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気付かないヒロイン

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以降、私は生徒会室に行くのを止めた。エレーナが居るからだ。そのせいで、何故か役員でもないマクウェル様も時折生徒会室に訪れて来るらしい。
それに、王弟殿下とベルフォーネ様が、私をマクウェル様に会わせたくない─と、とても怒っているからと言うのもある。

「侍女兼護衛の私が守られてどうするのよ?」

苦笑するも、2人の優しがとても有難かった。

兎に角、今ではベルフォーネ様が生徒会の仕事をしている間は、私は一人図書室で本を読んだり勉強をしている。

そろそろ、ベルフォーネ様も終わる頃かな?と思い、席を立った時

「シルフィー嬢。お久し振りですね。」

「リンデル様。お久し振りでございます。」

マーカス=リンデル様は侯爵家の嫡男で、ユシール王子の側近の一人だ。きっと、私の事は良くは思っていないだろう。

「すみません。これからベルフォーネ様を迎えに行くので、これで失礼致します。」

軽く頭を下げてから歩みを進めると

「シルフィー嬢。エレーナ嬢には…気を付けた方が良い──」

リンデル様が静かな声で呟いた。

「え?」

「詳しくは分からないけど、最近はよくユシール殿下とマクウェル様と何か話し込んでいるんですよ。それが気になって。何も無ければ良いのですが…一応、シルフィー嬢には伝えておこうと思ってね。」

驚いた。てっきり、リンデル様はユシール王子やマクウェル様側だと思っていた。

「意外でしたか?まぁ…仕方ありませんけどね。」

肩を竦めながら笑うリンデル様。

「私は貴方の人柄を知っていますからね。あんなくだらない噂を信じる程馬鹿ではありませんよ。貴方はもっと、自分を誇って良いと─私は思います。それでは、引き止めてしまってすみません。失礼しますね。」

それだけ言うと、リンデル様は図書室から出て行った。

ーちゃんと、見てくれる人は見てくれているのねー

「あの3人が何か───」

ーひょっとしたら、アヤメさんが言っていた“断罪”の事かもしれないー

私はそう思いながら、私も図書室を後にした。














それから3日後、エレーナが怪我をして帰って来た─とアヤメさんから知らせがあった。
それと、その怪我の事で、ベルフォーネ様と私に何かしてくるかも─との事だった。




















*エレーナ視点*

何故?どうして!?

何故ストーリー通りにいかないの!?ラノベのあるあるで、ヒロインが断罪される─と言うのを避ける為に、マナーも勉強も頑張った。そのお陰で、平民として入園したけど成績もトップクラスをキープしている。先生達からも評価されているのに。

マクウェルとユシールは簡単に。あの2人は優し過ぎるのだ。少し涙を流せば何も疑わずにコロっと私を信じた。
傷痕の事もそうだ。私は、嘘は言っていない。本当の事も言っていないけど、勝手に解釈をしたのはマクウェルだ。私は何も悪くない。

2人の好感度を上げて、シルフィーを悪者にして…うまくいっている筈だったのに!



『それに…このエレーナの傷は…シルフィーみたいなが触れて良い傷ではない!君とは…違うんだ!』

マクウェルに言われて、気を失ったシルフィー。可哀想かな─なんて思ったりもしたけど…そんな気持ちも一瞬で消え失せた。

気を失ったシルフィーを、アシュレイが抱き上げて医務室へと運んで行ったから。その時のアシュレイの私を見る目は、明白あからさまに軽蔑の色をしていた。

何故、あそこでアシュレイが出て来たの?ゲームのストーリーでは、こんな早い段階でアシュレイとシルフィーが絡むなんて事はなかった。例え、生徒会顧問だったとしても、手伝いごときのシルフィーとアシュレイが仲良くなるなんて事はなかったのに。何故!?本当に、つくづくシルフィーは私の邪魔をして鬱陶しくて仕方無い。
このままだと、私はマクウェルとの婚約が決まってしまう。シルフィーを断罪するのに、1年も待っていられない!

よりは早いけど…しかないわね。」

ユシール、マクウェル、マーカス、アーロン。私の為にも…頑張ってもらうわよ?

「ふふっ─」

この時のエレーナは、アーロンは弟で、マーカス=リンデルはユシールの側近の一人だから、自分側の人間だと思っていた。漫画でもゲームでも、アーロンとマーカスはユシールの側に居たから、この世界ででも自分側の人間なんだと─。
そして、エレーナは、その間違いに気付く事がないままに更にを進めて行った。



















「ベルフォーネ=アルダートン、今日の放課後、生徒会室迄来てくれ。拒否権は無い─と思って欲しい。」

エレーナが怪我をした─と知らせが来た翌日、Aクラスの教室に居るユシール王子がベルフォーネ様に告げて来た。

「それは…王子としての命令ですの?」

「そう受け取ってもらって構わない。」

「承知致しましたわ。」

と、ベルフォーネ様は…それはそれは嬉しそうな笑顔で答えられました。








どうやら…アヤメさんの予想通り、動くようです。














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