所を取り戻す
夏目萌
恋愛
レノアール地方にある海を隔てた二つの大国、ルビナとセネルは昔から敵対国家として存在していたけれど、この度、セネルの方から各国の繁栄の為に和平条約を結びたいと申し出があった。
それというのも、セネルの世継ぎであるシューベルトがルビナの第二王女、リリナに一目惚れした事がきっかけだった。
しかしリリナは母親に溺愛されている事、シューベルトは女好きのクズ王子と噂されている事から嫁がせたくない王妃は義理の娘で第一王女のエリスに嫁ぐよう命令する。
リリナには好きな時に会えるという条件付きで結婚に応じたシューベルトは当然エリスに見向きもせず、エリスは味方の居ない敵国で孤独な結婚生活を送る事になってしまう。
そして、結婚生活から半年程経ったある日、シューベルトとリリナが話をしている場に偶然居合わせ、実はこの結婚が自分を陥れるものだったと知ってしまい、殺されかける。
何とか逃げる事に成功したエリスはひたすら逃げ続け、力尽きて森の中で生き倒れているところを一人の男に助けられた。
その男――ギルバートとの出逢いがエリスの運命を大きく変え、全てを奪われたエリスの幸せを取り戻す為に全面協力を誓うのだけど、そんなギルバートには誰にも言えない秘密があった。
果たして、その秘密とは? そして、エリスとの出逢いは偶然だったのか、それとも……。
これは全てを奪われた姫が辺境地に住む謎の男に溺愛されながら自分を陥れた者たちに復讐をして居場所を取り戻す、成り上がりラブストーリー。
※ ファンタジーは苦手分野なので練習で書いてます。設定等受け入れられない場合はすみません。
※他サイト様にも掲載中。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす
リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」
夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。
後に夫から聞かされた衝撃の事実。
アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。
※シリアスです。
※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。
欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします
ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、
王太子からは拒絶されてしまった。
欲情しない?
ならば白い結婚で。
同伴公務も拒否します。
だけど王太子が何故か付き纏い出す。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
吸血鬼公爵に嫁いだ私は血を吸われることもなく、もふもふ堪能しながら溺愛されまくってます
リオール
恋愛
吸血鬼公爵に嫁ぐこととなったフィーリアラはとても嬉しかった。
金を食い潰すだけの両親に妹。売り飛ばすような形で自分を嫁に出そうとする家族にウンザリ!
おまけに婚約者と妹の裏切りも発覚。こんな連中はこっちから捨ててやる!と家を出たのはいいけれど。
逃げるつもりが逃げれなくて恐る恐る吸血鬼の元へと嫁ぐのだった。
結果、血なんて吸われることもなく、吸血鬼公爵にひたすら愛されて愛されて溺愛されてイチャイチャしちゃって。
いつの間にか実家にざまぁしてました。
そんなイチャラブざまぁコメディ?なお話しです。R15は保険です。
=====
2020/12月某日
第二部を執筆中でしたが、続きが書けそうにないので、一旦非公開にして第一部で完結と致しました。
楽しみにしていただいてた方、申し訳ありません。
また何かの形で公開出来たらいいのですが…完全に未定です。
お読みいただきありがとうございました。
【完結】出ていってください。ここは私の家です。〜浮気されたので婚約破棄してお婿さん探します!〜
佳
恋愛
ある日帰宅すると、同居中の婚約者が女性を連れ込んだと聞いたシュテファニ。
使用人を連れて寝室に向かうがーー
扉を開けるとそこでは、見たくもない行為が繰り広げられていた。
「あの人が執務なんてするわけないわ。」
「行かないほうがいいですよ。」
「お嬢様はティールームでお待ちください。」
シュテファニ・アイブリンガーは、頭の悪い婚約者を家から追い出すことができるのか。
そしてその先に――
初めましての人もそうでない人も、お楽しみいただけたら嬉しいです。
※※※性的表現があるところは「※」つけます。
大人が見たら笑っちゃうくらいのものですが一応。ご注意を! R18です!!
おかしな性的言動?だったりが目立つところもつけときます。
※※※ざまぁが始まるとわりと残酷ですのでご注意ください!!
自己責任でお願いします。R18です!!
※よくある設定ですが完全オリジナルです。
※敬語尊敬語滅茶苦茶御免!(なさい)
※婚約者がアホなので注意!
※いろいろ思うところはあるかもですがルトガーは一途なだけです。
※他サイトに掲載時とはラストが変わっております。
※他サイトでも公開中
話としては30話で完結です!
番外編数話あり。
お読みくださってありがとうございます!!
婚約者の恋人
クマ三郎@書籍発売中
恋愛
王家の血を引くアルヴィア公爵家の娘シルフィーラ。
何不自由ない生活。家族からの溢れる愛に包まれながら、彼女は社交界の華として美しく成長した。
そんな彼女の元に縁談が持ち上がった。相手は北の辺境伯フェリクス・ベルクール。今までシルフィーラを手放したがらなかった家族もこの縁談に賛成をした。
いつかは誰かの元へ嫁がなければならない身。それならば家族の祝福してくれる方の元へ嫁ごう。シルフィーラはやがて訪れるであろう幸せに満ちた日々を想像しながらベルクール辺境伯領へと向かったのだった。
しかしそこで彼女を待っていたのは自分に無関心なフェリクスと、病弱な身体故に静養と称し彼の元に身を寄せる従兄妹のローゼリアだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる