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竜国へ
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「ヴィンス!」
「サクソニア様!!」
「──くっ!!」
防御が遅れたヴィンスは、魔物からの攻撃を右肩に受けてしまい、その場に倒れ込む。
ー利き手をやられたー
そして、その魔物が透かさずもう一度攻撃の魔法を放とうとした時、天空にいた竜騎士の1人がその魔物目掛けて火玉を放ち、攻撃する前にその魔物を仕留める事ができた。
『ヴィンス!』
そして、そのタイミングでプリュイが現れ、ヴィンスが負った右肩の怪我に治癒力のある水を掛けた。
「ヴィンス!大丈夫か!?」
「…………」
ロルフが駆け寄り、ヴィンスに声を掛けるが意識が無いようで返事がない。プリュイが治癒の水を掛けても、その右肩からはまだ出血が止まらない。
「ロルフ様、急いで…止血します!」
そこで、リルが止血をしようと怪我をしている右肩部分の服を持っていた短剣で裂き、傷口を確認しようとした時、スッ──と、ダラダラと流れていた血が止まり、傷口も塞がった。
「「え?」」
これには、ロルフとリルは驚いたが、“プリュイの水のお陰”─と安心し、ロルフが気を失っているままのヴィンスをどこか安全な所に運ぼうと立ち上がると、『──ジゼル!』と、プリュイが小さい声で呟いた後、この場から消えて居なくなってしまった。
ー“ジゼル様”?ー
何故、プリュイがこの場で、その名を呟いたのか、勿論ロルフには分からない。それを疑問に感じつつも、ヴィンスを安全な場所へと移動させ、ロルフはまた、リルと共に魔物や魔獣達に意識を戻した。
スタンピードが発生してから3日。
人間も獣人も犠牲者は出てしまったものの、魔獣や魔物は殲滅する事ができた。
ヴィンス=サクソニアも、あれから半日程眠っていたが、目を覚ました後はまた、討伐に参加できる程に回復していた。
「プリュイのお陰だな…」
と、ヴィンスは勿論の事、その場に居たロルフとルリもそう思っていた。
それから、今回のスタンピードによる被害や、これから必要な支援などの調査をする為に王太子エデルバートが中心となりバタバタと忙しい日々が続き、ようやく落ち着いたのは、スタンピードが発生してから3ヶ月が経っていた。
今回のスタンピードでの、5人の聖女達はその功績を称えられ、監視付きではあるが、エリアナがオコーエル公爵の籍に復帰──となったが、これは本人が拒否をした。
「聖女としてやるべき事をしただけです。除籍された理由とは関係ありませんから。」
と、エリアナは、修道院で過ごすうちに、改心したようだった。そして、エリアナは生涯、その修道院で平民達に癒やしを与え、穢れを祓い、聖女としての人生を全うした。
リルは、第二王子ロルフの想いを受け入れ、特に反対される事もなく婚約を結ぶ事ができた。平民出身の聖女と言う事もあり、その婚約が公表された日は、平民達はお祭りのような大騒ぎだった。
******
「これでようやく、ジゼル様との約束が果たせたな。」
「そうですね。」
第二王子ロルフとリルの婚約は、フォレクシス第二王女ジゼルたっての願いだった。
「……それで…ジゼル様の事、お前は何か聞いているか?」
「……何も………」
「そうか………」
ある日突然竜国へ行ってしまったジゼル様。スタンピードが発生する前は、手紙のやり取りがあったが、スタンピード発生以降は、その手紙さえなくなり、プリュイも姿を見せなくなってしまい、竜国とレイノックスの繋がりも無くなってしまっている。
ージゼル様に、何かあったのだろうか?ー
魔女の呪いが発動している今、彼女に何かあったのか……色々な事が落ち着いて来ると、彼女の事を思う時間が増え、会いない分不安な気持ちが増えていく。
竜国へと行くのは難しい。
たとえ空を飛べたとしても、許可がなければ竜国の領域に入る前に竜騎士達に、文字通りに叩き落とされてしまうのだ。
『ジゼルに…会いたい?』
「プリュイ!?」
王城内にある俺の部屋で寝ようとしたところに、プリュイがやって来た。プリュイに助けられたあの日から、既に半年も経っていた。
「ジゼル様に……会わせてもらえるのか?」
『それを、ヴィンスが望むなら。ヴィンスが、どんな事でも…全てを受け入れてくれるなら。』
ー“どんな事でも”とは一体?ー
何を受け入れなければいけないのかは分からない。ただ……ジゼル様に会えるなら…その事の方が……。
「ジゼル様に会えるのなら………」
『分かった。それじゃあ、ヴィンスを今から、竜国に居るジゼルの所に連れて行ってあげる。』
タツノオトシゴのプリュイの表情は…全く分からない。ジゼル様はよく、プリュイが喜んでいるとか、怒っているとか言っていたが、その違いは全く分からなかった。ただ、今のプリュイの声が、いつもと違って疲れていると言う事だけは分かった。
そして、その理由は、竜国に着いてすぐに知るところになった。
❋更新、遅くなってすみません。数日、体調を崩していて、話を進められていませんでした。この土日で完結を目指す予定です❋
(。>﹏<。)💦
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
٩(。˃ ᵕ ˂ )و♡
「サクソニア様!!」
「──くっ!!」
防御が遅れたヴィンスは、魔物からの攻撃を右肩に受けてしまい、その場に倒れ込む。
ー利き手をやられたー
そして、その魔物が透かさずもう一度攻撃の魔法を放とうとした時、天空にいた竜騎士の1人がその魔物目掛けて火玉を放ち、攻撃する前にその魔物を仕留める事ができた。
『ヴィンス!』
そして、そのタイミングでプリュイが現れ、ヴィンスが負った右肩の怪我に治癒力のある水を掛けた。
「ヴィンス!大丈夫か!?」
「…………」
ロルフが駆け寄り、ヴィンスに声を掛けるが意識が無いようで返事がない。プリュイが治癒の水を掛けても、その右肩からはまだ出血が止まらない。
「ロルフ様、急いで…止血します!」
そこで、リルが止血をしようと怪我をしている右肩部分の服を持っていた短剣で裂き、傷口を確認しようとした時、スッ──と、ダラダラと流れていた血が止まり、傷口も塞がった。
「「え?」」
これには、ロルフとリルは驚いたが、“プリュイの水のお陰”─と安心し、ロルフが気を失っているままのヴィンスをどこか安全な所に運ぼうと立ち上がると、『──ジゼル!』と、プリュイが小さい声で呟いた後、この場から消えて居なくなってしまった。
ー“ジゼル様”?ー
何故、プリュイがこの場で、その名を呟いたのか、勿論ロルフには分からない。それを疑問に感じつつも、ヴィンスを安全な場所へと移動させ、ロルフはまた、リルと共に魔物や魔獣達に意識を戻した。
スタンピードが発生してから3日。
人間も獣人も犠牲者は出てしまったものの、魔獣や魔物は殲滅する事ができた。
ヴィンス=サクソニアも、あれから半日程眠っていたが、目を覚ました後はまた、討伐に参加できる程に回復していた。
「プリュイのお陰だな…」
と、ヴィンスは勿論の事、その場に居たロルフとルリもそう思っていた。
それから、今回のスタンピードによる被害や、これから必要な支援などの調査をする為に王太子エデルバートが中心となりバタバタと忙しい日々が続き、ようやく落ち着いたのは、スタンピードが発生してから3ヶ月が経っていた。
今回のスタンピードでの、5人の聖女達はその功績を称えられ、監視付きではあるが、エリアナがオコーエル公爵の籍に復帰──となったが、これは本人が拒否をした。
「聖女としてやるべき事をしただけです。除籍された理由とは関係ありませんから。」
と、エリアナは、修道院で過ごすうちに、改心したようだった。そして、エリアナは生涯、その修道院で平民達に癒やしを与え、穢れを祓い、聖女としての人生を全うした。
リルは、第二王子ロルフの想いを受け入れ、特に反対される事もなく婚約を結ぶ事ができた。平民出身の聖女と言う事もあり、その婚約が公表された日は、平民達はお祭りのような大騒ぎだった。
******
「これでようやく、ジゼル様との約束が果たせたな。」
「そうですね。」
第二王子ロルフとリルの婚約は、フォレクシス第二王女ジゼルたっての願いだった。
「……それで…ジゼル様の事、お前は何か聞いているか?」
「……何も………」
「そうか………」
ある日突然竜国へ行ってしまったジゼル様。スタンピードが発生する前は、手紙のやり取りがあったが、スタンピード発生以降は、その手紙さえなくなり、プリュイも姿を見せなくなってしまい、竜国とレイノックスの繋がりも無くなってしまっている。
ージゼル様に、何かあったのだろうか?ー
魔女の呪いが発動している今、彼女に何かあったのか……色々な事が落ち着いて来ると、彼女の事を思う時間が増え、会いない分不安な気持ちが増えていく。
竜国へと行くのは難しい。
たとえ空を飛べたとしても、許可がなければ竜国の領域に入る前に竜騎士達に、文字通りに叩き落とされてしまうのだ。
『ジゼルに…会いたい?』
「プリュイ!?」
王城内にある俺の部屋で寝ようとしたところに、プリュイがやって来た。プリュイに助けられたあの日から、既に半年も経っていた。
「ジゼル様に……会わせてもらえるのか?」
『それを、ヴィンスが望むなら。ヴィンスが、どんな事でも…全てを受け入れてくれるなら。』
ー“どんな事でも”とは一体?ー
何を受け入れなければいけないのかは分からない。ただ……ジゼル様に会えるなら…その事の方が……。
「ジゼル様に会えるのなら………」
『分かった。それじゃあ、ヴィンスを今から、竜国に居るジゼルの所に連れて行ってあげる。』
タツノオトシゴのプリュイの表情は…全く分からない。ジゼル様はよく、プリュイが喜んでいるとか、怒っているとか言っていたが、その違いは全く分からなかった。ただ、今のプリュイの声が、いつもと違って疲れていると言う事だけは分かった。
そして、その理由は、竜国に着いてすぐに知るところになった。
❋更新、遅くなってすみません。数日、体調を崩していて、話を進められていませんでした。この土日で完結を目指す予定です❋
(。>﹏<。)💦
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
٩(。˃ ᵕ ˂ )و♡
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