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ポヤポヤ頭の襲来
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「あなたのお兄様が、フォレクシスの王太子レナルド様の側近だと言うのは、本当なのかしら?」
「………それが何か?」
リルとヴァレリアと3人で、食堂でランチをしていると、そこへオコーエル様がやって来て、挨拶もなく冒頭の質問をされた。ポヤポヤ頭だとしても、情報収集には長けているようだ。いや、長けているのは、公爵家に付いている人か─。
「なら、レナルド様の事、色々と知っているのよね?レナルド様に会えたりするのかしら?私達、お友達でしょう?私をレナルド様に会わせてくれないかしら?」
ーどこから突っ込めば良いんだろうか?ー
ポヤポヤ頭どころか、イカれてないだろうか?脳の働き全てが、聖女の能力に持っていかれてしまっているのかもしれない。うん。きっとそうだ。だから、公爵令嬢にも関わらず、ある意味知能がポヤポヤなんだ。赤子レベルで成長が止まってしまった、可哀想な令嬢なんだ───と思えば、本当に可哀想な…残念な令嬢にしか見えなくなって来た……。
ヴァレリアは勿論の事、平民のリルでさえ、遠い目になっている。
「えっと……どこから…何から言えば良いのか……。一番言っておかないといけない事は、王太子殿下を名前呼びするのはどうか─と思います。王太子殿下は、余程親しい者にしか名前呼びを許すような方ではないので。」
兄が名前呼びを許しているのは、家族と、兄が信頼を寄せている側近と……彼女だけだ。
「それなら大丈夫よ!先日の夜会でお話した時、私に笑顔を向けていただいたから、きっと、私の事を気に入ってくれたのだと思うから!」
ーうわぁ…その自信はどこから来るんですか?ー
「えっと……私はもともと王都に住んでいる兄達とは違って、領地に居たので、王太子殿下どころか、兄ともあまり会う事もなかったので、オコーエル様を王太子殿下に会わせるなんて事は……不可能です。」
「それでも、貴方のお兄様なのだから、頼めば何とかなるでしょう?友達の為にお願いしてもらえないかしら?」
ーあれ?私、ちゃんとレイノックスで通じる言語を喋っているわよね?ー
「えっと……まぁ……“そもそも”なお話になりますが………」
「何かしら?」
「私……オコーエル様と“お友達”になった記憶が無いのですが………」
「───なっ!?」
自信たっぷり余裕だった笑顔が一転、今度は顔を赤くしてプルプルと震え出した。
「兎に角、私とオコーエル様が友達であったとしても、王太子殿下に会わせる事は勿論の事、連絡を取る事もできません。それができたとしても、相手は王太子です。伯爵令嬢でしかない私の一存で勝手な事はできませんから。」
「私のお願いがきけないって事なの!?」
ーいや、だから、ちゃんと話を聞いてましたか?え?何語で話せば良いですか?ー
「あの…私の話、ちゃんと聞いていますか?」
「聞いているわよ!たかが伯爵令嬢のくせに、公爵令嬢である私の願いを無下にするつもりなのね!?」
ーこの人、本当にヤバい人だ!どうする!?ー
「いい加減にしたらどうですか?」
「何ですって!?───っ!」
少し泣きそうになってしまった時、食堂の入り口の方から声を掛けて来たのは、サクソニア様だった。
「ヴィンス様!どうしてこちらに?」
笑顔でサクソニア様に駆け寄るオコーエル様を、サクソニア様は一瞥した後そのまま彼女をスルーして、私達の座っている所へとやって来た。
「クルーデン嬢、リル嬢、こんにちは。昼食中に申し訳無い。国王両陛下と王太子殿下が、夜会の事で話を訊きたいとの事で、私がロルフ殿下とリル嬢を迎えに来ました。」
“夜会の事”─とは…まさに、兄であるフォレクシス王太子と……ポヤポヤ頭とのやり取りの事だろう。それと、ロルフ様との事もあるかもしれない。
「あ…はい。分かりました。でも……」
リルは、申し訳無さそうに私に視線を向ける。
「私達の事は気にしな───」
「では、食事中のお詫びを兼ねて、クルーデン嬢とメルサンデス嬢にはお茶でもご用意させていただきますから、一緒にいらして下さい。きっと、その方が、王太子殿下もロルフ殿下も……安心するでしょうから。」
と言ってもらえるなら、遠慮なくついて行かせていただきます。もう、これ以上ポヤポヤ頭とは会話できないし、したくもありませんからね。
「お言葉に甘えて、お願い致します。」
「ちょっと、わたしも────」
「それでは、これで失礼します。」
更にオコーエル様が話し出したところに、サクソニア様が被せるように言葉を掛けた。満面の笑みで。私にとっては恐ろしく見えるその笑顔も、オコーエル様にとっては魅力的な笑顔に見えるらしく、ポッと顔を赤くした後「ごきげんよう」と呟いて、そのまま私達を見送ってくれた。
ある意味……単純お馬鹿なだけなのかもしれない。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(*ˊᗜˋ*)ノ°•·.*ꕤ*ᵗʱᵃᵑᵏᵧₒᵤ ꕤ*.゚
「………それが何か?」
リルとヴァレリアと3人で、食堂でランチをしていると、そこへオコーエル様がやって来て、挨拶もなく冒頭の質問をされた。ポヤポヤ頭だとしても、情報収集には長けているようだ。いや、長けているのは、公爵家に付いている人か─。
「なら、レナルド様の事、色々と知っているのよね?レナルド様に会えたりするのかしら?私達、お友達でしょう?私をレナルド様に会わせてくれないかしら?」
ーどこから突っ込めば良いんだろうか?ー
ポヤポヤ頭どころか、イカれてないだろうか?脳の働き全てが、聖女の能力に持っていかれてしまっているのかもしれない。うん。きっとそうだ。だから、公爵令嬢にも関わらず、ある意味知能がポヤポヤなんだ。赤子レベルで成長が止まってしまった、可哀想な令嬢なんだ───と思えば、本当に可哀想な…残念な令嬢にしか見えなくなって来た……。
ヴァレリアは勿論の事、平民のリルでさえ、遠い目になっている。
「えっと……どこから…何から言えば良いのか……。一番言っておかないといけない事は、王太子殿下を名前呼びするのはどうか─と思います。王太子殿下は、余程親しい者にしか名前呼びを許すような方ではないので。」
兄が名前呼びを許しているのは、家族と、兄が信頼を寄せている側近と……彼女だけだ。
「それなら大丈夫よ!先日の夜会でお話した時、私に笑顔を向けていただいたから、きっと、私の事を気に入ってくれたのだと思うから!」
ーうわぁ…その自信はどこから来るんですか?ー
「えっと……私はもともと王都に住んでいる兄達とは違って、領地に居たので、王太子殿下どころか、兄ともあまり会う事もなかったので、オコーエル様を王太子殿下に会わせるなんて事は……不可能です。」
「それでも、貴方のお兄様なのだから、頼めば何とかなるでしょう?友達の為にお願いしてもらえないかしら?」
ーあれ?私、ちゃんとレイノックスで通じる言語を喋っているわよね?ー
「えっと……まぁ……“そもそも”なお話になりますが………」
「何かしら?」
「私……オコーエル様と“お友達”になった記憶が無いのですが………」
「───なっ!?」
自信たっぷり余裕だった笑顔が一転、今度は顔を赤くしてプルプルと震え出した。
「兎に角、私とオコーエル様が友達であったとしても、王太子殿下に会わせる事は勿論の事、連絡を取る事もできません。それができたとしても、相手は王太子です。伯爵令嬢でしかない私の一存で勝手な事はできませんから。」
「私のお願いがきけないって事なの!?」
ーいや、だから、ちゃんと話を聞いてましたか?え?何語で話せば良いですか?ー
「あの…私の話、ちゃんと聞いていますか?」
「聞いているわよ!たかが伯爵令嬢のくせに、公爵令嬢である私の願いを無下にするつもりなのね!?」
ーこの人、本当にヤバい人だ!どうする!?ー
「いい加減にしたらどうですか?」
「何ですって!?───っ!」
少し泣きそうになってしまった時、食堂の入り口の方から声を掛けて来たのは、サクソニア様だった。
「ヴィンス様!どうしてこちらに?」
笑顔でサクソニア様に駆け寄るオコーエル様を、サクソニア様は一瞥した後そのまま彼女をスルーして、私達の座っている所へとやって来た。
「クルーデン嬢、リル嬢、こんにちは。昼食中に申し訳無い。国王両陛下と王太子殿下が、夜会の事で話を訊きたいとの事で、私がロルフ殿下とリル嬢を迎えに来ました。」
“夜会の事”─とは…まさに、兄であるフォレクシス王太子と……ポヤポヤ頭とのやり取りの事だろう。それと、ロルフ様との事もあるかもしれない。
「あ…はい。分かりました。でも……」
リルは、申し訳無さそうに私に視線を向ける。
「私達の事は気にしな───」
「では、食事中のお詫びを兼ねて、クルーデン嬢とメルサンデス嬢にはお茶でもご用意させていただきますから、一緒にいらして下さい。きっと、その方が、王太子殿下もロルフ殿下も……安心するでしょうから。」
と言ってもらえるなら、遠慮なくついて行かせていただきます。もう、これ以上ポヤポヤ頭とは会話できないし、したくもありませんからね。
「お言葉に甘えて、お願い致します。」
「ちょっと、わたしも────」
「それでは、これで失礼します。」
更にオコーエル様が話し出したところに、サクソニア様が被せるように言葉を掛けた。満面の笑みで。私にとっては恐ろしく見えるその笑顔も、オコーエル様にとっては魅力的な笑顔に見えるらしく、ポッと顔を赤くした後「ごきげんよう」と呟いて、そのまま私達を見送ってくれた。
ある意味……単純お馬鹿なだけなのかもしれない。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
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