最初で最後の我儘を

みん

文字の大きさ
上 下
5 / 42

王太子と第二王子

しおりを挟む
翌日、朝食をそれぞれの部屋で食べた後、謁見の為の準備が始まった。普段なら、私の支度には侍女でもあるヴァレリアが手伝ってくれるけど、今はヴァレリア自身も留学生の1人なので、彼女は彼女で別室で支度をしている為、今は城付きの女官がお世話をしてくれている。
ドレスではなくワンピース。しかも、これは国王から留学生へのお祝いの品の1つなんだそうだ。私の瞳と同じ淡い緑色のワンピースだ。

「時間になりましたので、ご案内させていただきます。」
「はい。お願いします。」






案内された謁見の間には、既に8人が揃っていて、私が最後だった。
それから暫くすると、国王両陛下と王太子と第二王子がやって来た。


第二王子─ロルフ=レイノックス

金髪碧眼の正統派な王子で、風の魔力持ち。年は私と同じ17歳の為、同じ学年─3年生だ。
ちなみに、17歳での留学生は私とヴァレリアだけで、他の7人は15歳で1年生だ。

そして、このロルフ第二王子は、獣人国─フォレクシス王国の第二王女の婚約者でもある。

友好2000年の記念だとか何とかで、お互い年齢が同じで婚約者も居ない─と言う理由だとか何とか…。

フォレクシス国内では

『レイノックスの王子もお気の毒に』
『よりにもよって、無能な王女とだなんて…』
フォレクシス我が国の恥になるのでは?』

と、言われている。

ー第二王子自身はどう思っているんだろうか?ー







挨拶が終わると、国王両陛下は退室し、残った私達留学生と王太子と第二王子は、サロンへと移動となった。

「天気が良ければ、庭園でのティータイムを予定していたんだが、あいにくの雨だから、サロンに用意させてもらった。」

と、言ったのは王太子─エデルバート様だ。
私達留学生の管理担当なのだそうだ。
「何か問題などあれば、私やロルフに言ってもらえれば良いから。」と、ニコニコと微笑んでいるが、そんな簡単に話し掛けるなんて……と、思わなくもない。チラッと視線を向けた先にいた15歳の令嬢2人は、その微笑みに顔を赤らめている。

ー若いって単純?で良いなぁー

いや、私もまだ……若いけど……。育った環境のせいもあるのかもしれないけど、私は笑顔な人程───警戒してしまうのだ。
貴族社会なんて、上に行けば行く程、裏や腹の中は……真っ黒だ。王族ともなれば……闇ではないだろうか?

「特に、ロルフは学園には普通に行っているから、校内ですぐに捕まえられると思うから。」

なんて、軽い口調で話す王太子に、この場の空気が和み、皆で楽しくお喋りしながら過ごす事ができた。






3日目以後は、この国でのルールや学園でのルールなど、基本的なルールやマナー、有事の際の連絡の取り方などの説明を受けた。特に、プライベート時の事に関しては時間を掛けて色んな説明を受け、禁止事項については更に時間をかけて説明を受けた。

特に、魔法や魔物に関しての話が多かった。これは、仕方が無い事だ。獣人国には殆ど縁の無いモノだから。

ー魔法や魔物の話を聞くと、本当に…異国に来たんだなぁ…と言う実感が湧くよねー

一体、どんな学園生活が待っているのか……本当に、楽しみだ。

初めてのワクワクした気持ちのまま、王城での5日間は過ぎて行った。








王城生活最終日。許可をもらってヴァレリアと一緒に庭園へとやって来た。


「流石、王城の庭園ですね。」
「うん。本当に、綺麗な花がいっぱい咲いてるわね。」

この庭園には、色んな種類の白い花がたくさん咲いていた。王家のカラーが白なんだそうだ。白は少しでも余計なモノが混じれば色を変えてしまうから、手入れが大変だったりする。私が庭に植えた筈の白い花も、翌年にはピンク色の花を咲かせていた。ピンクはピンクで可愛らしい花だったけど、残酷だな─と思った。


一通り庭園を歩き回った後、城付きの女官に「時間です。ご用意ができました。」と呼ばれ、私とヴァレリアが庭園を後にして向かったのは、王城の馬車乗り場。今から、王城を出て学園の寮へと向かう為だ。

「王太子殿下!?」

そこには王太子が居た。

「あぁ、堅苦しい挨拶は要らないよ。楽にして欲しい。」

「──はい。ありがとうございます。」

どうしてこんなところに?と思っていると、

「君達2人には言っておこうと思ってね。」

「「?」」

ヴァレリアと2人で王太子の言葉を待つ。

「君達と同じ3年生に、光の魔力持ちが居るんだ。」

“光の魔力持ち”─とは、人間の国で言うところの“聖女”だ。

「確認すると、君達2人と同じクラスのようだ。勿論、弟のロルフもだけどね。その彼女が、平民の子でね。少し…貴族には馴染んでないようで……良ければだけど、時々でも構わないから、様子を見てあげて欲しい。」

ーなるほどー

人間の貴族社会でよくある平民差別?のようなモノだろう。王族の第二王子が動けば直ぐに収まるだろうけど、それはそれで逆効果になる可能性もあるワケで……いっその事、多種族の貴族の私とヴァレリアに任せよう─と……。

ー“丸投げ”ですか?ー

とは訊けない。いや、訊いて良いだろうか?いや、相手は王太子だったなぁ……。

「できる範囲には…なりますが………」

ー責任は負いませんよ?ー

平民と言えど、相手は“聖女”だ。獣人国での“癒やしの巫女”とは全く違う存在だ。できれば、そんな人とは関わりたくない─と言うのが本音だ。それに─

ー私にはやるべき事があるからー

「うん。それで構わない。感謝する。」

と、眩しいほどほど笑顔で、胸に手を当てて軽く頭を下げた。

ー胡散臭いー

と思ってしまったのは秘密だ。
ふと視線を感じて、その方に視線を向けると、王太子から少し離れた所に騎士らしき人が立っていた。

ー王太子付きの近衛だろうか?ー

目が合ってしまった為、軽く頭を下げると、その騎士も軽く頭を下げてくれた。

「それじゃあ、この国での生活を楽しんでくれ。」

と、王太子に言われてから、馬車に乗り込み学園へと向かった。







しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

「次点の聖女」

手嶋ゆき
恋愛
 何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。  私は「次点の聖女」と呼ばれていた。  約一万文字強で完結します。  小説家になろう様にも掲載しています。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

神託を聞けた姉が聖女に選ばれました。私、女神様自体を見ることが出来るんですけど… (21話完結 作成済み)

京月
恋愛
両親がいない私達姉妹。 生きていくために身を粉にして働く妹マリン。 家事を全て妹の私に押し付けて、村の男の子たちと遊ぶ姉シーナ。 ある日、ゼラス教の大司祭様が我が家を訪ねてきて神託が聞けるかと質問してきた。 姉「あ、私聞けた!これから雨が降るって!!」  司祭「雨が降ってきた……!間違いない!彼女こそが聖女だ!!」 妹「…(このふわふわ浮いている女性誰だろう?)」 ※本日を持ちまして完結とさせていただきます。  更新が出来ない日があったり、時間が不定期など様々なご迷惑をおかけいたしましたが、この作品を読んでくださった皆様には感謝しかございません。  ありがとうございました。

侯爵令嬢セリーナ・マクギリウスは冷徹な鬼公爵に溺愛される。 わたくしが古の大聖女の生まれ変わり? そんなの聞いてません!!

友坂 悠
恋愛
「セリーナ・マクギリウス。貴女の魔法省への入省を許可します」 婚約破棄され修道院に入れられかけたあたしがなんとか採用されたのは国家の魔法を一手に司る魔法省。 そこであたしの前に現れたのは冷徹公爵と噂のオルファリド・グラキエスト様でした。 「君はバカか?」 あたしの話を聞いてくれた彼は開口一番そうのたまって。 ってちょっと待って。 いくらなんでもそれは言い過ぎじゃないですか!!? ⭐︎⭐︎⭐︎ 「セリーナ嬢、君のこれまでの悪行、これ以上は見過ごすことはできない!」 貴族院の卒業記念パーティの会場で、茶番は起きました。 あたしの婚約者であったコーネリアス殿下。会場の真ん中をスタスタと進みあたしの前に立つと、彼はそう言い放ったのです。 「レミリア・マーベル男爵令嬢に対する数々の陰湿ないじめ。とても君は国母となるに相応しいとは思えない!」 「私、コーネリアス・ライネックの名においてここに宣言する! セリーナ・マクギリウス侯爵令嬢との婚約を破棄することを!!」 と、声を張り上げたのです。 「殿下! 待ってください! わたくしには何がなんだか。身に覚えがありません!」 周囲を見渡してみると、今まで仲良くしてくれていたはずのお友達たちも、良くしてくれていたコーネリアス殿下のお付きの人たちも、仲が良かった従兄弟のマクリアンまでもが殿下の横に立ち、あたしに非難めいた視線を送ってきているのに気がついて。 「言い逃れなど見苦しい! 証拠があるのだ。そして、ここにいる皆がそう証言をしているのだぞ!」 え? どういうこと? 二人っきりの時に嫌味を言っただの、お茶会の場で彼女のドレスに飲み物をわざとかけただの。 彼女の私物を隠しただの、人を使って階段の踊り場から彼女を突き落とそうとしただの。 とそんな濡れ衣を着せられたあたし。 漂う黒い陰湿な気配。 そんな黒いもやが見え。 ふんわり歩いてきて殿下の横に縋り付くようにくっついて、そしてこちらを見て笑うレミリア。 「私は真実の愛を見つけた。これからはこのレミリア嬢と添い遂げてゆこうと思う」 あたしのことなんかもう忘れたかのようにレミリアに微笑むコーネリアス殿下。 背中にじっとりとつめたいものが走り、尋常でない様子に気分が悪くなったあたし。 ほんと、この先どうなっちゃうの?

【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。

藍生蕗
恋愛
 かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。  そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……  偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。 ※ 設定は甘めです ※ 他のサイトにも投稿しています

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

処理中です...