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後日談
ジルベルトの憂鬱
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❋本編完結後に、“置き場”に投稿したお話です。こちらに移動しました。このお話も、ミューとハルシオンが婚約中の話になります❋
「はぁ───…」
『ありがとうございます。─ジルお義兄様─』
ーお義兄様ー
初めて“お義兄様”と呼ばれたのが、1ヶ月程前。あれからミューに会っていない…。そう─まだ、あの時の一度しか、“お義兄様”と呼ばれた事がないのだ。
今、アルム王国は暖かい時期で、比較的天候も安定している時期でもある為、1年を通して王族の視察が最も多くなる。そうなると、第二騎士団の近衛騎士達は、その視察先の下調べや安全の確認、警備の割り当て等々─仕事が増え一気に忙しくなるのだ。
そして、そうなると、魔導師達─特に王族の護衛に就く“上級位魔導師”達も、同様に忙しくなる。その上級位魔導師の中でも、特にティアナ嬢と…私の…可愛い可愛い…めっちゃ可愛い義妹であるミューの2人は、更に忙しくなる。女性の上級位魔導師が、その2人しか居ないからだ。この2人は必ずどちらかが王妃陛下の護衛に就くのだ。
そんな訳で、俺は第二騎士団の団長として忙しく、あまり家─アシュトレア邸にも帰る事ができない日が多い。俺の可愛い可愛い…義妹のミューも、瑠璃宮殿にある自分の部屋に寝泊まりしているらしいが─。
ーまさか…また、ハルシオンに、部屋に連れ込まれていないだろうな?ー
ハルシオンは、ミューとの婚約が成立してから、ミューに対して遠慮─手加減が一切無くなった。端から見ているこっちが恥ずかしくなる位、ハルシオンの攻めが半端無いのだ。その度に、ミューが顔を真っ赤にして抵抗しているのだが─それがまた更に可愛い過ぎて、ハルシオンに更に攻められ─と言う溺愛エンドレスになっている。
確かに、顔を真っ赤にして抵抗しているミューは、本当に可愛い。
その可愛い義妹は、1年後にはハルシオンの元へと嫁いで行く。本当に…早過ぎる。
ハルシオンは魔導師長であり王弟殿下でもある。王位継承権を放棄しているとは言え、王族である事には変わりない。普通、王族の結婚と言えば最低でも2年程の準備期間がある筈なのに…。
ハルシオン自身が、最短でのミューとの結婚を望んでいたのと、弟大好き陛下と、ミュー大好き王妃陛下のゴリ押しで、1年後の結婚が決まったのだ。
あの時の宰相や陛下の側近達の、ゲッソリした顔は、今でも忘れられない─が
アシュトレア家の者達が、影で泣いたのは秘密だ。
「ハルシオン、お前、忙しい事を理由に、ミューを部屋に連れ込んだりしていないだろうな?」
第二騎士団長として、魔導師長であるハルシオンに用ができた為、今、俺は瑠璃宮殿にあるハルシオンの執務室に来ている。
安全な避妊薬等の充実もあり、婚前交渉に関して拘る貴族も減りつつある。規制し過ぎると、逆効果だったりもするからだ。しかし─だ。
「ジルベルト…お前は相変わらず過保護だな…。大丈夫だ。ミューが俺の執務室で疲れて寝てしまった時は、仕方が無いから、俺の部屋に運んでいるだけだ。」
「それを!部屋に連れ込む!と言うんだ!」
本当に、コイツは相変わらずミューの事になると遠慮がないな…。
「…結婚前に、変な噂が出たらどうする?」
「婚約しているんだ。問題ないだろう?どこに問題があるか、逆に訊きたいのだが?」
ーぐぅっー
正論だ─確かに正論だが!
「…結婚前に…子供ができた─なんて事はやめてくれよ!?」
「………善処する。」
「おいっ!!!」
その間は何だ!その間は!!善処って何だ!!!
義兄は、今日も泣きそうです─。
と、ハルシオンはあんな事を言っていたが、絶対ソレだけは無いと確信している。何故なら─
ミューと2人だけの時間が欲しいから─だ。
ーそれはそれで腹が立つがー
勿論、ミューとの子供だから、できたらできたで、喜んで可愛がるだろうけど。結婚したら、誰の目を気にする事なくミューとイチャイチャできるのだ…それを、あのハルシオンが分かってない筈がない。
ーミューとイチャイチャ…ー
やっぱり、泣ける─。
そんなこんなで、可愛い義妹のミューに会えないまま、更に1ヶ月が経った。
「はぁ────…」
今日の護衛の仕事が終わり、執務室へと帰る途中、長い長い溜め息が出た。
「団長様、どうしたんですか?溜め息なんて吐いて。」
今日は、両陛下揃っての視察だった為、一緒にいた王妃陛下の護衛に就いていたティアナ嬢に声を掛けられた。
「あぁ、気にしなくて良いですよ。」
と、俺の代わりに返事をしたのは、今日の視察に同行していた、俺と同期の第一騎士団の騎士のクリフ。
「ただの─ミュー嬢欠乏症なだけだから。」
「─あぁ…成る程…」
ーその、生暖かい目で見るのはやめて欲しいー
「噂には聞いてましたけど、アシュトレア一族の、ミューに対する溺愛ぶりと過保護ぶりは、本当なんですね…。」
「噂以上じゃないかな?まぁ…あの一族にとったら、紅一点─可愛い可愛い姫君だからね。王弟殿下も…ちょっと大変だよね?」
「確かに、魔導師長、ミューに会うのも大変だって言ってましたね。でも、こんな感じだと……2人に子供ができたら…もっと凄い事になりそうですよね?」
「俺もそう思う。それが、もし、女の子だったら…。一族あげての祭りになるんだろうね…。」
ー子供…女の子…姪!!??ー
失念していた!2人に子供ができたら…俺は“伯父”さんになるのか!!
『おじしゃん』(←舌ったらず口調の妄想)
ーうん、可愛いな!ー
仕方が無い。少しは…多めに見てやるか?
2人の結婚3年後に女の子(5年後に男の子)が生まれて、アシュトレア一族総出のお祝いパーティーが開かれたが、それはまた、別のお話─。
「はぁ──────…」
あれから、また一週間が経った。まだ、義妹に会えていない。
ー俺、死ねるかも…ー
久し振りにアシュトレア邸に帰って来たが、肝心な、可愛い可愛い義妹は居なかった。
軽くショックを受けて、自室の机に項垂れていると
トントン
「あの…起きていますか?」
ーっ!?ー
この声は!!!と、ガバッと体を起こして、大股で扉迄行き自分で扉を開けた。
「ミュー!!」
「あ、遅くにすみません。今、少し時間はありますか?」
「勿論!たっぷりある!」
「いえ……“たっぷり”は要りません。」
ーあぁ…この冷たい感じ…可愛いよなぁー
「あの─コレを…お渡ししたくて。」
と、ミューが、俺に綺麗にラッピングされた物を渡して来た。
「コレは?」
受け取りながら訊くと
「もう過ぎてしまったんですけど…先週、誕生日だったと聞きまして。お互い忙しくて会えなかったので、会えた時に渡そうと思って…ハンカチなんですけど、良かったら使って下さい。」
「!!ミュー、ありがとう!!」
ーえーハンカチ、使えるかなぁ?勿体無いよなぁ…飾るか?ー
「あの…」
「ん?」
「遅くなりましたが…お誕生日、おめでとうございます……ジルお義兄様。それでは失礼しました。おやすみなさい……ジルお義兄様。」
と言うだけ言って、ミューは自室へと戻って行った。
「………」
『ジルお義兄様』
2回連続でいただきました。
ーえ?俺、今日死ぬの?ー
いやいやいや、姪を見る迄は死ねない!あぁ…本当に…本当に、義妹が可愛くて辛い─が、これで暫くは頑張れるな。
そして、また忙しくなり1ヶ月程会えない日が続くのだが、この時の俺は勿論まだ知らなかったのである。
❋やっぱり、ジルベルトは書いていて楽しい(笑)。どんどんヤバい人になりつつあるような…気がしないこともない(笑)❋
「はぁ───…」
『ありがとうございます。─ジルお義兄様─』
ーお義兄様ー
初めて“お義兄様”と呼ばれたのが、1ヶ月程前。あれからミューに会っていない…。そう─まだ、あの時の一度しか、“お義兄様”と呼ばれた事がないのだ。
今、アルム王国は暖かい時期で、比較的天候も安定している時期でもある為、1年を通して王族の視察が最も多くなる。そうなると、第二騎士団の近衛騎士達は、その視察先の下調べや安全の確認、警備の割り当て等々─仕事が増え一気に忙しくなるのだ。
そして、そうなると、魔導師達─特に王族の護衛に就く“上級位魔導師”達も、同様に忙しくなる。その上級位魔導師の中でも、特にティアナ嬢と…私の…可愛い可愛い…めっちゃ可愛い義妹であるミューの2人は、更に忙しくなる。女性の上級位魔導師が、その2人しか居ないからだ。この2人は必ずどちらかが王妃陛下の護衛に就くのだ。
そんな訳で、俺は第二騎士団の団長として忙しく、あまり家─アシュトレア邸にも帰る事ができない日が多い。俺の可愛い可愛い…義妹のミューも、瑠璃宮殿にある自分の部屋に寝泊まりしているらしいが─。
ーまさか…また、ハルシオンに、部屋に連れ込まれていないだろうな?ー
ハルシオンは、ミューとの婚約が成立してから、ミューに対して遠慮─手加減が一切無くなった。端から見ているこっちが恥ずかしくなる位、ハルシオンの攻めが半端無いのだ。その度に、ミューが顔を真っ赤にして抵抗しているのだが─それがまた更に可愛い過ぎて、ハルシオンに更に攻められ─と言う溺愛エンドレスになっている。
確かに、顔を真っ赤にして抵抗しているミューは、本当に可愛い。
その可愛い義妹は、1年後にはハルシオンの元へと嫁いで行く。本当に…早過ぎる。
ハルシオンは魔導師長であり王弟殿下でもある。王位継承権を放棄しているとは言え、王族である事には変わりない。普通、王族の結婚と言えば最低でも2年程の準備期間がある筈なのに…。
ハルシオン自身が、最短でのミューとの結婚を望んでいたのと、弟大好き陛下と、ミュー大好き王妃陛下のゴリ押しで、1年後の結婚が決まったのだ。
あの時の宰相や陛下の側近達の、ゲッソリした顔は、今でも忘れられない─が
アシュトレア家の者達が、影で泣いたのは秘密だ。
「ハルシオン、お前、忙しい事を理由に、ミューを部屋に連れ込んだりしていないだろうな?」
第二騎士団長として、魔導師長であるハルシオンに用ができた為、今、俺は瑠璃宮殿にあるハルシオンの執務室に来ている。
安全な避妊薬等の充実もあり、婚前交渉に関して拘る貴族も減りつつある。規制し過ぎると、逆効果だったりもするからだ。しかし─だ。
「ジルベルト…お前は相変わらず過保護だな…。大丈夫だ。ミューが俺の執務室で疲れて寝てしまった時は、仕方が無いから、俺の部屋に運んでいるだけだ。」
「それを!部屋に連れ込む!と言うんだ!」
本当に、コイツは相変わらずミューの事になると遠慮がないな…。
「…結婚前に、変な噂が出たらどうする?」
「婚約しているんだ。問題ないだろう?どこに問題があるか、逆に訊きたいのだが?」
ーぐぅっー
正論だ─確かに正論だが!
「…結婚前に…子供ができた─なんて事はやめてくれよ!?」
「………善処する。」
「おいっ!!!」
その間は何だ!その間は!!善処って何だ!!!
義兄は、今日も泣きそうです─。
と、ハルシオンはあんな事を言っていたが、絶対ソレだけは無いと確信している。何故なら─
ミューと2人だけの時間が欲しいから─だ。
ーそれはそれで腹が立つがー
勿論、ミューとの子供だから、できたらできたで、喜んで可愛がるだろうけど。結婚したら、誰の目を気にする事なくミューとイチャイチャできるのだ…それを、あのハルシオンが分かってない筈がない。
ーミューとイチャイチャ…ー
やっぱり、泣ける─。
そんなこんなで、可愛い義妹のミューに会えないまま、更に1ヶ月が経った。
「はぁ────…」
今日の護衛の仕事が終わり、執務室へと帰る途中、長い長い溜め息が出た。
「団長様、どうしたんですか?溜め息なんて吐いて。」
今日は、両陛下揃っての視察だった為、一緒にいた王妃陛下の護衛に就いていたティアナ嬢に声を掛けられた。
「あぁ、気にしなくて良いですよ。」
と、俺の代わりに返事をしたのは、今日の視察に同行していた、俺と同期の第一騎士団の騎士のクリフ。
「ただの─ミュー嬢欠乏症なだけだから。」
「─あぁ…成る程…」
ーその、生暖かい目で見るのはやめて欲しいー
「噂には聞いてましたけど、アシュトレア一族の、ミューに対する溺愛ぶりと過保護ぶりは、本当なんですね…。」
「噂以上じゃないかな?まぁ…あの一族にとったら、紅一点─可愛い可愛い姫君だからね。王弟殿下も…ちょっと大変だよね?」
「確かに、魔導師長、ミューに会うのも大変だって言ってましたね。でも、こんな感じだと……2人に子供ができたら…もっと凄い事になりそうですよね?」
「俺もそう思う。それが、もし、女の子だったら…。一族あげての祭りになるんだろうね…。」
ー子供…女の子…姪!!??ー
失念していた!2人に子供ができたら…俺は“伯父”さんになるのか!!
『おじしゃん』(←舌ったらず口調の妄想)
ーうん、可愛いな!ー
仕方が無い。少しは…多めに見てやるか?
2人の結婚3年後に女の子(5年後に男の子)が生まれて、アシュトレア一族総出のお祝いパーティーが開かれたが、それはまた、別のお話─。
「はぁ──────…」
あれから、また一週間が経った。まだ、義妹に会えていない。
ー俺、死ねるかも…ー
久し振りにアシュトレア邸に帰って来たが、肝心な、可愛い可愛い義妹は居なかった。
軽くショックを受けて、自室の机に項垂れていると
トントン
「あの…起きていますか?」
ーっ!?ー
この声は!!!と、ガバッと体を起こして、大股で扉迄行き自分で扉を開けた。
「ミュー!!」
「あ、遅くにすみません。今、少し時間はありますか?」
「勿論!たっぷりある!」
「いえ……“たっぷり”は要りません。」
ーあぁ…この冷たい感じ…可愛いよなぁー
「あの─コレを…お渡ししたくて。」
と、ミューが、俺に綺麗にラッピングされた物を渡して来た。
「コレは?」
受け取りながら訊くと
「もう過ぎてしまったんですけど…先週、誕生日だったと聞きまして。お互い忙しくて会えなかったので、会えた時に渡そうと思って…ハンカチなんですけど、良かったら使って下さい。」
「!!ミュー、ありがとう!!」
ーえーハンカチ、使えるかなぁ?勿体無いよなぁ…飾るか?ー
「あの…」
「ん?」
「遅くなりましたが…お誕生日、おめでとうございます……ジルお義兄様。それでは失礼しました。おやすみなさい……ジルお義兄様。」
と言うだけ言って、ミューは自室へと戻って行った。
「………」
『ジルお義兄様』
2回連続でいただきました。
ーえ?俺、今日死ぬの?ー
いやいやいや、姪を見る迄は死ねない!あぁ…本当に…本当に、義妹が可愛くて辛い─が、これで暫くは頑張れるな。
そして、また忙しくなり1ヶ月程会えない日が続くのだが、この時の俺は勿論まだ知らなかったのである。
❋やっぱり、ジルベルトは書いていて楽しい(笑)。どんどんヤバい人になりつつあるような…気がしないこともない(笑)❋
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