23 / 105
第一章
婚約成立
しおりを挟む
別邸から本邸迄、初めて馬車で移動しました。
「馬車だと、あっという間に着くのね…」
歩くのは全然苦にはならないけど、今は慣れないヒールのある靴を履いているので、お迎えの馬車は有り難かった。
「旦那様と奥様とエルライン様。それに、カーンハイル公爵様と嫡男ルティウス様が、応接室でお待ちでございます。」
本邸に到着すれば、迎えに出ていたゼスにそう言われ、私が最後だったと知る。
最後って…引きこもりに加えこれって…公爵様に対して印象悪くなるだけだよねー…つい遠い目をしてしまう。でも…これもお父様の計算のうちかしら?そう思うと、ざわつく気持ちが少し落ち着いた。目を瞑り深呼吸をする。そして目を開け前を見据える。
私はーミシュエルリーナ=ティリス=レイナイト侯爵令嬢ー華麗に演じてみせるわ!
「旦那様、ミシュエルリーナ様をお連れ致しました。」
「入りなさい」
父の入室許可の言葉で、私は応接室に入り込む。
「ー遅かったな。」
「申し訳ございません。不慣れなもので、少々支度に手間取ってしまいました。」
カーテシーをしながら謝罪する。
「時間もあまり無いことだ。顔を上げなさい。そこの椅子に座るように。」
顔を上げ、部屋の中を見るー。
父が所謂誕生日席に座り、父に向かって左側の椅子に義母とエルラインが座り、その向かい側の椅子にカーンハイル公爵様とルティウス様が座って居た。私は父の反対側の1人掛けの椅子に座った。
今の父は、私のよく知っている父の顔をしている。ミシュエルリーナに全く興味の無いような、冷めた表情だ。
「では…改めて。カーンハイル公爵家嫡男ルティウスとの婚約を…エルライン嬢と結ぶ事にする。」
「えっ!?」
カーンハイル公爵様の言葉に、エルラインが驚きの声をあげた。
「…私?何故…?」
エルラインの顔は真っ青だ。その横で、義母であるキャスリーン様はしたり顔で微笑み、父は無表情だ。
カーンハイル公爵様が、少し目尻を下げ私の方を見ながら
「ミシュエルリーナ嬢は…驚かないのかい?」
「驚く…とは、どういう意味でしょうか?」
持っていた扇子で口元を隠し、首を少し傾げて公爵様に問う。
「いや…普通であれば、婚約の話が出れば、先ず上の者からとなるだろう?それを、理由無く妹にとなったのだ。どうしてか…気にならないのかい?」
公爵様は、少し目を見開いた後、また優しい眼差しで訊いてきた。
「普通ならば…ですわよね?ふふっ。私も馬鹿ではございませんから。ルティウス様の婚約者ともなれば、将来は公爵夫人に成り得る者ですわね?引きこもりの私などでは、とてもではありませんが…努められませんわ。それに引き換え、エルラインはデビュー前にも関わらず社交にも聡く、頭の回転も早いようでから。淑女としてのマナーも完璧と聞いています。カーンハイル公爵家嫡男の婚約者として、私などよりエルラインの方が相応しいと思いますわ。なので、驚く事はございませんわ。」
と、にっこり微笑みカーンハイル公爵様を見詰めると、カーンハイル公爵様は、眩しいものを見るように、目を細めた。
「成る程…」
公爵様は誰に聞かせるわけでもなく、小さな声で囁いた。
「ーでは、ルティウス殿とエルラインとの婚約を結ぶと…それで宜しいか?」
と、レイナイト侯爵が確認すると
「はいー。」
と、公爵様とルティウス様が頷く。
エルラインをチラリと見遣ると…顔を真っ赤にして目を潤ませていたー
ーえ?何で?ー
今のとこで、泣く要素あった?え?まさかのルティウス様が嫌とか?公爵夫人が嫌とか?分からないが…こればっかりは仕方無い。父がこれで宜しいか?何て訊いてはいたが、公爵からの申し出なのだ。格下の侯爵から嫌だなんて言えるわけがないのだ。だから、エルラインには…頑張ってもらうしかない!後で少しだけフォローしよう…。
「それでは、エルライン嬢の今夜の夜会のエスコートは、私がする。宜しく、エルライン嬢。」
ルティウス様がにっこりエルラインに微笑み掛ける。
「はいー。宜しくお願いします。」
「ミシュエルリーナ。お前は、私がエスコートをする。また時間に遅れられても困るから、時間までは本邸に居なさい。部屋はカリーに案内させる。」
父と義母とカーンハイル公爵親子は、まだ手続きや話があると言う事で、私とエルラインは執務室を退室する事になり、退室前に父に声を掛けられた。
「分かりました。エスコート、宜しくお願い致します。それでは、失礼致します。」
別邸に戻るのも面倒臭いと思っていたので、遠慮無く本邸に居させてもらおうーそう思い、カリーに目をやると
「あ…あの…お義姉様!」
おぅっ!ビックリしたー!そっか、エルラインも居たんだった
「どうしたの?エルライン」
「あの…あの…」
?何だろう??
「あの…時間まで…一緒にお茶でも飲みませんか?」
顔を真っ赤にして両手を組んで、私を見上げてくる。
ーくっ…ティアナも可愛いけど…エルラインがするともっと可愛いわね!!そんな可愛い顔でお願いされたら、断れないじゃない!!ー
勿論、顔には出していません。素を保っています。淑女教育万歳です。
「ええ。勿論良いわよ。カリー、そのように準備をしてくれるかしら?」
「畏まりました。では、先ずお部屋にご案内させて頂きます。」
そう言って、案内された部屋は、かつて私が使っていた部屋だった。
「馬車だと、あっという間に着くのね…」
歩くのは全然苦にはならないけど、今は慣れないヒールのある靴を履いているので、お迎えの馬車は有り難かった。
「旦那様と奥様とエルライン様。それに、カーンハイル公爵様と嫡男ルティウス様が、応接室でお待ちでございます。」
本邸に到着すれば、迎えに出ていたゼスにそう言われ、私が最後だったと知る。
最後って…引きこもりに加えこれって…公爵様に対して印象悪くなるだけだよねー…つい遠い目をしてしまう。でも…これもお父様の計算のうちかしら?そう思うと、ざわつく気持ちが少し落ち着いた。目を瞑り深呼吸をする。そして目を開け前を見据える。
私はーミシュエルリーナ=ティリス=レイナイト侯爵令嬢ー華麗に演じてみせるわ!
「旦那様、ミシュエルリーナ様をお連れ致しました。」
「入りなさい」
父の入室許可の言葉で、私は応接室に入り込む。
「ー遅かったな。」
「申し訳ございません。不慣れなもので、少々支度に手間取ってしまいました。」
カーテシーをしながら謝罪する。
「時間もあまり無いことだ。顔を上げなさい。そこの椅子に座るように。」
顔を上げ、部屋の中を見るー。
父が所謂誕生日席に座り、父に向かって左側の椅子に義母とエルラインが座り、その向かい側の椅子にカーンハイル公爵様とルティウス様が座って居た。私は父の反対側の1人掛けの椅子に座った。
今の父は、私のよく知っている父の顔をしている。ミシュエルリーナに全く興味の無いような、冷めた表情だ。
「では…改めて。カーンハイル公爵家嫡男ルティウスとの婚約を…エルライン嬢と結ぶ事にする。」
「えっ!?」
カーンハイル公爵様の言葉に、エルラインが驚きの声をあげた。
「…私?何故…?」
エルラインの顔は真っ青だ。その横で、義母であるキャスリーン様はしたり顔で微笑み、父は無表情だ。
カーンハイル公爵様が、少し目尻を下げ私の方を見ながら
「ミシュエルリーナ嬢は…驚かないのかい?」
「驚く…とは、どういう意味でしょうか?」
持っていた扇子で口元を隠し、首を少し傾げて公爵様に問う。
「いや…普通であれば、婚約の話が出れば、先ず上の者からとなるだろう?それを、理由無く妹にとなったのだ。どうしてか…気にならないのかい?」
公爵様は、少し目を見開いた後、また優しい眼差しで訊いてきた。
「普通ならば…ですわよね?ふふっ。私も馬鹿ではございませんから。ルティウス様の婚約者ともなれば、将来は公爵夫人に成り得る者ですわね?引きこもりの私などでは、とてもではありませんが…努められませんわ。それに引き換え、エルラインはデビュー前にも関わらず社交にも聡く、頭の回転も早いようでから。淑女としてのマナーも完璧と聞いています。カーンハイル公爵家嫡男の婚約者として、私などよりエルラインの方が相応しいと思いますわ。なので、驚く事はございませんわ。」
と、にっこり微笑みカーンハイル公爵様を見詰めると、カーンハイル公爵様は、眩しいものを見るように、目を細めた。
「成る程…」
公爵様は誰に聞かせるわけでもなく、小さな声で囁いた。
「ーでは、ルティウス殿とエルラインとの婚約を結ぶと…それで宜しいか?」
と、レイナイト侯爵が確認すると
「はいー。」
と、公爵様とルティウス様が頷く。
エルラインをチラリと見遣ると…顔を真っ赤にして目を潤ませていたー
ーえ?何で?ー
今のとこで、泣く要素あった?え?まさかのルティウス様が嫌とか?公爵夫人が嫌とか?分からないが…こればっかりは仕方無い。父がこれで宜しいか?何て訊いてはいたが、公爵からの申し出なのだ。格下の侯爵から嫌だなんて言えるわけがないのだ。だから、エルラインには…頑張ってもらうしかない!後で少しだけフォローしよう…。
「それでは、エルライン嬢の今夜の夜会のエスコートは、私がする。宜しく、エルライン嬢。」
ルティウス様がにっこりエルラインに微笑み掛ける。
「はいー。宜しくお願いします。」
「ミシュエルリーナ。お前は、私がエスコートをする。また時間に遅れられても困るから、時間までは本邸に居なさい。部屋はカリーに案内させる。」
父と義母とカーンハイル公爵親子は、まだ手続きや話があると言う事で、私とエルラインは執務室を退室する事になり、退室前に父に声を掛けられた。
「分かりました。エスコート、宜しくお願い致します。それでは、失礼致します。」
別邸に戻るのも面倒臭いと思っていたので、遠慮無く本邸に居させてもらおうーそう思い、カリーに目をやると
「あ…あの…お義姉様!」
おぅっ!ビックリしたー!そっか、エルラインも居たんだった
「どうしたの?エルライン」
「あの…あの…」
?何だろう??
「あの…時間まで…一緒にお茶でも飲みませんか?」
顔を真っ赤にして両手を組んで、私を見上げてくる。
ーくっ…ティアナも可愛いけど…エルラインがするともっと可愛いわね!!そんな可愛い顔でお願いされたら、断れないじゃない!!ー
勿論、顔には出していません。素を保っています。淑女教育万歳です。
「ええ。勿論良いわよ。カリー、そのように準備をしてくれるかしら?」
「畏まりました。では、先ずお部屋にご案内させて頂きます。」
そう言って、案内された部屋は、かつて私が使っていた部屋だった。
33
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。
辞令:高飛車令嬢。妃候補の任を解き、宰相室勤務を命ずる
花雨宮琵
恋愛
“庶子・黒髪・魔力なし。3拍子揃った高飛車令嬢”――世間でそう呼ばれ蔑まれているデルフィーヌは、あらゆる魔力を無力化する魔力無効の持ち主である。
幼き日に出会った“海のアースアイ”を持つ少年が王太子・リシャールであることを知ったデルフィーヌは、彼に相応しい女性になるため厳しい妃教育に邁進するも、150年ぶりに誕生した聖女に彼のパートナーの座をあっさりと奪われる。
そんなある日、冤罪で投獄されたデルフィーヌは聖女付の侍女となり過労死する未来を透視する。
「こうしちゃいられない!」と妃候補を辞退する道を画策するデルフィーヌに、王命による辞令が言い渡される。
親世代の確執に、秘匿された出自の謎が解き明かされたとき、デルフィーヌが選ぶ未来とは――。
この小説は、不遇なヒロインが自分の置かれた環境で逞しく生き抜いていく姿を描いたハッピーエンドの物語です。
※異世界の物語のため、アース・アイの描写など現実世界とは異なる設定になっています。
※カクヨムにも掲載しています((C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。)
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
実在しないのかもしれない
真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・?
※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。
※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。
※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる