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加護無し
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*東の塔から出た後のアシーナ視点*
今日は、キョウコとミオとイツキが面会をする日。カミリア王女が2人と約束していたらしく、3人だけで会うことになった。
そして、3人だけでゆっくり話して─と言って、予定通りに3人を魔導士団長の執務室に残して、カミリア王女とレインと魔導士団長が国王陛下の執務室にやって来た。
この部屋に居るのは─
国王陛下、カミリア王女、宰相、第一騎士団長、魔導士団長、リュークレイン、アシーナである。
「3人の様子は、大丈夫でしたか?」
「ええ、大丈夫よ。ミオもイツキも、キョウコの無事な姿を見て喜んでいたわ。」
カミリア王女が笑顔で頷き、後ろに控えているレインもコクリと頷いた。
「では……予定通り、アシーナ、報告を。」
カミリア王女が椅子に座ったのを確認した後、同席している兄で宰相でもあるアリスタ公爵が話を促した。
「では、召喚された4人に関しては、いつ浄化巡礼に出ても問題無いレベルだと言う事だな?」
「はい。問題ありません。」
召喚された4人は、もともとのレベルも高かったが、訓練をする度に乾いた土が水分を吸収するかの様に能力を更に高め、レベルは40を超え最高レベルの50も視野に入っている程だった。
ーただ、唯一の聖女であるサヤカに関しては、少しだけ問題もあるが……ー
「それは喜ばしい事だが……過去の文献によれば、召喚されて来る者は複数名いる事は今回も同じだった。だが、その複数名のうち、誰か1人2人は精霊の加護を持っていたようだか…今回は、ルーナ─キョウコだけだったと言う事なのか?それに……何故聖女に加護が無いのだ?」
国王陛下の疑問は尤もだ。過去同様に、複数名やって来たにも関わらず、キョウコ以外は加護無しで、唯一の聖女も加護無しだった。過去の聖女は、必ず加護があったそうだ。
「その事に関しては……直接ウンディーネ様から教えていただきました。実は──」
ウンディーネが加護を与えたキョウコが、他の4人より2年先に落ちて来た。その事は、精霊達にとっても予想外な事だったと。もとより、ウンディーネはキョウコがこちらに落ちて来たら加護を与える予定だった為問題は無かったが、他の精霊達はそうもいかなかった。
異世界から来てこの世界を救う存在の彼らに、全員ではないが1人か2人には加護を与える予定だった。それが──
ウンディーネが加護を与えたキョウコを、4人が苛めていた(ミオとイツキはしていないと言う事は、召喚の段階では分かっていなかった)。そんな者に他の精霊が加護を与えれば──
『ある意味、水の精霊に喧嘩を売る形になるでしょう?だから、誰もあの4人に加護を与えられなかったのよ。』
ふふっ─と笑ったウンディーネ様の笑顔は怖ろしかった。
「そう言う事なので、4人とも加護無しですが、これからのウンディーネ様の意思次第で、ミオかイツキが加護を受ける可能性もあるのではないか?と思います。」
「なる程……」
国王陛下は、それだけ呟いた。
それから、4人のそれぞれの状況を報告した後、一度休憩を挟み、浄化巡礼についての話し合いをすると言う前に、レインが真剣な顔をして兄と私にお願いをしに来た。
「今から、キョウコと2人で話をする時間が欲しい。」
その願いを聞いた兄は、表情は変わらなかったものの、喜びで溢れている事が分かるくらい目が輝いていた。
「私は良いわよ。」
「私も構わないが……無理強いだけはするなよ?」
「そんな事はしませんよ。父上、叔母上、ありがとうございます。では、キョウコを迎えに行って来ます。」
そのまま兄と、この部屋を出て行く甥の後ろ姿を見つめる。
「お兄様……良かったですね?」
「───本当に…良かった。しかも、ルーナだぞ!?あのもふもふだぞ!?あぁ、キョウコも可愛らしかったな!!リナも可愛いが、キョウコが嫁!!私の娘達が可愛い!!」
「……………」
普段は、視線だけで他人を殺せるような冷たい表情をしている宰相である私の兄。しかし、プライベートでは、家族大好き人間で、特に娘であるリナの事は溺愛している。かと言って、甘やかすだけではないから、リナも我侭、傲慢な令嬢にはならず、しっかりとしつつも優しい子に育った。
レインに関しても、嫡男であるが故に厳しく育てられたが、その倍、愛情も注がれていた。勿論、嫁大好き人間でもあり、妹である私の事も可愛がってくれている。
ーちょっとひく位にー
「お兄様、一つ相談なのだけれど………」
「あぁ、分かっている。精霊の加護持ちだからね。アシーナが後ろ盾になってくれたら…充分だ。お釣りが来る位か?」
「──いつから準備を?」
「ん?勿論、ルーナが実は女の子だった─と知ってからだ。」
ー流石は、宰相を務めている兄だー
「お兄様こそ、無理矢理事を進めないようにして下さいね。キョウコが嫌がれば…東の魔女である私が相手をしますからね?」
「それは……怖いね………」
と、両手を上げて苦笑するお兄様は……やっぱり嬉しそうだった。
今日は、キョウコとミオとイツキが面会をする日。カミリア王女が2人と約束していたらしく、3人だけで会うことになった。
そして、3人だけでゆっくり話して─と言って、予定通りに3人を魔導士団長の執務室に残して、カミリア王女とレインと魔導士団長が国王陛下の執務室にやって来た。
この部屋に居るのは─
国王陛下、カミリア王女、宰相、第一騎士団長、魔導士団長、リュークレイン、アシーナである。
「3人の様子は、大丈夫でしたか?」
「ええ、大丈夫よ。ミオもイツキも、キョウコの無事な姿を見て喜んでいたわ。」
カミリア王女が笑顔で頷き、後ろに控えているレインもコクリと頷いた。
「では……予定通り、アシーナ、報告を。」
カミリア王女が椅子に座ったのを確認した後、同席している兄で宰相でもあるアリスタ公爵が話を促した。
「では、召喚された4人に関しては、いつ浄化巡礼に出ても問題無いレベルだと言う事だな?」
「はい。問題ありません。」
召喚された4人は、もともとのレベルも高かったが、訓練をする度に乾いた土が水分を吸収するかの様に能力を更に高め、レベルは40を超え最高レベルの50も視野に入っている程だった。
ーただ、唯一の聖女であるサヤカに関しては、少しだけ問題もあるが……ー
「それは喜ばしい事だが……過去の文献によれば、召喚されて来る者は複数名いる事は今回も同じだった。だが、その複数名のうち、誰か1人2人は精霊の加護を持っていたようだか…今回は、ルーナ─キョウコだけだったと言う事なのか?それに……何故聖女に加護が無いのだ?」
国王陛下の疑問は尤もだ。過去同様に、複数名やって来たにも関わらず、キョウコ以外は加護無しで、唯一の聖女も加護無しだった。過去の聖女は、必ず加護があったそうだ。
「その事に関しては……直接ウンディーネ様から教えていただきました。実は──」
ウンディーネが加護を与えたキョウコが、他の4人より2年先に落ちて来た。その事は、精霊達にとっても予想外な事だったと。もとより、ウンディーネはキョウコがこちらに落ちて来たら加護を与える予定だった為問題は無かったが、他の精霊達はそうもいかなかった。
異世界から来てこの世界を救う存在の彼らに、全員ではないが1人か2人には加護を与える予定だった。それが──
ウンディーネが加護を与えたキョウコを、4人が苛めていた(ミオとイツキはしていないと言う事は、召喚の段階では分かっていなかった)。そんな者に他の精霊が加護を与えれば──
『ある意味、水の精霊に喧嘩を売る形になるでしょう?だから、誰もあの4人に加護を与えられなかったのよ。』
ふふっ─と笑ったウンディーネ様の笑顔は怖ろしかった。
「そう言う事なので、4人とも加護無しですが、これからのウンディーネ様の意思次第で、ミオかイツキが加護を受ける可能性もあるのではないか?と思います。」
「なる程……」
国王陛下は、それだけ呟いた。
それから、4人のそれぞれの状況を報告した後、一度休憩を挟み、浄化巡礼についての話し合いをすると言う前に、レインが真剣な顔をして兄と私にお願いをしに来た。
「今から、キョウコと2人で話をする時間が欲しい。」
その願いを聞いた兄は、表情は変わらなかったものの、喜びで溢れている事が分かるくらい目が輝いていた。
「私は良いわよ。」
「私も構わないが……無理強いだけはするなよ?」
「そんな事はしませんよ。父上、叔母上、ありがとうございます。では、キョウコを迎えに行って来ます。」
そのまま兄と、この部屋を出て行く甥の後ろ姿を見つめる。
「お兄様……良かったですね?」
「───本当に…良かった。しかも、ルーナだぞ!?あのもふもふだぞ!?あぁ、キョウコも可愛らしかったな!!リナも可愛いが、キョウコが嫁!!私の娘達が可愛い!!」
「……………」
普段は、視線だけで他人を殺せるような冷たい表情をしている宰相である私の兄。しかし、プライベートでは、家族大好き人間で、特に娘であるリナの事は溺愛している。かと言って、甘やかすだけではないから、リナも我侭、傲慢な令嬢にはならず、しっかりとしつつも優しい子に育った。
レインに関しても、嫡男であるが故に厳しく育てられたが、その倍、愛情も注がれていた。勿論、嫁大好き人間でもあり、妹である私の事も可愛がってくれている。
ーちょっとひく位にー
「お兄様、一つ相談なのだけれど………」
「あぁ、分かっている。精霊の加護持ちだからね。アシーナが後ろ盾になってくれたら…充分だ。お釣りが来る位か?」
「──いつから準備を?」
「ん?勿論、ルーナが実は女の子だった─と知ってからだ。」
ー流石は、宰相を務めている兄だー
「お兄様こそ、無理矢理事を進めないようにして下さいね。キョウコが嫌がれば…東の魔女である私が相手をしますからね?」
「それは……怖いね………」
と、両手を上げて苦笑するお兄様は……やっぱり嬉しそうだった。
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