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王太子と第二王子
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翌日、朝食をそれぞれの部屋で食べた後、謁見の為の準備が始まった。普段なら、私の支度には侍女でもあるヴァレリアが手伝ってくれるけど、今はヴァレリア自身も留学生の1人なので、彼女は彼女で別室で支度をしている為、今は城付きの女官がお世話をしてくれている。
ドレスではなくワンピース。しかも、これは国王から留学生へのお祝いの品の1つなんだそうだ。私の瞳と同じ淡い緑色のワンピースだ。
「時間になりましたので、ご案内させていただきます。」
「はい。お願いします。」
案内された謁見の間には、既に8人が揃っていて、私が最後だった。
それから暫くすると、国王両陛下と王太子と第二王子がやって来た。
第二王子─ロルフ=レイノックス
金髪碧眼の正統派な王子で、風の魔力持ち。年は私と同じ17歳の為、同じ学年─3年生だ。
ちなみに、17歳での留学生は私とヴァレリアだけで、他の7人は15歳で1年生だ。
そして、このロルフ第二王子は、獣人国─フォレクシス王国の第二王女の婚約者でもある。
友好2000年の記念だとか何とかで、お互い年齢が同じで婚約者も居ない─と言う理由だとか何とか…。
フォレクシス国内では
『レイノックスの王子もお気の毒に』
『よりにもよって、無能な王女とだなんて…』
『フォレクシスの恥になるのでは?』
と、言われている。
ー第二王子自身はどう思っているんだろうか?ー
挨拶が終わると、国王両陛下は退室し、残った私達留学生と王太子と第二王子は、サロンへと移動となった。
「天気が良ければ、庭園でのティータイムを予定していたんだが、あいにくの雨だから、サロンに用意させてもらった。」
と、言ったのは王太子─エデルバート様だ。
私達留学生の管理担当なのだそうだ。
「何か問題などあれば、私やロルフに言ってもらえれば良いから。」と、ニコニコと微笑んでいるが、そんな簡単に話し掛けるなんて……と、思わなくもない。チラッと視線を向けた先にいた15歳の令嬢2人は、その微笑みに顔を赤らめている。
ー若いって単純?で良いなぁー
いや、私もまだ……若いけど……。育った環境のせいもあるのかもしれないけど、私は笑顔な人程───警戒してしまうのだ。
貴族社会なんて、上に行けば行く程、裏や腹の中は……真っ黒だ。王族ともなれば……闇ではないだろうか?
「特に、ロルフは学園には普通に行っているから、校内ですぐに捕まえられると思うから。」
なんて、軽い口調で話す王太子に、この場の空気が和み、皆で楽しくお喋りしながら過ごす事ができた。
3日目以後は、この国でのルールや学園でのルールなど、基本的なルールやマナー、有事の際の連絡の取り方などの説明を受けた。特に、プライベート時の事に関しては時間を掛けて色んな説明を受け、禁止事項については更に時間をかけて説明を受けた。
特に、魔法や魔物に関しての話が多かった。これは、仕方が無い事だ。獣人国には殆ど縁の無いモノだから。
ー魔法や魔物の話を聞くと、本当に…異国に来たんだなぁ…と言う実感が湧くよねー
一体、どんな学園生活が待っているのか……本当に、楽しみだ。
初めてのワクワクした気持ちのまま、王城での5日間は過ぎて行った。
王城生活最終日。許可をもらってヴァレリアと一緒に庭園へとやって来た。
「流石、王城の庭園ですね。」
「うん。本当に、綺麗な花がいっぱい咲いてるわね。」
この庭園には、色んな種類の白い花がたくさん咲いていた。王家のカラーが白なんだそうだ。白は少しでも余計なモノが混じれば色を変えてしまうから、手入れが大変だったりする。私が庭に植えた筈の白い花も、翌年にはピンク色の花を咲かせていた。ピンクはピンクで可愛らしい花だったけど、残酷だな─と思った。
一通り庭園を歩き回った後、城付きの女官に「時間です。ご用意ができました。」と呼ばれ、私とヴァレリアが庭園を後にして向かったのは、王城の馬車乗り場。今から、王城を出て学園の寮へと向かう為だ。
「王太子殿下!?」
そこには王太子が居た。
「あぁ、堅苦しい挨拶は要らないよ。楽にして欲しい。」
「──はい。ありがとうございます。」
どうしてこんなところに?と思っていると、
「君達2人には言っておこうと思ってね。」
「「?」」
ヴァレリアと2人で王太子の言葉を待つ。
「君達と同じ3年生に、光の魔力持ちが居るんだ。」
“光の魔力持ち”─とは、人間の国で言うところの“聖女”だ。
「確認すると、君達2人と同じクラスのようだ。勿論、弟のロルフもだけどね。その彼女が、平民の子でね。少し…貴族には馴染んでないようで……良ければだけど、時々でも構わないから、様子を見てあげて欲しい。」
ーなるほどー
人間の貴族社会でよくある平民差別?のようなモノだろう。王族の第二王子が動けば直ぐに収まるだろうけど、それはそれで逆効果になる可能性もあるワケで……いっその事、多種族の貴族の私とヴァレリアに任せよう─と……。
ー“丸投げ”ですか?ー
とは訊けない。いや、訊いて良いだろうか?いや、相手は王太子だったなぁ……。
「できる範囲には…なりますが………」
ー責任は負いませんよ?ー
平民と言えど、相手は“聖女”だ。獣人国での“癒やしの巫女”とは全く違う存在だ。できれば、そんな人とは関わりたくない─と言うのが本音だ。それに─
ー私にはやるべき事があるからー
「うん。それで構わない。感謝する。」
と、眩しいほどほど笑顔で、胸に手を当てて軽く頭を下げた。
ー胡散臭いー
と思ってしまったのは秘密だ。
ふと視線を感じて、その方に視線を向けると、王太子から少し離れた所に騎士らしき人が立っていた。
ー王太子付きの近衛だろうか?ー
目が合ってしまった為、軽く頭を下げると、その騎士も軽く頭を下げてくれた。
「それじゃあ、この国での生活を楽しんでくれ。」
と、王太子に言われてから、馬車に乗り込み学園へと向かった。
ドレスではなくワンピース。しかも、これは国王から留学生へのお祝いの品の1つなんだそうだ。私の瞳と同じ淡い緑色のワンピースだ。
「時間になりましたので、ご案内させていただきます。」
「はい。お願いします。」
案内された謁見の間には、既に8人が揃っていて、私が最後だった。
それから暫くすると、国王両陛下と王太子と第二王子がやって来た。
第二王子─ロルフ=レイノックス
金髪碧眼の正統派な王子で、風の魔力持ち。年は私と同じ17歳の為、同じ学年─3年生だ。
ちなみに、17歳での留学生は私とヴァレリアだけで、他の7人は15歳で1年生だ。
そして、このロルフ第二王子は、獣人国─フォレクシス王国の第二王女の婚約者でもある。
友好2000年の記念だとか何とかで、お互い年齢が同じで婚約者も居ない─と言う理由だとか何とか…。
フォレクシス国内では
『レイノックスの王子もお気の毒に』
『よりにもよって、無能な王女とだなんて…』
『フォレクシスの恥になるのでは?』
と、言われている。
ー第二王子自身はどう思っているんだろうか?ー
挨拶が終わると、国王両陛下は退室し、残った私達留学生と王太子と第二王子は、サロンへと移動となった。
「天気が良ければ、庭園でのティータイムを予定していたんだが、あいにくの雨だから、サロンに用意させてもらった。」
と、言ったのは王太子─エデルバート様だ。
私達留学生の管理担当なのだそうだ。
「何か問題などあれば、私やロルフに言ってもらえれば良いから。」と、ニコニコと微笑んでいるが、そんな簡単に話し掛けるなんて……と、思わなくもない。チラッと視線を向けた先にいた15歳の令嬢2人は、その微笑みに顔を赤らめている。
ー若いって単純?で良いなぁー
いや、私もまだ……若いけど……。育った環境のせいもあるのかもしれないけど、私は笑顔な人程───警戒してしまうのだ。
貴族社会なんて、上に行けば行く程、裏や腹の中は……真っ黒だ。王族ともなれば……闇ではないだろうか?
「特に、ロルフは学園には普通に行っているから、校内ですぐに捕まえられると思うから。」
なんて、軽い口調で話す王太子に、この場の空気が和み、皆で楽しくお喋りしながら過ごす事ができた。
3日目以後は、この国でのルールや学園でのルールなど、基本的なルールやマナー、有事の際の連絡の取り方などの説明を受けた。特に、プライベート時の事に関しては時間を掛けて色んな説明を受け、禁止事項については更に時間をかけて説明を受けた。
特に、魔法や魔物に関しての話が多かった。これは、仕方が無い事だ。獣人国には殆ど縁の無いモノだから。
ー魔法や魔物の話を聞くと、本当に…異国に来たんだなぁ…と言う実感が湧くよねー
一体、どんな学園生活が待っているのか……本当に、楽しみだ。
初めてのワクワクした気持ちのまま、王城での5日間は過ぎて行った。
王城生活最終日。許可をもらってヴァレリアと一緒に庭園へとやって来た。
「流石、王城の庭園ですね。」
「うん。本当に、綺麗な花がいっぱい咲いてるわね。」
この庭園には、色んな種類の白い花がたくさん咲いていた。王家のカラーが白なんだそうだ。白は少しでも余計なモノが混じれば色を変えてしまうから、手入れが大変だったりする。私が庭に植えた筈の白い花も、翌年にはピンク色の花を咲かせていた。ピンクはピンクで可愛らしい花だったけど、残酷だな─と思った。
一通り庭園を歩き回った後、城付きの女官に「時間です。ご用意ができました。」と呼ばれ、私とヴァレリアが庭園を後にして向かったのは、王城の馬車乗り場。今から、王城を出て学園の寮へと向かう為だ。
「王太子殿下!?」
そこには王太子が居た。
「あぁ、堅苦しい挨拶は要らないよ。楽にして欲しい。」
「──はい。ありがとうございます。」
どうしてこんなところに?と思っていると、
「君達2人には言っておこうと思ってね。」
「「?」」
ヴァレリアと2人で王太子の言葉を待つ。
「君達と同じ3年生に、光の魔力持ちが居るんだ。」
“光の魔力持ち”─とは、人間の国で言うところの“聖女”だ。
「確認すると、君達2人と同じクラスのようだ。勿論、弟のロルフもだけどね。その彼女が、平民の子でね。少し…貴族には馴染んでないようで……良ければだけど、時々でも構わないから、様子を見てあげて欲しい。」
ーなるほどー
人間の貴族社会でよくある平民差別?のようなモノだろう。王族の第二王子が動けば直ぐに収まるだろうけど、それはそれで逆効果になる可能性もあるワケで……いっその事、多種族の貴族の私とヴァレリアに任せよう─と……。
ー“丸投げ”ですか?ー
とは訊けない。いや、訊いて良いだろうか?いや、相手は王太子だったなぁ……。
「できる範囲には…なりますが………」
ー責任は負いませんよ?ー
平民と言えど、相手は“聖女”だ。獣人国での“癒やしの巫女”とは全く違う存在だ。できれば、そんな人とは関わりたくない─と言うのが本音だ。それに─
ー私にはやるべき事があるからー
「うん。それで構わない。感謝する。」
と、眩しいほどほど笑顔で、胸に手を当てて軽く頭を下げた。
ー胡散臭いー
と思ってしまったのは秘密だ。
ふと視線を感じて、その方に視線を向けると、王太子から少し離れた所に騎士らしき人が立っていた。
ー王太子付きの近衛だろうか?ー
目が合ってしまった為、軽く頭を下げると、その騎士も軽く頭を下げてくれた。
「それじゃあ、この国での生活を楽しんでくれ。」
と、王太子に言われてから、馬車に乗り込み学園へと向かった。
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