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第二章ー同棲ー
ようやくの一歩前進
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「──と言う事でハルにお願いして、アイツ─悠介を、元の世界に還してもらう事にしました。」
王太子がお忍びではないお忍びで来ている日は、私の終業後、修道院の応接室でお茶をする事がルーティンになっている。今日も、そのお茶をしている時に王太子に報告をした。
エディオルさんは、王太子の後ろで、ただただいつもの無表情で立っているだけだ。
「そうか…まぁ、こればっかりは…仕方無い事なのかも知れないな。ここでハル殿が赦したところで、周りの者達は誰一人赦さないだろうし、他の使用人達にも示しがつかないからな。」
王太子はソファーに深く腰を下ろし、腕を組んで溜息を吐く。
「それで…ハル殿とネージュは、大丈夫なのか?」
王太子は、チラリとエディオルさんへと視線を向ける。
「……はい。ハルもネージュも元気です。」
と、エディオルさんは何故か、嫌々そう?に答える。
「そこまで嫌がるか!?訊いただけだろう!」
「…………何も言ってませんよ?」
「その間が、雄弁に語っているからな!?」
何だかよく分からないけど、この2人が身分を超えた信頼関係─仲良し─だと言う事は分かるわね。
「そんな訳で、エディオルさん。また少し…ハルには負担を掛けてしまうけど、ごめんなさいね。」
「魔力に関しては問題は無いと思います。他に関しては、私がついているので、任せて下さい。」
氷の騎士エディオルさんは、少しだけ目を優しく細めて笑う。この人は、本当にハルの事が好きなんだな─と思う。
「ふふっ。頼もしい限りね。ありがとう。」
きっと、ハルはエディオルさんが居るから大丈夫だろう。
それから少し話をしてから、お互い帰りの支度を始めた。王太子達は馬、私はパルヴァン邸の馬車だ。その為、王太子に挨拶をして馬車へと向かおうとした時
「ミヤ様、少し良いだろうか?」
王太子に声を掛けられた。チラリと視線を向けると、エディオルさんは私達から少し離れた位置に控えていた。
「何でしょうか?」
「その…ミヤ様は…大丈夫なのか?」
「大丈夫なのか─とは…どう言う…」
王太子は、困った様な顔をして少し思案した後
「もう気持ちは無いと言っても、アイツ─ユウスケ殿は元恋人だったのだろう?色々あって、ミヤ様の心が…疲れてはいないのか─と思って。責任を…感じてはいないかと思って。」
「……」
声には出さなかったけど、正直驚いた。
王太子とは、あまり近付き過ぎないように、ある程度の距離をとって対応していた。だから、私の今の複雑?な心境が分かる筈は無いと思っていたのに。
ー本来のこの人は、ちゃんと人を見る事のできる人だったのね?ー
軽く目を閉じて息を吐く。
「王太子様、お気遣い…ありがとうございます。確かに…少し複雑ではありますね。でも…今回の事が無くても、いずれは還ってもらおうと思っていたので。それが少し早まっただけで、その事に関しては何の感情もありません。」
「そうか」
王太子は、少しホッとしたように笑う。
「責任は…少しは感じてはいますが、気に病む程のものではありませんから。侵入者2人が悪であって、他は誰も…何も悪い事をした訳ではありませんからね。」
「そう…だな。」
王太子は、また少し悲し気に笑う。
「今はまだ無理でも…私はいつか、ミヤ様に頼られるような…私に弱気な事も話してもらえるような存在になりたいと思っているし、これからも努力をしていく。先ずは…信頼関係からだろうけど…。その…こうして他人が居ない時だけでも良いから、私の事を名前で呼んではもらえないだろうか?」
「…名前で?」
「そう。名前で。“ユウスケ”とか“エディオルさん”と呼ばれているのが…その…羨ましいと言うか…」
と、顔を赤らめて下を向く王太子─
ーえ?何?純粋か!?ー
思わず心の中で突っ込んだ。
「ふふっ──。羨ましいって…ふふっ。」
「くっ─笑わなくても──っ。兎に角、気が向いたらでも構わないので!では、今日は帰ります!」
と、アワアワしながら馬の方へと歩き出す王太子。その背中に向かって声を掛ける。
「気を付けて帰って下さいね──ランバルト様。」
「────ぬあっ!?」
ドサッ
「ランバルト!?」
声を掛けた後、クルッと後ろを向き馬車へと向かう私の背後で、ランバルト様の変な声と共にドサッと転げるような音に、呆れたようにランバルト様の名前を呼ぶエディオルさん。
ー面白い人だなぁー
クスクスと笑いながら、私は振り返る事なくそのまま馬車に乗り込んだ。
*****
「ちょっと、ランバルトが気持ち悪いんだけど…」
今、執務室には久し振りに、ランバルト、エディオル、イリス、クレイルの幼馴染み4人が揃っている。
先程、来週の公務についての話しの為に、神殿からクレイルがやって来て、ランバルトを目にした瞬間の発言が“気持ち悪い”だった。
何故なら、ランバルトが机に肘をついて顔を乗せ、1人ニヤニヤと笑っているのだ。
「今日もミヤ様に会いに行っていたんだが…初めて、“ランバルト様”と、名前呼びされたんだ。」
と、エディオルが苦笑しながら言うと
「「あぁ─」」
と、イリスもクレイルも納得しつつ、呆れた様に笑った。
王太子がお忍びではないお忍びで来ている日は、私の終業後、修道院の応接室でお茶をする事がルーティンになっている。今日も、そのお茶をしている時に王太子に報告をした。
エディオルさんは、王太子の後ろで、ただただいつもの無表情で立っているだけだ。
「そうか…まぁ、こればっかりは…仕方無い事なのかも知れないな。ここでハル殿が赦したところで、周りの者達は誰一人赦さないだろうし、他の使用人達にも示しがつかないからな。」
王太子はソファーに深く腰を下ろし、腕を組んで溜息を吐く。
「それで…ハル殿とネージュは、大丈夫なのか?」
王太子は、チラリとエディオルさんへと視線を向ける。
「……はい。ハルもネージュも元気です。」
と、エディオルさんは何故か、嫌々そう?に答える。
「そこまで嫌がるか!?訊いただけだろう!」
「…………何も言ってませんよ?」
「その間が、雄弁に語っているからな!?」
何だかよく分からないけど、この2人が身分を超えた信頼関係─仲良し─だと言う事は分かるわね。
「そんな訳で、エディオルさん。また少し…ハルには負担を掛けてしまうけど、ごめんなさいね。」
「魔力に関しては問題は無いと思います。他に関しては、私がついているので、任せて下さい。」
氷の騎士エディオルさんは、少しだけ目を優しく細めて笑う。この人は、本当にハルの事が好きなんだな─と思う。
「ふふっ。頼もしい限りね。ありがとう。」
きっと、ハルはエディオルさんが居るから大丈夫だろう。
それから少し話をしてから、お互い帰りの支度を始めた。王太子達は馬、私はパルヴァン邸の馬車だ。その為、王太子に挨拶をして馬車へと向かおうとした時
「ミヤ様、少し良いだろうか?」
王太子に声を掛けられた。チラリと視線を向けると、エディオルさんは私達から少し離れた位置に控えていた。
「何でしょうか?」
「その…ミヤ様は…大丈夫なのか?」
「大丈夫なのか─とは…どう言う…」
王太子は、困った様な顔をして少し思案した後
「もう気持ちは無いと言っても、アイツ─ユウスケ殿は元恋人だったのだろう?色々あって、ミヤ様の心が…疲れてはいないのか─と思って。責任を…感じてはいないかと思って。」
「……」
声には出さなかったけど、正直驚いた。
王太子とは、あまり近付き過ぎないように、ある程度の距離をとって対応していた。だから、私の今の複雑?な心境が分かる筈は無いと思っていたのに。
ー本来のこの人は、ちゃんと人を見る事のできる人だったのね?ー
軽く目を閉じて息を吐く。
「王太子様、お気遣い…ありがとうございます。確かに…少し複雑ではありますね。でも…今回の事が無くても、いずれは還ってもらおうと思っていたので。それが少し早まっただけで、その事に関しては何の感情もありません。」
「そうか」
王太子は、少しホッとしたように笑う。
「責任は…少しは感じてはいますが、気に病む程のものではありませんから。侵入者2人が悪であって、他は誰も…何も悪い事をした訳ではありませんからね。」
「そう…だな。」
王太子は、また少し悲し気に笑う。
「今はまだ無理でも…私はいつか、ミヤ様に頼られるような…私に弱気な事も話してもらえるような存在になりたいと思っているし、これからも努力をしていく。先ずは…信頼関係からだろうけど…。その…こうして他人が居ない時だけでも良いから、私の事を名前で呼んではもらえないだろうか?」
「…名前で?」
「そう。名前で。“ユウスケ”とか“エディオルさん”と呼ばれているのが…その…羨ましいと言うか…」
と、顔を赤らめて下を向く王太子─
ーえ?何?純粋か!?ー
思わず心の中で突っ込んだ。
「ふふっ──。羨ましいって…ふふっ。」
「くっ─笑わなくても──っ。兎に角、気が向いたらでも構わないので!では、今日は帰ります!」
と、アワアワしながら馬の方へと歩き出す王太子。その背中に向かって声を掛ける。
「気を付けて帰って下さいね──ランバルト様。」
「────ぬあっ!?」
ドサッ
「ランバルト!?」
声を掛けた後、クルッと後ろを向き馬車へと向かう私の背後で、ランバルト様の変な声と共にドサッと転げるような音に、呆れたようにランバルト様の名前を呼ぶエディオルさん。
ー面白い人だなぁー
クスクスと笑いながら、私は振り返る事なくそのまま馬車に乗り込んだ。
*****
「ちょっと、ランバルトが気持ち悪いんだけど…」
今、執務室には久し振りに、ランバルト、エディオル、イリス、クレイルの幼馴染み4人が揃っている。
先程、来週の公務についての話しの為に、神殿からクレイルがやって来て、ランバルトを目にした瞬間の発言が“気持ち悪い”だった。
何故なら、ランバルトが机に肘をついて顔を乗せ、1人ニヤニヤと笑っているのだ。
「今日もミヤ様に会いに行っていたんだが…初めて、“ランバルト様”と、名前呼びされたんだ。」
と、エディオルが苦笑しながら言うと
「「あぁ─」」
と、イリスもクレイルも納得しつつ、呆れた様に笑った。
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