上 下
27 / 42
*竜王国*

27 夢物語?

しおりを挟む
『私の可愛いレイラーニ。お願い──を護って』






「…………??」

目を開けると、フカフカのベッドの上だった。
天蓋からは、真っ白なレース状のカーテンが垂れ下がっている。
テイルザールの私のベッドは、大人2人がゆっくり寝れる位の大きさだったけど、今寝ているベッドは更に大きくて3人は余裕で寝られそうだ。

「と言うか、ここは何処?うーん……」

確か、アルマが居なくなった後、更にガレオンさんと口論していたところで、ジャレッド様に名前を呼ばれて──

『今すぐレイ様をこちらに渡してもらおうか?』

と言って……ネルさんとユーリッシュさんが現れて助けてもらって─助かったと思ったら、何だか体中が熱くなって、これ以上ユーリッシュさんの側に居たら駄目だと思って───

「それからの記憶がない……」

サッと血の気が引く。媚薬を盛られた可能性があった。だから、ユーリッシュさんから離れようとしたけど、それからどうなったの?今は……落ち着いている。まさか────

「レイ様!目が覚めましたか!?」
「っ!アルマ!!」
「ああ、良かった!どこか痛い所とか…気分が悪い事はないですか?」
「うん。喉が渇いてる以外は特に…それで…わたし………」
「何か飲み物をお持ちしますね。話はそれからで…」

アルマは私を落ち着かせるような穏やかな笑顔を向けてから、小走りで部屋から出て行った。





アルマが持って来てくれたのは、果実水とスープとパンだった。
なんと、あの夜会から丸1日以上眠っていたようで、食事を目にした途端、お腹がキュルキュルと自己主張をし始め、寝起きにも関わらず用意してくれたスープとパンをペロリと平らげる事ができた。そして、食べ終わって暫くすると、医師様がやって来て診察をしてくれた。

「獣人の媚薬を盛られたそうですが、対処が早かったようで、後遺症もありませんし、もうスッカリ抜けていますから安心して下さい。ただ、体力は落ちているようなので、暫くの間はゆっくり過ごすようにして下さい」

対処とは一体──と不安になったけど、アルマから聞いた話によれば、ネルさんが作った万能薬のお陰で媚薬を浄化する事ができたようで、最悪の事態にはならなかったそうだ。
それから、医師様は薬を処方した後部屋から出て行き、それと入れ替わるようにネルさんとユーリッシュさんが入って来た。

「ネルさん!ユーリッシュさん!」

まだ詳しくは聞いていないけど、色々大変だったところを助けてくれたのが、ネルさんとユーリッシュさんだったらしい。

「レイ様、医師は問題無いと言っていたけど、本当に大丈夫かい?」
「はい。大丈夫です。ありがとうございます」

ベッドの上で座ったまま、ペコリと頭を下げてお礼を言う。

「大丈夫なら……話をしても?」
「あの…この格好のままで良ければ」
「勿論、そのままで大丈夫ですよ。少し、長い話になるから、もし疲れたりしたら言って下さいね」

先ずは私がパーティーホールを出てからの話を教えてくれた。





「ネルさんが……竜王!?でも…薬師で……」
「竜王になる前は薬師だったから、それも本当の事なんだ」

竜王とは、世襲制ではなく実力で引き継いでいくそうで、ネルさんは先代竜王の治世では薬師だったそうだ。
ある年の武術大会で、薬師のネルさんが先代竜王に勝ち、ネルさんが新たな竜王になったのが、今から100年前。竜人の寿命は200歳から500歳と言われているから、ネルさんは見た目以上の年齢なのかもしれない。

「3大種族の中で1番強靭だと言われる竜人でも、呪いを掛けられたりするんですね…」
「恥ずかしながら、普通なら…有り得ないんだけどね。ましてや、呪術を掛けたのが魔法に乏しい獣人族だったのに…何とも間抜けな竜王だろう?」

ふふっ─と自嘲気味に笑うネルさんを、ユーリッシュさんは心配そうな視線を向けている。

「少し、私の話を聞いてもらえるかな?」
「はい」

ネルさんは自分の両手をギュッと握って、軽く息を吐いた後、ゆっくりと語り出した。



獣人や竜人には“つがい”と言う、本能で結ばれる相手が居る。ただ、その番に出会えればラッキーで、ほぼ出会える事はない。
ただ、竜人は、番と出会い結ばれると寿命が長くなるそうで、平均寿命が200歳から500歳と幅があるのはそのせいなんだそうだ。

「特に竜人は子供が生まれにくい種で、番であれば子ができやすいんだ。だから、番と出会えたら、相手が他種族の者であろうが貴族であろうが平民であろうが、諸手を挙げて喜んで迎え入れられる存在なんだ。そんな存在の番に……私は幸運にも巡り合う事ができた」

ーそれは、何て素敵な事なんだろうー

恋や恋愛がいまいちよく分からない私でも、それが幸運である事は分かる。

「なら、ネルさんはその番の人と結婚しているんですね?」
「んー…それがね……私の番は人間ひと族の女性でね……出会った時にはもう既に70歳近くの未亡人で、子供が3人、孫が6人、曾孫が2人も居たんだ」

どうやら、“めでたしめでたし”な夢物語ではないようです。





しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約者が好きなのです

maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。 でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。 冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。 彼の幼馴染だ。 そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。 私はどうすればいいのだろうか。 全34話(番外編含む) ※他サイトにも投稿しております ※1話〜4話までは文字数多めです 注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)

死に戻り王妃はふたりの婚約者に愛される。

豆狸
恋愛
形だけの王妃だった私が死に戻ったのは魔術学院の一学年だったころ。 なんのために戻ったの? あの未来はどうやったら変わっていくの? どうして王太子殿下の婚約者だった私が、大公殿下の婚約者に変わったの? なろう様でも公開中です。 ・1/21タイトル変更しました。旧『死に戻り王妃とふたりの婚約者』

婚約者が不倫しても平気です~公爵令嬢は案外冷静~

岡暁舟
恋愛
公爵令嬢アンナの婚約者:スティーブンが不倫をして…でも、アンナは平気だった。そこに真実の愛がないことなんて、最初から分かっていたから。

【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです

果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。 幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。 ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。 月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。 パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。 これでは、結婚した後は別居かしら。 お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。 だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。

愛を語れない関係【完結】

迷い人
恋愛
 婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。  そして、時が戻った。  だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。 *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

もう何も信じられない

ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。 ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。 その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。 「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」 あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。

処理中です...