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第三章ーパルヴァン辺境地ー

拘束

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があって良かったー




パルヴァン様の邸までやって来た。のは良いんだけど…よく考えたら、森の方からやって来た時点で…アウトなのでは?と、思った時には遅かった…。

私が門番の人に声を掛ける前に、中から騎士様が出て来て…拘束されました…。

そう。あの森は、一般的に立入禁止区域なのだ。しかも、森に入る為にはパルヴァン様の邸の前を通らなければ行けない。でも、そこには門番を始め、騎士様達が常に目を光らせている。
誰もここを通っていないのに、森の方からひょこっと人が出て来る。

ーそりゃあ…問答無用の拘束案件ですよねー

1ヶ月…ここに居たから、私を覚えている人がいるかも?と、少し期待もしてたけど…


ーこの世界は、モブに優しいわけではなかったようですー










騎士様の動きは速かった。
私が声を発する前に両手を後ろに回され、そのまま拘束された…魔術で。多分…声が出ない?様な魔術も掛けられた。

ーすみません。、多分、簡単に解けちゃいます……しないけどー

それから地下にある牢屋?みたいな所に入れられてしまった。喋れない事になってるから、私から何かを話す事はしないし、暴れる事も勿論しない。ただ、じっと待っているだけだ。

私を拘束して、ここまで連れて来た騎士様も、怖い顔をして私を監視しているけど、それだけだ。暴力をふるう事もないし、暴言を吐く事もしない。ただ職務を全うしているだけだ。

怖くないー









暫くすると、少し年配の騎士様がやって来た。
以前の時にも、あまり見掛けなかった顔だったから、相手も私の事は知らない可能性の方が高い。

「お前は、どこからあの森に入った?」

開口一番、そう尋ねられた。やっぱり、私の事は知らないようだ。と言うか…声を出せなくなる魔術、解いてもらえませんか?
私を拘束した騎士様を見ながら、自分の口を指で差す。

「あぁ、すまない。」

ようやく気付いたのか、慌てて魔術を解いた。

「…ありがとう…ございます。」

「それで?何故森に?」

「その事に関してですが…直接パルヴァン様かシルヴィア様に…説明したいのですが…。」

年配の騎士様の目をしっかり見据えながら答える。

ーここで怯んじゃ駄目だー

その年配の騎士様も、私から目を反らすこと無く私を見据えたまま、パルヴァン様の名を口に出した私に殺気を飛ばして来た。
それにグッと耐えて、私は右手に持っていた物を、その年配の騎士様に差し出した。

「これを…シルヴィア様に見せてもらえれば…分かります。」

ー大丈夫…震えるな!ー

それは、帰城する前にシルヴィア様から貰ったピアス。このパルヴァンでしか採れない魔石が付いたピアス。これをシルヴィア様に見せてもらえれば、私が“薬師のハル”だと言う事が分かる筈。

「ふんっ…」

そう言いながら、私の手からそのピアスを取り、そのままここから出て行った。
そして私はまた、声が出ない魔術を掛けられ、ひたすら待つだけの時間を過ごした。








ーえっとー…どれだけ時間が掛かるの!?ー


私の秘密のポーチの中に入れていた、シルヴィア様から貰ったピアスを渡してから…2日は経った。未だに何の音沙汰も無い。それに、今日は珍しく、私を拘束してずっと監視をしていた騎士様も居ない。

パルヴァン様もシルヴィア様も忙しい?

相変わらず声は出せない事になってるし…どうするかなぁ?と、うんうん考えていると、外が急に騒がしくなった。

ーやだなぁ…デジャブだなぁ…魔獣じゃないよね???ー

と、ギュッと手に力が入った。



「ハル殿っ!!」

牢屋入り口のドアが壊れんばかりにバーンッと開き…そこからパルヴァン様と私を拘束した騎士様が入って来た。

パルヴァン様の元気そうな姿を目にして、色んな意味でホッとした。

パルヴァン様は、私が入っている牢屋の鍵を開け入って来る。それと同時に騎士様が私に掛けていた拘束と、声が出せない魔術を解いた。

私の姿を確認したパルヴァン様は、厳つい顔をより一層厳つい顔にしながら

「どこにも怪我はないか?何もされてないか?大丈夫か?」

と、矢継ぎ早に質問をして来る。

「パルヴァン様、落ち着いて下さい!あの、私は…大丈夫ですから!!」

「そうか…すまない。取り敢えず、ここから出ようか。」

3日目にして、ようやく牢屋から出る事ができた。











「あの…シルヴィア様は?」

牢屋から出て、すぐにメイドさん達に囲まれお風呂へと拉致られた。そして、シンプルなワンピースを着せられ、今、パルヴァン邸の応接室の椅子に座っている。そして、目の前にはサンドイッチが用意されていた。

お腹は空いていたので、有り難くサンドイッチをいただいていた時、牢屋から出て一度もシルヴィア様を見なかった事に気が付いた。

「あぁ、シルヴィアか…本当は私がしたかったのだが…シルヴィアは誰にも止められないからな…」

と、目をうっすらと細め、ニヤリと嗤うー。

ーえ?その筋の方ですか?ー

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