最初で最後の我儘を

みん

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向き合う

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あの食堂での出来事の翌日から、エリアナ=オコーエル様の姿を学園で見掛ける事がなくなった。それについて、学園内ではあまり騒動にはならなかった。

「やっぱりね」
「仕方ないだろう」

と言う意見ばかりだった。夜会での事もそうだけど、人目の多いところでの出来事だった為、誰もが知っていた事だったからだ。
エリアナ=オコーエルの処分は、学園は退学。オコーエル公爵家からも除籍され、そのまま平民の聖女としてどこかの修道院に入る事となったそうだ。後ろ盾を無くしたエリアナ様は、喩え聖女としては優秀であったとしても、彼女が求めていたような結婚はできないだろう。
兎に角、これで、残りの学園生活も、少しは安心できるものになったかもしれない──と言う事で、私は王太子にお願いしたい事があると手紙を書いた。もともと、お願いをする予定ではなかったけど、ジゼルわたしの事がバレているからお願いする事にした。

色々あった事もあり、手紙を書いて出した翌日の放課後、サクソニア様が私を迎えに来た。何とも早い対応である。

「サクソニア様、態々のお迎え、ありがとうございます。」
「ん?」

と、首を傾げてニッコリ笑うサクソニア様。

「えっと…お務め中ですし……」
「ん?」
「あー……ヴィンス様……」
「はい。では、参りましょうか……ルチア嬢。」
「──!!」

ーそこで、微笑みながら名前を呼ぶのは止めて欲しい。恥ずかしい!ー

「はいはい。私も居るんですけどね?えぇ、えぇ、分かっていますよ?大丈夫です。ちゃんと気配を消して私も付いて行きますから。」
「ヴァレリア!」
「メルサンデス嬢は、よく気が利く侍女なんですね。」
「サ──ヴィンス様!?揶揄うのは止めて下さい!兎に角!王城に行きます!!」

クスクスと笑っているヴィンス様とヴァレリアは見ないようにして、私は急いで迎えの馬車に乗り込んた。






******


「王太子殿下、今回も、お願いを聞いていただき、ありがとうございます。」

「いや……もともとは……人間ひと族の犯した罪なのだから、私達が調べるべき事なんだ。取り敢えず、それらしい伝記物や関連がありそうな書を用意してある。持ち出し不可の為、王城内でだけの閲覧となるが……」
「ありがとうございます。それは分かっているので大丈夫です。ただ……私が王城に滞在する事で、ご迷惑にはなりませんか?」
「それはない。いくらでも滞在してもらって構わない。更に必要な物があるなら、言ってもらえれば可能な限りは用意をさせてもらう。」
「重ね重ね、ありがとうございます。」

私がお願いしたのは

“魔女の呪い”に関連のありそうな書物や資料を閲覧させてもらう事だった。

それらに関しては、フォレクシスの王宮にもあったけど、解呪に関連していそうなものは何もなかった。せいぜい分かった事は

何故呪いをかけられたのか─
呪いの発動条件─

だけだった。ならば、呪いを掛けた側なら、もっと情報があるかもしれない。
竜王陛下は、『魔女は最後は後悔していた』と言っていた。ただ、呪った相手が死んでしまって、解呪できなかったと。呪いは、呪った本人しか解く事はできない。でも……他に解く方法がないのか………。

学園生活にも慣れ、大きな祭典も終わり落ち着いて来た今、持ち出し禁止の為、学園の無い週末を王城で過ごす事にして、私は“魔女の呪い”と少しずつ向き合う事にした。







ある程度知ってはいたけど、やっぱり“魔女の呪い”とは、何とも理不尽な呪いだった。勝手に悪い方に思い込んで、その恨みを癒やしの巫女にぶつけて、更にお腹の子もろとも───。後悔した後、何も対策を練らなかった?呪いが引き継がれる可能性があると分かっていたのに?
手元にあって、目を通した物の中には、何か対策をしたと言うような記述はなかった。

はぁ───

思わず、深い溜め息が出る。

最初に呪いを受けた巫女以降、呪いが顕れたのは私だけ。それもそうか。双子と言うのが珍しいのだから。



『私が黒持ちじゃなかったら!』



シェールの魔力暴走を抑えて気を失った私が、意識を取り戻し掛けた時に耳にしたのが、母の泣き叫ぶ声だった。黒は、母が持つ色だった。その黒を、唯一引き継いだのが私だった。他の兄妹達は、父の色を持って生まれた。だから、母は自分を責めていた。それ故、母もまた、シェールと同じように、私を必要以上に遠ざけるようになった。

私を守る為に。

皆が私の為に、私を遠ざけるようになった。
愛されている─と自分に言い聞かせるように繰り返し心の中でに呟いていた。それでも…寂しかったし、本当は、側に居て欲しかった。

ーこの“魔女の呪い”が解ければ……私も皆の側に居られるようになるだろうか?ー

そんな事を思いながら、私はまた手元にある書物を読み始めた。








❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(♡︎´꒳`*)(*´꒳`♡︎)



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