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第三章ーリスと氷の騎士ー

ベール

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ハルにも、この世界で父と兄ができました。
本当に、エディオルさんには感謝しかありません。これからは、堂々とゼンさんの事を「お父さん」と呼べます!




ゼンさんがお父さんになってから、一週間後。
久し振りにベラトリス様からのお誘いがあり、今日はミヤさんと一緒に王城へとやって来た。


「ミヤ様、ハル様、お久し振りですわね。」

「はい。お久し振りです。今日は、お招きいただいてありがとうございます。」

「ハル様、遅くなりましたけど、結婚の日取りが決まった事、おめでとうございます。式には、イリス様と一緒に参列させていただきますわ!」

ベラトリス様が、私の両手を握り締めながら笑顔で言ってくれる。

「ありがとうございます。」

「さぁさぁ、皆様、お茶の用意が出来ましたので、椅子にお座り下さい。」

今日もまた優しく笑うサエラさんに促され、3人ともが椅子に腰をおろした。





本当に久し振りだったので、色々な話をした。ネロの事は勿論の事、そして─

「そうねぇ…もともと嫌いではなかったのよ?最近ではよくお茶をするから、色んな話をする機会が増えた事で、ランバルト様が立派な人だったんだなぁ─と、少し見直したところかしら?」

どうやら、ミヤさんの王太子様に対する評価が上がっているようです。そう言えば、いつの間にか呼び名が“ランバルト様”になっている。

「ふふっ。お兄様が聞いたら飛んで喜びそうですわ。絶対本人には言いませんけどね。」

ーベラトリス様も相変わらずブレないなぁー

「あ、そう言えば、ハル様のウェディングドレスは白色ですのね!?」

「うぇっ!?」

「今、騎士団で噂になっているそうですわ!」

「噂!?」

「この世界では、どちらかの色のドレスが定番だったのだけれど、“あなたの色に染めて”の意味を込めて白色─素敵ですわね!」

ーふわぁ─!それ、言われるとめちゃくちゃ恥ずかしいんですけど!?ー

「ふふっ。ハル、顔真っ赤よ?私達の世界では、白が普通だったから何も思わなかったけど、そうやって言われると恥ずかしいものね?」

「─ですよね…」

と、ミヤさんと苦笑していると、ベラトリス様がサエラさんに何やら目配せをした後、サエラさんは軽く頷いてから部屋から出て行った。

「ハル様、この世界では…結婚式の時にベールを被るのですが…」

「あ、私達の世界でもそうですね。」

と同意すると

「この世界では、そのベールは、基本は嫁の母親が準備をするんですの。」

「…そう…なんですね。」

ーベールかぁ…ドレスの事しか考えてなかったなぁ。ゼ─お父さんに相談してみようかな?ー

うーん…と悩んでいると、サエラさんが箱を持って部屋に戻って来た。

「ハル様、私から…コレを。」

そう言って、サエラさんが私にその箱を渡して来た。

「ありがとう…ございます?えっと…開けてみても…良いですか?」

「えぇ。どうぞ。」

サエラさんの了解を得て、その箱を開けると

「───ベール?」

そこには、白色のレースのベールが入っていた。
前側は首が隠れる位の長さで、後ろ側は腰位の長さ。そのベールの裾部分には、水色と青色の糸でかすみ草の刺繍が入っている。エディオルさんと私の色だ。

「ハル様とエディオル様との婚儀が調った─とお聞きした時に…ハル様にベールを用意したいと思いまして。から、ハル様の事は娘の様に…思っておりましたから。これは、私の自己満足…でしかありませんから、これを使わなくても─」

「サエラさん!!」

ギュッとサエラさんに抱きつく。

「ありがとうございます!嬉しいです!使います!絶対に使います!」

「ハル様…」

あの時、私を救ってくれて守ってくれたサエラさん。この世界でのお母さんのようなサエラさん。大好きなサエラさん。そんなサエラさんが、私の為に作ってくれたベール。嬉しい以外の何者でもない。

ー本当に、私は幸せ者だよねー

「ハル、良かったわね。」

「うぅっ─本当に…良かったですわ…」

「はい!サエラさん、大好きです。本当にありがとうございます。うぅ─っ」

と、私とベラトリス様は涙が止まらず─




帰りに迎えに来てくれたエディオルさんに

「それでは歩けないだろう?」

と言われ…ノアの居る所迄お姫様抱っこ宜しく!されてしまった。勿論、ミヤさんは「私、もう少ししてから帰るから」と、一緒には帰ってくれなかった。

そのままノアに乗せられて、エディオルさんと一緒に蒼の邸へと帰った。







*****


「落ち着いたか?」

「はい…落ち着きました…」

はい、今、私はエディオルさんの部屋で、エディオルさんにお姫様抱っこされた状態のままソファーに座っています。

「あの…今迄誰もベールの事を言わなかったのは…」

「あぁ。結婚式の日取りが決まった後、サエラ殿から俺にお願いがあると言われて。コトネにベールを用意したいと。それで、コトネには内緒にして欲しいと。コトネがサエラ殿の事を慕っているのを知っていたから、コトネは絶対喜ぶと思って、ベールの事は黙っていたんだ。すまない。」

「謝らないで下さい。私、嬉しかっただけですから。」

「そうか。なら良かった。」

「ディ。あの…本当に、ゼンさんとの事やサエラさんの事、本当にありがとうございます。」

私から、そっと触れるだけのキスをして、ギュッとエディオルさんに抱きつくと、エディオルさんも私をギュッとしてくれる。その温もりが─とても安心する。

「ディ、大好きです。」

「俺も、コトネを愛してる。」







ーサエラさん、ありがとうございますー






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