75 / 105
第三章ー浄化巡礼の旅ー
囲い込む
しおりを挟む
*ハルシオン視点*
「魔導師長様は、アルム王国でも屈指の魔導師でいらっしゃるのですよね?この国にまで噂は届いていますわ。なので、一度お会いしたいと思っておりましたの。」
ーアイツ、私を騙したなー
浄化巡礼5ヶ国目の国には、昔から繋がりがあり、年齢もさほど変わらない比較的仲の良い魔導師が居た。今日はその魔導師の邸の近くが宿泊先だったのだが、その仲の良い魔導師"アーシム"が、久し振りに飲まないか?と誘って来た為、「勿論、喜んで。」と、二つ返事でアーシムの邸に来たのだが…
目の前には、ギラギラに着飾ったご令嬢達が並んでいる。私が、こう言うのが嫌いなのを知っている筈なのに…。
次々に話し掛けて来るコバエ達を、食事をしながら適当に受け流す。愛想もクソも無いのに、コバエ達は嬉々として私に話し掛けて来る。
ー私の肩書しか知らないくせに。本当に呆れるー
私は早々に食事を終わらせ、その場で魔法陣を展開させる。
「ハルシオン、もう帰るのか!?」
アーシムが慌てて私の方にやって来る。
「あぁ。食事、ご馳走さま。ただし…もう次はないと思う。」
そう言って私は本来の宿泊先へと転移した。
時間的には、もう他の皆も食事が終わって、各々宛がわれた部屋に戻っているか、サロンでお茶をしているかだろうか。そう言えば、ここは夜の庭園が自慢だと言っていたなと思い出し、庭園へと足を向けた。
その庭園は然程大きくはないが、色んな花が咲いていた。そこに光魔法を飛ばして幻想的な景色が広がっていた。
「成る程。確かに…綺麗だ。」
ミューが好きそうだな…と自然とそう思った時
庭園の奥の方から微かに魔力を感じた。震えるような…少しピリピリするような魔力。危険はなさそうだが、気になりそちらの方へ足を向けた。そこに居たのはー
「ミュー?」
ハッとした様に私の方へと顔を上げた。フードを被っているから、ミューがどんな表情をしているのか分からない。ただ、ミューの魔力が不安定なのが気になった。ミューを気にしつつ、タクマ殿と会話を続ける。
「コバエ」
ミューがそう囁いた後、笑った。笑っているのに辛そうで…。
ーミューに、何があった?ー
自身の胸がザワリと音を立てる。
すると、ミューがしなければいけない事を思い出したから部屋に戻ると言い、走って行ってしまった。
「ちっー」
ー逃がすか!ー
「えっ!?魔導師長様!?」
思わず舌打ちした私の後ろでタクマ殿が私を呼び止めたが、それを無視して魔法でミューの部屋まで転移した。
「…魔導…師長!?」
ミューが部屋の扉を閉める前に何とか間に合い、ミューが油断した隙に部屋に入り込み後ろ手に扉を閉めた。そして、一気に距離を縮めてミューのフードを目繰り上げた。
私が来た事に驚いたのか、フードを目繰り上げた事に驚いたのかは分からないが、驚いた様に目を見開いて私を見上げて来るその目は…
綺麗な青。晴れた日の空を連想させる様な青い瞳。その青が目に溜まった涙で揺れていた。大きく見開いていた目を、一度ゆっくり瞬く。すると、目に溜まっていた涙が流れる。それさえも綺麗に見えて、息を飲む。しかし、次の瞬間怒りの気持ちが沸いた。
「タクマ殿に…何かされたか?」
あの場に居たのはミューとタクマ殿だけだった。何があった?でも、ミューは何もされていないと言う。
「じゃあ、何故泣いている?何があった?」
それでもミューは、何も言わない。何故何も言ってくれない?
「俺には言えない?」
思わず素の俺が出た。
しかもミューは、俺がミューに触れたままの事よりも、『俺』発言の方が気になるらしい。
ー俺は、男として見られていないのだろうか?ー
少し落ち着いたのか、離してくれと言う。そんな目で訴えられても…誘われてるようにしか見えないのは…俺の欲目からだろう。自分ばかりが振り回されてるような気がして、自分勝手な考えだが、ミューに意趣返しをする。
「何故泣いていたか話してくれたら、この手を離してあげる。」
と言いながら抱き寄せた。
ローブで隠れていて普段では分からないが、ほっそりした腰。髪がフワリと靡けば甘い香りがして、クラリとする。
ミューの反応が面白かったのと、これ以上は自分の方がヤバくなると思い、そっとミューから離れた。
ウォルテライト女神様がまた顕れ、魔物がこちら側に入り込んでいるかもしれない事と、タクマ殿達を還す時の事を話しに、ミューが私の部屋にやって来た。
理由は分かっている。女神様に関係する事だ。急いで報告と相談と思ったんだろう。それでもーと思う。結構遅い時間に…俺の部屋で二人きり。
ーやっぱり、俺の事、男として意識してないよな?俺は、"魔導師長"でしかないのか?ー
タクマ殿を見る目を思い出す。切なそうな目だった。まるで…恋をしていたような…
話は終わった!とばかりに挨拶をしてあっさりと部屋から出て行こうとするミュー。その後ろ姿が何とも腹立たしくなって…。
俺の腕の中に囲い込んだー。
「魔導師長様は、アルム王国でも屈指の魔導師でいらっしゃるのですよね?この国にまで噂は届いていますわ。なので、一度お会いしたいと思っておりましたの。」
ーアイツ、私を騙したなー
浄化巡礼5ヶ国目の国には、昔から繋がりがあり、年齢もさほど変わらない比較的仲の良い魔導師が居た。今日はその魔導師の邸の近くが宿泊先だったのだが、その仲の良い魔導師"アーシム"が、久し振りに飲まないか?と誘って来た為、「勿論、喜んで。」と、二つ返事でアーシムの邸に来たのだが…
目の前には、ギラギラに着飾ったご令嬢達が並んでいる。私が、こう言うのが嫌いなのを知っている筈なのに…。
次々に話し掛けて来るコバエ達を、食事をしながら適当に受け流す。愛想もクソも無いのに、コバエ達は嬉々として私に話し掛けて来る。
ー私の肩書しか知らないくせに。本当に呆れるー
私は早々に食事を終わらせ、その場で魔法陣を展開させる。
「ハルシオン、もう帰るのか!?」
アーシムが慌てて私の方にやって来る。
「あぁ。食事、ご馳走さま。ただし…もう次はないと思う。」
そう言って私は本来の宿泊先へと転移した。
時間的には、もう他の皆も食事が終わって、各々宛がわれた部屋に戻っているか、サロンでお茶をしているかだろうか。そう言えば、ここは夜の庭園が自慢だと言っていたなと思い出し、庭園へと足を向けた。
その庭園は然程大きくはないが、色んな花が咲いていた。そこに光魔法を飛ばして幻想的な景色が広がっていた。
「成る程。確かに…綺麗だ。」
ミューが好きそうだな…と自然とそう思った時
庭園の奥の方から微かに魔力を感じた。震えるような…少しピリピリするような魔力。危険はなさそうだが、気になりそちらの方へ足を向けた。そこに居たのはー
「ミュー?」
ハッとした様に私の方へと顔を上げた。フードを被っているから、ミューがどんな表情をしているのか分からない。ただ、ミューの魔力が不安定なのが気になった。ミューを気にしつつ、タクマ殿と会話を続ける。
「コバエ」
ミューがそう囁いた後、笑った。笑っているのに辛そうで…。
ーミューに、何があった?ー
自身の胸がザワリと音を立てる。
すると、ミューがしなければいけない事を思い出したから部屋に戻ると言い、走って行ってしまった。
「ちっー」
ー逃がすか!ー
「えっ!?魔導師長様!?」
思わず舌打ちした私の後ろでタクマ殿が私を呼び止めたが、それを無視して魔法でミューの部屋まで転移した。
「…魔導…師長!?」
ミューが部屋の扉を閉める前に何とか間に合い、ミューが油断した隙に部屋に入り込み後ろ手に扉を閉めた。そして、一気に距離を縮めてミューのフードを目繰り上げた。
私が来た事に驚いたのか、フードを目繰り上げた事に驚いたのかは分からないが、驚いた様に目を見開いて私を見上げて来るその目は…
綺麗な青。晴れた日の空を連想させる様な青い瞳。その青が目に溜まった涙で揺れていた。大きく見開いていた目を、一度ゆっくり瞬く。すると、目に溜まっていた涙が流れる。それさえも綺麗に見えて、息を飲む。しかし、次の瞬間怒りの気持ちが沸いた。
「タクマ殿に…何かされたか?」
あの場に居たのはミューとタクマ殿だけだった。何があった?でも、ミューは何もされていないと言う。
「じゃあ、何故泣いている?何があった?」
それでもミューは、何も言わない。何故何も言ってくれない?
「俺には言えない?」
思わず素の俺が出た。
しかもミューは、俺がミューに触れたままの事よりも、『俺』発言の方が気になるらしい。
ー俺は、男として見られていないのだろうか?ー
少し落ち着いたのか、離してくれと言う。そんな目で訴えられても…誘われてるようにしか見えないのは…俺の欲目からだろう。自分ばかりが振り回されてるような気がして、自分勝手な考えだが、ミューに意趣返しをする。
「何故泣いていたか話してくれたら、この手を離してあげる。」
と言いながら抱き寄せた。
ローブで隠れていて普段では分からないが、ほっそりした腰。髪がフワリと靡けば甘い香りがして、クラリとする。
ミューの反応が面白かったのと、これ以上は自分の方がヤバくなると思い、そっとミューから離れた。
ウォルテライト女神様がまた顕れ、魔物がこちら側に入り込んでいるかもしれない事と、タクマ殿達を還す時の事を話しに、ミューが私の部屋にやって来た。
理由は分かっている。女神様に関係する事だ。急いで報告と相談と思ったんだろう。それでもーと思う。結構遅い時間に…俺の部屋で二人きり。
ーやっぱり、俺の事、男として意識してないよな?俺は、"魔導師長"でしかないのか?ー
タクマ殿を見る目を思い出す。切なそうな目だった。まるで…恋をしていたような…
話は終わった!とばかりに挨拶をしてあっさりと部屋から出て行こうとするミュー。その後ろ姿が何とも腹立たしくなって…。
俺の腕の中に囲い込んだー。
42
お気に入りに追加
316
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる
佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます
「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」
なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。
彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。
私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。
それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。
そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。
ただ。
婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。
切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。
彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。
「どうか、私と結婚してください」
「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」
私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。
彼のことはよく知っている。
彼もまた、私のことをよく知っている。
でも彼は『それ』が私だとは知らない。
まったくの別人に見えているはずなのだから。
なのに、何故私にプロポーズを?
しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。
どういうこと?
============
番外編は思いついたら追加していく予定です。
<レジーナ公式サイト番外編>
「番外編 相変わらずな日常」
レジーナ公式サイトにてアンケートに答えていただくと、書き下ろしweb番外編をお読みいただけます。
いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。
※転載・複写はお断りいたします。
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
愛されないはずの契約花嫁は、なぜか今宵も溺愛されています!
香取鞠里
恋愛
マリアは子爵家の長女。
ある日、父親から
「すまないが、二人のどちらかにウインド公爵家に嫁いでもらう必要がある」
と告げられる。
伯爵家でありながら家は貧しく、父親が事業に失敗してしまった。
その借金返済をウインド公爵家に伯爵家の借金返済を肩代わりしてもらったことから、
伯爵家の姉妹のうちどちらかを公爵家の一人息子、ライアンの嫁にほしいと要求されたのだそうだ。
親に溺愛されるワガママな妹、デイジーが心底嫌がったことから、姉のマリアは必然的に自分が嫁ぐことに決まってしまう。
ライアンは、冷酷と噂されている。
さらには、借金返済の肩代わりをしてもらったことから決まった契約結婚だ。
決して愛されることはないと思っていたのに、なぜか溺愛されて──!?
そして、ライアンのマリアへの待遇が羨ましくなった妹のデイジーがライアンに突如アプローチをはじめて──!?
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
巻き込まれた異世界の聖女
みん
恋愛
【初恋の還る路】に出て来るミューの前世ー美幸ーの母のお話ですが、2話目は第三者視点で物語が進みます。
本編を読んでいなくても、この短編だけでも読めるようにはしています。
結婚して子供も生まれ、幸せいっぱいの棚橋美南。
ある日、家族3人で公園に遊びに来ていたら、美南だけがある女子高生の異世界召喚に巻き込まれてしまう。
何故美南が巻き込まれてしまったか、巻き込まれた後どうなったのか─。
タグにある通り悲恋です。美南的には、少し?だけ幸せが訪れます。
相変わらずの、ゆるふわ設定なので、優しい目で読んでもらえると幸いです。
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる