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第三章ー浄化巡礼の旅ー
ホタル
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浄化巡礼の旅は、聖女様が召還された国から始まり、"歪み"を中心にし時計回りに大陸を巡礼して行く。大陸の浄化を終えると、最後に"歪み"を修正して浄化巡礼の旅は終わりとなる。
どの国も、定期的に悪しき魔素が増えていないか魔獣などが増えていないかなど、"歪み"に影響を及ぼす物がないかの確認をしており、問題があればその都度対処するようにしている。そのお陰もあり、ここ200年は何事もなく過ごせた。
そして、今回200年ぶりの神託。大陸にある全ての国が、自国の国中端から端まで隈無く悪しき魔素などの確認に力を入れた。
昔の巡礼では魔素の確認をしながら行っていたこともあり、2~3年は掛かっていた。だが、今は浄化すべき場所が判っている為、場所によっては転移魔法で移動する。なので、今では1年程で終える事ができるようになっている。
聖女様が召還された国から聖女様付きの魔導師や護衛が何人か付くが、他国を巡礼する時は、その国の魔導師や魔法使いや護衛が更に付き、主に自国の者が動き、聖女様付きの者はサポート役に回る。故に、聖女である雪は大変だろうけど、私達魔導師や護衛である第二騎士団長や琢磨などは、他国に入ると…一気に暇になる。
「聖女様、このフルーツはいかがですか?我が国自慢のー」
「ユキ様、こちらの飲み物はー」
「聖女様、この邸の庭園にはー」
アルム王国内の浄化が終わり、アルム王国を出国。それから時計回りに隣国から隣国へと巡礼し、今は10ヶ国あるうちの丁度半数である五つ目の国の巡礼中である。特に問題もなく予定通りに進んでいる。野宿も今のところはなく、夜にはその国の貴族様の邸で歓待されている。そして、毎日違う貴族様の邸なのだが毎日同じ風景を目の当たりにしている。
歓待する側には、必ず見目麗しい令息が数人居て、これまた見目麗しい聖女様をもてなしている。
今は、今日1日の巡礼が終わり、この国の貴族様の邸でディナーをとっているところである。
ーこれ、乙女ゲームなのかしら?ー
見目麗しい令息達が、代わる代わる雪にアプローチしている。これが、毎日目の前で繰り広げられているのだ。最初の頃は、勿論私も『流石は雪…モテるよね。凄いなー。』何て感動?してたけど…これが毎日になると…お腹一杯です!ごめんなさい!と、意味が分からないが謝りそうになった…。
それに、第二王子をはじめ、聖女様付きの護衛や魔導師がイケメンだと噂になっているのか…巡礼が進むにつれて、ご令嬢も増えて来ている。
雪の隣には、いつも第二王子が付いている。その第二王子は、雪が他の令息にアプローチされていようが、何をされようがあの笑顔をして雪の隣に居るだけなのだ。勿論、第二王子にアプローチして来るご令嬢達にも、あの笑顔で流している。
ー第二王子は、一対何を考えてるんだろうか?雪を婚約者候補と考えているのかいないのか。それともー
「そんなにルドヴィル王子が気になる?」
「はい!?」
どうやら、考えごとに熱中し過ぎて第二王子を見つめ過ぎていたようで…私の横で食事をしていた第二騎士団長に声を掛けられた。
「気になると言うか…第二王子とユキ様の関係って…一体何なんだろう?って思いまして…。」
「ん?ミュー嬢の辛い思いした相手って…まさか…第二お…「違いますから!それに、その話は第二騎士団長の思い違いですから!」…そうなの?」
ー腹は立つけど、やっぱりイケメンのキョトン顔は可愛い!くそうっっー
「まぁ、第二王子が何を考えているかは分からないけど、ユキ様はどこへ行っても人気がありますね。旅が終わってアルム王国に帰ったら、釣書だらけになるんじゃないかなぁ?」
『アルム王国に帰ったら』
「…そう…ですね…」
私は雪を見ながら、第二騎士団長に返事をした。
食事も終わり、雪はこの国の令息達からお話がしたい!とエスコートされながらサロンへ行ってしまった。第二王子とともに。
第二王子が何を思ってるかは分からないけど、聖女様の後見人役なのだ。側に居なければいけないって事もあるのかもね。勿論、その第二王子の護衛として第二騎士団長も一緒にサロンへ行っている。
まぁ、とにかく私は暇なのだ。この邸では、夜でも庭園が(光魔法で)ライトアップされていて自由に見てもらっても大丈夫だと言われたので、見に行ってみる事にした。
「わぁー。」
その庭園は、私の想像した物よりも、遥かに綺麗だった。そんなに広くはないが、色とりどりの花が咲いていた。その花の色々に合わせたように淡く光魔法が蛍のように飛んでいる。幻想的な風景だった。
ーホタルー
そう言えば、まだ美幸が小学生だった頃、お父さんと蛍を見に行った事があったなぁ。その時は庭園ではなく川だったけど。この世界には蛍なんていないけど…懐かしい…。手の平を上に向けて目の前にある光に手を伸ばす。ふわりふわりとその光が掌の上で浮かぶ。
「キレイ…」
「ミューさん?」
ふいに声を掛けられ肩が揺れ、その拍子に光もふわふわと向こうに飛んで行ってしまった。
「…タクマ様…」
振り返ると、淡い光に照らされた琢磨が立って居た。
ー琢磨との遭遇確率、高くないですか?ー
どの国も、定期的に悪しき魔素が増えていないか魔獣などが増えていないかなど、"歪み"に影響を及ぼす物がないかの確認をしており、問題があればその都度対処するようにしている。そのお陰もあり、ここ200年は何事もなく過ごせた。
そして、今回200年ぶりの神託。大陸にある全ての国が、自国の国中端から端まで隈無く悪しき魔素などの確認に力を入れた。
昔の巡礼では魔素の確認をしながら行っていたこともあり、2~3年は掛かっていた。だが、今は浄化すべき場所が判っている為、場所によっては転移魔法で移動する。なので、今では1年程で終える事ができるようになっている。
聖女様が召還された国から聖女様付きの魔導師や護衛が何人か付くが、他国を巡礼する時は、その国の魔導師や魔法使いや護衛が更に付き、主に自国の者が動き、聖女様付きの者はサポート役に回る。故に、聖女である雪は大変だろうけど、私達魔導師や護衛である第二騎士団長や琢磨などは、他国に入ると…一気に暇になる。
「聖女様、このフルーツはいかがですか?我が国自慢のー」
「ユキ様、こちらの飲み物はー」
「聖女様、この邸の庭園にはー」
アルム王国内の浄化が終わり、アルム王国を出国。それから時計回りに隣国から隣国へと巡礼し、今は10ヶ国あるうちの丁度半数である五つ目の国の巡礼中である。特に問題もなく予定通りに進んでいる。野宿も今のところはなく、夜にはその国の貴族様の邸で歓待されている。そして、毎日違う貴族様の邸なのだが毎日同じ風景を目の当たりにしている。
歓待する側には、必ず見目麗しい令息が数人居て、これまた見目麗しい聖女様をもてなしている。
今は、今日1日の巡礼が終わり、この国の貴族様の邸でディナーをとっているところである。
ーこれ、乙女ゲームなのかしら?ー
見目麗しい令息達が、代わる代わる雪にアプローチしている。これが、毎日目の前で繰り広げられているのだ。最初の頃は、勿論私も『流石は雪…モテるよね。凄いなー。』何て感動?してたけど…これが毎日になると…お腹一杯です!ごめんなさい!と、意味が分からないが謝りそうになった…。
それに、第二王子をはじめ、聖女様付きの護衛や魔導師がイケメンだと噂になっているのか…巡礼が進むにつれて、ご令嬢も増えて来ている。
雪の隣には、いつも第二王子が付いている。その第二王子は、雪が他の令息にアプローチされていようが、何をされようがあの笑顔をして雪の隣に居るだけなのだ。勿論、第二王子にアプローチして来るご令嬢達にも、あの笑顔で流している。
ー第二王子は、一対何を考えてるんだろうか?雪を婚約者候補と考えているのかいないのか。それともー
「そんなにルドヴィル王子が気になる?」
「はい!?」
どうやら、考えごとに熱中し過ぎて第二王子を見つめ過ぎていたようで…私の横で食事をしていた第二騎士団長に声を掛けられた。
「気になると言うか…第二王子とユキ様の関係って…一体何なんだろう?って思いまして…。」
「ん?ミュー嬢の辛い思いした相手って…まさか…第二お…「違いますから!それに、その話は第二騎士団長の思い違いですから!」…そうなの?」
ー腹は立つけど、やっぱりイケメンのキョトン顔は可愛い!くそうっっー
「まぁ、第二王子が何を考えているかは分からないけど、ユキ様はどこへ行っても人気がありますね。旅が終わってアルム王国に帰ったら、釣書だらけになるんじゃないかなぁ?」
『アルム王国に帰ったら』
「…そう…ですね…」
私は雪を見ながら、第二騎士団長に返事をした。
食事も終わり、雪はこの国の令息達からお話がしたい!とエスコートされながらサロンへ行ってしまった。第二王子とともに。
第二王子が何を思ってるかは分からないけど、聖女様の後見人役なのだ。側に居なければいけないって事もあるのかもね。勿論、その第二王子の護衛として第二騎士団長も一緒にサロンへ行っている。
まぁ、とにかく私は暇なのだ。この邸では、夜でも庭園が(光魔法で)ライトアップされていて自由に見てもらっても大丈夫だと言われたので、見に行ってみる事にした。
「わぁー。」
その庭園は、私の想像した物よりも、遥かに綺麗だった。そんなに広くはないが、色とりどりの花が咲いていた。その花の色々に合わせたように淡く光魔法が蛍のように飛んでいる。幻想的な風景だった。
ーホタルー
そう言えば、まだ美幸が小学生だった頃、お父さんと蛍を見に行った事があったなぁ。その時は庭園ではなく川だったけど。この世界には蛍なんていないけど…懐かしい…。手の平を上に向けて目の前にある光に手を伸ばす。ふわりふわりとその光が掌の上で浮かぶ。
「キレイ…」
「ミューさん?」
ふいに声を掛けられ肩が揺れ、その拍子に光もふわふわと向こうに飛んで行ってしまった。
「…タクマ様…」
振り返ると、淡い光に照らされた琢磨が立って居た。
ー琢磨との遭遇確率、高くないですか?ー
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