34 / 42
スタンピード
しおりを挟む
*ヴィンス=サクソニア視点*
ジゼル様が竜国に行ってから半年が過ぎた。未だに、ジゼル様とは会えていない。つい先日、1年間の留学生活を終えたヴァレリア=メルサンデス嬢も、1人でフォレクシス国王へと帰って行った。
今、俺とジゼル様を繋いでいるのは、水の妖精─プリュイだけだ。
プリュイは、ほぼ毎日レイノックスと竜国を行き来しては、手紙などを届けてくれ、そのついでにと、ジゼル様の様子を教えてくれたりしている。
彼女は、時々寝込む事もあるそうだが、比較的穏やかな日々を送っているらしい。
そんな天空の国とは違い、下界の人間族の国では、魔獣や魔物の出現が多くみられるようになり、聖女様や騎士達は、その対応で忙しい日々を送っている。たまに怪我をする事もあるが、そんな時はプリュイが俺の怪我をサッと治癒してくれるお陰で、ある意味薬師要らずで過ごせている。
ジゼル様は元気だろうか
“魔女の呪い”はどうなったのだろうか
今度は、いつ会えるのか
また、一緒にフルーツタルトを食べに行けたら
ゆっくりする時間ができると、ついついジゼル様の事ばかりを考えてしまう。会っていた時よりも、思う時間が増えていると思う。
魔獣や魔物の討伐が増え、怪我をすることもよくある。そんな怪我をしている時に、ジゼル様に会う事はできない。
エデルバートやフォレクシス王国でも、魔女の呪いについて調べられてはいるが、未だに解呪方法は見付かっていない。ジゼル様にとっては、竜国が一番安全な場所だろう。それでも、本当は、俺が側に居てジゼル様を守りたかった。
次に会えた時は───
それから、すぐの事だった。
レイノックス王国で、魔獣のスタンピードが発生したのは。
*竜国にて*
「スタン……ピード…ですか…」
「そうです。レイノックスの王都から離れた領地で、スタンピードが発生したそうで、王都の騎士達も討伐に向かうとの事です。その中に……ヴィンス殿も居るそうです。」
「…………」
スタンピード──それこそ、獣人国のフォレクシスでは発生した事は、過去に一度も無い。昔本で読んで知ったぐらいだ。魔物や魔獣が一気に溢れ出し、被害も大きいとあった。
昨日の夜、私の居る竜城内が一気にざわつき、竜王様をはじめシモン様も休む事なく朝を迎え、昼食を終えて部屋で本を読んでいるところに、シモン様が私の部屋にやって来て、レイノックス王国で起こっている事を教えてくれた。
先ず、竜国の対処として、竜騎士を派遣したそうで、特に、周りに気付かれないように、ヴィンス様に気を配るようにと言ってあるそうだ。それと、プリュイもこっそり付いて行っているそうだ。
「そのプリュイ殿からは、プリュイ殿が創り出した水を預かっているので、もしもの時はこれを飲んで下さい。“何もしないよりは良いから”と、プリュイ殿が言ってましたから。」
渡されたのは、手のひらサイズの小瓶3本。中には、薄っすらと水色の色が付いた液体が入っている。プリュイが創り出した水は、いつもこの色をしていて、キラキラと輝いていてとても綺麗だ。
「シモン様。お願いがあるんですけど……聞いていただけますか?」
******
スタンピードの可能性を視野に入れていた為、各種族の対応は素早く実行に移された。魔物達が統率を取る前にできる限り早く倒していく事。獣人族が前線で魔獣や魔物と対峙し、人間族の魔法使い達が魔法で後方支援する。そして、空から竜族が攻撃する。特に、空からの竜族の攻撃は凄まじいものだった。竜族の力は圧倒的なものがあった。このまま、予定より早くに殲滅させる事ができるかもしれない──と。
ある知能高い魔物が目にしたのは、騎士に護られながら穢れを浄化しているある1人の聖女だった。今はまだ、その力を上手く発揮できてはいないが、何となく……魔物にとって嫌な感じのする聖女だった。
ーあの聖女は…そのうち脅威になるー
そう直感したその魔物は、獣人と戦いながら、その聖女へと近付いて行く。周りは、目の前の敵に集中していて誰も気付かない。
その魔物が、その聖女を自分の攻撃範囲内捉えた瞬間、その聖女に攻撃魔法を展開させた。
「───リルっ!」
それに気付いたのは、この討伐の指揮をとっていた第二王子ロルフだった。ロルフは穏やかな性格ではあるが、騎士としては優れた能力をもっていた為、今回の討伐には父である国王は難色を示したが、王族が討伐に参加する事で士気が上がる─と言う事で参加が許されていたのだ。
その魔物が放った攻撃は、リルを狙い、そのリルを庇うようにロルフがリルを抱きしめ──
「ロルフ様!」
その2人を庇うように、その2人の前に立ち塞がったのは───
ヴィンス=サクソニアだった。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
*⋆⸜(๑•ᗜ•๑)⸝⋆*
ジゼル様が竜国に行ってから半年が過ぎた。未だに、ジゼル様とは会えていない。つい先日、1年間の留学生活を終えたヴァレリア=メルサンデス嬢も、1人でフォレクシス国王へと帰って行った。
今、俺とジゼル様を繋いでいるのは、水の妖精─プリュイだけだ。
プリュイは、ほぼ毎日レイノックスと竜国を行き来しては、手紙などを届けてくれ、そのついでにと、ジゼル様の様子を教えてくれたりしている。
彼女は、時々寝込む事もあるそうだが、比較的穏やかな日々を送っているらしい。
そんな天空の国とは違い、下界の人間族の国では、魔獣や魔物の出現が多くみられるようになり、聖女様や騎士達は、その対応で忙しい日々を送っている。たまに怪我をする事もあるが、そんな時はプリュイが俺の怪我をサッと治癒してくれるお陰で、ある意味薬師要らずで過ごせている。
ジゼル様は元気だろうか
“魔女の呪い”はどうなったのだろうか
今度は、いつ会えるのか
また、一緒にフルーツタルトを食べに行けたら
ゆっくりする時間ができると、ついついジゼル様の事ばかりを考えてしまう。会っていた時よりも、思う時間が増えていると思う。
魔獣や魔物の討伐が増え、怪我をすることもよくある。そんな怪我をしている時に、ジゼル様に会う事はできない。
エデルバートやフォレクシス王国でも、魔女の呪いについて調べられてはいるが、未だに解呪方法は見付かっていない。ジゼル様にとっては、竜国が一番安全な場所だろう。それでも、本当は、俺が側に居てジゼル様を守りたかった。
次に会えた時は───
それから、すぐの事だった。
レイノックス王国で、魔獣のスタンピードが発生したのは。
*竜国にて*
「スタン……ピード…ですか…」
「そうです。レイノックスの王都から離れた領地で、スタンピードが発生したそうで、王都の騎士達も討伐に向かうとの事です。その中に……ヴィンス殿も居るそうです。」
「…………」
スタンピード──それこそ、獣人国のフォレクシスでは発生した事は、過去に一度も無い。昔本で読んで知ったぐらいだ。魔物や魔獣が一気に溢れ出し、被害も大きいとあった。
昨日の夜、私の居る竜城内が一気にざわつき、竜王様をはじめシモン様も休む事なく朝を迎え、昼食を終えて部屋で本を読んでいるところに、シモン様が私の部屋にやって来て、レイノックス王国で起こっている事を教えてくれた。
先ず、竜国の対処として、竜騎士を派遣したそうで、特に、周りに気付かれないように、ヴィンス様に気を配るようにと言ってあるそうだ。それと、プリュイもこっそり付いて行っているそうだ。
「そのプリュイ殿からは、プリュイ殿が創り出した水を預かっているので、もしもの時はこれを飲んで下さい。“何もしないよりは良いから”と、プリュイ殿が言ってましたから。」
渡されたのは、手のひらサイズの小瓶3本。中には、薄っすらと水色の色が付いた液体が入っている。プリュイが創り出した水は、いつもこの色をしていて、キラキラと輝いていてとても綺麗だ。
「シモン様。お願いがあるんですけど……聞いていただけますか?」
******
スタンピードの可能性を視野に入れていた為、各種族の対応は素早く実行に移された。魔物達が統率を取る前にできる限り早く倒していく事。獣人族が前線で魔獣や魔物と対峙し、人間族の魔法使い達が魔法で後方支援する。そして、空から竜族が攻撃する。特に、空からの竜族の攻撃は凄まじいものだった。竜族の力は圧倒的なものがあった。このまま、予定より早くに殲滅させる事ができるかもしれない──と。
ある知能高い魔物が目にしたのは、騎士に護られながら穢れを浄化しているある1人の聖女だった。今はまだ、その力を上手く発揮できてはいないが、何となく……魔物にとって嫌な感じのする聖女だった。
ーあの聖女は…そのうち脅威になるー
そう直感したその魔物は、獣人と戦いながら、その聖女へと近付いて行く。周りは、目の前の敵に集中していて誰も気付かない。
その魔物が、その聖女を自分の攻撃範囲内捉えた瞬間、その聖女に攻撃魔法を展開させた。
「───リルっ!」
それに気付いたのは、この討伐の指揮をとっていた第二王子ロルフだった。ロルフは穏やかな性格ではあるが、騎士としては優れた能力をもっていた為、今回の討伐には父である国王は難色を示したが、王族が討伐に参加する事で士気が上がる─と言う事で参加が許されていたのだ。
その魔物が放った攻撃は、リルを狙い、そのリルを庇うようにロルフがリルを抱きしめ──
「ロルフ様!」
その2人を庇うように、その2人の前に立ち塞がったのは───
ヴィンス=サクソニアだった。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
*⋆⸜(๑•ᗜ•๑)⸝⋆*
44
お気に入りに追加
470
あなたにおすすめの小説
【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ
水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。
ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。
なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。
アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。
※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います
☆HOTランキング20位(2021.6.21)
感謝です*.*
HOTランキング5位(2021.6.22)
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
幸せなのでお構いなく!
棗
恋愛
侯爵令嬢ロリーナ=カラーには愛する婚約者グレン=シュタインがいる。だが、彼が愛しているのは天使と呼ばれる儚く美しい王女。
初対面の時からグレンに嫌われているロリーナは、このまま愛の無い結婚をして不幸な生活を送るよりも、最後に思い出を貰って婚約解消をすることにした。
※なろうさんにも公開中
〖完結〗私が死ねばいいのですね。
藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。
両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。
それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。
冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。
クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。
そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全21話で完結になります。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
【完結】番を監禁して早5年、愚かな獣王はようやく運命を知る
紺
恋愛
獣人国の王バレインは明日の婚儀に胸踊らせていた。相手は長年愛し合った美しい獣人の恋人、信頼する家臣たちに祝われながらある女の存在を思い出す。
父が他国より勝手に連れてきた自称"番(つがい)"である少女。
5年間、古びた離れに監禁していた彼女に最後の別れでも伝えようと出向くと、そこには誰よりも美しく成長した番が待ち構えていた。
基本ざまぁ対象目線。ほんのり恋愛。
魔力無しの黒色持ちの私だけど、(色んな意味で)きっちりお返しさせていただきます。
みん
恋愛
魔力無しの上に不吉な黒色を持って生まれたアンバーは、記憶を失った状態で倒れていたところを伯爵に拾われたが、そこでは虐げられる日々を過ごしていた。そんな日々を送るある日、危ないところを助けてくれた人達と出会ってから、アンバーの日常は変わっていく事になる。
アンバーの失った記憶とは…?
記憶を取り戻した後のアンバーは…?
❋他視点の話もあります
❋独自設定あり
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付き次第訂正します。すみません
男爵令嬢と結婚するから婚約破棄?二代続けてふざけるな!この低脳がっ!!
三条桜子
恋愛
「男爵令嬢と結婚するから婚約破棄だ」第一王子が切り出した。へー。ふーん。低脳ここに極まれり。終わったな……はぁー。
この国は、17年前にも婚約破棄事件が起こりました。当時の王子と当時の公爵令嬢、当時の男爵令嬢。当時の公爵令嬢は、今や隣国の王妃に大出世。まずい!当時の公爵令嬢は、この17年ずーっとざまあ活動継続中。この国は、虫の息です。(イメージ、キューバ。アメリカにフルボッコにされています。)
子供世代は、大迷惑。モームリー。 破滅キーワード『婚約破棄』。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる