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第三章ーパルヴァン辺境地ー

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一体何が起こったのか分からない。
さっきまでお姉さん達と手を繋いで、魔法陣の真ん中に立っていて…日本に還るところ…だった。あの日、あの時、あの場所に還れる筈だった。還ったら…学祭の準備をしに行かなきゃって…思っていた。いたのに…


「何で…何で私だけ?」

私は独り、森の中にへたりこんでいる。

に来て3年だ。日本を忘れた日なんて、1日足りともなかった。毎日還りたくてしょうがなかった。それでも、3人のお姉さん達が居たから…私もこの3年頑張れた。なのに…。

いや…ここが森だからと言って…ここが日本じゃないと決まった訳じゃ……

「ははっ…」

乾いた笑いが溢れた。

私は知っている。この森を…知っている。
つい最近まで、よくここに来ていたんだから…。広大で鬱蒼とした森。王都でもシトシトと雨が降っていたが、ここでも降っている。

視線を自分の右手に落とす。私の手の平の中には、バラバラになってしまったブレスレットの、加工した水色と黒色の魔石が一つづつあった。
あの時、ミヤさんが必死になって私の手をつかもうとして…でも届かなくて…ブレスレットに引っ掛かって…バラバラになってしまったのだ。

ー今の、私と同じ状態だよねー

グッとその魔石を握り締める。




この森はーパルヴァン辺境地の森だ。




ー何で私だけ還れなかったのっ!?ー











どれ位の時間が経っただろう。
“召喚の間”に行ったのは早朝だった。それでも、最後だからと…サエラさんと一緒に、サエラさんが作ってくれたサンドイッチを食べた。

ーどんな状況に陥っても、お腹は空くんだなぁー

濡れた地面に座り込んだままだったから、体が少し冷えてしまったけど、どうやら、いつの間にか雨は止んでいたようだ。太陽が真上の方にあるのが確認できた。
丁度、お昼頃だろうか?本当に、素直なお腹だなぁ…。少しだけ、冷静になれたけど。

「さてと…これから…どうする?」

ここが何処かは分かっている…でも…。このままここに居れば…また魔法陣が展開されて還れるのでは?
穢れがあった時は、魔獣が出たりしたから、この森に居るのは危険だったけど、お姉さん達が綺麗サッパリ浄化をしたお陰で、この森の空気も以前とは違って爽やかで軽く感じる。それが余計に、私を動けなくするのだ。

ー夜になる迄…暗くなる迄に動けば…いいかなー

近場にあった大きい岩に移動して、その岩に背中を預けて座る。

ー魔法は…使えるだろうか?ー

試してみると、魔法は問題なく使えた。私がまだこの世界の魔法使いのままだと言う事だ。良かったのか…悪かったのか…。考えても仕方無いから、これからの行動を考える。

とにかく、1ヶ月…最低1ヶ月はここに置いてもらおう。確認しなければいけない事がある。を確認しなければ、前に進めないのだ。きっと、パルヴァン様とシルヴィア様なら…私のお願いを聞いてくれるだろう。


魔法陣の発動と共に襲った、引っ張られるような感覚。文字通り、引っ張られたのかもしれない。その相手が聖女であるお姉さん達なら分かるんだけど…モブだよ!?いや、間違えた?馬鹿な…間違えたなら相当の馬鹿だよね…

「何だか分からないけど…うん。少しは…落ち着いた…かな…よし!」

と、膝に手をつきながら一気に立ち上がった。

「パルヴァン様の邸に…行こう。」

私は、周りの風景を確認しながらゆっくりと歩みを進めた。










穢れの浄化を完璧にできるのは聖女だけ。聖女が居ない時は、魔導師や魔石で浄化をするけど、どうしても穢れが残り、魔獣が現れるー。その為に、1日3回、パルヴァン辺境地の騎士達が見回りに入ると言っていた。

でも、今のこの森はハイスペ聖女3人組が、綺麗サッパリ浄化した直後の森。私がこの森に飛ばされてから一度も騎士様…人を見掛けない。

ーそれだけ、この森が今、魔獣が出る心配が無い程綺麗だって事なんだろうー

頑張ったのはお姉さん達だけど、何となく嬉しくなる…。

『ハル!』
『ハルー』
『ハルちゃん!』

「……」

そのまま、歩みが止まる。

駄目だ…お姉さん達を思い出すと…駄目だ…。

パンパンッ

「…しっかり…しろ!私!!」

両手で両頬を叩いて、また前を向いて歩きだした。






ーあ、私だと不審者じゃないだろうか?ー

森の出口が見えて来た頃、ようやく気付いた。

今の私の格好は。しかも、この世界でのマナーとして、先触れも無しに貴族の邸に訪れるなんて事は…門前払いされてもおかしくないんだっけ…。

どうする??せめて…この格好を隠す…ローブでもあれば良いんだけど…

「うーん…」

少し…想像してみる。

黒色は…怪しいよね。白は…目立つかなぁ?

水色…自分の瞳の色。薄い…淡い水色。フード付き。足元迄ある少し長目の方が、ズボンも隠れて良いかなぁ?

ーうん。こんな感じのローブが欲しいー

フワリと一瞬風が体に巻き付いた様な感覚。

魔法使いチート、ありがとうございます。」

私は、魔法で作った水色のローブを身に纏い、森を出た。

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