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第六章ー帰還ー
好転
しおりを挟む脆い繋がりだったけど、繋がったまま私が還ってしまうと、レフコースが誰かと新たに名を交わす時に邪魔になるかもしれないと思って…繋がりを切った。レフコースの魔力が消えていく感覚が…今でも体に残っている─。
『主─』
私をそう呼びながら、尻尾をフリフリするレフコースが好きだった。アイスブルーの瞳が大好きだった。いつも私を助けてくれたレフコース。
ーごめんなさいー
『ずっと…俺は、ずっと、ハル殿と一緒に居たいって事。』
『うん。近いな?でも…俺には足りない。もっとハル殿に近付きたい。』
エディオル様…私も…一緒に居たかったです。
好きでした……今でも…好きです─。素直に言えば良かった。
ーごめんなさいー
全部…私が駄目だったから。私が自分に自信があれば…もっと、素直になっていたら…。
もう─疲れちゃいました。
私は─逃げてしまったんだ。
ーごめんなさいー
暫く続いた浮遊感が無くなり、周りでキラキラ光っていた光が無くなり─
私は─見慣れた階段前の廊下に立っていた。
ーここは…大学の新校舎の廊下だー
そう。お姉さん達の召喚に巻き込まれた時の場所に還って来ていた。
「─本当に…還って来れたんだ…。魔法使いって…本当に凄いんだ…。」
鏡がないからキチンと確認はできないけど、向こうの世界で成長した姿のままで還って来たようだ。
ーこっちは…同じ分、時間が進んでいるんだろうか?浦島太郎とかじゃ…ないよね?ー
と、少し不安に思っていると─
「え?ハル…ちゃん?」
「へ?」
“ハルちゃん”
かつて、私をそう呼んでいたのは…ただ1人─
振り返ってその人を確認する。
「─っ!フ…ジ…さん?」
「─!!!!」
私が“フジさん”と呼ぶと、フジさんは大きく目を見開いた後、少し固まった─と思ったら、2m程しかない距離を走って来て、そのままの勢いで私に抱き付いて来た。
「ぐふぅ─っ」
「─ハルちゃん…ハルちゃん!!」
フジさんは、私をギュウギュウ抱き締めながら、私の名前を呼び続けた。
「えっと…ごめんね?」
「いえ─。久し振りに…嬉しかったです。」
あれから10分程続いた後、フジさんが申し訳なさそうに私を離してから謝って来た。
「あのね、今日、私の家に千尋と咲─ショウとミヤが泊まりに来るの!ハルちゃんも来ない?と言うか、来て欲しい!色々話したい事とか、訊きたい事があるから。来てくれる?」
「あの─私…行く所がないので…私も逆にお願いしたいです。」
「良かった!!きっと、2人ともビックリするわよ!?ふふっ─2人には、私の家に来るまでは内緒ね?」
藤宮美樹さんの家は、大学から歩いて20分程の所にあるマンションだった。何と、フジさん改め─美樹さん─の婚約者が、私の通っていた大学の事務員さんだそうで、今はここで同棲中で、結婚後もここに住む予定だとか。その彼氏さんは、昨日から一週間の出張で不在で、今日はその彼氏さんに頼まれて、この大学の事務室に書類を持って来ていたらしい。
そして、今日は金曜日。ミヤさんとショウさんを呼んでお泊まり女子会をする約束をしていたそうだ。
「ハル─琴ちゃんは、何か食べたい物はある?」
丁度、美樹さんもお昼がまだだった為、一緒に何か食べよう!と言う事になった。
「食べたい物…日本食だったら何でも良いような…」
「だよね?日本食が恋しいよね!?」
とキラキラ目の美樹さんと、お昼は回転寿司を食べた。
ー生魚…本当に久し振りで…感動してちょっぴり泣いたのは…2人だけの秘密にしてもらったー
『はいはーい、美樹さーん。千尋と咲が来たよー。玄関開けてー。』
と、マンションのエントランスのインターホンが鳴り、インターホン越しにミヤさんの声が、美樹さんの部屋に響いた。
「今開けるねー。気を付けて上がって来てね。」
美樹さんの部屋は10階建ての8階にある。
ーミヤさんとショウさんにも会えるー
還って来る前は、何もかもが上手くいかなくて辛かったけど…。
こっちに還って来て早々に、お姉さん達に会えるなんて…思わなかったから…本当に…嬉しいな…。
ガチャッ
「「お邪魔しまーす」」
「今日はちょっと冷えるから、夜は鍋が食べたくなってね、そこで材料を─」
と、右手に持っているエコバッグを掲げながら部屋に入って来たショウさんが、そこで固まった。
「何?急に止まってどうしたの?」
と、ショウさんの後ろからやって来たミヤさんが、ショウさんの後ろからひょっこり顔を出し─私を見て固まった。
「…ショウさん、ミヤさん…あの…お久し振りです。」
ドサッ─と、2人ともが持っていた荷物を落として
「ふぐぅ─っ」
「「ハル─!!」」
はい、2人にも抱き付かれました。
「私も混ぜてー」
と、美樹さんにも抱き付かれて─3人からギュウギュウとされ…久し振りの…本当に久し振りの…抱き枕状態のハルです─ちょっぴり恥ずかしくて、でも嬉しくて…ちょっとだけ…涙が出た。
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