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第五章ー聖女と魔法使いとー
クレイルの告白
しおりを挟む「ダルシニアン様、今日は宜しくお願いします。」
心臓が痛かった翌日の付き添い人は、ダルシニアン様だった。
ー連日のカルザイン様じゃなくて良かったー
「……」
「?」
ダルシニアン様が…動かない…。
ーあれ?私、何かやらかした?ー
「…本当に…ハル殿…なんだよね?」
「…え?」
ーえー…まだ疑われてたのか…ー
「そうです。ハルです。3人のお姉さん達…聖女様達の召喚に巻き込まれただけのハルです。」
「ははっ…。そっか。確かに…そんな風に言えるのはハル殿…だけだね。」
ダルシニアン様は、やっぱり少し困ったように笑った。
神殿内にある、応接室に通されて、お互いテーブルを挟んで向かい合うように座った。
「あー、黒いモヤの話の前に…少し話をしても?」
「はい、勿論大丈夫です。」
「──私は…結構モテるんだよね。」
ーん?モテる?ー
「伯爵家の嫡男で、有能な魔導師で、王太子の側近で…顔も良いらしいから。」
ーそりゃそうだよね…ダルシニアン様は乙女ゲームの攻略対象者だからねー
とは、絶対に言えないけど。
「だからね、私が何もしなくても、色んなご令嬢が寄って来るんだよね。」
ーん?コレは…何自慢?ー
「─私が、お別れの挨拶の時に…ハル殿に言った事、覚えてる?」
『正直に言うと、聖女様達は勿論の事、ハル殿が元の世界に還ってしまうのは…残念だし寂しいよ。』
「ハル殿はお世辞?とかって思ってそうだったけど…アレね、本当の事だったんだよね。聖女様達もそうだったけど、ハル殿は…肩書きとかではなく、クレイル=ダルシニアンと言う私を見てくれていただろう?それがね…本当に嬉しかったんだと…思う。」
ー“肩書き”…か…。この世界では仕方の無い事なんだろうけどねー
「だからね…ハル殿達が還ってしまった後…本当に寂しいなと…思ってたんだ。それと同時に、アッサリ還って行ったハル殿に…腹を立てたりもしてた。自分勝手だろう?そうしたらさ、実はハル殿は還れてなくて、この世界に居たって知って…嬉しいと…思ってしまったんだ。本当に…最低…だろう?」
ーあぁ、だから、ダルシニアン様は困った様な笑顔を私に向けていたんだー
「それでも…言わせてもらうけどね…。ハル殿、私は…またハル殿に会えて…嬉しいなと思ってる。」
ダルシニアン様は、本当に辛そうな笑顔をする。
「私…3日前に…勢い余って叫びましたけど…本当に今は、還れなかった事に関しては…何とも思ってないと言うか…確かに、還れるなら還りますけどね?でも、私がここに居て良い理由があってここに居るんですよね。私、本当に、今は優しい人達に囲まれて…幸せだなって思ってるんです。だから、ダルシニアン様に、また会えて嬉しいと言ってもらえるのは…嬉しいですよ?ありがとうございます。」
ダルシニアン様が、これ以上気に病まないようにと、笑顔を向ける。
「──かーっ!!」
ガツンッ
と言いながら、ダルシニアン様がテーブルに突っ伏した。
「えーっ!?ちょっ…え?ダルシニアン様、だっ大丈夫ですか!?え?」
ーそれに、“か”って、本当に何!?ー
「あぁ…大丈夫…。目で殺されないように自制しただけだから…」
ー目で殺される!?誰に!?誰が!?ー
「はぁ…ホントに……いから…困るよなぁ…」
「え?困る?何がですか?私、何かしました?」
『…主、この魔導師は放って置いて大丈夫だ…』
ーおぅ…レフコースがまさかの塩対応ー
「えっと…本当に…どうしたんですか?今日はやめて、帰った方が良いですか?また違う日にでも…」
と言い掛けると、ダルシニアン様はガバッと顔を上げて
「大丈夫!帰らなくても大丈夫!」
「そ…そう…ですか?」
ーダルシニアン様って、こんな人だったかなぁ?ー
「ふふっ…」
「え?何?」
「笑ってしまって…すみません。その…ダルシニアン様って…もう少し…その…スマート?なイメージがあったので…そんな姿を見ると、親近感がわくと言うか…ふふっ…あー、失礼な事を言ってすみません。」
ダルシニアン様が貴族様なのを思い出し、失礼だったなと思って謝ったのだけど、ダルシニアン様はキョトンとした後に
「謝る必要はないよ。親近感がわいてもらって、嬉しい限りだよ。」
と、嬉しそうに笑った。
ー流石攻略対象者の笑顔だー
攻略…対象者──
2~3ヶ月前から──
聖女…様──
「ダルシニアン様…おかしくなった人の中に…年配の人はいますか?」
「え?年配?あー…居ない…な。全員が、私と同じ位の年齢だ。」
「王太子様は別として、この国に影響を与えそうな人物はどうですか?」
「いや─それもいない。本当に若者で数名だから、国としても、大々的に調べる事をしなかったんだ。」
「全員男性で…容姿端麗だったりしますか?」
「──だったり…する…。」
「「………」」
ーゲームが…始まってる?ー
カルザイン様のピアスが発動した時、確かに聖女様が居た。居たけど…あの子が何らかの魔法や魔術を使っている様子はなかった。
ー私は…何かを…見落としているんだろうか?ー
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