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第二章ー同棲ー

狙われたネージュ①

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「本当に、子を宿した魔獣が居るのか?」

「あぁ。普段は滅多に邸内の情報が得られる事はないんだが、この前、たまたま新人らしき使用人を見掛けてな。色々訊いてみたら…そいつ、ポロッとこぼしたんだ。」

「でもなぁ…は“武”が揃っているからなぁ。」

とある酒場の店内の端の席に、身綺麗な若い男と、フードを被った男が酒を飲みながら、こそこそと話をしている。

「それが、あそこは使用人の数が少ないんだ。大した護衛らしき者も殆ど見掛けないしな。俺みたいに、行商を装えば簡単に入れると思う。主のエディオル=カルザインが出払えば…残ってるのは、ただの若い小娘だけだ。」

「若い小娘とは…どんな?」

「あんた好みの可愛らしい子だよ。エディオル=カルザインの婚約者らしいが…魔獣のついでにかっ拐ってやったら?」

「その魔獣は、どんな魔獣なんだ?」

「チラッと見ただけだが、ウルフっぽかった。犬程の大きさだ。」

「ふん。なら…そんなに手こずる事もないか。ついでに、好みの女なら、その小娘も…もらって行くか─」

と、その2人の男は愉しげに笑いながら、夜遅くまで話し込んだ。









*****


「ハル様?」

「───ん…ルナ…さん?」

「すみません。返事がなかったのですが…朝食のご用意ができたので─って、ハル様、大丈夫ですか!?」

「んー…すみません…大丈夫じゃない…かもです。」

何だか、体が重くて怠い。頑張って体を起こそうとすると

「ハル様、起きなくて良いですから、そのまま横になっていて下さい。少し、失礼しますね。」

と言いながら、ルナさんに枕と布団を整えられて、オデコに手を当てられる。

「ふふっ…ルナさんの手…冷たくて…気持ちいい…」

「あぁ!やっぱり!ハル様、熱がありますね。何か、食べたい物はありますか?」

「んー今は食べたい物はないかな…水が飲みたいかな…。」

「分かりました。飲み物をお持ちしますね。後は、お医者様もお呼びしますね。少し離れますが、すぐにリディを呼びますから。」

「ん。ありがとう。お願いします。」



ーはい。チートな魔法使いだけど…久し振りに…風邪をひいたようですー








「ただの風邪ですね。薬を飲んで、ゆっくり休んで下さいね。」

お医者さんに言われたので、大人しくベッドの住人になる事にした。

風邪をひくのはいつぶりだろう?この世界に来てからは…死に掛けた以外の体調不良って…なかったんじゃないかなぁ?

いや─死に掛けた事が2回あるって事が…おかしいんだけど。

とにかく…体が熱くて重くて怠いなぁ…

「あ、リディさん」

「はい、何ですか?」

「あの…後で、ネージュの様子を見て来てくれますか?ネージュの魔力が乱れてないかどうか…だけが心配で…」

「分かりました。後で様子をみて来ますね。」

「お願い…します…」

と口にした後、私は眠りに就いた。









ーネージュは…お腹の子は…大丈夫かなぁ?ー



リュウの言った通り、お腹の子の成長は早いようで、ネージュの魔力を安定させる為にも1日置きに、私の魔力を流している。そうすると、確かに、お腹の子がみるみるうちにとなって、存在を主張するようになって来たのだ。ひょっとすると、後数週間程で生まれるかもしれない。





「…モフモフ…………ん??」

と、自分の寝言で目が覚めた。

寝る前は明るかった筈の部屋が、暗くなっている。寝ている間に、夜になってしまったんだろうか?

まだ少し怠さはあったけど、熱は少し下がっているのか、体を動かせるようにはなっていた。

「ふぅー。汗かいちゃったなぁ。体を拭いて…着替えようかな。」

と、ソロソロとベッドから降りようとした時

「?」

ゾワリ─と、背中から嫌な感覚が広がった。

『───』

「…ネージュ!?」

呼ばれたわけじゃなくて、声が聞こえたわけでもないけど、何となくネージュに呼ばれたような気がして、私は急いで魔法陣を展開させて、ネージュの元へと転移した。








どうやら、真夜中のようだ。ノアの気配がしない─と言う事は、今日はエディオルさんが夜勤の日なのかもしれないな─と思いながら、ネージュの居る小屋へと向かう。




「クッソ!どうなってんだ!?どうしてあの魔獣に近付けないんだ!みるからに弱ってて、今なら簡単にのに!」

「よく分からないけど、ひょっとしたら、何か護りの魔術でも掛けられてるかも知れないね。」

「ああ?面倒臭い事してくれてるなぁ。何とかならないのか?」

「念の為にと思って、魔力や魔術の力を吸い取る魔導具を持って来ていたから、それを使おう。」

ー魔力や魔術の力を!?ー

ドクンッ

と心臓が痛い程に騒ぎ出した。

何とか落ち着かせるようにして、辺りの様子を見る。

ネージュの居るだろう小屋の前に、男?が2人。1人は細身で、もう1人はがたいのしっかりした男で、手に短剣らしき物を持っている。

ーまさか…ネージュのお腹の中の子の魔石を狙ってる!?ー

そして、その2人の奥にネージュが横たわっているのが見えた。そのネージュは……魔力が乱れてしまっているようで、グッタリとなっていた。


ーネージュ!?ー





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