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第四章ー王都ー
嵐の前の平和
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あれから、ダルシニアン様は第一騎士団に遣いをやり、グレン様が向かって来ていると言う事を伝えた。
「…エディオル、第一騎士団長はお前の父親だろう…。」
「それとこれとは関係ないからな…。」
「「……」」
ーあぁ…カルザイン様もキレていると言うことかー
「それで…訊きたいんだけど…。エディオルとティモス殿が地下室に入った時には、もうすでに、フェンリルの拘束具は外れてたんだよね?」
「そうだ。私が来た時には、もう光の檻から出ていたし、拘束具も外れていた。その後の事は、クレイルが見た通りだ。」
「エディオルは、よくフェンリルがルディ殿を護っていると分かったよね。私には、フェンリルがルディ殿を襲っているようにしか見えなかったよ。」
流石は洞察力が鋭いと言うところか─。
「それでさぁ…このピアスなんだけどね…。」
ダルシニアン様が、左耳に着けているピアスに手をやる。
「魔導師の私が鑑定しても、何の反応もしない。ただの魔石なんだ。でも、あの時、エディオルを攻撃魔法から護ったのは…間違いなくこのピアスだ。それに…あのフェンリルは、ある意味この魔石に反応している。そして、そのフェンリルはパルヴァン邸付きの薬師であるルディ殿を護っている。コレの意味するところは…何だ?」
ーダルシニアン様も…気付いてるのか?ー
背中に嫌な汗が流れる。どうしようか?と思っていると
ブワリッ
と、ルディが寝ている部屋の方から魔力が軽く溢れた。
「「「……」」」
「…これは…これ以上、ルディ殿とフェンリルについて話すなと言う事か?」
と、ダルシニアン様が囁くと、その魔力が落ち着いた。
「「「……」」」
ダルシニアン様は顔を引き攣らせ、カルザイン様は苦笑している。
ー本当に、あのフェンリルは完璧だなー
「あのー…ギデルは…何か言ってるんですか?」
「あ…あぁ…。エディオルが切りつけた方の奴だな?アイツは、ただひたすら、グレンが憎いとしか言っていない。完全な逆恨みだね。単純過ぎる。恐らく…うまいように使われただけだろうね。きっと、アイツからは後ろに誰が居るのかは…分からないと言うより、知らないんだと思う。本当に、色んな意味での役立たずだね。」
と、ダルシニアン様は黒い笑顔を浮かべた。
「もう1人の魔導師はどうなんですか?」
「んー…そっちはちょっと手こずってる。飄々として…うまい具合にはぐらかされてる感じかな?でも…油断できない雰囲気を持ってるから、気を付けてはいる。」
まだ数時間しか経っていないんだ。進展が無くても仕方無いか…。グレン様が来る前に、少しでも進展していれば…と思ったけど…。
ーせめて…グレン様が来る前に、ハルの意識が戻ります様に!ー
「それと…王族からは、王太子殿下が?」
パルヴァン辺境地が関わる事件だ。王族は必ず動く。ならば、王太子殿下だろう。そうなると…更にこっちはやりにくくなるんだよなぁ…。
「どう…だろうか…。ランバルトは…今はちょっと色々あってね…。」
ダルシニアン様にしては珍しく、歯切れが悪い。
「色々?ですか?それなら仕方無いですけど…。じゃあ…誰が?」
それには、カルザイン様が答えた。
「可能性としては、宰相かその嫡男で次期宰相候補のイリス=ハンフォルトが動くと思う。今のランバルトは…無理だろう。」
ダルシニアン様もカルザイン様も、何故か苦虫を噛み潰した様な顔をしている。
何だ?これは…訊いても良いのか?いや─訊かない方が良いのか?あーそうか!
「忘れてましたけど、王太子殿下は聖女様の相手で忙しいんですね?前の聖女様達は、自立した大人な感じでしたけど、新たな聖女様は、まだ若い?幼い?感じでしたもんね。」
と言うと、2人とも更に眉間に皺を寄せて黙りこんだ。
ーあれ?聖女様って、地雷だった?ー
「えっと…あー…前の聖女様達と比べるのは駄目…ですね。あの方達は…完璧を超えてましたね…。歴代トップレベル以上の聖女様達だった。その方達と比べたら可哀想ですよね。」
「あーうん…。そうだね。前の聖女様達と…ハル殿とは比べられないね…。」
ダルシニアン様が困った様に笑う。
ーあれ?ダルシニアン様も、聖女様の誰かを思ってた?ー
そう思わせる様な…誰かを思い出している様な表情だった。
それも少し気にはなるけど…新たな聖女様は、一体どんな方なんだろう?穢れが無い今のこの国で、どんな扱いになるんだろうか?きっと、ハルもそこが一番気にしているところだろう。
聖女様御披露目の時、ハルは懐かしそうに聖女様を見ていた。恐らく、同郷の者だと確信したんだろう。でも、同時に安心もしたようだった。ハルから見て、聖女様が困ったり嫌がったりしていないと判断したんだろう。
だから…後はパルヴァンに帰るだけだったのに…。きっと、明日中にはグレン様が到着するだろう。それまでは…せめてそれまでは…
平和に過ごしたい…。
「…エディオル、第一騎士団長はお前の父親だろう…。」
「それとこれとは関係ないからな…。」
「「……」」
ーあぁ…カルザイン様もキレていると言うことかー
「それで…訊きたいんだけど…。エディオルとティモス殿が地下室に入った時には、もうすでに、フェンリルの拘束具は外れてたんだよね?」
「そうだ。私が来た時には、もう光の檻から出ていたし、拘束具も外れていた。その後の事は、クレイルが見た通りだ。」
「エディオルは、よくフェンリルがルディ殿を護っていると分かったよね。私には、フェンリルがルディ殿を襲っているようにしか見えなかったよ。」
流石は洞察力が鋭いと言うところか─。
「それでさぁ…このピアスなんだけどね…。」
ダルシニアン様が、左耳に着けているピアスに手をやる。
「魔導師の私が鑑定しても、何の反応もしない。ただの魔石なんだ。でも、あの時、エディオルを攻撃魔法から護ったのは…間違いなくこのピアスだ。それに…あのフェンリルは、ある意味この魔石に反応している。そして、そのフェンリルはパルヴァン邸付きの薬師であるルディ殿を護っている。コレの意味するところは…何だ?」
ーダルシニアン様も…気付いてるのか?ー
背中に嫌な汗が流れる。どうしようか?と思っていると
ブワリッ
と、ルディが寝ている部屋の方から魔力が軽く溢れた。
「「「……」」」
「…これは…これ以上、ルディ殿とフェンリルについて話すなと言う事か?」
と、ダルシニアン様が囁くと、その魔力が落ち着いた。
「「「……」」」
ダルシニアン様は顔を引き攣らせ、カルザイン様は苦笑している。
ー本当に、あのフェンリルは完璧だなー
「あのー…ギデルは…何か言ってるんですか?」
「あ…あぁ…。エディオルが切りつけた方の奴だな?アイツは、ただひたすら、グレンが憎いとしか言っていない。完全な逆恨みだね。単純過ぎる。恐らく…うまいように使われただけだろうね。きっと、アイツからは後ろに誰が居るのかは…分からないと言うより、知らないんだと思う。本当に、色んな意味での役立たずだね。」
と、ダルシニアン様は黒い笑顔を浮かべた。
「もう1人の魔導師はどうなんですか?」
「んー…そっちはちょっと手こずってる。飄々として…うまい具合にはぐらかされてる感じかな?でも…油断できない雰囲気を持ってるから、気を付けてはいる。」
まだ数時間しか経っていないんだ。進展が無くても仕方無いか…。グレン様が来る前に、少しでも進展していれば…と思ったけど…。
ーせめて…グレン様が来る前に、ハルの意識が戻ります様に!ー
「それと…王族からは、王太子殿下が?」
パルヴァン辺境地が関わる事件だ。王族は必ず動く。ならば、王太子殿下だろう。そうなると…更にこっちはやりにくくなるんだよなぁ…。
「どう…だろうか…。ランバルトは…今はちょっと色々あってね…。」
ダルシニアン様にしては珍しく、歯切れが悪い。
「色々?ですか?それなら仕方無いですけど…。じゃあ…誰が?」
それには、カルザイン様が答えた。
「可能性としては、宰相かその嫡男で次期宰相候補のイリス=ハンフォルトが動くと思う。今のランバルトは…無理だろう。」
ダルシニアン様もカルザイン様も、何故か苦虫を噛み潰した様な顔をしている。
何だ?これは…訊いても良いのか?いや─訊かない方が良いのか?あーそうか!
「忘れてましたけど、王太子殿下は聖女様の相手で忙しいんですね?前の聖女様達は、自立した大人な感じでしたけど、新たな聖女様は、まだ若い?幼い?感じでしたもんね。」
と言うと、2人とも更に眉間に皺を寄せて黙りこんだ。
ーあれ?聖女様って、地雷だった?ー
「えっと…あー…前の聖女様達と比べるのは駄目…ですね。あの方達は…完璧を超えてましたね…。歴代トップレベル以上の聖女様達だった。その方達と比べたら可哀想ですよね。」
「あーうん…。そうだね。前の聖女様達と…ハル殿とは比べられないね…。」
ダルシニアン様が困った様に笑う。
ーあれ?ダルシニアン様も、聖女様の誰かを思ってた?ー
そう思わせる様な…誰かを思い出している様な表情だった。
それも少し気にはなるけど…新たな聖女様は、一体どんな方なんだろう?穢れが無い今のこの国で、どんな扱いになるんだろうか?きっと、ハルもそこが一番気にしているところだろう。
聖女様御披露目の時、ハルは懐かしそうに聖女様を見ていた。恐らく、同郷の者だと確信したんだろう。でも、同時に安心もしたようだった。ハルから見て、聖女様が困ったり嫌がったりしていないと判断したんだろう。
だから…後はパルヴァンに帰るだけだったのに…。きっと、明日中にはグレン様が到着するだろう。それまでは…せめてそれまでは…
平和に過ごしたい…。
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