35 / 57
ダンス
しおりを挟む
「それでは、王妃を祝って楽しんでくれ。」
国王陛下の挨拶が終わると、そこから音楽が流れ出し、国王両陛下と、王太子レオナール様と婚約者であるベルフォーネ様の2組がホールの中央でダンスを始める。
そして、2曲目に入る前、国王両陛下はお互い向き合い軽く礼をした後、ホールを見渡せる位置にある玉座へと移動した。2曲目からは、誰もが自由にダンスに参加できる。
王太子殿下とベルフォーネ様は、どうやらこのままダンスを続けるようだ。
「シルフィー、私達も踊ろうか?」
「勿論、喜んで。」
私は少し微笑んで、お兄様の手をとった。
「シルフィーは、ダンスが上手だね。」
「領地に居る時にケイトにみっちり扱かれたからね。」
「あぁ…なるほどね…」
と、兄が遠い目をしている─と言う事は、お兄様も扱かれたのだろう。お互いクスクスと笑っていると
「まさか、シルフィーが参加しているとは思わなかったぞ?」
「「王弟殿下!?」」
「あー、堅苦しい挨拶はいらないからな。」
挨拶をしようとしたところ、王弟殿下が手をヒラヒラさせながら苦笑した。
「王弟殿下こそ、夜会に参加されているとは…」
「本当にな。俺自身驚いているが、王命だから仕方無いだろう?」
「王命……」
兄はそう呟いてから黙り込む。
その兄を暫く見た後、王弟殿下が私の方へと視線を向けて来た。
「シルフィー、俺とも…踊ってくれるか?」
「───え?」
ー“踊る”って何を?誰と?ー
「参加だけして、ダンスの一つもしないと兄上に何を言われるか…。俺を助けると思って。」
言いたい事は…分からない事も無いけど…。
あぁ、そうか。私とダンスをしたところで、何の影響も無いからか。
12も年の差があって、なんなら先生と生徒で、私の見てくれは至って普通。平凡な顔立ち。噂にもならないだろう。なるほど、ある意味“虫除け”と言う事だろう。
「(虫除け)きっちり務めさせていただきます。」
ーシルフィー…絶対に勘違いしているよな?ー
と、ユリウスは心の中で呟いた。
「ダンス、うまいな。」
「ありがとうございます。」
家族以外の男の人と踊るのは初めてだけど、王弟殿下のリードはとても踊りやすい。自分がフワフワと浮いているように足元が軽くて楽しい。だからなのか、自分でも顔が笑っていると言う事が分かる。
そんな私を、王弟殿下もいつもより優しい目で見下ろしている。うんうん。確かに、こんな目で見つめられると、色んなご令嬢達から攻撃を受けても仕方無いよね─と、一人納得していると曲が終わり掛けた為、王弟殿下から離れる為に一歩後ろへと下がろうとすると、逆に腰に回されていた手に力を入れて、王弟殿下の方へと引き寄せられた。
「──え!?」
「誰が、一曲だけだと言った?」
耳元で囁かれて、バッと顔を上げると、広角を上げてニヤリ─と微笑んでいる王弟殿下が居た。
「なっ─にを…冗談は止めて下さい。二曲連続なんて…王弟殿下にご迷惑が─」
「そもそも迷惑だと思ってるなら、シルフィーをダンスに誘ったりはしない。それに、俺と仲が良いと思わせておけば、学園でお前に直接手を出して来る奴も居なくなるだろう?」
パチクリッと、目を瞬かせる。
いやいや、逆効果じゃないだろうか?確かに、直接何かをしてくる人は居なくなるかもしれないけど…
それに何よりも、王弟殿下にキズがつくよね?“傷物令嬢に誑かされた王弟殿下”とか─。
「王弟殿下、私は、自分で対処できますので、その様なお気遣いは……」
踊ろうとする動きを止めて、スッと姿勢を正して王弟殿下に向き合う。動きを止められた事に驚いたのか、ポカンとした顔をしている隙に、王弟殿下から距離をとり軽く一礼して、更に距離をとる為に後ろに下がった。
そんな私を見て、王弟殿下はまたニヤリと笑う。
「本当に、シルフィーは面白いな。」
「褒め言葉として、頂いておきます。」
「まぁ…今のところはこれ位にしておくか。」
「はい?何か言われましたか?」
あまりにも声が小さくて聞き取れなかった。
「いや、何も。仕方無い、ダンスは諦めるから、向こうで一緒に何か飲みながら相手をしてもらおうか。」
ーあぁ、それは、拒否権は無いんですね?ー
「はい………。」
「くくっ──」
何故か愉しそうに笑う王弟殿下にエスコートされながら、私達はお兄様の所へと戻り、そのまま3人でドリンクを飲みながら話をした。王弟殿下に秋波を送って来る令嬢方には目もくれずに…。
ーある意味、本当に怖いわー
私はソッと溜息を吐いた。
そんな私達の様子を、マクウェル様が冷たい目で見ていた事なんて…私は気付いていなかった。
そして、夜会は恙無く終わり───
「話がある」
と、時間を作ってもらうようにお願いをしたのは私。だけど─
「どうせ、今後関わって来るだろうから、ついでにと思ってね。」
と、父が軽ーく言う。
話をする場所が王城内─国王陛下の執務室で……部屋には国王陛下と王太子殿下と宰相と祖父と父と兄と……王弟殿下が居た。
ー何?この…面子は……ー
国王陛下の挨拶が終わると、そこから音楽が流れ出し、国王両陛下と、王太子レオナール様と婚約者であるベルフォーネ様の2組がホールの中央でダンスを始める。
そして、2曲目に入る前、国王両陛下はお互い向き合い軽く礼をした後、ホールを見渡せる位置にある玉座へと移動した。2曲目からは、誰もが自由にダンスに参加できる。
王太子殿下とベルフォーネ様は、どうやらこのままダンスを続けるようだ。
「シルフィー、私達も踊ろうか?」
「勿論、喜んで。」
私は少し微笑んで、お兄様の手をとった。
「シルフィーは、ダンスが上手だね。」
「領地に居る時にケイトにみっちり扱かれたからね。」
「あぁ…なるほどね…」
と、兄が遠い目をしている─と言う事は、お兄様も扱かれたのだろう。お互いクスクスと笑っていると
「まさか、シルフィーが参加しているとは思わなかったぞ?」
「「王弟殿下!?」」
「あー、堅苦しい挨拶はいらないからな。」
挨拶をしようとしたところ、王弟殿下が手をヒラヒラさせながら苦笑した。
「王弟殿下こそ、夜会に参加されているとは…」
「本当にな。俺自身驚いているが、王命だから仕方無いだろう?」
「王命……」
兄はそう呟いてから黙り込む。
その兄を暫く見た後、王弟殿下が私の方へと視線を向けて来た。
「シルフィー、俺とも…踊ってくれるか?」
「───え?」
ー“踊る”って何を?誰と?ー
「参加だけして、ダンスの一つもしないと兄上に何を言われるか…。俺を助けると思って。」
言いたい事は…分からない事も無いけど…。
あぁ、そうか。私とダンスをしたところで、何の影響も無いからか。
12も年の差があって、なんなら先生と生徒で、私の見てくれは至って普通。平凡な顔立ち。噂にもならないだろう。なるほど、ある意味“虫除け”と言う事だろう。
「(虫除け)きっちり務めさせていただきます。」
ーシルフィー…絶対に勘違いしているよな?ー
と、ユリウスは心の中で呟いた。
「ダンス、うまいな。」
「ありがとうございます。」
家族以外の男の人と踊るのは初めてだけど、王弟殿下のリードはとても踊りやすい。自分がフワフワと浮いているように足元が軽くて楽しい。だからなのか、自分でも顔が笑っていると言う事が分かる。
そんな私を、王弟殿下もいつもより優しい目で見下ろしている。うんうん。確かに、こんな目で見つめられると、色んなご令嬢達から攻撃を受けても仕方無いよね─と、一人納得していると曲が終わり掛けた為、王弟殿下から離れる為に一歩後ろへと下がろうとすると、逆に腰に回されていた手に力を入れて、王弟殿下の方へと引き寄せられた。
「──え!?」
「誰が、一曲だけだと言った?」
耳元で囁かれて、バッと顔を上げると、広角を上げてニヤリ─と微笑んでいる王弟殿下が居た。
「なっ─にを…冗談は止めて下さい。二曲連続なんて…王弟殿下にご迷惑が─」
「そもそも迷惑だと思ってるなら、シルフィーをダンスに誘ったりはしない。それに、俺と仲が良いと思わせておけば、学園でお前に直接手を出して来る奴も居なくなるだろう?」
パチクリッと、目を瞬かせる。
いやいや、逆効果じゃないだろうか?確かに、直接何かをしてくる人は居なくなるかもしれないけど…
それに何よりも、王弟殿下にキズがつくよね?“傷物令嬢に誑かされた王弟殿下”とか─。
「王弟殿下、私は、自分で対処できますので、その様なお気遣いは……」
踊ろうとする動きを止めて、スッと姿勢を正して王弟殿下に向き合う。動きを止められた事に驚いたのか、ポカンとした顔をしている隙に、王弟殿下から距離をとり軽く一礼して、更に距離をとる為に後ろに下がった。
そんな私を見て、王弟殿下はまたニヤリと笑う。
「本当に、シルフィーは面白いな。」
「褒め言葉として、頂いておきます。」
「まぁ…今のところはこれ位にしておくか。」
「はい?何か言われましたか?」
あまりにも声が小さくて聞き取れなかった。
「いや、何も。仕方無い、ダンスは諦めるから、向こうで一緒に何か飲みながら相手をしてもらおうか。」
ーあぁ、それは、拒否権は無いんですね?ー
「はい………。」
「くくっ──」
何故か愉しそうに笑う王弟殿下にエスコートされながら、私達はお兄様の所へと戻り、そのまま3人でドリンクを飲みながら話をした。王弟殿下に秋波を送って来る令嬢方には目もくれずに…。
ーある意味、本当に怖いわー
私はソッと溜息を吐いた。
そんな私達の様子を、マクウェル様が冷たい目で見ていた事なんて…私は気付いていなかった。
そして、夜会は恙無く終わり───
「話がある」
と、時間を作ってもらうようにお願いをしたのは私。だけど─
「どうせ、今後関わって来るだろうから、ついでにと思ってね。」
と、父が軽ーく言う。
話をする場所が王城内─国王陛下の執務室で……部屋には国王陛下と王太子殿下と宰相と祖父と父と兄と……王弟殿下が居た。
ー何?この…面子は……ー
42
お気に入りに追加
788
あなたにおすすめの小説
異世界召喚されていきなり妃候補とか言われたけど、他の妃候補がチートすぎてもう辞めたいです+妖精(おまけ)付き
蘇芳
ファンタジー
異世界に召喚されたマナはお城に連れていかれると、王妃様から妃候補として選ばれた事を告げられます。王太子にはいたく気に入られたものの、他の王妃候補があまりにも強すぎる。
カリスマ姫、パーフェクト公爵令嬢、美騎士令嬢に天才魔女、この層々たる顔ぶれを前に、気弱で何の取り柄もないマナは妃候補を辞めて普通に暮らしたいとまで思い詰めます。けれど、そんな事が口にできるはずもなく、チートな妃候補と共に聖メディアーノ学園での学園生活が始まってしまいます。
わたしににあるものと言えば可愛らしいフェアリーだけ、それでも自分なりにやってみます。
何の取柄もない弱気少女が異世界で人の温かさに触れながら頑張る物語。
基本は恋愛ですが、それ以外の要素も多いのでファンタジーといたしました。
誤字脱字などあれば、教えて頂けるとうれしいです。
小説家になろうでも投稿させて頂いております。
本物の恋、見つけましたⅡ ~今の私は地味だけど素敵な彼に夢中です~
日之影ソラ
恋愛
本物の恋を見つけたエミリアは、ゆっくり時間をかけユートと心を通わていく。
そうして念願が叶い、ユートと相思相愛になることが出来た。
ユートからプロポーズされ浮かれるエミリアだったが、二人にはまだまだ超えなくてはならない壁がたくさんある。
身分の違い、生きてきた環境の違い、価値観の違い。
様々な違いを抱えながら、一歩ずつ幸せに向かって前進していく。
何があっても関係ありません!
私とユートの恋は本物だってことを証明してみせます!
『本物の恋、見つけました』の続編です。
二章から読んでも楽しめるようになっています。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
恋に落ちてしまえ
伊藤クロエ
BL
【呪い持ちの騎士団長ジェイデン×副団長兼悪友のキーガン】
『人間の精気を摂らなければ死ぬ』呪いのせいで大事な友人を食い物にしなければ生きていけないことを恥じている生真面目で堅物な騎士ジェイデンと、彼とは正反対に軽妙で要領のいい性格ながらも密かにジェイデンの助けになりたいと思っている悪友キーガンのお話。
・受けくんがわりと身体も心もつよいです。
・Twitter(ぷらいべったー)で連載後、ムーンライトさんに載せていたものです。
「僕は病弱なので面倒な政務は全部やってね」と言う婚約者にビンタくらわした私が聖女です
リオール
恋愛
これは聖女が阿呆な婚約者(王太子)との婚約を解消して、惚れた大魔法使い(見た目若いイケメン…年齢は桁が違う)と結ばれるために奮闘する話。
でも周囲は認めてくれないし、婚約者はどこまでも阿呆だし、好きな人は塩対応だし、婚約者はやっぱり阿呆だし(二度言う)
はたして聖女は自身の望みを叶えられるのだろうか?
それとも聖女として辛い道を選ぶのか?
※筆者注※
基本、コメディな雰囲気なので、苦手な方はご注意ください。
(たまにシリアスが入ります)
勢いで書き始めて、駆け足で終わってます(汗
義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!
ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。
貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。
実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。
嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。
そして告げられたのは。
「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」
理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。
…はずだったが。
「やった!自由だ!」
夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。
これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが…
これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。
生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。
縁を切ったはずが…
「生活費を負担してちょうだい」
「可愛い妹の為でしょ?」
手のひらを返すのだった。
追放された不出来な聖女は、呪われた隣国騎士の愛で花開く
水月音子
恋愛
アニエスが暮らすサンユエリという国には、“聖女を表す詩”が広く浸透していた。
その詩によれば聖女は、処女でなくなれば“聖なる力”は無くなると信じられてきた。
そのため、聖女としての力が弱いアニエスは、王太子と婚約しているにも関わらず、他の男と浮気しているのではと揶揄を込めた噂を広められてしまう。
さらに、王太子が秘密裏に聖女召喚の儀を行い、異世界から強い“聖なる力”を持った少女を召喚したことで、アニエスの立場は危ういものになる。
それどころか、アニエスは異世界の聖女を害そうとした身に覚えのない罪によって、王太子から婚約破棄を突き付けられ、国王によって国外追放を言い渡される。
死を覚悟したアニエスだったが、国境の森で触手に覆われた生き物に助けられた。
その生き物は呪いを受けた隣国リヒゾーナの騎士で、アニエスは彼が療養中に過ごしている邸にて保護される。
そこでアニエスは、“聖女を表す詩”の解釈がサンユエリとは違うことを知るのだった。
今まで周りに流されるまま過ごしてきたアニエスは、隣国の騎士の愛を一身に浴びて、聖女としての力を開花させていく。
※某投稿サイトでも同タイトルで投稿していますが、こちらは多少改稿しているものになります。
※R18シーンには「※」を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる