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第四章ー私の還る場所ー
ミューのお願いans②
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「ふふっ…馬鹿ですよね。2人を試して…2人がキスをしているのを目にして…周りが見えてなかったんです。この世界で言うと…馬車よりも少し大きくて頑丈?な乗り物があるんですけど、その乗り物にぶつかってしまって…多分、そのまま死んでしまったんだと思います。そこまでしか、前世の記憶がないので…。」
「……」
魔導師長は何も言わない。
「本当に、全く覚えてなかったんです。」
「そう言えば、最初の頃、ミューはタクマ殿と聖女様に会う度に体調を崩していたな?」
「はい。私も最初は戸惑いました。2人に会う度に心臓が悲鳴を上げるような感覚に陥っていたので…。それで、倒れてギリュー様に担ぎ込まれた事、覚えてますか?」
「あぁ、覚えている。私は実際に目にはしていないが、ティアナは勿論、瑠璃宮殿付きの女官達が…憐れんでいたからなぁ…」
ーそうでした。俵担ぎだったからねー
「そうです。恥ずかしいけどそれです。その時に、前世の記憶が戻ったんです。それからは、2人に会っても体調を崩す事はなくなりました。なくなりましたけど…どうしても最後に見た場面が思い出されて…。勿論、2人は私が"棚橋美幸"だなんて気付いていないし…思ってもいない訳で…。」
逆に、気付いてたら恐いよね…
「距離を置きたいのに、逆にどんどん琢磨との接点が増えていくし…琢磨からは…好意を寄せられるようになって…挙げ句、雪に対しては嫌悪感を抱いてるとか言われて…。本当に、意味が分からなくなって…」
美幸が好きだったと言いながら、雪と関係をもったとか…
「あぁ…だからか…」
魔導師長が、小さく囁く。
「だからか…とは?」
何だろう?と思い、魔導師長を見つめる。
魔導師長は、顎に手をやり暫く逡巡した後
「ミューがタクマ殿を見る時の目が…辛そうだなと思っていた。」
「っ!?」
気付かれてた!?フードも被ってたのに…
「…魔導師長は…どこまで気付いてますか?」
魔導師長の目をしっかり見据えながら問う。
「どこまでか…。アーシムの一件で確定事項になったが…ミューが自身の魔力の色を変えて別人になっている。本当は…ミシュエルリーナ=ティリス= レイナイト侯爵令嬢だろうと…思っていた。」
ヒュッと息を飲む。
ー私が…ミシュエルリーナだって…気付いてた!?いつから?ー
チクリと痛む胸を…今は無視をする。
「…いつから…」
『気付いていたんですか?』
と訊きたかったけど、声が震えて出なかったが、魔導師長は躊躇いながらも口を開いた。
最初は、葬儀の時に感じたミシュエルリーナへの"違和感"だったと。魔力無しの筈のレイナイト侯爵が魔力を纏っていた事にも気付いたらしい。
「確信めいた出来事は…ミュー、私がお前の横で寝てしまった時に、私に癒しの魔法を掛けなかったか?」
「あ…掛け…ました…」
魔導師長が疲れているように見えたから。少しの罪悪感もあったし。
「あの頃、毎日同じ嫌な夢をみていてね。あの時もその夢をみていた。その闇に囚われそうになった時に…レイナイト侯爵令嬢の瞳と同じ色の癒しの魔力に…救われた。淡いラベンダー色の…」
ーあの時、他に誰も居なかった。魔導師長も寝ているからと…本来の色で魔法を使った。癒しの魔法がきちんと魔導師長に届くようにと思ってー
「あの場所は限られた者しか入れない。でも、あそこに居たのは私とミューだけだった。そこから…"もし、魔力の色を変えれるとしたら?"と仮定をたてた。」
確かに…あの時位からだった。魔導師長との物理的距離が近くなったのは…。と言う事は…魔導師長は…
「それで?レイナイト侯爵は、どうして自分の娘を…この世から葬ったのだ?」
ドロリとした感情に飲み込まれそうになった時、魔導師長が私に問い掛けて来て、ハッとする。
「あー…何と言うか…前世の世界…"地球"と言うんですけどね。そこでは、殆どの国が自由に恋愛や結婚をする事ができたんです。家柄や身分に関係なくて…その…婚約や結婚をしてなくても、関係をもったりする事も普通だったりするんですよね。」
内容が内容なので、魔導師長の顔を見る事はできず、ひたすら自分の両手を見つめながら話す。
「それで…えっと…私も記憶が戻る前迄は、貴族の令嬢として、政略結婚をするって思っていたんですけどね…記憶が戻ってからは…それは無理かなって…。それで貴族ではなくて、平民の魔導師として生きていければ、良いかな?って思ったりしてたんですよね…まぁ…色々考えてたんですけど…」
実際は、父と義母と縁を切りたかったから魔導師になろうと思ったのだけど…。そこは省いて良いだろう。
魔導師長は、何も言わず私の話を横で静かに聞いてくれている。
「あの夜会の前日に、父…レイナイト侯爵と話しをする時間ができて、久し振りに会ったんです。そうしたら…あの…その…レイナイト侯爵は…前世の私、棚橋美幸の父だったんです。」
「………は?」
魔導師長が、変な声を発した。
「……」
魔導師長は何も言わない。
「本当に、全く覚えてなかったんです。」
「そう言えば、最初の頃、ミューはタクマ殿と聖女様に会う度に体調を崩していたな?」
「はい。私も最初は戸惑いました。2人に会う度に心臓が悲鳴を上げるような感覚に陥っていたので…。それで、倒れてギリュー様に担ぎ込まれた事、覚えてますか?」
「あぁ、覚えている。私は実際に目にはしていないが、ティアナは勿論、瑠璃宮殿付きの女官達が…憐れんでいたからなぁ…」
ーそうでした。俵担ぎだったからねー
「そうです。恥ずかしいけどそれです。その時に、前世の記憶が戻ったんです。それからは、2人に会っても体調を崩す事はなくなりました。なくなりましたけど…どうしても最後に見た場面が思い出されて…。勿論、2人は私が"棚橋美幸"だなんて気付いていないし…思ってもいない訳で…。」
逆に、気付いてたら恐いよね…
「距離を置きたいのに、逆にどんどん琢磨との接点が増えていくし…琢磨からは…好意を寄せられるようになって…挙げ句、雪に対しては嫌悪感を抱いてるとか言われて…。本当に、意味が分からなくなって…」
美幸が好きだったと言いながら、雪と関係をもったとか…
「あぁ…だからか…」
魔導師長が、小さく囁く。
「だからか…とは?」
何だろう?と思い、魔導師長を見つめる。
魔導師長は、顎に手をやり暫く逡巡した後
「ミューがタクマ殿を見る時の目が…辛そうだなと思っていた。」
「っ!?」
気付かれてた!?フードも被ってたのに…
「…魔導師長は…どこまで気付いてますか?」
魔導師長の目をしっかり見据えながら問う。
「どこまでか…。アーシムの一件で確定事項になったが…ミューが自身の魔力の色を変えて別人になっている。本当は…ミシュエルリーナ=ティリス= レイナイト侯爵令嬢だろうと…思っていた。」
ヒュッと息を飲む。
ー私が…ミシュエルリーナだって…気付いてた!?いつから?ー
チクリと痛む胸を…今は無視をする。
「…いつから…」
『気付いていたんですか?』
と訊きたかったけど、声が震えて出なかったが、魔導師長は躊躇いながらも口を開いた。
最初は、葬儀の時に感じたミシュエルリーナへの"違和感"だったと。魔力無しの筈のレイナイト侯爵が魔力を纏っていた事にも気付いたらしい。
「確信めいた出来事は…ミュー、私がお前の横で寝てしまった時に、私に癒しの魔法を掛けなかったか?」
「あ…掛け…ました…」
魔導師長が疲れているように見えたから。少しの罪悪感もあったし。
「あの頃、毎日同じ嫌な夢をみていてね。あの時もその夢をみていた。その闇に囚われそうになった時に…レイナイト侯爵令嬢の瞳と同じ色の癒しの魔力に…救われた。淡いラベンダー色の…」
ーあの時、他に誰も居なかった。魔導師長も寝ているからと…本来の色で魔法を使った。癒しの魔法がきちんと魔導師長に届くようにと思ってー
「あの場所は限られた者しか入れない。でも、あそこに居たのは私とミューだけだった。そこから…"もし、魔力の色を変えれるとしたら?"と仮定をたてた。」
確かに…あの時位からだった。魔導師長との物理的距離が近くなったのは…。と言う事は…魔導師長は…
「それで?レイナイト侯爵は、どうして自分の娘を…この世から葬ったのだ?」
ドロリとした感情に飲み込まれそうになった時、魔導師長が私に問い掛けて来て、ハッとする。
「あー…何と言うか…前世の世界…"地球"と言うんですけどね。そこでは、殆どの国が自由に恋愛や結婚をする事ができたんです。家柄や身分に関係なくて…その…婚約や結婚をしてなくても、関係をもったりする事も普通だったりするんですよね。」
内容が内容なので、魔導師長の顔を見る事はできず、ひたすら自分の両手を見つめながら話す。
「それで…えっと…私も記憶が戻る前迄は、貴族の令嬢として、政略結婚をするって思っていたんですけどね…記憶が戻ってからは…それは無理かなって…。それで貴族ではなくて、平民の魔導師として生きていければ、良いかな?って思ったりしてたんですよね…まぁ…色々考えてたんですけど…」
実際は、父と義母と縁を切りたかったから魔導師になろうと思ったのだけど…。そこは省いて良いだろう。
魔導師長は、何も言わず私の話を横で静かに聞いてくれている。
「あの夜会の前日に、父…レイナイト侯爵と話しをする時間ができて、久し振りに会ったんです。そうしたら…あの…その…レイナイト侯爵は…前世の私、棚橋美幸の父だったんです。」
「………は?」
魔導師長が、変な声を発した。
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