上 下
4 / 123
第一章ー婚約ー

髪留め

しおりを挟む
「エディおにい様!」

そう呼びながら、嬉しそうにエディオル様に抱き付く美人なご令嬢。

ーわぁ─絵になるなぁ…“お姫様と騎士”みたいなー

と、何となくボーっとしながら、その2人を少し離れた所から見ていた。

「あのー…お客様?大丈夫…ですか?」

と、店員さんに声を掛けられてハッとする。

「え?あー、えっと…大丈夫ですよ?」

ーん?“大丈夫ですか?”って…何で?私、何かした?ー

何故か分からないけど、店員のお姉さんに何かを心配されました。ボーっと立っていた─からかなぁ?優しいお姉さんだなぁ─と思うと、自然と笑顔になった。

「お嬢様、人前で男性に抱き付くものではありませんよ。エディオル様、お嬢様が失礼致しました。」

と、エディオル様に抱き付いたご令嬢付きの侍女?らしき女の人が、エディオル様に謝っている。

「もー、カミラはいつも口煩いわね。別にいいじゃない?エディオル様は私のなんだから。」

「正しくは、お嬢様の姉であるレイラ様の旦那様の弟であって、血は繋がってはおりませんし、抱き付いて良い理由にもなりません。また、旦那様に叱られますよ? 」

「カミラがお父様に言わなければバレないでしょ?」

「──そう言う問題ではないだろう?」

「え?」

エディオル様の声が、いつもより少しトーンが低い。それに驚いたように、そのがキョトンとしたような顔でエディオル様を見ている。

そのお嬢様の視線を無視するように、エディオル様はカミラさん(と呼ばれていた侍女さん?)に“失礼する”と言い、私の方へと歩いて来た。

「ハル殿、何か気に入った物はあった?」

先程とは違って、優しい声に優しい顔をしたエディオル様。

「えっと─彼女…義理の妹さん?は良いんですか?」

エディオル様は背を向けているから、気付いてないと思うけど…そのお嬢様が、物凄い顔でこちらを凝視?睨んで?ますよ?

「良いも何も、今日の俺は、ハル殿とお出掛けに来てるんだ。彼女に付き合う義理は無い。」

ーうわぁ…スッパリですねー

「それで?気に入った物はあった?」

優しい笑顔だけど…“これ以上彼女の事は気にするな”みたいな圧が…あるよね。そうですか。分かりました。今はスルーしておきます。空気を読むハルです。

「あ─気に入った物と言うか、可愛い物がいっぱいあり過ぎて困っちゃう位です。あの…もう少し見て回っても良いですか?」

「勿論。俺も一緒に見て回るよ。」

スッと私の腰に手を回される。

ーえ!?何で!?ー

ギョッとして、思わずエディオル様を見上げると

「ん?」

「うぅ──っ」

ーエディオル様、私がこの笑顔に弱いって…気付いてるよね!?確信犯だよね!?ー

「──エディオル様は…意地悪だ…。」

恥ずかしいやら悔しい?やらで、思わず口から言葉が溢れた。そんな私に気を悪くする様子もないエディオル様。寧ろ、楽しそうに笑う。

「褒め言葉─として受け取っておこう。手加減しないと言っただろう?」

ーだから、手加減って意味知ってますか?今迄も手加減ありましたか!?無かったよね!?ー

ジトリとした目でエディオル様を見遣る。

「そんな顔をしても…可愛いだけだからな?」

ーはぃ───っ!??ー

どうしよう!??エディオル様が壊れたかもしれません!!いや、目が悪いのかな!?そうだ!ポーションだ!治癒のポーションが必要だよね!?ー

「ふっ──ハル殿…少し落ち着こうか…ふっ─」

「──っ!!エディオル様…笑い、堪えられてませんからね!?とっ─兎に角ですね?手を離してもらえると助かり──「はいはい。見て回ろうか?」──っ!??」

ー最近、被せ気味の返答が多くないですか!?ー

勝てる気が…全くしない─。いや、別に勝ち負けの問題じゃないんだけど─。恥ずかしいんだけど…優しいエディオル様がすっ…好きだけど!?こう─強引?なエディオル様も嫌─ではなくて…。“流されちゃっても良いかな─”何て思ってしまう自分も居る訳で…。

「──勝てる気がしません。」

「それは…良かった。」

「……」

また、思わず口から出てしまいました。恥ずかしくて、プイッとエディオル様から視線を外す。

「──あ…」

ある髪留めに目が留まった。

薄い水色から薄いピンクに、グラデーションになっている花の飾りが付いた髪留め。

ー何の花だろう?日本の桜に…似てる?ー

懐かしいなぁ─最後に見たのはいつだろう?

「これが気に入ったのか?」

「あ─はい。この飾りに付いている花が、私の世界にあった花に似ていて…懐かしいなぁって─。」

「そうか──」

エディオル様は一言それだけ言って、私の背中をポンポンと優しく叩いた。

ーうぅ─本当に、そう言う処が優しいよねー

懐かしさと優しさで、気持ちがホッコリして、私はその髪留めを購入した。






そんな私達2人を、冷たい目で見ていたには、全く気付いていなかった。








しおりを挟む
感想 134

あなたにおすすめの小説

拝啓。聖女召喚で得た加護がハズレらしくダンジョンに置いてきぼりにされた私ですが元気です。って、そんな訳ないでしょうが!責任者出て来いやオラ!

バナナマヨネーズ
恋愛
私、武蔵野千夜、十八歳。どこにでもいる普通の女の子。ある日突然、クラスメイトと一緒に異世界に召喚されちゃったの。クラスのみんなは、聖女らしい加護を持っていたんだけど、どうしてか、私だけよくわからない【応援】って加護で……。使い道の分からないハズレ加護だって……。はい。厄介者確定~。 結局、私は捨てられてしまうの……って、ふっざけんな!! 勝手に呼び出して勝手言ってんな! な~んて、荒ぶってた時期もありましたが、ダンジョンの中で拾った子狼と幸せになれる安住の地を求めて旅をすることにしたんですよ。 はぁ、こんな世界で幸せになれる場所なんてあるのかしら? 全19話 ※小説家になろう様にも掲載しています。

二度目の召喚なんて、聞いてません!

みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。 その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。 それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」 ❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。 ❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。 ❋他視点の話があります。

召喚から外れたら、もふもふになりました?

みん
恋愛
私の名前は望月杏子。家が隣だと言う事で幼馴染みの梶原陽真とは腐れ縁で、高校も同じ。しかも、モテる。そんな陽真と仲が良い?と言うだけで目をつけられた私。 今日も女子達に嫌味を言われながら一緒に帰る事に。 すると、帰り道の途中で、私達の足下が光り出し、慌てる陽真に名前を呼ばれたが、間に居た子に突き飛ばされて─。 気が付いたら、1人、どこかの森の中に居た。しかも──もふもふになっていた!? 他視点による話もあります。 ❋今作品も、ゆるふわ設定となっております。独自の設定もあります。 メンタルも豆腐並みなので、軽い気持ちで読んで下さい❋

「君を愛さない」と言った公爵が好きなのは騎士団長らしいのですが、それは男装した私です。何故気づかない。

束原ミヤコ
恋愛
伯爵令嬢エニードは両親から告げられる。 クラウス公爵が結婚相手を探している、すでに申し込み済みだと。 二十歳になるまで結婚など考えていなかったエニードは、両親の希望でクラウス公爵に嫁ぐことになる。 けれど、クラウスは言う。「君を愛することはできない」と。 何故ならば、クラウスは騎士団長セツカに惚れているのだという。 クラウスが男性だと信じ込んでいる騎士団長セツカとは、エニードのことである。 確かに邪魔だから胸は潰して軍服を着ているが、顔も声も同じだというのに、何故気づかない――。 でも、男だと思って道ならぬ恋に身を焦がしているクラウスが、可哀想だからとても言えない。 とりあえず気づくのを待とう。うん。それがいい。

魔法使いの恋

みん
恋愛
チートな魔法使いの母─ハル─と、氷の近衛騎士の父─エディオル─と優しい兄─セオドア─に可愛がられ、見守られながらすくすくと育って来たヴィオラ。そんなヴィオラが憧れるのは、父や祖父のような武人。幼馴染みであるリオン王子から好意を寄せられ、それを躱す日々を繰り返している。リオンが嫌いではないけど、恋愛対象としては見れない。 そんなある日、母の故郷である辺境地で20年ぶりに隣国の辺境地と合同討伐訓練が行われる事になり、チートな魔法使いの母と共に訓練に参加する事になり……。そこで出会ったのは、隣国辺境地の次男─シリウスだった。 ❋モブシリーズの子供世代の話になります❋ ❋相変わらずのゆるふわ設定なので、軽く読んでいただけると幸いです❋

初恋の還る路

みん
恋愛
女神によって異世界から2人の男女が召喚された。それによって、魔導師ミューの置き忘れた時間が動き出した。 初めて投稿します。メンタルが木綿豆腐以下なので、暖かい気持ちで読んでもらえるとうれしいです。 毎日更新できるように頑張ります。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

処理中です...