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第四章ー王都ー

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ーお姉さん達、“モフモフ”とは、この世界ででも最高クラスの癒しのようですー



レフコースのモフモフを思う存分堪能した後、ルナさんが呼びに来てくれて、夕食を食べる為に1階に向かうと、あの夜会ぶりにカテリーナ様に会った。そして、泣かれてしまいました。

「私のせいで…ごめんなさい。無事で良かったわ。」

そう言って、私をギュッと抱き締めてくれる─のは良いんだけど…

ーレオン様、目が笑ってませんからね?私、女ですけどね?ちょっと、これ位は許して下さいね!ー

カテリーナ様の後ろに居るレオン様の目が気になり過ぎて、感動の再会?にはならなかった。















「それで…ハル殿、話とは?」

夕食後、約束通りにパルヴァン様がサロンにレオン様とカテリーナ様。それにティモスさんとルナさんとリディさんを呼んでくれていた。

「話を始める前に─。。」

その名を呼べば、スッとレフコースが現れる。

犬サイズのレフコースは、そのままチョコンとお座りをしたままじっとしている。

「この子の名はレフコース。先ずは、レフコースの事からお話しします。」

と前置きをしてから、レフコースとパルヴァンの巫女との話をする。ここに居るのはパルヴァンの人なので、皆知っていたようで、そのフェンリルが目の前に居るのかと、驚いていた。

「お伽噺のような物だと思っていたけど、本当の事だったのか…」

それから、眠りに就き、目覚めてからの出来事を続けて話す。

「あー…勘違いでグレン様を…瀕死の重症だったけど…そうか…勘違いか…。ハルが危なかったのも…嬉し過ぎてとか…。」

と、ティモスさんは片手で顔を隠しながら呟く。パルヴァン様本人は、何とも言えない顔だ。
レフコースは…耳がショボンと垂れている。

「まぁ、ちょっとビックリな真実なんですけどね。でも、私はそんなレフコースが愛おしくて…名を交わしました。そのせいもあって、ちょっと魔力が強くなったって感じなんですけどね?それで、これからはレフコースは、私の側に居る事になりました。色々やっちゃった子だけど…本当に良い子なんです!皆と仲良くしてもらえたら嬉しいです!お願いします!」

シュバッと音が出る勢いで頭を下げる。

「ハル殿、頭を上げてくれ。そのフェンリルが良い子だと分かっているから。」

頭を上げて、パルヴァン様を見る。

「そもそも、そのフェンリルは、我々パルヴァン辺境地に住む者にとっては有難い存在だったのだ。忌諱する事は無い。それに、今回はハル殿を護ってくれたのだろう?ありがとう。」

パルヴァン様がそう言うと、レフコースは尻尾をフリフリした。

そして、私は姿勢を正し、パルヴァン様を見据える。

「私とレフコースは、名を交わす前から微かに魔力が繋がっていたようで…その繋がり─巫女の魔力がレフコースに引き寄せられたようで…それで、私は元の世界に還れなかったみたいです。」

「…ハル…」

ティモスさんが、辛そうな顔をする。ティモスさんは、本当に心配症だなと思う。

「それでですね?私は、レフコースのお陰で、ようやくこの世界に居て良いんだって…思える事が出来たんです。だから…この世界で、逃げずに“ハル”として前に進もうと。生きて行こうと思ったんです。」

「…と言うことは…国王陛下に?」

「─はい。私が還れなかった事、このフェンリルと共に前に進む事を伝えようと思います。勿論、王族の後ろ楯や補償などは一切必要ないと言う事も伝えるつもりです。」

「“ルディ”ではなく、“ハル”として進みたいと?」



『ハルー』
『ハル?』
『ハルちゃん』



“ハル”には、沢山の思い出、思い入れがある。ミヤさんが私を守る為に付けてくれた名前。お姉さん達との繋がりがある物の一つだ。だから、私は“ルディ”ではなく、“ハル”として進んでいきたい。


「はい。“ハル”として─。」

パルヴァン様は、優しく目を細めて

「分かった。直ぐに陛下に謁見の願いの手紙を出そう。陛下以外にその話を伝えておきたい者が居るなら…その者達の召集もお願いしておくが…どうする?勿論、陛下だけに伝えて、後でその者達に伝えてもらう事もできるが…。」


ソッと目を閉じて思案する。


「…では──」
















「丁度、私が王都ここに居る時で良かった。」

と言って、パルヴァン様は、その日のうちに魔術で王城へと手紙を飛ばしてくれた。同時に、辺境地に居るシルヴィア様にも飛ばしたようだ。

シルヴィア様にも、心配を掛けてるだろうな…私からも、手紙を送ってみよう。レフコースの事…嫌わないでくれると良いけど…。




どうやら、ルナさんとリディさんは、レフコースの事を赦してくれたと言うか、伝承されて来たフェンリルだと言う事で、受け入れてくれたようだ。


「あのシュンとした時のレフコース…可愛かったです。」

と、ニッコリ笑顔のルナさんとリディさんがいた。

ーそうなんです。ウチの子、シュンとした姿も可愛いんです!ー

と、心の中で同意しておいた。










そして、国王様との謁見が、手紙を飛ばしてから二日後に決まった。









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