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第四章ー王都ー

レフコースとハル

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『ところで、主の本当の名は何と言うのだ?』

「名前…」

『いや……無理には聞かぬし、言わなくて良い。真名でなくとも、既に繋がっている故、問題なく契約は交わせると思う。“ハル”としてでも良い。名を…交わしてくれるか?』

きっと、“名を交わす”と言うのは、“契約”を交わすと言う事だろう。

「私で…良い?」

『…ハル良い。』

スリッと、私に頬擦りしながら答えるフェンリルは…とても愛おしいと思った。




「私の名前は…ハル。あなたの名前は…レフコース…。」

そう言うと、私達の足下で魔法陣が展開した。

優しい光りが私とレフコースを包み込む。すると、私の中にレフコースの魔力が流れ込んで来るのが分かった。とても優しい魔力だ。



その時、微かに声が聞こえた





、ありがとう。レフコースの事、宜しく頼む…』













主の意識の中に入り、無事名を交わし我の魔力が主に流れ込んで行く。真名ではないから、我も全ての力を発揮できる訳ではないが…枯渇しかけた魔力分はもう戻った筈だ。

現実に戻って来て、主が寝ているベッドに前足を掛けて主の顔を覗き込む。


ー良かった。今度は…間に合って良かったー

今度こそ、主が嫌がる者や物から、我が守ってみせる。


我と主の魔力を纏ったピアスを着けている者が(うち1人は時々外していたが)3人。ブレスレットを着けている者が2人。この王城敷地内に居る。この5人は主が気を許した者かと思って、我の近くに来てもが…どうやら違うようだ。まぁ、主に害が無いようだから…やっぱり放っておこう。

その中でも…の事は気に入っている。我が主を傷付けてしまいそうなのを防いでくれた。今回も真っ先に駆けつけて主を救ってくれた。


主に魔力封じの首輪を着け、贄の魔法陣を発動させようとしたあの人間達…。あの騎士の言う通り、楽には死なせぬ─。我が主に手を出した事、必ず後悔させてやろう。



『─ん?か…』

我を拘束したつもりの魔導師。奴はよくチョロチョロと動き回る。嫌いではないが……主が望んでいない事に関しては、それ以上は踏み込むな─と、牽制を込めて魔力を溢れさせる。

『ふむ─。』

あの魔導師はチョロチョロとするが、素直だ。我が少し威圧すると、すぐに止める。
可愛い奴なのかもしれぬな。

そして、もう1人のパルヴァンの騎士。奴は何の問題も無いな。主も奴には結構気を許している様に見える。いや、基本、パルヴァンの人間は、皆、主にとって“大切”な者達の様だな。

ならば、我にとってもパルヴァンは大切な物の一つ…と言える。

主は、元の世界に還りたかったのに…我の我が儘のせいで還れなかったのだ。そんな我に…主は笑って赦してくれた。に居て良いのか?と。我が嬉しいと私も嬉しいと言ってくれた。

これから、もっと、主にとって大切な者や物、嬉しい事が増えたらいいなと思う。

ただ気になるのは…あの“聖女”とか言う者だな─。あの者が来てから、の雰囲気が少し変わった様な気がする。主に害が無ければ良いが…少し様子をみるかー。


「…ん…」

ピクリと、我の耳がその声に反応する。

グイッと我の顔を更に主の顔の方に近付ける。

閉じられていた瞼がゆっくりと開かれて、淡い水色の瞳が現れた。

何度かパチパチと瞬きをした後

「レフコース?」

『何だ?主。』

名前を呼ばれたのが嬉しくて、尻尾がパタパタと揺れる。

「こんなに…小さかった?」

『あぁ─。このサイズにならないと、主の側におれぬからな。それとも、大きい方が良いか?』

「うーん…小さい方が良い…かな?大きいと…また興奮した時に潰されそう。ふふっ…」

『う゛ーもう、あの様な馬鹿はせぬ…』

「ふふっ…」

主がフワリと優しく笑って、我の頭をまた撫でる。主に撫でられるのは、正直、とても気持ちがいい。

「…私が…あなたの“主”だって。自分に自信が持てるようになったら、私の真名と…交わし直させてくれる?それまで…待っててくれる?」

主に自信があっても無くても、我にとっては主に変わりは無いのだが…

『勿論だ。いつまでだって、待っている。』

そう、今迄もずっと待っていた。これからは、側に居れるのだ。そんな事位、いつまででも待てる。


『そろそろ、主が目を覚ました事、に知らせようか…。』

?」

『ふむ。名は分からぬが、騎士2人と魔導師1人が隣の部屋に居るのだ。』

「騎士2人と魔導師1人…」

『勿論、その3人はここには入らせぬがな。医師を呼んでもらうのだ。』

ーパルヴァンの者は別として、あの2人に会う会わぬは主次第だー

我はそう考えながら、前足をベッドから下ろして、隣の部屋に繋がる扉へと向かった。











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