28 / 42
向き合う
しおりを挟む
あの食堂での出来事の翌日から、エリアナ=オコーエル様の姿を学園で見掛ける事がなくなった。それについて、学園内ではあまり騒動にはならなかった。
「やっぱりね」
「仕方ないだろう」
と言う意見ばかりだった。夜会での事もそうだけど、人目の多いところでの出来事だった為、誰もが知っていた事だったからだ。
エリアナ=オコーエルの処分は、学園は退学。オコーエル公爵家からも除籍され、そのまま平民の聖女としてどこかの修道院に入る事となったそうだ。後ろ盾を無くしたエリアナ様は、喩え聖女としては優秀であったとしても、彼女が求めていたような結婚はできないだろう。
兎に角、これで、残りの学園生活も、少しは安心できるものになったかもしれない──と言う事で、私は王太子にお願いしたい事があると手紙を書いた。もともと、お願いをする予定ではなかったけど、ジゼルの事がバレているからお願いする事にした。
色々あった事もあり、手紙を書いて出した翌日の放課後、サクソニア様が私を迎えに来た。何とも早い対応である。
「サクソニア様、態々のお迎え、ありがとうございます。」
「ん?」
と、首を傾げてニッコリ笑うサクソニア様。
「えっと…お務め中ですし……」
「ん?」
「あー……ヴィンス様……」
「はい。では、参りましょうか……ルチア嬢。」
「──!!」
ーそこで、微笑みながら名前を呼ぶのは止めて欲しい。恥ずかしい!ー
「はいはい。私も居るんですけどね?えぇ、えぇ、分かっていますよ?大丈夫です。ちゃんと気配を消して私も付いて行きますから。」
「ヴァレリア!」
「メルサンデス嬢は、よく気が利く侍女なんですね。」
「サ──ヴィンス様!?揶揄うのは止めて下さい!兎に角!王城に行きます!!」
クスクスと笑っているヴィンス様とヴァレリアは見ないようにして、私は急いで迎えの馬車に乗り込んた。
******
「王太子殿下、今回も、お願いを聞いていただき、ありがとうございます。」
「いや……もともとは……人間族の犯した罪なのだから、私達が調べるべき事なんだ。取り敢えず、それらしい伝記物や関連がありそうな書を用意してある。持ち出し不可の為、王城内でだけの閲覧となるが……」
「ありがとうございます。それは分かっているので大丈夫です。ただ……私が王城に滞在する事で、ご迷惑にはなりませんか?」
「それはない。いくらでも滞在してもらって構わない。更に必要な物があるなら、言ってもらえれば可能な限りは用意をさせてもらう。」
「重ね重ね、ありがとうございます。」
私がお願いしたのは
“魔女の呪い”に関連のありそうな書物や資料を閲覧させてもらう事だった。
それらに関しては、フォレクシスの王宮にもあったけど、解呪に関連していそうなものは何もなかった。せいぜい分かった事は
何故呪いをかけられたのか─
呪いの発動条件─
だけだった。ならば、呪いを掛けた側なら、もっと情報があるかもしれない。
竜王陛下は、『魔女は最後は後悔していた』と言っていた。ただ、呪った相手が死んでしまって、解呪できなかったと。呪いは、呪った本人しか解く事はできない。でも……他に解く方法がないのか………。
学園生活にも慣れ、大きな祭典も終わり落ち着いて来た今、持ち出し禁止の為、学園の無い週末を王城で過ごす事にして、私は“魔女の呪い”と少しずつ向き合う事にした。
ある程度知ってはいたけど、やっぱり“魔女の呪い”とは、何とも理不尽な呪いだった。勝手に悪い方に思い込んで、その恨みを癒やしの巫女にぶつけて、更にお腹の子もろとも───。後悔した後、何も対策を練らなかった?呪いが引き継がれる可能性があると分かっていたのに?
手元にあって、目を通した物の中には、何か対策をしたと言うような記述はなかった。
はぁ───
思わず、深い溜め息が出る。
最初に呪いを受けた巫女以降、呪いが顕れたのは私だけ。それもそうか。双子と言うのが珍しいのだから。
『私が黒持ちじゃなかったら!』
シェールの魔力暴走を抑えて気を失った私が、意識を取り戻し掛けた時に耳にしたのが、母の泣き叫ぶ声だった。黒は、母が持つ色だった。その黒を、唯一引き継いだのが私だった。他の兄妹達は、父の色を持って生まれた。だから、母は自分を責めていた。それ故、母もまた、シェールと同じように、私を必要以上に遠ざけるようになった。
私を守る為に。
皆が私の為に、私を遠ざけるようになった。
愛されている─と自分に言い聞かせるように繰り返し心の中でに呟いていた。それでも…寂しかったし、本当は、側に居て欲しかった。
ーこの“魔女の呪い”が解ければ……私も皆の側に居られるようになるだろうか?ー
そんな事を思いながら、私はまた手元にある書物を読み始めた。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(♡︎´꒳`*)(*´꒳`♡︎)
「やっぱりね」
「仕方ないだろう」
と言う意見ばかりだった。夜会での事もそうだけど、人目の多いところでの出来事だった為、誰もが知っていた事だったからだ。
エリアナ=オコーエルの処分は、学園は退学。オコーエル公爵家からも除籍され、そのまま平民の聖女としてどこかの修道院に入る事となったそうだ。後ろ盾を無くしたエリアナ様は、喩え聖女としては優秀であったとしても、彼女が求めていたような結婚はできないだろう。
兎に角、これで、残りの学園生活も、少しは安心できるものになったかもしれない──と言う事で、私は王太子にお願いしたい事があると手紙を書いた。もともと、お願いをする予定ではなかったけど、ジゼルの事がバレているからお願いする事にした。
色々あった事もあり、手紙を書いて出した翌日の放課後、サクソニア様が私を迎えに来た。何とも早い対応である。
「サクソニア様、態々のお迎え、ありがとうございます。」
「ん?」
と、首を傾げてニッコリ笑うサクソニア様。
「えっと…お務め中ですし……」
「ん?」
「あー……ヴィンス様……」
「はい。では、参りましょうか……ルチア嬢。」
「──!!」
ーそこで、微笑みながら名前を呼ぶのは止めて欲しい。恥ずかしい!ー
「はいはい。私も居るんですけどね?えぇ、えぇ、分かっていますよ?大丈夫です。ちゃんと気配を消して私も付いて行きますから。」
「ヴァレリア!」
「メルサンデス嬢は、よく気が利く侍女なんですね。」
「サ──ヴィンス様!?揶揄うのは止めて下さい!兎に角!王城に行きます!!」
クスクスと笑っているヴィンス様とヴァレリアは見ないようにして、私は急いで迎えの馬車に乗り込んた。
******
「王太子殿下、今回も、お願いを聞いていただき、ありがとうございます。」
「いや……もともとは……人間族の犯した罪なのだから、私達が調べるべき事なんだ。取り敢えず、それらしい伝記物や関連がありそうな書を用意してある。持ち出し不可の為、王城内でだけの閲覧となるが……」
「ありがとうございます。それは分かっているので大丈夫です。ただ……私が王城に滞在する事で、ご迷惑にはなりませんか?」
「それはない。いくらでも滞在してもらって構わない。更に必要な物があるなら、言ってもらえれば可能な限りは用意をさせてもらう。」
「重ね重ね、ありがとうございます。」
私がお願いしたのは
“魔女の呪い”に関連のありそうな書物や資料を閲覧させてもらう事だった。
それらに関しては、フォレクシスの王宮にもあったけど、解呪に関連していそうなものは何もなかった。せいぜい分かった事は
何故呪いをかけられたのか─
呪いの発動条件─
だけだった。ならば、呪いを掛けた側なら、もっと情報があるかもしれない。
竜王陛下は、『魔女は最後は後悔していた』と言っていた。ただ、呪った相手が死んでしまって、解呪できなかったと。呪いは、呪った本人しか解く事はできない。でも……他に解く方法がないのか………。
学園生活にも慣れ、大きな祭典も終わり落ち着いて来た今、持ち出し禁止の為、学園の無い週末を王城で過ごす事にして、私は“魔女の呪い”と少しずつ向き合う事にした。
ある程度知ってはいたけど、やっぱり“魔女の呪い”とは、何とも理不尽な呪いだった。勝手に悪い方に思い込んで、その恨みを癒やしの巫女にぶつけて、更にお腹の子もろとも───。後悔した後、何も対策を練らなかった?呪いが引き継がれる可能性があると分かっていたのに?
手元にあって、目を通した物の中には、何か対策をしたと言うような記述はなかった。
はぁ───
思わず、深い溜め息が出る。
最初に呪いを受けた巫女以降、呪いが顕れたのは私だけ。それもそうか。双子と言うのが珍しいのだから。
『私が黒持ちじゃなかったら!』
シェールの魔力暴走を抑えて気を失った私が、意識を取り戻し掛けた時に耳にしたのが、母の泣き叫ぶ声だった。黒は、母が持つ色だった。その黒を、唯一引き継いだのが私だった。他の兄妹達は、父の色を持って生まれた。だから、母は自分を責めていた。それ故、母もまた、シェールと同じように、私を必要以上に遠ざけるようになった。
私を守る為に。
皆が私の為に、私を遠ざけるようになった。
愛されている─と自分に言い聞かせるように繰り返し心の中でに呟いていた。それでも…寂しかったし、本当は、側に居て欲しかった。
ーこの“魔女の呪い”が解ければ……私も皆の側に居られるようになるだろうか?ー
そんな事を思いながら、私はまた手元にある書物を読み始めた。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(♡︎´꒳`*)(*´꒳`♡︎)
42
お気に入りに追加
471
あなたにおすすめの小説
処刑された王女は隣国に転生して聖女となる
空飛ぶひよこ
恋愛
旧題:魔女として処刑された王女は、隣国に転生し聖女となる
生まれ持った「癒し」の力を、民の為に惜しみなく使って来た王女アシュリナ。
しかし、その人気を妬む腹違いの兄ルイスに疎まれ、彼が連れてきたアシュリナと同じ「癒し」の力を持つ聖女ユーリアの謀略により、魔女のレッテルを貼られ処刑されてしまう。
同じ力を持ったまま、隣国にディアナという名で転生した彼女は、6歳の頃に全てを思い出す。
「ーーこの力を、誰にも知られてはいけない」
しかし、森で倒れている王子を見過ごせずに、力を使って助けたことにより、ディアナの人生は一変する。
「どうか、この国で聖女になってくれませんか。貴女の力が必要なんです」
これは、理不尽に生涯を終わらされた一人の少女が、生まれ変わって幸福を掴む物語。
「次点の聖女」
手嶋ゆき
恋愛
何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。
私は「次点の聖女」と呼ばれていた。
約一万文字強で完結します。
小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り
楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。
たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。
婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。
しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。
なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。
せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。
「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」
「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」
かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。
執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?!
見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。
*全16話+番外編の予定です
*あまあです(ざまあはありません)
*2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
二度目の召喚なんて、聞いてません!
みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。
その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。
それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」
❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。
❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。
❋他視点の話があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる