54 / 57
余話ーアヤメー
しおりを挟む*エレーナが監禁されている部屋にて*
「何で私が修道院に行かなきゃいけないの!?」
「“何で?”。エレーナ、あなたはまだ分からないの?あなたは…従妹であるシルフィーを嘘で陥れたのよ。しかも、公爵家嫡男のマクウェル様と第二王子を巻き込んでね。ただの平民でしかないあなたが、貴族を──」
「私はただの平民なんかじゃないわ!お母様が勝手に拒否しただけでしょう!私は…マクウェル様の婚約者なのに!将来の公爵夫人なのに!」
エレーナ─女狐の処遇は、この国の最果ての地にある修道院行きだった。そこは、漫画にも出て来る修道院。罪を犯した女性を矯正させる為の場所だ。心から反省し、改心すれば出て来る事は可能だが、そこから生きて出て来た者は今迄一人も居なかった。おそらく、この女狐も出て来れないだろう。
「将来の公爵夫人?馬鹿言わないでちょうだい。あなたは、マクウェル様の人生も狂わせたのよ。マクウェル様は、後1年学園には通えるけれど、卒業後はルーラント公爵との養子縁組を解消して、隣国へと帰る事になったわ。平民としてね。」
「隣国に?平民と…して?」
「そう、平民よ。レオグル様がマクウェル様の行いに怒ってしまわれてね。自国に連れ帰っても、元の席には戻さないと…。」
レオグル様の嫁は元王女。マクウェル様も王族としての血を継いでいる為、この国での処遇は無かったのだが、それを許さなかったのが、祖父であるレオグル様だった。
「それに───エレーナ、貴方が本当に狙ってたのは…王弟殿下のアシュレイ様だったんでしょう?」
「なっ──」
驚いた顔で私を見上げて来る女狐に近付いて
「隠しキャラであるアシュレイが…好きだったんでしょう?」
「っ!?」
更に目を瞠って固まる女狐に笑顔を向ける。
「でも、残念だったわね。アーロンと遊んでいる最中にわざとアーロンに怪我をさせられたように装って、傷痕も作ったのに。王弟殿下はシルフィーを選んだ。あんたみたいな、馬鹿な女には……マクウェル様やユシール王子位が丁度良かったのに。ふふっ。ざまあないわね?」
「まさか…お母様も……」
「エレーナ、修道院に行っても…元気でね?」
未だにギャーギャーと叫ぶ女狐は無視して、私はその部屋を後にした。
それから3日後、女狐は修道院へと送られて行った。
それから1年。アーロンは首席をキープしたまま卒業した。
あの件で、双子の姉でもあるエレーナであっても、そのまま信じる事をせず、自分の意思で行動した事が王太子の目に留まり、アーロンは平民のままではあるが、王太子の側近の一人に選ばれた。兄上であるハイネル伯爵とキリクス伯爵が、アーロンの後ろ盾になってくれた。
そして、アーロンとシルフィーちゃんは無事に社交界デビューをした。
そのデビュタントとして参加したシルフィーちゃんは───
3日程、キリクスの邸に帰って来なかった。
ー勿論、ソレは、私の想定範囲内の事だったけどー
王弟殿下はヒロインを溺愛する俺様キャラだった。しかも、魔力の相性がすこぶる良い。良いと言う事は、身体の相性が良かったり、子供ができやすかったり…するのよね…。コレは、私からはシルフィーちゃんには言えなかったけど。
でも、この1年のシルフィーちゃんは幸せそうだった。
表情があまり変わらないのはそのままだけど、王弟殿下の話をする時は、ほんのり顔が赤くなって、嬉しそうな顔になっていた。
アーロン曰く、学園では王弟殿下の周りへの牽制っぷりと、シルフィーちゃんへの溺愛が──凄かったらしい。
『時々、シルフィーが顔を真っ赤にして椅子にグッタリしていて…その時だけは、僕もどうしたらいいか分からない!』
と、アーロンがぼやいているのは…スルーしておいた。
そんな感じだったから、シルフィーちゃんが3日帰れなかったと言われても、私は特に驚かなかった。
ーいや、アーロン以外は、誰も驚いてなかったわねー
兎に角、推しのシルフィーちゃんが幸せになって、本当に良かったわ!!!
「え?魔力が戻ってる!?」
シルフィーちゃんが3日ぶりにキリクス邸に帰って来て、それから更に2日後に、私はシルフィーちゃんに会いにキリクス邸へとやって来た。
すると、不思議な事にシルフィーちゃんの魔力が増えていた。
「あれ?前に会った時は……」
と言い掛けてハッとする。
「「……」」
シルフィーちゃんは…顔が真っ赤だ。
ー可愛い!!─じゃなくて!ー
「あー…なるほど…ね。うんうん。」
「アヤメさん……」
身体の…結び付きによって、お互いの魔力が流れあって…シルフィーちゃんの魔力の流れが更に良くなった─と言う事…なんだろう。
ー一体、この3日でどれだけ…ー
とは、心の中にしまっておこう。
「えっと…兎に角…良かった?わね?それで、もしかして、キリクスの能力も使えるようになったの?」
「えっと…はい。使えるようになったわ。」
これには、シルフィーちゃんは素直に嬉しそうに微笑む。
“キリクス直系だけに継がれる能力”とは、姿、気配を完璧に消す事が出来る─と言う能力。
そう。シルフィーちゃんは、肩に毒矢を受けた後、更なる攻撃を受けない為にその能力を使って姿を消していた為、誰にも見付けてもらえなかったのだ。本当に、ある意味魔力暴走を起こして良かった。
「でも、この先、私はアシュレイ様の妻になるから、“影の盾”として、この能力を使う事があるのかどうかは分からないけど。」
と、少し残念そうな顔をしてはいるけど、嫌な感情は含まれてはいない感じだ。きっと、シルフィーちゃんも、王弟殿下の事が…好きなんだろう。
「ふふっ。そうね。シルフィーちゃんが“影の盾”として動こうものなら、王弟殿下が国王陛下を締め上げそうよね。まぁ、私としては、シルフィーちゃんが幸せなら何でも良いわ!」
「アヤメさん…本当に、ありがとう。これからも…宜しくお願いしますね。」
花が綻ぶように笑うシルフィーちゃん。
「はぁ───尊い!!!私の方こそ、ありがとう!!」
今日も推しのシルフィーちゃんは、可愛い!!
60
お気に入りに追加
799
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
氷の騎士は、還れなかったモブのリスを何度でも手中に落とす
みん
恋愛
【モブ】シリーズ③(本編完結済み)
R4.9.25☆お礼の気持ちを込めて、子達の話を投稿しています。4話程になると思います。良ければ、覗いてみて下さい。
“巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について”
“モブで薬師な魔法使いと、氷の騎士の物語”
に続く続編となります。
色々あって、無事にエディオルと結婚して幸せな日々をに送っていたハル。しかし、トラブル体質?なハルは健在だったようで──。
ハルだけではなく、パルヴァンや某国も絡んだトラブルに巻き込まれていく。
そして、そこで知った真実とは?
やっぱり、書き切れなかった話が書きたくてウズウズしたので、続編始めました。すみません。
相変わらずのゆるふわ設定なので、また、温かい目で見ていただけたら幸いです。
宜しくお願いします。
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
怒れるおせっかい奥様
asamurasaki
恋愛
ベレッタ・サウスカールトンは出産時に前世の記憶を思い出した。
可愛い男の子を産んだその瞬間にベレッタは前世の記憶が怒涛のことく甦った。
日本人ので三人の子持ちで孫もいた60代女性だった記憶だ。
そして今までのベレッタの人生も一緒に思い出した。
コローラル子爵家第一女として生まれたけど、実の母はベレッタが4歳の時に急な病で亡くなった。
そして母の喪が明けてすぐに父が愛人とその子を連れて帰ってきた。
それからベレッタは継母と同い年の義妹に虐げられてきた。
父も一緒になって虐げてくるクズ。
そしてベレッタは18歳でこの国の貴族なら通うことが義務付けられてるアカデミーを卒業してすぐに父の持ってきた縁談で結婚して厄介払いされた。
相手はフィンレル・サウスカールトン侯爵22歳。
子爵令嬢か侯爵と結婚なんて…恵まれているはずがない!
あのクズが持ってきた縁談だ、資金援助を条件に訳あり侯爵に嫁がされた。
そのベレッタは結婚してからも侯爵家で夫には見向きもされず、使用人には冷遇されている。
白い結婚でなかったのは侯爵がどうしても後継ぎを必要としていたからだ。
良かったのか悪かったのか、初夜のたったの一度でベレッタは妊娠して子を生んだ。
前世60代だった私が転生して19歳の少女になった訳よね?
ゲームの世界に転生ってやつかしら?でも私の20代後半の娘は恋愛ゲームやそういう異世界転生とかの小説が好きで私によく話していたけど、私はあまり知らないから娘が話してたことしかわからないから、当然どこの世界なのかわからないのよ。
どうして転生したのが私だったのかしら?
でもそんなこと言ってる場合じゃないわ!
あの私に無関心な夫とよく似ている息子とはいえ、私がお腹を痛めて生んだ愛しい我が子よ!
子供がいないなら離縁して平民になり生きていってもいいけど、子供がいるなら話は別。
私は自分の息子の為、そして私の為に離縁などしないわ!
無関心夫なんて宛にせず私が息子を立派な侯爵になるようにしてみせるわ!
前世60代女性だった孫にばぁばと言われていたベレッタが立ち上がる!
無関心夫の愛なんて求めてないけど夫にも事情があり夫にはガツンガツン言葉で責めて凹ませますが、夫へのざまあはありません。
他の人たちのざまあはアリ。
ユルユル設定です。
ご了承下さい。
没落令嬢は、おじさん魔道士を尽くスルーする
みん
恋愛
とある国の辺境地にある修道院で育った“ニア”は、元伯爵令嬢だ。この国では、平民の殆どは魔力無しで、魔力持ちの殆どが貴族。その貴族でも魔力持ちは少ない。色んな事情から、魔力があると言う理由で、15歳の頃から働かされていた。ただ言われるがままに働くだけの毎日。
そんな日々を過ごしていたある日、新しい魔力持ちの……“おじさん魔道士”がやって来た。
❋相変わらずのゆるふわ設定なので、軽く読んでいただければ幸いです。
❋気を付けてはいますが、どうしても誤字脱字を出してしまいます。すみません。
❋他視点による話もあります。
❋基本は、1日1話の更新になります。
(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!
みん
恋愛
双子の姉として生まれたエヴィ。双子の妹のリンディは稀な光の魔力を持って生まれた為、体が病弱だった。両親からは愛されているとは思うものの、両親の関心はいつも妹に向いていた。
妹は、病弱だから─と思う日々が、5歳のとある日から日常が変わっていく事になる。
今迄関わる事のなかった異母姉。
「私が、お姉様を幸せにするわ!」
その思いで、エヴィが斜め上?な我儘令嬢として奮闘しているうちに、思惑とは違う流れに─そんなお話です。
最初の方はシリアスで、恋愛は後程になります。
❋主人公以外の他視点の話もあります。
❋独自の設定や、相変わらずのゆるふわ設定なので、ゆるーく読んでいただけると嬉しいです。ゆるーく読んで下さい(笑)。
訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる