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日常①
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「おかえりなさいませ。」
「カーソン、ただいま。」
私の帰りを出迎えてくれたのは、エルダインのタウンハウスの家令を務めているカーソンだった。
このカーソンは、先代のエルダイン辺境伯─お祖父様の代から居て、私の実の母─ソフィアや私にも優しく接してくれる家令である。その態度や対応は、義母がやって来てからも変わらない。勿論、義母は、このカーソンも解雇させようとしたが、エルダインの財産管理や領地運営には長けていた上、雇い主がお祖父様だった為に、義母の思い通りにはいかなかったのだ。
「久し振りのオルコット家はどうでしたか?」
「とても楽しかったわ。それと、ペティ様もお元気だったわ。」
「それは、ようございました。」
「それと、お菓子を食べ過ぎてしまったから、夕食は軽くでいいわ。」
「かしこまりました」
それだけ言うと、私はココを連れて部屋へと向かった。
私とカーソンが仲良くしているところを、義母に見られたら何をさせられるか─そんな思いもあり、カーソンともあまり長く話さないようにしている。それと、表立って私を助けないように─とも言ってある。
私の部屋は、2階の一番奥の西側にある。そう─伯爵令嬢の部屋としては比較的に狭くて、日当たりの悪い部屋だ。
それでも、個人的には問題無い広さがあり、普通にテーブルやソファ、ベッドもある。朝日が入りにくい為に、朝だと言うのに薄暗い─と言う事を除けば、そんなに悲嘆に暮れる程の事ではない。
「あ…お嬢様…またやられてます。」
「またなのね?何を?」
「領から持って来た魔石のネックレスです。」
「あぁ、アレね。態と置いておいたのよ。そろそろやると思っていたからね。綺麗な─高そうに見える物を買っておいたのよ。」
「そうでしたか。ふふっ─あの女に、物の価値なんて分からないでしょうからね。ふふっ。」
ココは我慢できないように、ニヤニヤと嗤っている。
“あの女”とは──
ーアナベル=エルダインー
義母─ブリジットの実の子であり、私の一つ年下の妹の事だ。金髪に青い瞳。容姿が綺麗な母親似の可愛らしい子だけど──中身はお花畑だ。いや、マナーに関しては義母も厳しく躾けたようで、今社交会デビューをしても問題無いレベルであるのは確かだ。ただ、頭が───追いつかなかったようだ。
その妹と義母は、私に嫌がらせをしてくる。ただ、私が第一王子の婚約者候補の1人であるからか、体罰のような外から見て分かるような嫌がらせはしてこない。
部屋の配置は、その嫌がらせのうちの一つ。
食事は出してもらえるが、義母達と一緒に食べる事はない。私だけ、別メニューが部屋へと運ばれて来る。硬いパンや硬い野菜たっぷりのスープや、殆ど生の肉。激辛のスープもあった。1日1食の時もあった。ただ、全く出されない─と言う事はない。体裁を守る為だろう。
まあ、兎に角、その辺だけは、第一王子の婚約者候補に残っている唯一のメリットだと思う。
極めつけが──アナベルが、よく私の部屋に侵入してアクセサリー等を盗って行く事。普段は脳内お花畑なのに、何故か、何処に隠しても見つけ出して盗って行くのだ。しかも、それを堂々と身に着けて歩いているから、最初の頃は私も注意したり、義母や父にも言いつけた。
でも──
「お姉様がくれたのよ!」
とアナベルが言えば、義母も父もそれを信じた。
「あげていない!」
と私が言えば、「姉なんだから、譲ってやれ」と言われた。
それが何度か繰り返された後、私は声を上げる事を止めた。
無駄だから。
ココ以外に、味方なんて居ないと分かったから。
そうして諦める?と、意外と気持ちが楽になった。
ココは悔しそうにしていたけど、私は気にしないから─と言って、何とか落ち着かせた。
きっと、私の代わりに怒ったり泣いたりしてくれるココが居たから、私は捻くれずにこれたのかもしれない。
本当に、ココには感謝しかない。いつか、この気持ち?恩?を返せたらな…と思っている。
まぁ、そこで、私も泣き寝入りするつもりも無い訳で──
学園に通う為に、また一緒に暮らす事になった妹。盗まれっ放しもいい加減腹が立つと言う訳で、領地を出て来る前に、見栄えは良いけど大した物ではないアクセサリーや、見る人が見ればガラクタのアクセサリーを沢山買って来て、それらを少しずつ、時々部屋に隠すようにして置くようにした。
すると、予想通り、妹はその隠すように置いてあるアクセサリーを盗って行くようになった。逆に、テーブルの上に置き忘れていた、それなりの価値のあるイヤリングには一切手を出していなかった。
彼女の頭の中は、“私が隠している物=高価な物”なんだろう。
本当に、妹が脳内お花畑で良かったなと思う。
父は─実際、母や私の事をどう思っているのかは分からない。父は、所謂仕事人間。エルダイン領が観光地として人気がある為に、領地運営で色々と大変なのだ。愛情を受けた記憶は無いが、私に対しての嫌悪感?も感じた事はない。なので、今は近付く事はせずに距離を取っている。
そして、一番よく分からないのが──
兄であるーシリル=エルダインーだった。
「カーソン、ただいま。」
私の帰りを出迎えてくれたのは、エルダインのタウンハウスの家令を務めているカーソンだった。
このカーソンは、先代のエルダイン辺境伯─お祖父様の代から居て、私の実の母─ソフィアや私にも優しく接してくれる家令である。その態度や対応は、義母がやって来てからも変わらない。勿論、義母は、このカーソンも解雇させようとしたが、エルダインの財産管理や領地運営には長けていた上、雇い主がお祖父様だった為に、義母の思い通りにはいかなかったのだ。
「久し振りのオルコット家はどうでしたか?」
「とても楽しかったわ。それと、ペティ様もお元気だったわ。」
「それは、ようございました。」
「それと、お菓子を食べ過ぎてしまったから、夕食は軽くでいいわ。」
「かしこまりました」
それだけ言うと、私はココを連れて部屋へと向かった。
私とカーソンが仲良くしているところを、義母に見られたら何をさせられるか─そんな思いもあり、カーソンともあまり長く話さないようにしている。それと、表立って私を助けないように─とも言ってある。
私の部屋は、2階の一番奥の西側にある。そう─伯爵令嬢の部屋としては比較的に狭くて、日当たりの悪い部屋だ。
それでも、個人的には問題無い広さがあり、普通にテーブルやソファ、ベッドもある。朝日が入りにくい為に、朝だと言うのに薄暗い─と言う事を除けば、そんなに悲嘆に暮れる程の事ではない。
「あ…お嬢様…またやられてます。」
「またなのね?何を?」
「領から持って来た魔石のネックレスです。」
「あぁ、アレね。態と置いておいたのよ。そろそろやると思っていたからね。綺麗な─高そうに見える物を買っておいたのよ。」
「そうでしたか。ふふっ─あの女に、物の価値なんて分からないでしょうからね。ふふっ。」
ココは我慢できないように、ニヤニヤと嗤っている。
“あの女”とは──
ーアナベル=エルダインー
義母─ブリジットの実の子であり、私の一つ年下の妹の事だ。金髪に青い瞳。容姿が綺麗な母親似の可愛らしい子だけど──中身はお花畑だ。いや、マナーに関しては義母も厳しく躾けたようで、今社交会デビューをしても問題無いレベルであるのは確かだ。ただ、頭が───追いつかなかったようだ。
その妹と義母は、私に嫌がらせをしてくる。ただ、私が第一王子の婚約者候補の1人であるからか、体罰のような外から見て分かるような嫌がらせはしてこない。
部屋の配置は、その嫌がらせのうちの一つ。
食事は出してもらえるが、義母達と一緒に食べる事はない。私だけ、別メニューが部屋へと運ばれて来る。硬いパンや硬い野菜たっぷりのスープや、殆ど生の肉。激辛のスープもあった。1日1食の時もあった。ただ、全く出されない─と言う事はない。体裁を守る為だろう。
まあ、兎に角、その辺だけは、第一王子の婚約者候補に残っている唯一のメリットだと思う。
極めつけが──アナベルが、よく私の部屋に侵入してアクセサリー等を盗って行く事。普段は脳内お花畑なのに、何故か、何処に隠しても見つけ出して盗って行くのだ。しかも、それを堂々と身に着けて歩いているから、最初の頃は私も注意したり、義母や父にも言いつけた。
でも──
「お姉様がくれたのよ!」
とアナベルが言えば、義母も父もそれを信じた。
「あげていない!」
と私が言えば、「姉なんだから、譲ってやれ」と言われた。
それが何度か繰り返された後、私は声を上げる事を止めた。
無駄だから。
ココ以外に、味方なんて居ないと分かったから。
そうして諦める?と、意外と気持ちが楽になった。
ココは悔しそうにしていたけど、私は気にしないから─と言って、何とか落ち着かせた。
きっと、私の代わりに怒ったり泣いたりしてくれるココが居たから、私は捻くれずにこれたのかもしれない。
本当に、ココには感謝しかない。いつか、この気持ち?恩?を返せたらな…と思っている。
まぁ、そこで、私も泣き寝入りするつもりも無い訳で──
学園に通う為に、また一緒に暮らす事になった妹。盗まれっ放しもいい加減腹が立つと言う訳で、領地を出て来る前に、見栄えは良いけど大した物ではないアクセサリーや、見る人が見ればガラクタのアクセサリーを沢山買って来て、それらを少しずつ、時々部屋に隠すようにして置くようにした。
すると、予想通り、妹はその隠すように置いてあるアクセサリーを盗って行くようになった。逆に、テーブルの上に置き忘れていた、それなりの価値のあるイヤリングには一切手を出していなかった。
彼女の頭の中は、“私が隠している物=高価な物”なんだろう。
本当に、妹が脳内お花畑で良かったなと思う。
父は─実際、母や私の事をどう思っているのかは分からない。父は、所謂仕事人間。エルダイン領が観光地として人気がある為に、領地運営で色々と大変なのだ。愛情を受けた記憶は無いが、私に対しての嫌悪感?も感じた事はない。なので、今は近付く事はせずに距離を取っている。
そして、一番よく分からないのが──
兄であるーシリル=エルダインーだった。
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