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愛し子
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『幼馴染みだからって、調子に乗らないでね』
『ブスのくせに──』
そんな事、私に言われても──
自分が可愛いなんて思ってないし、調子になんて乗ってない。陽真とは離れたい。関わりたくない。
私の事なんて、放っておいて欲しい──
「───ルーナ」
暗闇に落ちそうになった時、優しい声が耳に届いた。そして、痛みのあるお腹がほんのりと温かくなって、ゆっくりと目を開けた。
「ルーナ!」
『────?』
目は開いているけど、体が動かない。それでも─と、何とか体を動かそうとすると、お腹に激痛が走り、そのまま蹲る。
『───きゅぅ─────っ!!!』
「ルーナ、大丈夫か!?」
蹲る私の背中を優しく撫でるのは、リュークレインさんだ。
ーあれ?何で…リュークレインさん?あれ?ここは、庭じゃない?ー
痛みが少し落ち着いて、改めてリュークレインさんを見上げて、コテンと首を傾げる。
「──可愛いな…じゃなくて、どうなったか……分かってない感じか?」
コクコクと頷くと、リュークレインさんは、痛むお腹に注意しながら私を抱き上げて自分の膝の上にクッションを乗せて、そのクッションの上に私を乗せて、話をしてくれた。
ーいや、膝の上じゃなくてもいいんですけど?ー
と言っても分かってもらえる筈もなく、撫でてくれる手を素直に受け止める事にした。
一部始終、カーリーさんが見ていた事を聞いた話しによると─
『ふんっ。あの女によく似合う…灰を被ったみたいな犬ね』
と、ロゼリアさんが呟いた後、私は彼女に思いっ切りお腹を蹴られたらしい。
ーあれ?私には水の精霊さんの加護があったんじゃなかった?思いっ切り怪我してない?ー
『うーん???』
と、少し考えながら唸っていると
「あぁ、これは叔母上の仮定なんだが、アークルハイン嬢の悪意はあくまでもリナへのもので、ルーナには向いていなかったから、加護が発動しなかったのでは?と言っていた。」
ー法の抜け道ならぬ、加護の抜け道ですか?ー
「ただ、実際にルーナに危害を加えたから、その時点でアークルハイン嬢は仕返しを喰らったけどね」
と、リュークレインさんはニッコリと微笑む。
「ルーナを蹴った右足が骨折していたんだ」
ー骨折!?ー
あ、そう言えば、意識が途切れる前に何か叫んでいたっけ?骨折して、痛かったから?大丈夫…なのかなぁ?
それから、カーリーさんが人を呼び、ロゼリアさんには医者を呼び、私は意識を失っていた為急いでアシーナさんに連絡を飛ばしたそうだ。
「それで、叔母上は今……父上と一緒に王城に行ってる。」
『おうじょう?』
「ルーナには、水の精霊の加護があるだろう?精霊の加護がある者は、精霊に愛されていると言う事。“精霊の愛し子”と言うのだが、その愛し子が大怪我をした。この意味…分かるか?」
『あー……』
ー確か、とある国が消え去ったとか云々の話だよね?ー
「叔母上は、白狼であり水の精霊の加護を持つルーナの事は、国には報告せず隠していたんだが、そうもいかなくなったから、報告を兼ねて登城しているんだ。愛し子であるルーナがこうなった以上、水の精霊がどう動くか……」
ーかなり怖いけど…ようやく会えるのかな?ー
とにかく会えたら、この国が消えないように全力を尽くそう。そう心に決めて、うんうんと1人意気込んでいると
『私の可愛い子に怪我をさせたのは……だあれ?』
と、冷たい空気を纏ったような声が響いた。
******
*王城、謁見室(アシーナ視点)*
「────白狼に……月属性の水の精霊の加護持ち……」
「はい。今回、ロゼリア=アークルハイン嬢が危害を加えたのは、私が保護している、月属性の水の精霊の加護持ちの白狼です」
「「…………………」」
ルーナが怪我をして気を失った─
と報告があったのが昨日。急いでアリスタ邸に転移してルーナに治癒魔法を施した。それでも綺麗には治りきらず、ルーナも眠ったままだった。今朝、登城する前にも様子を見に行ったけど、まだ眠ったままだった。そのまま登城するのも心配だったけど、レインがたまたま休みで邸に居るとの事だったから、ルーナの事はレインに任せて、私は兄と共に国王陛下のもとへとやって来た。
ルーナの存在は、もう少し隠しておきたかったけど、こうなっては仕方無い。水の精霊は、必ず動くだろうから。
そして今、私達の目の前で固まっているのは、国王陛下と………王太子。
「──不敬を承知で言わせていただきますが……王太子殿下、全ての元凶が、ご自分である事を理解しておりますか?」
「アシーナ!」
私の横に居る兄が、咎めるように私の名を呼ぶ。
「婚約者が居る身でありながら、その婚約者を蔑ろにし、そのせいでロゼリア=アークルハイン嬢をつけ上がらせたのですよ?伯爵令嬢が、公爵邸に先触れもなく訪れ、挙句に公爵邸の犬を蹴るなど……アークルハイン伯爵令嬢は、我が兄上─アリスタ公爵に喧嘩を売っているようなモノですよね?」
と、私はニッコリ微笑んだ。
『ブスのくせに──』
そんな事、私に言われても──
自分が可愛いなんて思ってないし、調子になんて乗ってない。陽真とは離れたい。関わりたくない。
私の事なんて、放っておいて欲しい──
「───ルーナ」
暗闇に落ちそうになった時、優しい声が耳に届いた。そして、痛みのあるお腹がほんのりと温かくなって、ゆっくりと目を開けた。
「ルーナ!」
『────?』
目は開いているけど、体が動かない。それでも─と、何とか体を動かそうとすると、お腹に激痛が走り、そのまま蹲る。
『───きゅぅ─────っ!!!』
「ルーナ、大丈夫か!?」
蹲る私の背中を優しく撫でるのは、リュークレインさんだ。
ーあれ?何で…リュークレインさん?あれ?ここは、庭じゃない?ー
痛みが少し落ち着いて、改めてリュークレインさんを見上げて、コテンと首を傾げる。
「──可愛いな…じゃなくて、どうなったか……分かってない感じか?」
コクコクと頷くと、リュークレインさんは、痛むお腹に注意しながら私を抱き上げて自分の膝の上にクッションを乗せて、そのクッションの上に私を乗せて、話をしてくれた。
ーいや、膝の上じゃなくてもいいんですけど?ー
と言っても分かってもらえる筈もなく、撫でてくれる手を素直に受け止める事にした。
一部始終、カーリーさんが見ていた事を聞いた話しによると─
『ふんっ。あの女によく似合う…灰を被ったみたいな犬ね』
と、ロゼリアさんが呟いた後、私は彼女に思いっ切りお腹を蹴られたらしい。
ーあれ?私には水の精霊さんの加護があったんじゃなかった?思いっ切り怪我してない?ー
『うーん???』
と、少し考えながら唸っていると
「あぁ、これは叔母上の仮定なんだが、アークルハイン嬢の悪意はあくまでもリナへのもので、ルーナには向いていなかったから、加護が発動しなかったのでは?と言っていた。」
ー法の抜け道ならぬ、加護の抜け道ですか?ー
「ただ、実際にルーナに危害を加えたから、その時点でアークルハイン嬢は仕返しを喰らったけどね」
と、リュークレインさんはニッコリと微笑む。
「ルーナを蹴った右足が骨折していたんだ」
ー骨折!?ー
あ、そう言えば、意識が途切れる前に何か叫んでいたっけ?骨折して、痛かったから?大丈夫…なのかなぁ?
それから、カーリーさんが人を呼び、ロゼリアさんには医者を呼び、私は意識を失っていた為急いでアシーナさんに連絡を飛ばしたそうだ。
「それで、叔母上は今……父上と一緒に王城に行ってる。」
『おうじょう?』
「ルーナには、水の精霊の加護があるだろう?精霊の加護がある者は、精霊に愛されていると言う事。“精霊の愛し子”と言うのだが、その愛し子が大怪我をした。この意味…分かるか?」
『あー……』
ー確か、とある国が消え去ったとか云々の話だよね?ー
「叔母上は、白狼であり水の精霊の加護を持つルーナの事は、国には報告せず隠していたんだが、そうもいかなくなったから、報告を兼ねて登城しているんだ。愛し子であるルーナがこうなった以上、水の精霊がどう動くか……」
ーかなり怖いけど…ようやく会えるのかな?ー
とにかく会えたら、この国が消えないように全力を尽くそう。そう心に決めて、うんうんと1人意気込んでいると
『私の可愛い子に怪我をさせたのは……だあれ?』
と、冷たい空気を纏ったような声が響いた。
******
*王城、謁見室(アシーナ視点)*
「────白狼に……月属性の水の精霊の加護持ち……」
「はい。今回、ロゼリア=アークルハイン嬢が危害を加えたのは、私が保護している、月属性の水の精霊の加護持ちの白狼です」
「「…………………」」
ルーナが怪我をして気を失った─
と報告があったのが昨日。急いでアリスタ邸に転移してルーナに治癒魔法を施した。それでも綺麗には治りきらず、ルーナも眠ったままだった。今朝、登城する前にも様子を見に行ったけど、まだ眠ったままだった。そのまま登城するのも心配だったけど、レインがたまたま休みで邸に居るとの事だったから、ルーナの事はレインに任せて、私は兄と共に国王陛下のもとへとやって来た。
ルーナの存在は、もう少し隠しておきたかったけど、こうなっては仕方無い。水の精霊は、必ず動くだろうから。
そして今、私達の目の前で固まっているのは、国王陛下と………王太子。
「──不敬を承知で言わせていただきますが……王太子殿下、全ての元凶が、ご自分である事を理解しておりますか?」
「アシーナ!」
私の横に居る兄が、咎めるように私の名を呼ぶ。
「婚約者が居る身でありながら、その婚約者を蔑ろにし、そのせいでロゼリア=アークルハイン嬢をつけ上がらせたのですよ?伯爵令嬢が、公爵邸に先触れもなく訪れ、挙句に公爵邸の犬を蹴るなど……アークルハイン伯爵令嬢は、我が兄上─アリスタ公爵に喧嘩を売っているようなモノですよね?」
と、私はニッコリ微笑んだ。
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