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第二章
治療
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琢磨には、取り敢えず前回の続きとして、攻撃魔法を的に当てる練習をしてもらう。
「それで、第二騎士団長様は、私から何を学びたいのでしょうか?伯爵家のご子息であり団長迄登り詰めた方ですから、魔法の指導もしっかり受けられている筈ですよね?」
首を傾げながら第二騎士団長に尋ねる。
「私が伯爵家の者だと知っていたのか?先程は、まるで私の事を知らない様子だったが…」
「はい、失礼ながら、知りませんでした。家名から伯爵と分かっただけです。私も王妃様の護衛を勤める事があるので、何人かの近衛騎士の方と面識はあるのですが…第二騎士団長様とはお会いした事はありませんでしたし…」
「ははっ…ここまで私に全く興味が無い令嬢を初めて見ましたよ。」
爽やかな笑顔て言ってるけど…この人、ナルシストなの?確かに…サラサラな金髪に、綺麗な透き通るような青い瞳。年齢は魔導師長と同じ位だろうか?本当に、貴族の顔面偏差値、高くない?
「えっと、自慢は結構です。本当に、あれが今日の用であったなら、帰って頂いて結構ですので。」
失礼しますーと言って立ち去ろうとすると
「指導と言うより…魔力について訊きたい事がある。」
魔力について?不思議に思い第二騎士団長に改めて向き合う。
「確かにミュー嬢の言う通り、魔法に関しては特に問題無いんだが…最近、魔力がうまく使えなくてね…。」
「うまく使えない?」
改めて第二騎士団長を見る。どうやら、嘘はついていないようだ。ならば…と、普段は封印している魔力持ちその人の魔力の色を視る力を解放させる。魔力の色は人それぞれ。色が視れて便利な事もあるが、無制限に視続けていると自分にも影響が出たりもする。自分とは合わない色もあるのだ。自分と合わない魔力と魔力の色だと、それを見続けるだけでも負担が掛かる。その為、魔力の色が視える者は、できるだけ早い段階で魔力の色を視えなくする魔法を覚えて、その魔法を自身の瞳に掛けるのだ。
そして、魔力の色と言うと、魔力持ちその人の瞳とほぼ同じ色をしている。第二騎士団長の瞳は透き通るような青色。体に纏う魔力の色も綺麗な青色だ。その人に問題が無ければ、体全体を均等に魔力が纏っているのだけど…この第二騎士団長は、右腕に色の淀みができている。そうー魔力の流れが上手くいかず、そこで魔力が詰まっている状態なのだ。
「最近、右腕を怪我したりしませんでしたか?」
「え?右腕?あぁ…先月、視察の下調べで王都の外れの森に行った時、魔獣に出くわしてね。油断して…少し引っ掛かれてしまったんだ。」
「王都に魔獣ですか?珍しいですね。」
辺境になると"歪み"に近くなる為、多少の魔獣は出現するが、王都に近付くにつれてリーデンブルク女神の加護が強くなる為か、殆ど魔獣が出現する事はない。聖女が召還されたのだ。それ程"歪み"の影響が出始めていると言う事だろう。
「聖女様召還に…王都での魔獣出現…。気を引き締めないといけませんね。油断した自分が恥ずかしい限りです…。」
日本でもそうだったー"平和慣れ"ーだ。
ナルシストで、少しチャラい感じの第二騎士団長だか、本当に恥じているのだろう。顔は、悔しそうに歪んでいる。
「…自分の中で…ちょっと腹立つんですけどね?」
「え?」
ー何が?ー
と、第二騎士団長が言葉を続けようとするのを無視をして、私が話し続ける
「第二騎士団長様の、その後悔の気持ちは本物だと思うので、今回だけ特別にして差し上げますよ。今から第二騎士団長様に触れる事…不躾ですが許して下さいね。」
「は?」
第二騎士団長の許可が出る前に、騎士団長の右腕に私の手を添える。
魔力の流れの詰まりや淀みの治療は、一般的にはその部位の怪我などを治し、治ってから魔力の流れを自身で、若しくは魔力が合う他者の魔力持ちが自分の魔力を相手に流し、コントロールしながら調節して行くと言う流れだ。誰かに流してもらう方が早く治るのだが、魔力が合う相手を探すのが大変なので、大抵の場合が自力で数日掛けて治す。
私の場合は…秘密事項だが、魔力の色を変えれるので、自分の色を第二騎士団長と同じ青色に変化させる。本当は、相手の瞳を見て変化させた方がより正確に変えれるのだが…第二騎士団長と見詰め合うのはご遠慮したいので、絶対にしない。なんとなくで良いだろう。
「本当に、私の魔力と相性が良い方で良かったですね?」
そう良いながら、第二騎士団長に私の魔力を流し込む。
「!?」
第二騎士団長は驚き目を見張ったが、そのまま嫌がる事もなくじっとしていてくれた。
「あぁ…右腕が軽くなった感じだ。」
そう言いながら、いくつかの魔法を展開させる。
「うん。魔力も問題なく使える。」
「それなら良かったです。ただ、私の魔力は第二騎士団長様より大きいので、ひょっとしたら、後日、反動で熱が出たり疲れが出るかもしれません。その時は無理せずゆっくり休んで下さい。可能であれば、今日はゆっくりされた方が良いです。この事は私からも国王陛下と第二王子様に報告しておきます。」
「分かった。」
「それでは、私はタクマ様の指導に戻りますので、第二騎士団長様はそのまま今日はお休み下さい。」
「ミュー嬢、本当にありがとう。それと…本当に申し訳無かった。これこらは…仲良くしてくれると嬉しいが…」
「…感謝と謝罪は受け入れますよ?」
第二騎士団長はまた、キョトンとして…
「ははっ。本当に、手厳しいな…。それは…残念ですね。」
と困ったような…だけど、楽しそうに笑って訓練場から去って行った。
*登場人物に、第一、第二団長を追記しました*
「それで、第二騎士団長様は、私から何を学びたいのでしょうか?伯爵家のご子息であり団長迄登り詰めた方ですから、魔法の指導もしっかり受けられている筈ですよね?」
首を傾げながら第二騎士団長に尋ねる。
「私が伯爵家の者だと知っていたのか?先程は、まるで私の事を知らない様子だったが…」
「はい、失礼ながら、知りませんでした。家名から伯爵と分かっただけです。私も王妃様の護衛を勤める事があるので、何人かの近衛騎士の方と面識はあるのですが…第二騎士団長様とはお会いした事はありませんでしたし…」
「ははっ…ここまで私に全く興味が無い令嬢を初めて見ましたよ。」
爽やかな笑顔て言ってるけど…この人、ナルシストなの?確かに…サラサラな金髪に、綺麗な透き通るような青い瞳。年齢は魔導師長と同じ位だろうか?本当に、貴族の顔面偏差値、高くない?
「えっと、自慢は結構です。本当に、あれが今日の用であったなら、帰って頂いて結構ですので。」
失礼しますーと言って立ち去ろうとすると
「指導と言うより…魔力について訊きたい事がある。」
魔力について?不思議に思い第二騎士団長に改めて向き合う。
「確かにミュー嬢の言う通り、魔法に関しては特に問題無いんだが…最近、魔力がうまく使えなくてね…。」
「うまく使えない?」
改めて第二騎士団長を見る。どうやら、嘘はついていないようだ。ならば…と、普段は封印している魔力持ちその人の魔力の色を視る力を解放させる。魔力の色は人それぞれ。色が視れて便利な事もあるが、無制限に視続けていると自分にも影響が出たりもする。自分とは合わない色もあるのだ。自分と合わない魔力と魔力の色だと、それを見続けるだけでも負担が掛かる。その為、魔力の色が視える者は、できるだけ早い段階で魔力の色を視えなくする魔法を覚えて、その魔法を自身の瞳に掛けるのだ。
そして、魔力の色と言うと、魔力持ちその人の瞳とほぼ同じ色をしている。第二騎士団長の瞳は透き通るような青色。体に纏う魔力の色も綺麗な青色だ。その人に問題が無ければ、体全体を均等に魔力が纏っているのだけど…この第二騎士団長は、右腕に色の淀みができている。そうー魔力の流れが上手くいかず、そこで魔力が詰まっている状態なのだ。
「最近、右腕を怪我したりしませんでしたか?」
「え?右腕?あぁ…先月、視察の下調べで王都の外れの森に行った時、魔獣に出くわしてね。油断して…少し引っ掛かれてしまったんだ。」
「王都に魔獣ですか?珍しいですね。」
辺境になると"歪み"に近くなる為、多少の魔獣は出現するが、王都に近付くにつれてリーデンブルク女神の加護が強くなる為か、殆ど魔獣が出現する事はない。聖女が召還されたのだ。それ程"歪み"の影響が出始めていると言う事だろう。
「聖女様召還に…王都での魔獣出現…。気を引き締めないといけませんね。油断した自分が恥ずかしい限りです…。」
日本でもそうだったー"平和慣れ"ーだ。
ナルシストで、少しチャラい感じの第二騎士団長だか、本当に恥じているのだろう。顔は、悔しそうに歪んでいる。
「…自分の中で…ちょっと腹立つんですけどね?」
「え?」
ー何が?ー
と、第二騎士団長が言葉を続けようとするのを無視をして、私が話し続ける
「第二騎士団長様の、その後悔の気持ちは本物だと思うので、今回だけ特別にして差し上げますよ。今から第二騎士団長様に触れる事…不躾ですが許して下さいね。」
「は?」
第二騎士団長の許可が出る前に、騎士団長の右腕に私の手を添える。
魔力の流れの詰まりや淀みの治療は、一般的にはその部位の怪我などを治し、治ってから魔力の流れを自身で、若しくは魔力が合う他者の魔力持ちが自分の魔力を相手に流し、コントロールしながら調節して行くと言う流れだ。誰かに流してもらう方が早く治るのだが、魔力が合う相手を探すのが大変なので、大抵の場合が自力で数日掛けて治す。
私の場合は…秘密事項だが、魔力の色を変えれるので、自分の色を第二騎士団長と同じ青色に変化させる。本当は、相手の瞳を見て変化させた方がより正確に変えれるのだが…第二騎士団長と見詰め合うのはご遠慮したいので、絶対にしない。なんとなくで良いだろう。
「本当に、私の魔力と相性が良い方で良かったですね?」
そう良いながら、第二騎士団長に私の魔力を流し込む。
「!?」
第二騎士団長は驚き目を見張ったが、そのまま嫌がる事もなくじっとしていてくれた。
「あぁ…右腕が軽くなった感じだ。」
そう言いながら、いくつかの魔法を展開させる。
「うん。魔力も問題なく使える。」
「それなら良かったです。ただ、私の魔力は第二騎士団長様より大きいので、ひょっとしたら、後日、反動で熱が出たり疲れが出るかもしれません。その時は無理せずゆっくり休んで下さい。可能であれば、今日はゆっくりされた方が良いです。この事は私からも国王陛下と第二王子様に報告しておきます。」
「分かった。」
「それでは、私はタクマ様の指導に戻りますので、第二騎士団長様はそのまま今日はお休み下さい。」
「ミュー嬢、本当にありがとう。それと…本当に申し訳無かった。これこらは…仲良くしてくれると嬉しいが…」
「…感謝と謝罪は受け入れますよ?」
第二騎士団長はまた、キョトンとして…
「ははっ。本当に、手厳しいな…。それは…残念ですね。」
と困ったような…だけど、楽しそうに笑って訓練場から去って行った。
*登場人物に、第一、第二団長を追記しました*
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