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第六章ー帰還ー

ネージュ

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私の目の前に、腰まで伸びた白い髪、少しつり目だけどクリッとした大きなアイスブルーの瞳に、水色のロングのワンピースを着た妖艶な美女が佇んでいる─。



ー誰だ?コレ?ー





『主?』


ーえ?ちょっと待って?ー

フェンリルレフコースって、隠しキャラ?的な攻略対象者じゃなかったっけ?え?

『─主?』

口調が…おじさんっぽくなかった?確かに、声は少し高いな─とは思ってたけど…え??

『主!』

「はいぃぃぃ─っ!」

ちょっと…いや、かなりパニクってしまって、すぐ目の前にまで来ていたネージュに気付かず、両手で顔を挟まれながら呼ばれた。

そして、アイスブルーの瞳と目が合った。

『─ハルノミヤ=コトネ─が主の真名で、─ネージュ─が我の名か?』

「うん。春ノ宮琴音が私の真名。“ネージュ”は…何でだろう?あなたを目にした時、すごく違和感があって…“レフコース”と言おうとしたけど、口から出て来たのが“ネージュ”だった。何でだろう?ごめんね?」

ー私…名前を間違えた─って事なんじゃ…ないよね?ー

『主、謝る必要は無い。主が真名を言い、そして主が我に─それが、正しい名の交わし方なんだ。以前、主が真名でなくとも名を交わせたのは、主に微かにでも巫女の魔力が流れていて、その魔力と“レフコース”が反応した故だ。』

ー成る程。だから、本当に私達は脆い繋がりだったんだー

『でも、今回のはとは違う。本当の意味で名を交わせた。それに、我もだか、主の魔力も凄すぎる故─我が人の形になれたのかもしれぬな?主、“ネージュ”とは、何か意味がある名前なのか?』

私の顔を両手で挟んだまま、ネージュは嬉しそうな顔をしながら首を傾げる。

ーえっと─その姿でコテンとされると…違う意味で心臓がバクバクしますー

「えっと…私の世界で、寒い時期に空から降ってくるものでね?冷たくて小さい綿みたいな物で、ネージュみたいに綺麗な真っ白な色をしているの。それを、ここに戻って来る前に目にしてね?─あぁ、レフコースみたいだな─って思ったの。」

と言うと、目の前のレフコース─ネージュ─が、ポロリと涙を流した。

「えっ!?ちょっ…どうしたの!?そんなに、“ネージュ”って名前が嫌だった?やっぱり“レフコース”が良かった?」

『違う。我は─間違えた。だから、主に嫌われてしまったと思ったのだ。でも、を見て、我を思ってくれたと聞いて─嬉しくて─。主、ありがとう。また、に戻って来てくれて─ありがとう。』

ムギュッ

と音が聞こえそうな感じで、ネージュが私に抱き付いて来た。擬人化したネージュは…おそらく身長は170cm以上ある。それに…何と言うか…“ボン・キュッ・キュッ”な体形をしているのだ。シルヴィア様の時もそうだったけど、この胸で圧死できそうですよ?

「ミヤさん…私は…“開いてはいけない扉”の意味が…解りそうです。」

「いや、ハル、それ駄目なやつだからね?しっかりロックしておこうね?二重ロックでもしておこうか?」

フワフワした私に、ミヤさんが呆れたように突っ込んでくれました。

『あぁ─そなたは確か…聖女だったな?』

「あら?覚えてくれてたの?」

『勿論だ。我の大切で大好きな主とパルヴァンの森を守ってくれたのだ。忘れるはずがあるまい?』

「それは─嬉しい事なんだけど…。あなた、女性だったのね?」

『?そうだが─何か問題でもあったか?』

ネージュが、私を抱き締めたままミヤさんに向けて、コテンと首を傾げる。

「─開いてはいけない扉はロックするのよ!」

と、ミヤさんも自分自身に言い聞かせている。

「えっと─何て言うか…その言葉遣いが、男性っぽいなって。フェンリルの姿でその言葉遣いなら─オス?男性?って思ってしまうだろうな─って。」

『ふむ─成る程。それで、主も驚いたのか?』

「─ハイ、ソウデス、スミマセン」

ーそれに、ゲームの設定では、“美男子”だったー

それが、まさかの美女!!!攻略対象者にすらならない美女だった。この事を知っていたら、私は宮下香にも振り回される事はなかったのかもしれない。

『我のこの口調は…我の主だったパルヴァンの巫女が元になっているのだが─駄目なんだろうか?』

擬人化していて今は無いのに、耳と尻尾がシュンと垂れ下がっているのが見える。

確かに、女性でその言葉遣いはどうなんだ?と思わなくもないけど─

「ふふっ─ネージュが女性っぽく喋るって…違和感があるかも?今迄通りで大丈夫だよ?ところで─自由自在にフェンリルにも戻れるの?」

『勿論戻れる。それに、この人の姿より、フェンリルの姿の方が我は落ち着く。主は─どっちの我が良い?』

上から見下ろされる形になっているけど、困った様に目をキュルンッとさせているネージュ─

ー駄目だ!癒されるどころか、心臓がバクバクして辛い!!ー

「えっと─どっちの姿も好きだけど、やっぱりフェンリルの姿の方が、私は落ち着くかな?」

と私が素直に答えると、ネージュは一瞬にして見慣れた犬サイズのフェンリルに戻った。

『我も、この姿が一番落ち着く。』

と、尻尾をフリフリしながら、今度は私を見上げて来るいつもの見慣れたフェンリルがそこに居た。

ーあぁ!やっぱりウチの子は可愛い!!ー

「ネージュ!!」

と呼びながら、久し振りに抱き付いて─途中「私も!!」と、言って来たミヤさんと一緒になって思う存分ネージュを撫で回した。










やっぱり、レフコース改め─ネージュ─は“癒し”です!














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