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みん

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❋少し、不快な表現が入ります❋








「あぁ、それでは、ここからは……フェリシティ嬢。其方の……母君の話をしよう。」

ーえ?何故、この顔ぶれで母の話を?ー

「先ずは、カルディーナ王国チェスター辺境伯である俺から話をしよう。」

そう言ったのは、リオだった。






カルディーナ王国が建国されたのは、今から約400年程前。長い年月の間に繰り返された、領地をめぐる戦争に終止符を打った初代国王は、元々伯爵家の三男で騎士団長を務めていた。妻は平民だった。伯爵家の三男だったから、平民と結婚できた─と言える。
ただ、その三男が国王となる時に、やはり平民に王妃は務まらない─と反発する者が居た。

『彼女が王妃になれないならば、私も王位には立たない。』

と、三男も譲らず、結局はその平民の女性が王妃となった。
しかし、彼女は予想以上に王妃としての務めを果たした。それに、なんと言っても王妃は誰もが見惚れてしまうような美しい女性だった。
平民だった為か、肌は少し小麦色に焼けてはいるが、健康的で悪い印象はない。緩く波打つ金髪にもその肌の色は合っていた。
そして、その瞳はとても綺麗な青色。そのあまりの美しさに、王妃となった時に名を改め

“サフィア”

と、改名した。

ブルーサファイアの様な美しい瞳は、その名の通り、サファイアの宝石の様に美しい青色なのに、光の加減で紫色にも見えたと言う。


その初代国王両陛下の間には、2人の王子と2人の姫が生まれたが、王妃のようにサファイアの瞳を持って生まれたのは、4人のうちの1人─末の姫だけだった。

その末の姫もまた、その美しさから他国の王族からの求婚も多々あったが、国内情勢やパワーバランスを考えて、カルディーナ国内の公爵家嫡男への降嫁が決まった。

それは、完璧な政略結婚ではあったが、夫婦となった2人はとても仲が良かったそうだ。
そして、その2人の間には2人の男の子と女の子1人が生まれたが、3人ともサファイアの瞳を持ってはいなかった。

しかし、その女の子が結婚して生まれた2人の女の子のうち、1人がまたサファイアの瞳を持っていた。

何年、何十年と経って分かった事は、サファイアの瞳は必ず子に引き継がれる事は無いが、女の子にしか現れないと言う事だった。





そうして、何代も後に、とある伯爵家の娘が、サファイアの瞳を持った子を生んだ。その女の子は、生まれた時はブルーサファイアの色だったが、年齢を重ねるうちに、ラベンダー色へと変化した。まさに─

“バイオレットサファイア”──だった。

希少なバイオレットサファイア。光の加減で青色にも見える瞳を持った女の子。

その事が、悲劇を起こしたのだ───



彼女の瞳を欲した者が、彼女が侍女と共に街で買い物をしている時に彼女を誘拐したのだ。
共に居た侍女は、その場で刺殺されていた。
たまたま、その現場を目にした子供の通報で、その日のうちに彼女は見付かったけれど──全てが遅過ぎた。

彼女は、その男から身を守る為に、その男が持っていた短剣を奪い取り自ら命を断ってしまっていたのだ。

初代王妃から100年以上も経っており、王族との関係も殆どない娘ではあったが、その男には、当時の国王が自ら処罰を下したそうだ。



しかし、その悲劇はそれでは終わらず、サファイアの瞳を持った女の子は、常に狙われる存在になってしまった。
そこで、国王は、サファイアの瞳を持った者を護る者をつける事にした。
そこで、その“護る者”に選ばれたのが──


カルディーナ王国の、チェスター辺境伯の三男の騎士だった。

辺境伯家の息子とあって、武には非常に長けていた上、嫡男ではない三男。スムーズにサファイアの瞳を持った娘に付ける事ができた。

それからは、サファイアの瞳を持った娘が現れると、チェスター家から守護者を送り出し、その娘を護って来た。

どの時代に現れても、その娘をモノにしようとする輩も必ず現れた。しかし、その輩をチェスターの守護者が退けていた。

それもまた、何年何十年経つと、サファイアの瞳を持つ娘が生まれなくなり、それと共に狙う者も居なくなり、守護をする必要もなくなっていき──

“サファイアの瞳を持つ娘など、お伽噺だったのでは?”

と言われるようになり、忘れ去られていった。




その間に、国同士の戦争もなくなり平和条約が交わされ、辺境地、辺境伯の持つ意味合いも変わっていった。
お互い武器を捨て、辺境地は観光地へと変わっていった。特に、カルディーナ王国のチェスター領とコルネリア王国のエルダイン領は領主同士が仲が良く、お互い助け合って領地を発展させて来ていた。






それが、ある日──


カルディーナ王国のとある伯爵夫妻が、孤児院を訪れた事によってチェスター辺境伯の運命が動き出す事になった。

この伯爵夫人は、元を辿って行くとほんの少しではあるが、王族の血をひいていたそうで、細々と伝承されていた“サファイアの瞳”の事を、曾祖母から耳にしていたそうだ。勿論、その曾祖母も、その夫人もサファイアの瞳は持っていなかった。

ただ、その訪れた孤児院で、サファイアの瞳を持つ娘を見付けたのだ。





「その、サファイアの瞳を持った娘と言うのが……フェリの母君のソフィア様だったんだ。」


リオは、私の目を真っ直ぐに見つめたまま、そう言った。

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