上 下
96 / 123
第三章ーリスと氷の騎士ー

白色

しおりを挟む
「ハルさん、おめでとうございます!」

「ありがとうございます。」

今日は、“ビジュー”に来ている。理由は勿論、結婚式の時に着けるネックレスとピアスを作る為である。

「いつも頼ってばかりで申し訳無いんですけど、またキャリーさんに相談しながらデザインとか考えたいと思って…。良いですか?」

「勿論です!結婚式の時にも身に着けてもらえるのは、とっても嬉しいです。ありがとうございます。先ずは…ドレスの色ですが…やっぱり青か水色ですか?」

「えっと…青や水色じゃなくて…白色なんです。」

そう、この世界での結婚式で着るドレスは、基本は自分か相手の色なんだそうだ。でも、ミヤさんが─




「私達の世界では基本は白色だから、カラードレスだと変な気がするわね。」

とポロッと言ったところ、それを聞いていたエディオルさんが

「それなら俺は、白色でも構わない。元の世界で式を挙げる事は勿論の事、還る事もできないから。ハルがやりたかった事は、できるだけ取り入れよう。結婚式とは、一生に一度の事だから遠慮は無しだ。どうしても無理なものは諦めてもらう事にはなるが…。」



本当にエディオルさんは優しい。
式も、王都ではなくパルヴァンでする事になったし、白色のドレスもすんなりと許してくれた。

「白色…珍しいんですね。何か…理由とか拘りがあったりするんですか?」

「あの…えっと…私の国では結婚式では白色のドレスが基本にあってですね。純真を表すのもあるんですけど、その…白って、何色にも染まる事ができるので、これからは、あなたの色に染めて下さい─みたいな?」

ーこれ、自分で言うと恥ずかしいですね!ー

なんて内心ワチャワチャしていると

「「「素敵ですね!!!」」」

「ひゃいっ!?」

キャリーさんだけではなく、側に居た2人のご令嬢もが反応して声を上げた。ビックリして、私はまた変な声が出てしまった。

「あぁ、すみません。聞くつもりはなかったのですが、聞こえてしまって。でも…素敵なお話しですわね。」

「私もごめんなさい。」

その2人のご令嬢に謝られた。

「い…いえ…恥ずかしいだけで…聞かれて困る事は…無いので…いえ。恥ずかしい!」

ーできれば、聞き流して欲しかったですけどね!?ー

「急に声を掛けてしまってすみません。私、クラウディア=コルネストと申します。」

「私はアリアナ=グレーデンですわ。」

2人のご令嬢が、ニコリと笑って挨拶をしてくれた。

「ありがとうございます。私はハルと申します。」

立ち上がってペコリと挨拶をする。

「ふふっ。私達、ハルさんの事は前から知っていますの。私達の婚約者が第一騎士団に所属していて…ハルさん、一度、訓練の見学にいらしていたでしょう?その時に…」

「あぁ……ですね。」

「はい。です。」

と、3人で苦笑する。

「将来、同じ騎士の嫁となるので、仲良くしていただけたらな─と思っていたのですけど。まぁ、同じ騎士と言えど、レベルは全く違いますけどね。」

「それは、とっても嬉しいです!私、騎士の事も騎士の嫁としての事もよく分からないので、同じ騎士の嫁として…仲良くしてもらえるのは、本当に嬉しいです!」

「こちらこそ、とっても嬉しいわ─っと、今日はこれ以上のお邪魔はできないので…もし良ければ、日を改めてお茶に誘っても良いかしら?」

「はい、喜んで。」

それでは─と、クラウディア様とアリアナ様は店から出て行った。

「良かったですね。」

キャリーさんにも微笑まれて、それからはホクホクした気持ちで過ごした。











❋その日の夕食後、エディオルの自室にて❋




「コルネスト公爵とグレーデン侯爵…ですか…。」

どうやら、ビジューで挨拶をしてくれたご令嬢は公爵令嬢と侯爵令嬢だったようです。

今日のビジューでの出来事をエディオルさんに話すと、直ぐに公爵と侯爵だと言う事が判明したのだ。貴族のトップ1と2だよね…。

「うーん…すごく良い人達だったけど…お茶のお誘いとかは社交辞令かも─位に思っておきます。」

「ん?何故だ?」

「え?だって、相手は上位貴族のご令嬢で、私は平民ですよ?それで私がお茶に誘われるとか……ないですよね?私だって馬鹿じゃないんだから、その辺は理解してますよ?」

「コトネは平民だが…カルザインオレの婚約者で、後ろ盾がパルヴァンだから、また…色々と違うからな?それに、コルネスト公爵もグレーデン侯爵も身分で人を判断する様な方ではないから、大丈夫だと思う。」

「勿論、本当にお茶に誘われたら喜んで行きますけど、コレが本当に社交辞令に終わっても、ディは何も口出ししたりしないで下さいね?コレは、私の─騎士の婚約者としての問題なので。」

「分かってるよ─それで…白色のドレスには、が込められていたんだな?」

「ソ…ソウデス。」

横に座っているエディオルさんに腰を引き寄せれ、顔に手をあてられる。

「コトネがどんな色に染まっていくのか…楽しみだな。」

フワリと微笑んでから、エディオルさんの顔が近付いて来るのに合わせて、私はソッと目を閉じた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶喪失になったら、義兄に溺愛されました。

せいめ
恋愛
 婚約者の不貞現場を見た私は、ショックを受けて前世の記憶を思い出す。  そうだ!私は日本のアラサー社畜だった。  前世の記憶が戻って思うのは、こんな婚約者要らないよね!浮気症は治らないだろうし、家族ともそこまで仲良くないから、こんな家にいる必要もないよね。  そうだ!家を出よう。  しかし、二階から逃げようとした私は失敗し、バルコニーから落ちてしまう。  目覚めた私は、今世の記憶がない!あれ?何を悩んでいたんだっけ?何かしようとしていた?  豪華な部屋に沢山のメイド達。そして、カッコいいお兄様。    金持ちの家に生まれて、美少女だなんてラッキー!ふふっ!今世では楽しい人生を送るぞー!  しかし。…婚約者がいたの?しかも、全く愛されてなくて、相手にもされてなかったの?  えっ?私が記憶喪失になった理由?お兄様教えてー!  ご都合主義です。内容も緩いです。  誤字脱字お許しください。  義兄の話が多いです。  閑話も多いです。

【完結】破天荒な妖精姫は醜い夫を切望する

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
恋愛
「私、ロヴィーサ・ペトロネラ・エールヴァールは、英雄レードルンド辺境伯アレクシス様に嫁ぎたいと思います」 妖精姫と称えられる令嬢は、整った美しい顔(かんばせ)を綻ばせた。求愛を受けたのはドラゴンの爪による醜い傷痕を持つ辺境伯。その容貌は令嬢達が卒倒するほど崩れ、手はごつごつと硬い。他国の王太子、王弟、公爵など多くの良縁を振ったロヴィーサは夫になる男の傷だらけの手を握った。 「ええ、お断りにならないで」 ドラゴンを倒し国を救った英雄は、妖精姫と称えられる美貌と慈悲の公爵令嬢に求婚される――これは美女と野獣ならぬ、お転婆妖精姫と最強のお人好しの恋物語 大人しそうなお姫様はかなりのお転婆、予想外の言動を繰り返し英雄を振り回す。そんな妻が愛おしくて、溺愛が止まらない英雄は諦めた幸せを手に入れる。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/10/28……ネトコン12、一次選考通過 2023/07/13……完結 2023/03/30……カクヨム、恋愛週間 5位 2023/03/27……カクヨム、恋愛日間 3位 2023/03/27……エブリスタ、トレンド 38位 2023/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 57位 2023/03/25……連載開始

モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~

咲桜りおな
恋愛
 前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。 ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。 いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!  そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。 結構、ところどころでイチャラブしております。 ◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆  前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。 この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。  番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。 「小説家になろう」でも公開しています。

教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!

海空里和
恋愛
王都にある果実店の果実飴は、連日行列の人気店。 そこで働く孤児院出身のエレノアは、聖女として教会からやりがい搾取されたあげく、あっさり捨てられた。大切な人を失い、働くことへの意義を失ったエレノア。しかし、果実飴の成功により、働き方改革に成功して、穏やかな日常を取り戻していた。 そこにやって来たのは、場違いなイケメン騎士。 「エレノア殿、迎えに来ました」 「はあ?」 それから毎日果実飴を買いにやって来る騎士。 果実飴が気に入ったのかと思ったその騎士、イザークは、実はエレノアとの結婚が目的で?! これは、エレノアにだけ距離感がおかしいイザークと、失意にいながらも大切な物を取り返していくエレノアが、次第に心を通わせていくラブストーリー。

召喚から外れたら、もふもふになりました?

みん
恋愛
私の名前は望月杏子。家が隣だと言う事で幼馴染みの梶原陽真とは腐れ縁で、高校も同じ。しかも、モテる。そんな陽真と仲が良い?と言うだけで目をつけられた私。 今日も女子達に嫌味を言われながら一緒に帰る事に。 すると、帰り道の途中で、私達の足下が光り出し、慌てる陽真に名前を呼ばれたが、間に居た子に突き飛ばされて─。 気が付いたら、1人、どこかの森の中に居た。しかも──もふもふになっていた!? 他視点による話もあります。 ❋今作品も、ゆるふわ設定となっております。独自の設定もあります。 メンタルも豆腐並みなので、軽い気持ちで読んで下さい❋

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

二度目の召喚なんて、聞いてません!

みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。 その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。 それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」 ❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。 ❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。 ❋他視点の話があります。

氷の騎士は、還れなかったモブのリスを何度でも手中に落とす

みん
恋愛
【モブ】シリーズ③(本編完結済み) R4.9.25☆お礼の気持ちを込めて、子達の話を投稿しています。4話程になると思います。良ければ、覗いてみて下さい。 “巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について” “モブで薬師な魔法使いと、氷の騎士の物語” に続く続編となります。 色々あって、無事にエディオルと結婚して幸せな日々をに送っていたハル。しかし、トラブル体質?なハルは健在だったようで──。 ハルだけではなく、パルヴァンや某国も絡んだトラブルに巻き込まれていく。 そして、そこで知った真実とは? やっぱり、書き切れなかった話が書きたくてウズウズしたので、続編始めました。すみません。 相変わらずのゆるふわ設定なので、また、温かい目で見ていただけたら幸いです。 宜しくお願いします。

処理中です...