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光の魔力
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「アシェルハイド殿下!先程は…本当にすみませんでした。その…あの人達は、私を思って勘違いしていたみたいで…。」
“もう1人”とは、勿論─リンディ=ブルーム。エヴィ=ブルームの双子の妹。
ー似ても似つかない双子の妹だなー
少し俯き加減で目を潤ませ、儚げな雰囲気を醸し出すリンディ嬢。庇護欲を掻き立てるようなその仕草は、もう癖のようなものなんだろう。
リンディ嬢が光の魔力持ちと言う事は周知の事実だ。光の魔力持ちは清廉潔白と位置付ける者が多く、その為、無条件でリンディ嬢を信じる者が多い。特に、学校の同じクラスで、エヴィと接点を持たない者は、殆どが“光の魔力持ち信者”と言って言いだろう。
勿論、きちんと自分で精査して、リンディ嬢やその信者達と距離を取っている者も居る。
それらは全て、学校側は把握しているし、王城にも報告が上がっている。知らぬは──学生達だけだ。
それ以前に、リンディ嬢付きの影からも情報は上がっている為、“あぁ、やっぱりこうなったか”と、ある意味感心した位だった。
「さっきも言ったが、謝る相手が違うだろう?君が謝るべき相手は……双子の姉のエヴィ嬢だ。」
「……何故……私が?」
コテン─と、本当に、心底意味が分からないと言うかのように、小首を傾げるリンディ嬢。
「私が…光の魔力のせいで苦しんでいる間、エヴィは何不自由無く過ごしておいて、たった一度の発熱で魔力を失って…まるで悲劇のヒロイン気取りで………。同じ顔をしているのに、いつも暗い表情で……エヴィは…何もできないし、していない。私が王城で訓練をしている間、エヴィは寮でのんびりしてるだけ。久し振りに会ったと思ったら、無視されたんです。」
ー想像以上の……思考回路……だな………ー
何不自由無く──
たった一度の発熱──
悲劇のヒロイン気取り──
リンディ嬢には、エヴィがそう見えていると言う事か。それこそ……リンディ嬢こそ悲劇のヒロイン気取りではないだろうか?
「そう……か。リンディ嬢が何を言おうが、私は、私が見て、知っているエヴィ嬢を信じるだけだ。それよりも──リンディ嬢。君は……試練を乗り越えたのか?」
「──試練?」
目の前に居るリンディ嬢は、また目をパチクリとした後、キョトンとした顔になった。
「さっきも訊いたが、ちゃんと、光の魔力の事を理解しているのか?ちゃんと、話を聞いていたのか?」
「光の魔力については…本格的な訓練を始める前に、魔導士の団長様から…お話は聞きました。」
“それが何か?”と言うような顔をしているリンディ嬢。
これは、理解していない─と言う事だろう。
話は長くなるだろう─と思い、城付きの女官にお茶を用意させて、お互い机を挟んで椅子に座るように促した。
光の魔力は強過ぎる為、幼い頃は発熱を繰り返す。ただ、その発熱を耐える毎に、身体が少しずつ光の魔力に馴染んで行くのだ。まさに、それは“試練”のようなものだ。
その試練を乗り越えれば、その分光の魔力は更に強いモノになる。発熱を繰り返し、身体中が悲鳴をあげ、苦痛でたまらなかった日々ではあったが、この力を国の為、民のために使える日が来るのなら──と、あの苦痛な日々を耐えていたある日、声がした。
『お前は、それでも、この力を欲するか?』
俺は、朦朧とする意識の中でも「───はい」と答えたと思う。その後、直ぐに意識を失ってしまったようで、次に目を覚した時には、その声が本当に聞こえたモノだったのか幻聴だったのかさえも分からなかった。
ただ、その日を境に、俺の体調は日々良くなっていき、魔力も強くなりつつも、自分の身体に馴染んでいったのだ。
今にして思えば、あの時のあの声が、神による最後の審判?のようなモノだったんだろう。
同じ光の魔力を持つリンディ嬢なら、同じような体験をしていると思っていたが……
同じ光の魔力持ちなのに、リンディ嬢に対しては違和感しか無い。試練を乗り越えた割には、魔力が弱過ぎるのだ。いや、今でも少しずつ弱くなっていっているのだ。
王城の客室で過ごし始めた頃は、もう少し……強かった。おそらく、リンディ嬢にその自覚な無い。
『訓練には参加していますが、実は伴っていません。』
リンディ嬢の指導をしている魔導士も呆れている。
“自分は、稀なる光の魔力持ち”だから、いざとなれば直ぐに対処できるわ──
いつもそう言ってニッコリ微笑み、ほんの少しの時間、適当に訓練をして終わっているそうだ。
光の魔力は他の属性の魔力とは異なるモノ。持って生まれたからと言っても、その身体に見合わなくなれば────
失ってしまうのだ───
“もう1人”とは、勿論─リンディ=ブルーム。エヴィ=ブルームの双子の妹。
ー似ても似つかない双子の妹だなー
少し俯き加減で目を潤ませ、儚げな雰囲気を醸し出すリンディ嬢。庇護欲を掻き立てるようなその仕草は、もう癖のようなものなんだろう。
リンディ嬢が光の魔力持ちと言う事は周知の事実だ。光の魔力持ちは清廉潔白と位置付ける者が多く、その為、無条件でリンディ嬢を信じる者が多い。特に、学校の同じクラスで、エヴィと接点を持たない者は、殆どが“光の魔力持ち信者”と言って言いだろう。
勿論、きちんと自分で精査して、リンディ嬢やその信者達と距離を取っている者も居る。
それらは全て、学校側は把握しているし、王城にも報告が上がっている。知らぬは──学生達だけだ。
それ以前に、リンディ嬢付きの影からも情報は上がっている為、“あぁ、やっぱりこうなったか”と、ある意味感心した位だった。
「さっきも言ったが、謝る相手が違うだろう?君が謝るべき相手は……双子の姉のエヴィ嬢だ。」
「……何故……私が?」
コテン─と、本当に、心底意味が分からないと言うかのように、小首を傾げるリンディ嬢。
「私が…光の魔力のせいで苦しんでいる間、エヴィは何不自由無く過ごしておいて、たった一度の発熱で魔力を失って…まるで悲劇のヒロイン気取りで………。同じ顔をしているのに、いつも暗い表情で……エヴィは…何もできないし、していない。私が王城で訓練をしている間、エヴィは寮でのんびりしてるだけ。久し振りに会ったと思ったら、無視されたんです。」
ー想像以上の……思考回路……だな………ー
何不自由無く──
たった一度の発熱──
悲劇のヒロイン気取り──
リンディ嬢には、エヴィがそう見えていると言う事か。それこそ……リンディ嬢こそ悲劇のヒロイン気取りではないだろうか?
「そう……か。リンディ嬢が何を言おうが、私は、私が見て、知っているエヴィ嬢を信じるだけだ。それよりも──リンディ嬢。君は……試練を乗り越えたのか?」
「──試練?」
目の前に居るリンディ嬢は、また目をパチクリとした後、キョトンとした顔になった。
「さっきも訊いたが、ちゃんと、光の魔力の事を理解しているのか?ちゃんと、話を聞いていたのか?」
「光の魔力については…本格的な訓練を始める前に、魔導士の団長様から…お話は聞きました。」
“それが何か?”と言うような顔をしているリンディ嬢。
これは、理解していない─と言う事だろう。
話は長くなるだろう─と思い、城付きの女官にお茶を用意させて、お互い机を挟んで椅子に座るように促した。
光の魔力は強過ぎる為、幼い頃は発熱を繰り返す。ただ、その発熱を耐える毎に、身体が少しずつ光の魔力に馴染んで行くのだ。まさに、それは“試練”のようなものだ。
その試練を乗り越えれば、その分光の魔力は更に強いモノになる。発熱を繰り返し、身体中が悲鳴をあげ、苦痛でたまらなかった日々ではあったが、この力を国の為、民のために使える日が来るのなら──と、あの苦痛な日々を耐えていたある日、声がした。
『お前は、それでも、この力を欲するか?』
俺は、朦朧とする意識の中でも「───はい」と答えたと思う。その後、直ぐに意識を失ってしまったようで、次に目を覚した時には、その声が本当に聞こえたモノだったのか幻聴だったのかさえも分からなかった。
ただ、その日を境に、俺の体調は日々良くなっていき、魔力も強くなりつつも、自分の身体に馴染んでいったのだ。
今にして思えば、あの時のあの声が、神による最後の審判?のようなモノだったんだろう。
同じ光の魔力を持つリンディ嬢なら、同じような体験をしていると思っていたが……
同じ光の魔力持ちなのに、リンディ嬢に対しては違和感しか無い。試練を乗り越えた割には、魔力が弱過ぎるのだ。いや、今でも少しずつ弱くなっていっているのだ。
王城の客室で過ごし始めた頃は、もう少し……強かった。おそらく、リンディ嬢にその自覚な無い。
『訓練には参加していますが、実は伴っていません。』
リンディ嬢の指導をしている魔導士も呆れている。
“自分は、稀なる光の魔力持ち”だから、いざとなれば直ぐに対処できるわ──
いつもそう言ってニッコリ微笑み、ほんの少しの時間、適当に訓練をして終わっているそうだ。
光の魔力は他の属性の魔力とは異なるモノ。持って生まれたからと言っても、その身体に見合わなくなれば────
失ってしまうのだ───
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