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第一章ー婚約ー

髪留め

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「エディおにい様!」

そう呼びながら、嬉しそうにエディオル様に抱き付く美人なご令嬢。

ーわぁ─絵になるなぁ…“お姫様と騎士”みたいなー

と、何となくボーっとしながら、その2人を少し離れた所から見ていた。

「あのー…お客様?大丈夫…ですか?」

と、店員さんに声を掛けられてハッとする。

「え?あー、えっと…大丈夫ですよ?」

ーん?“大丈夫ですか?”って…何で?私、何かした?ー

何故か分からないけど、店員のお姉さんに何かを心配されました。ボーっと立っていた─からかなぁ?優しいお姉さんだなぁ─と思うと、自然と笑顔になった。

「お嬢様、人前で男性に抱き付くものではありませんよ。エディオル様、お嬢様が失礼致しました。」

と、エディオル様に抱き付いたご令嬢付きの侍女?らしき女の人が、エディオル様に謝っている。

「もー、カミラはいつも口煩いわね。別にいいじゃない?エディオル様は私のなんだから。」

「正しくは、お嬢様の姉であるレイラ様の旦那様の弟であって、血は繋がってはおりませんし、抱き付いて良い理由にもなりません。また、旦那様に叱られますよ? 」

「カミラがお父様に言わなければバレないでしょ?」

「──そう言う問題ではないだろう?」

「え?」

エディオル様の声が、いつもより少しトーンが低い。それに驚いたように、そのがキョトンとしたような顔でエディオル様を見ている。

そのお嬢様の視線を無視するように、エディオル様はカミラさん(と呼ばれていた侍女さん?)に“失礼する”と言い、私の方へと歩いて来た。

「ハル殿、何か気に入った物はあった?」

先程とは違って、優しい声に優しい顔をしたエディオル様。

「えっと─彼女…義理の妹さん?は良いんですか?」

エディオル様は背を向けているから、気付いてないと思うけど…そのお嬢様が、物凄い顔でこちらを凝視?睨んで?ますよ?

「良いも何も、今日の俺は、ハル殿とお出掛けに来てるんだ。彼女に付き合う義理は無い。」

ーうわぁ…スッパリですねー

「それで?気に入った物はあった?」

優しい笑顔だけど…“これ以上彼女の事は気にするな”みたいな圧が…あるよね。そうですか。分かりました。今はスルーしておきます。空気を読むハルです。

「あ─気に入った物と言うか、可愛い物がいっぱいあり過ぎて困っちゃう位です。あの…もう少し見て回っても良いですか?」

「勿論。俺も一緒に見て回るよ。」

スッと私の腰に手を回される。

ーえ!?何で!?ー

ギョッとして、思わずエディオル様を見上げると

「ん?」

「うぅ──っ」

ーエディオル様、私がこの笑顔に弱いって…気付いてるよね!?確信犯だよね!?ー

「──エディオル様は…意地悪だ…。」

恥ずかしいやら悔しい?やらで、思わず口から言葉が溢れた。そんな私に気を悪くする様子もないエディオル様。寧ろ、楽しそうに笑う。

「褒め言葉─として受け取っておこう。手加減しないと言っただろう?」

ーだから、手加減って意味知ってますか?今迄も手加減ありましたか!?無かったよね!?ー

ジトリとした目でエディオル様を見遣る。

「そんな顔をしても…可愛いだけだからな?」

ーはぃ───っ!??ー

どうしよう!??エディオル様が壊れたかもしれません!!いや、目が悪いのかな!?そうだ!ポーションだ!治癒のポーションが必要だよね!?ー

「ふっ──ハル殿…少し落ち着こうか…ふっ─」

「──っ!!エディオル様…笑い、堪えられてませんからね!?とっ─兎に角ですね?手を離してもらえると助かり──「はいはい。見て回ろうか?」──っ!??」

ー最近、被せ気味の返答が多くないですか!?ー

勝てる気が…全くしない─。いや、別に勝ち負けの問題じゃないんだけど─。恥ずかしいんだけど…優しいエディオル様がすっ…好きだけど!?こう─強引?なエディオル様も嫌─ではなくて…。“流されちゃっても良いかな─”何て思ってしまう自分も居る訳で…。

「──勝てる気がしません。」

「それは…良かった。」

「……」

また、思わず口から出てしまいました。恥ずかしくて、プイッとエディオル様から視線を外す。

「──あ…」

ある髪留めに目が留まった。

薄い水色から薄いピンクに、グラデーションになっている花の飾りが付いた髪留め。

ー何の花だろう?日本の桜に…似てる?ー

懐かしいなぁ─最後に見たのはいつだろう?

「これが気に入ったのか?」

「あ─はい。この飾りに付いている花が、私の世界にあった花に似ていて…懐かしいなぁって─。」

「そうか──」

エディオル様は一言それだけ言って、私の背中をポンポンと優しく叩いた。

ーうぅ─本当に、そう言う処が優しいよねー

懐かしさと優しさで、気持ちがホッコリして、私はその髪留めを購入した。






そんな私達2人を、冷たい目で見ていたには、全く気付いていなかった。








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