上 下
112 / 123
第三章ーリスと氷の騎士ー

夫婦の部屋

しおりを挟む
『おめでとう』

皆から祝福される結婚式。



ー幸せだなぁー



還れなかったあの日。還れないと分かったあの日。あの時の自分に言ってあげたい。

“あなたは、この世界で幸せになれるよ”─と。

横に居るエディオルさんを見上げると、やっぱりエディオルさんも私を見ていて、目が合うと優しく微笑んでくれる。
そんな優しくて大好きなと、私はこれからもずっと一緒に…居られるのだ。










*****


結婚式も滞り無く終わり、参列してくれた人達を見送った後、ウェディングドレス姿のままでネージュの元へとやって来た。

『主、とっても綺麗だ。』

ネージュが尻尾をブンブン振りながら、嬉しそうに目を細めて笑う。

「ネージュ、ありがとう。きっと、ネージュもウェディングドレスを着たら綺麗……だけじゃ済まない気がする…。」

ー想像しただけで綺麗だよね!え?扉、開けちゃう!?ー

「ハル、落ち着こうか?」

「うっ…はい…すみません。」

『あーじ、きれい!』
「エディオル、ちょっと良いか?」

ウェディングドレス姿の私を目にしたネロが、キラキラ輝きながら擬人化して私を呼んだのと、まだ帰らずに邸に残っていたクレイル様がやって来てディを呼んだのは、同時だった。

今、立っているディの横で、しゃがんでいる私に抱き付いている少女ネロ。そのネロの横で尻尾を振っているフェンリルネージュ。そのネージュの後ろにノアが立って居る状態である。

「────は?」

何故か、クレイル様は目を大きく見開いて、一言発した後固まった。

「どうした?クレイル。」

ディの問い掛けの後も、暫く固まったままで─

「え?昔のハル殿が居る。え?ハル殿の…子供!?」

「そんな訳無いだろう!」

ディが呆れたように、クレイル様に突っ込みを入れ、ネロの事を説明した。





「なるほど。魔獣の子供は、引き継いだ魔力の持ち主に似るのか…だから、ネロはハル殿に似ていると…。ノアが黒いから髪が黒いと…。いや、本当に…懐かしい感じだね。」

『?あーじに、にてる?うれしい!』

と、ネロがニッコリと笑う。

「何、この子!可愛いな!」

と、クレイル様がネロを抱き上げて─所謂、“高い高い”をすると、ネロは『きゃあーっ』と言いながら喜んでいる。

「えっと…初孫…初姪?を喜ぶ伯父さん─みたいな?」

ーうんうん。クレイル様の気持ち、よく分かりますよ!ー

と、微笑ましく思いながら、その様子を眺めている私の横で

「…ハルに分、ネロに全力投球しそうだな…」

と、ディが苦笑しながら小さく呟いた。










そして、今日の夕食は、辺境地のパルヴァン邸で小さな宴会の様な感じで、皆でワイワイ楽しく食事をした。

『ハル、絶対にアルコールは飲まないように』

と、夕食前にディに、背中がゾワゾワする微笑みと共に囁かれた。

ー折角のおめでたい席なのだから、少し位ー

と思ってたけど…ディの圧が半端無いので…おとなしく諦めます。これは、絶対に逆らってはいけないヤツです!何故かは分からないけど、今日は絶対飲みません!







その夕食では、式ではあまり話ができなかった、お互いの親とも沢山話ができた。
特に、ルーチェ様のテンションがマックスだった。

「ハルさんの世界の結婚式は、色々と素敵な事をしているのね!白色のハルさんが、エディの色に…やだ!素敵過ぎない!?どうしようかしら!?」

「ルーチェ、少し…落ち着こうか?」

と、ルイス様がルーチェ様の背中をトントンと叩く。

ー親から言われる程、恥ずかしくて居た堪れない事って無いよね!?ー








「ハル様、そろそろ…」

と、ルナさんがソッと声を掛けて来たので、私はコクリと頷く。皆はまだまだ…ひょっとしたら夜通しの宴会になるかも知れないけど、私は一足先に蒼の邸に帰る。
蒼の邸の使用人達全員が、私が魔法使いだと知ったので、私はチートよろしく!で、蒼の邸と王都と辺境地のパルヴァン邸とを繋ぐ魔法陣を貼り付けました!なので、その魔法陣を使って蒼の邸に帰って………






をするそうです──








*****


朝と同様に、「これでもか!」と言う程体を隅々迄洗われた。それから香油?を塗られました。


それから……


「これが、聖女様達から頂いたナイトドレスですか?綺麗ですね。」


今からナイトドレススケスケを……着るようです。









「では、ハル様。今日…いえ、今日、こちらの寝室をお使い下さい。」

そう言いながら、ルナさんが夫婦の部屋の扉を開けた。

「さぁ、どうぞ。」

と、ニッコリ微笑むルナさんに促されて、私はその部屋へと入って行った。

「それでは、私もこれで、失礼致します。」

「え!?もう!?」

と、ビックリして扉の方を振り返ると同時に、パタンッと音を立ててその扉が閉まった。

ーどどどどどうする?何処に居たら良いの!?ー

改めて部屋を見渡す。


そこには、やっぱりキングサイズのベットが鎮座していて、今日は、そのベットには青色と白色の花びらが散りばめられている。

サイドテーブルには水とコップ2つが置かれている。
窓際には、2人がゆっくり座れる程のソファーがある。

ーあのソファーに座る?ー

と、そのソファーに腰をおろした時──

コンコンと扉を叩く音と共に

「入るぞ?」

と言う声が聞こえた。











❋婚姻を結んだのを機に、ハルなりのけじめ?として、ハルの心の中でのエディオルの呼び方を、“エディオルさん”から“ディ”にしました❋


しおりを挟む
感想 134

あなたにおすすめの小説

没落令嬢は、おじさん魔道士を尽くスルーする

みん
恋愛
とある国の辺境地にある修道院で育った“ニア”は、元伯爵令嬢だ。この国では、平民の殆どは魔力無しで、魔力持ちの殆どが貴族。その貴族でも魔力持ちは少ない。色んな事情から、魔力があると言う理由で、15歳の頃から働かされていた。ただ言われるがままに働くだけの毎日。 そんな日々を過ごしていたある日、新しい魔力持ちの……“おじさん魔道士”がやって来た。 ❋相変わらずのゆるふわ設定なので、軽く読んでいただければ幸いです。 ❋気を付けてはいますが、どうしても誤字脱字を出してしまいます。すみません。 ❋他視点による話もあります。 ❋基本は、1日1話の更新になります。

二度目の召喚なんて、聞いてません!

みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。 その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。 それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」 ❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。 ❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。 ❋他視点の話があります。

魔法使いの恋

みん
恋愛
チートな魔法使いの母─ハル─と、氷の近衛騎士の父─エディオル─と優しい兄─セオドア─に可愛がられ、見守られながらすくすくと育って来たヴィオラ。そんなヴィオラが憧れるのは、父や祖父のような武人。幼馴染みであるリオン王子から好意を寄せられ、それを躱す日々を繰り返している。リオンが嫌いではないけど、恋愛対象としては見れない。 そんなある日、母の故郷である辺境地で20年ぶりに隣国の辺境地と合同討伐訓練が行われる事になり、チートな魔法使いの母と共に訓練に参加する事になり……。そこで出会ったのは、隣国辺境地の次男─シリウスだった。 ❋モブシリーズの子供世代の話になります❋ ❋相変わらずのゆるふわ設定なので、軽く読んでいただけると幸いです❋

氷狼陛下のお茶会と溺愛は比例しない!フェンリル様と会話できるようになったらオプションがついてました!

屋月 トム伽
恋愛
ディティーリア国の末王女のフィリ―ネは、社交なども出させてもらえず、王宮の離れで軟禁同様にひっそりと育っていた。そして、18歳になると大国フェンヴィルム国の陛下に嫁ぐことになった。 どこにいても変わらない。それどころかやっと外に出られるのだと思い、フェンヴィルム国の陛下フェリクスのもとへと行くと、彼はフィリ―ネを「よく来てくれた」と迎え入れてくれた。 そんなフィリ―ネに、フェリクスは毎日一緒にお茶をして欲しいと頼んでくる。 そんなある日フェリクスの幻獣フェンリルに出会う。話相手のいないフィリ―ネはフェンリルと話がしたくて「心を通わせたい」とフェンリルに願う。 望んだとおりフェンリルと言葉が通じるようになったが、フェンリルの幻獣士フェリクスにまで異変が起きてしまい……お互いの心の声が聞こえるようになってしまった。 心の声が聞こえるのは、フェンリル様だけで十分なのですが! ※あらすじは時々書き直します!

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

闇黒の悪役令嬢は溺愛される

葵川真衣
恋愛
公爵令嬢リアは十歳のときに、転生していることを知る。 今は二度目の人生だ。 十六歳の舞踏会、皇太子ジークハルトから、婚約破棄を突き付けられる。 記憶を得たリアは前世同様、世界を旅する決意をする。 前世の仲間と、冒険の日々を送ろう! 婚約破棄された後、すぐ帝都を出られるように、リアは旅の支度をし、舞踏会に向かった。 だが、その夜、前世と異なる出来事が起きて──!? 悪役令嬢、溺愛物語。 ☆本編完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。

巻き込まれではなかった、その先で…

みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。 懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………?? ❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。 ❋主人公以外の他視点のお話もあります。 ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。 ❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。

王太子殿下が私を諦めない

風見ゆうみ
恋愛
公爵令嬢であるミア様の侍女である私、ルルア・ウィンスレットは伯爵家の次女として生まれた。父は姉だけをバカみたいに可愛がるし、姉は姉で私に婚約者が決まったと思ったら、婚約者に近付き、私から奪う事を繰り返していた。 今年でもう21歳。こうなったら、一生、ミア様の侍女として生きる、と決めたのに、幼なじみであり俺様系の王太子殿下、アーク・ミドラッドから結婚を申し込まれる。 きっぱりとお断りしたのに、アーク殿下はなぜか諦めてくれない。 どうせ、姉にとられるのだから、最初から姉に渡そうとしても、なぜか、アーク殿下は私以外に興味を示さない? 逆に自分に興味を示さない彼に姉が恋におちてしまい…。 ※史実とは関係ない、異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。

処理中です...