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魔女の呪い③
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相手に自覚がなくとも、その相手が怪我をしていたり病気だったりすると、私が触れただけで、私の意志とは関係無く白の魔力が発動して、それらを癒やしてしまう。そうして、白の魔力を使えば使う程、左手首にあるイバラの様な模様が伸びていき、手首を一周して端と端が結び付くと、魔女の呪いが発動して、私の命と引き換えに魔力が使われるようになるのだ。それもまた…私の意志とは関係無く発動するそうだ。
争いの切っ掛けとなった癒やしの巫女は、その魔女の呪いによって、触れた相手の些細な怪我や病気を我が身に受け入れる事となり、命を落としてしまったのだ。
「私は、まだ魔女の呪いは発動してませんが…怪我や病気の人に触れてしまうと、私の意志とは関係無く白の魔力が発動してしまうのです。発動すれば、この手首にある模様が伸びるのと同時に痛みが出るんです。」
ヒュッ─と息を呑んだのは、サクソニア様だった。
シモン様が、そのサクソニア様を一瞥した後
「特に、獣人は、獣化している時ほど、より強く力が発揮されますから……ジゼル様には、獣化できないように、魔力も使えないように、ブレスレットで抑圧しています。竜王陛下がお創りになったモノで、今はこれだけが、魔女の呪いに対抗する唯一のモノです。」
ただ、進行を遅らせるだけで、解決策は見付かってはいない。
「─ですから、ジゼル様がサクソニア殿を助けた分……模様は少し伸びたと言う事ですね。」
「─っ!シモン様!」
「──失礼しました。」
シモン様の言葉に、顔色を悪くしたのはサクソニア様だ。
「サクソニア様は、何も悪くありませんから。あの時は、私の意志で、貴方を助けたいと思ったから触れたんです。どうか、気にしないで下さい。」
あの時、サクソニア様自身、自分を放って去れ─と言った。そう言われたのにも関わらず、私は戻って自分の意志で白の魔力を使ったのだ。どんな理由があったとしても、怪我をした者を放っておくなんて事はできなかったし、後悔もしていない。
「何故…双子と言う事を隠している?魔女の呪いの事は、王族でも極限られた者しか知らないだろうし、そもそも…奇伝となっている程だし……」
「それでも、魔女呪いを知っている者が居れば、ジゼル様を使って悪い事を考える者が現れる可能性がありますからね。ジゼル様の命と引き換えに、どんな病気でも怪我でも治る訳ですから。その為に、魔女の呪いを引き継ぐと言われている条件の一つを…隠す事にしたんですよ。」
本来であれば、シェールも私とおなじ17歳だけど、一つ年下と言う扱いになった。
「ジゼル様が公の場に姿を現す事がないのも…他人との接触を避ける為と言う事か…。では……フォレクシスの王妃が毒を盛られた時のお茶会で、王妃が第二王女を近寄らせなかったのは……」
「おそらく、私を守る為──だったと思います。」
あの時には、既にブレスレットをしていたから、母に触れたとしても白の魔力は発動しなかったと思うけど、それはあくまでだろうでしかない。
それに、シェールの私への過保護ぶりも大きい。
私がまだブレスレットを着けていない頃、シェールが魔力暴走を起こした。その時、たまたま私が側に居て、その魔力暴走を、私が無意識に白の魔力を発動させ収めた事があった。その日、私は手首の痛みの激しさに気を失ってしまったのだ。私が意識を失っている間、シェールは私の部屋の外でずっと泣いていたらしい。それからのシェールは、より一層自分から私を遠ざけるようになった。
そんなシェールに、私も「寂しい」とは言えず……2人は仲が良くない、悪いと噂されるようになった。
シェールの笑った顔を見たのは……いつが最後だっただろうか?シェールだけじゃない。父も母も、兄も姉も…いつも私に向ける目は……辛そうな目ばかりだった。
ー皆と一緒に笑って過ごしたいー
と思っていても言えなかった。そんな事、皆は思っていないかもしれない。私は、邪魔者でしかないのかもしれない。
それからは、ただひたすら王宮の奥で息を殺すようにして過ごして来た。そして私は、忘れられた王女となった。
「そんな私なんですけど…生きているうちに、やりたい事はやってみたい─と思うようになって……“最初で最後のお願いだから”と…父や母を脅して、ここに留学しに来たんです。」
「…ジゼル様」
シモン様が私を宥めるように名前を呼ぶ。
「勿論、諦めてませんよ?目標の一つに、25歳を超える事も入ってますかね!」
竜王様だって、呪いを解く為に色々調べてくれている事を知っている。家族だってそうだ。だから、私も諦めるワケにはいかないんだ。
「可能であれば、私はこのまま“ルチア=クルーデン”として、留学生活を全うしたいと思ってますけど、王太子殿下…レイノックス側が“駄目だ”と判断されたなら、私はそれに従います。ただ……第二王子の事に関しては、予定通りにお願いします。」
“婚約解消”は、絶対する事の一つだから。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
٩(*ˊᗜˋ*)و✧*。✧*。
争いの切っ掛けとなった癒やしの巫女は、その魔女の呪いによって、触れた相手の些細な怪我や病気を我が身に受け入れる事となり、命を落としてしまったのだ。
「私は、まだ魔女の呪いは発動してませんが…怪我や病気の人に触れてしまうと、私の意志とは関係無く白の魔力が発動してしまうのです。発動すれば、この手首にある模様が伸びるのと同時に痛みが出るんです。」
ヒュッ─と息を呑んだのは、サクソニア様だった。
シモン様が、そのサクソニア様を一瞥した後
「特に、獣人は、獣化している時ほど、より強く力が発揮されますから……ジゼル様には、獣化できないように、魔力も使えないように、ブレスレットで抑圧しています。竜王陛下がお創りになったモノで、今はこれだけが、魔女の呪いに対抗する唯一のモノです。」
ただ、進行を遅らせるだけで、解決策は見付かってはいない。
「─ですから、ジゼル様がサクソニア殿を助けた分……模様は少し伸びたと言う事ですね。」
「─っ!シモン様!」
「──失礼しました。」
シモン様の言葉に、顔色を悪くしたのはサクソニア様だ。
「サクソニア様は、何も悪くありませんから。あの時は、私の意志で、貴方を助けたいと思ったから触れたんです。どうか、気にしないで下さい。」
あの時、サクソニア様自身、自分を放って去れ─と言った。そう言われたのにも関わらず、私は戻って自分の意志で白の魔力を使ったのだ。どんな理由があったとしても、怪我をした者を放っておくなんて事はできなかったし、後悔もしていない。
「何故…双子と言う事を隠している?魔女の呪いの事は、王族でも極限られた者しか知らないだろうし、そもそも…奇伝となっている程だし……」
「それでも、魔女呪いを知っている者が居れば、ジゼル様を使って悪い事を考える者が現れる可能性がありますからね。ジゼル様の命と引き換えに、どんな病気でも怪我でも治る訳ですから。その為に、魔女の呪いを引き継ぐと言われている条件の一つを…隠す事にしたんですよ。」
本来であれば、シェールも私とおなじ17歳だけど、一つ年下と言う扱いになった。
「ジゼル様が公の場に姿を現す事がないのも…他人との接触を避ける為と言う事か…。では……フォレクシスの王妃が毒を盛られた時のお茶会で、王妃が第二王女を近寄らせなかったのは……」
「おそらく、私を守る為──だったと思います。」
あの時には、既にブレスレットをしていたから、母に触れたとしても白の魔力は発動しなかったと思うけど、それはあくまでだろうでしかない。
それに、シェールの私への過保護ぶりも大きい。
私がまだブレスレットを着けていない頃、シェールが魔力暴走を起こした。その時、たまたま私が側に居て、その魔力暴走を、私が無意識に白の魔力を発動させ収めた事があった。その日、私は手首の痛みの激しさに気を失ってしまったのだ。私が意識を失っている間、シェールは私の部屋の外でずっと泣いていたらしい。それからのシェールは、より一層自分から私を遠ざけるようになった。
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ー皆と一緒に笑って過ごしたいー
と思っていても言えなかった。そんな事、皆は思っていないかもしれない。私は、邪魔者でしかないのかもしれない。
それからは、ただひたすら王宮の奥で息を殺すようにして過ごして来た。そして私は、忘れられた王女となった。
「そんな私なんですけど…生きているうちに、やりたい事はやってみたい─と思うようになって……“最初で最後のお願いだから”と…父や母を脅して、ここに留学しに来たんです。」
「…ジゼル様」
シモン様が私を宥めるように名前を呼ぶ。
「勿論、諦めてませんよ?目標の一つに、25歳を超える事も入ってますかね!」
竜王様だって、呪いを解く為に色々調べてくれている事を知っている。家族だってそうだ。だから、私も諦めるワケにはいかないんだ。
「可能であれば、私はこのまま“ルチア=クルーデン”として、留学生活を全うしたいと思ってますけど、王太子殿下…レイノックス側が“駄目だ”と判断されたなら、私はそれに従います。ただ……第二王子の事に関しては、予定通りにお願いします。」
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