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兄と姉と妹の思い
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「正直な話、ジゼルをフォレクシスの貴族と結婚させたくはないんだ。」
レナルドは独り言のように呟いた。
獣人族は実力主義だ。本来のジゼルを知れば、誰もがその実力を認めるだろう。だからと言って、噂のみを信じ、ジゼルを見下したり蔑んだ事実が無くなるわけではない。王族も王族で、表立ってジゼルを庇わなかったし、理由が理由なだけに、その者達を非難する事は勿論の事、罪に問う事もできない。
罪に問えたところで、ジゼルが負った心の傷が癒えるわけでもない。
「ジゼルが、フォレクシスの者と結婚したいと言うなら反対はしないが……ジゼルがヴィンスが良いと言うなら、私は喜んでお前にジゼルを任せるよ。何なら、竜国からフォレクシスには戻らず、レイノックスに連れて行って欲しいぐらいだが……それだと、父と母が……泣きながら怒り狂いそうだから、一度はフォレクシスには連れて帰るけどね。」
最後は少し戯けたように笑っているレナルドだが、事実、ジゼルの親であるフォレクシスの国王と王妃は、竜国に来る事ができず、レナルド達が竜国に来る前に2人を宥めるのが大変だったのだ。連れて帰らなければ暴れる─のも、全くの嘘ではない。
「ジゼルは、物心つく頃には既に自由がなかったし…家族からの愛情も得られず、他人との触れ合いや関わりも無かった。今なら、もっと違う形でジゼルを守れたのでは?と思うけど……それは今更なのよ。そんな私が言えた事じゃないのだけれど……ヴィンス、どうか……ジゼルを幸せにしてあげて欲しい。これから、ジゼルが笑顔で過ごせるように……ジゼルを守って欲しい。」
セレニアもまた、色々と後悔していた。
「はい。必ず…ジゼル様は私が幸せにします。」
「それでは、ジゼル様をフォレクシスへとお送りする準備を始めなければいけませんね。」
と、シモンはこれからの予定の話を始めた。
「…………」
「ジゼル…良かったね。」
「……うん。」
そんな4人の話を聞いてしまっていたのは、昼寝から起きて人の姿に戻っていたジゼルとシェールだった。
「ジゼルは、ヴィンス様が好き…なのね?」
「うん……」
「そっか………ジゼルは……また……レイノックスに行っちゃうのね?」
「……シェール……」
シェールはギュウッ─とジゼルに抱き付く。
「ジゼルは、どこに行っても、私の双子のお姉様だからね?私の事…忘れないでね?それで……ヴィンス様と、絶対幸せになってね!」
「うん……シェールは、何処に居ても私の双子の妹だし、忘れるなんて有り得ない。ヴィンス様とも……絶対幸せになるから、シェールも幸せになってね!」
お互いギュウギュウと暫くの間抱き合って、泣いて──泣いた事を誤魔化す為に、2人ともまた獣化して庭園をゆっくりと散歩してから部屋に戻った。
それから1週間後に、ジゼルとシェールがレイノックスに帰る事になり、その2人より3日前にレナルドとセレニアが一足先に帰国する事となった。
「それじゃあ、シェール、ヴィンス、ジゼルの事、頼んだぞ。」
「勿論よ!任せておいて!お兄様!」
「はい。安心してお任せ下さい。」
「レナルドお兄様、セレニアお姉様、会いに来てくれてありがとうございました。また…レイノックスで会えるのを楽しみにしてますね。」
「あぁ!私も楽しみにしているからな!気を付けて帰っておいで。」
「ジゼル、お父様もお母様も待っているからね。」
そうして挨拶が済むと、レナルドとセレニアは竜化した者の背に乗って、レイノックスへと帰って行った。
その日の夜──
フォレクシスの王太子と第一王女が帰国した事で、ようやく竜城が落ち着き、疲れていたのか、シェールも早い時間から寝てしまっていた。プリュイもまた、水槽の中で珊瑚の隙間で眠っている。
そんな中、ジゼルは1人、庭園のベンチに座って夜空を見上げていた。
「竜国でも月は一つなのね……」
「確か、フォレクシスでは、月が2つあるんでしたか?」
「─っ!ヴィンス様!?」
「隣に座っても良いですか?」と訊かれれば、断る理由なんてないわけで…「どうぞ」と少し端に避けて促せば、肩が触れ合う程の距離にヴィンス様が腰を下ろした。
「えっと……少し…近過ぎませんか?」
「そうですか?」
「えー……」
「男を手玉に取る悪女になるんじゃなかった?なら、これぐらいどうって事無いだろう?」
「それは──忘れて下さい!」
「そうか……」
くくっ─と笑うヴィンス様は…意地悪だと思う。
「だって……私には…その…ヴィンス様だけで…十分ですから。」
「──っ!?」
ビシッ──と固まるヴィンス様。
ーあれ?私、変な事言った?ー
「あの…ヴィンス様、どうか──」
「ジゼル───」
優しく名前を呼ばれて、そのまま抱き寄せられた。恥ずかしいよりも、この腕の中が安心するのは何故だろう?
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
°ʚ(*´꒳`*)ɞ°.
❋本日中に、もう1話投稿予定です❋
___φ(。_。*)カキカキ
レナルドは独り言のように呟いた。
獣人族は実力主義だ。本来のジゼルを知れば、誰もがその実力を認めるだろう。だからと言って、噂のみを信じ、ジゼルを見下したり蔑んだ事実が無くなるわけではない。王族も王族で、表立ってジゼルを庇わなかったし、理由が理由なだけに、その者達を非難する事は勿論の事、罪に問う事もできない。
罪に問えたところで、ジゼルが負った心の傷が癒えるわけでもない。
「ジゼルが、フォレクシスの者と結婚したいと言うなら反対はしないが……ジゼルがヴィンスが良いと言うなら、私は喜んでお前にジゼルを任せるよ。何なら、竜国からフォレクシスには戻らず、レイノックスに連れて行って欲しいぐらいだが……それだと、父と母が……泣きながら怒り狂いそうだから、一度はフォレクシスには連れて帰るけどね。」
最後は少し戯けたように笑っているレナルドだが、事実、ジゼルの親であるフォレクシスの国王と王妃は、竜国に来る事ができず、レナルド達が竜国に来る前に2人を宥めるのが大変だったのだ。連れて帰らなければ暴れる─のも、全くの嘘ではない。
「ジゼルは、物心つく頃には既に自由がなかったし…家族からの愛情も得られず、他人との触れ合いや関わりも無かった。今なら、もっと違う形でジゼルを守れたのでは?と思うけど……それは今更なのよ。そんな私が言えた事じゃないのだけれど……ヴィンス、どうか……ジゼルを幸せにしてあげて欲しい。これから、ジゼルが笑顔で過ごせるように……ジゼルを守って欲しい。」
セレニアもまた、色々と後悔していた。
「はい。必ず…ジゼル様は私が幸せにします。」
「それでは、ジゼル様をフォレクシスへとお送りする準備を始めなければいけませんね。」
と、シモンはこれからの予定の話を始めた。
「…………」
「ジゼル…良かったね。」
「……うん。」
そんな4人の話を聞いてしまっていたのは、昼寝から起きて人の姿に戻っていたジゼルとシェールだった。
「ジゼルは、ヴィンス様が好き…なのね?」
「うん……」
「そっか………ジゼルは……また……レイノックスに行っちゃうのね?」
「……シェール……」
シェールはギュウッ─とジゼルに抱き付く。
「ジゼルは、どこに行っても、私の双子のお姉様だからね?私の事…忘れないでね?それで……ヴィンス様と、絶対幸せになってね!」
「うん……シェールは、何処に居ても私の双子の妹だし、忘れるなんて有り得ない。ヴィンス様とも……絶対幸せになるから、シェールも幸せになってね!」
お互いギュウギュウと暫くの間抱き合って、泣いて──泣いた事を誤魔化す為に、2人ともまた獣化して庭園をゆっくりと散歩してから部屋に戻った。
それから1週間後に、ジゼルとシェールがレイノックスに帰る事になり、その2人より3日前にレナルドとセレニアが一足先に帰国する事となった。
「それじゃあ、シェール、ヴィンス、ジゼルの事、頼んだぞ。」
「勿論よ!任せておいて!お兄様!」
「はい。安心してお任せ下さい。」
「レナルドお兄様、セレニアお姉様、会いに来てくれてありがとうございました。また…レイノックスで会えるのを楽しみにしてますね。」
「あぁ!私も楽しみにしているからな!気を付けて帰っておいで。」
「ジゼル、お父様もお母様も待っているからね。」
そうして挨拶が済むと、レナルドとセレニアは竜化した者の背に乗って、レイノックスへと帰って行った。
その日の夜──
フォレクシスの王太子と第一王女が帰国した事で、ようやく竜城が落ち着き、疲れていたのか、シェールも早い時間から寝てしまっていた。プリュイもまた、水槽の中で珊瑚の隙間で眠っている。
そんな中、ジゼルは1人、庭園のベンチに座って夜空を見上げていた。
「竜国でも月は一つなのね……」
「確か、フォレクシスでは、月が2つあるんでしたか?」
「─っ!ヴィンス様!?」
「隣に座っても良いですか?」と訊かれれば、断る理由なんてないわけで…「どうぞ」と少し端に避けて促せば、肩が触れ合う程の距離にヴィンス様が腰を下ろした。
「えっと……少し…近過ぎませんか?」
「そうですか?」
「えー……」
「男を手玉に取る悪女になるんじゃなかった?なら、これぐらいどうって事無いだろう?」
「それは──忘れて下さい!」
「そうか……」
くくっ─と笑うヴィンス様は…意地悪だと思う。
「だって……私には…その…ヴィンス様だけで…十分ですから。」
「──っ!?」
ビシッ──と固まるヴィンス様。
ーあれ?私、変な事言った?ー
「あの…ヴィンス様、どうか──」
「ジゼル───」
優しく名前を呼ばれて、そのまま抱き寄せられた。恥ずかしいよりも、この腕の中が安心するのは何故だろう?
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
°ʚ(*´꒳`*)ɞ°.
❋本日中に、もう1話投稿予定です❋
___φ(。_。*)カキカキ
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