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唯一の願い
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「叔父上が魔法学の教鞭に立つとは、驚きました。」
ここは生徒会室。
カレン先生の代行として、生徒会の顧問をする事になった王弟殿下が、入園式の準備をしている生徒会室にやって来た。
ユシール第二王子も、王弟殿下が教師として学園に来る事を知らなかったようだ。
「この学園での魔法騎士のカリキュラムの確認も兼ねているんだ。」
なる程。それなら、王弟殿下が適任だろう。
「現役の王城付きの魔法騎士副団長から学べるとは…魔法騎士希望者にとっては、これ以上無い喜びでしょうね。」
「そう思ってもらえると嬉しいがな。ま、兎に角、生徒会の顧問も俺がそのまま担当する事になったから、宜しく頼むな。」
「分かりました。宜しくお願いします。」
各々が軽く挨拶をした後、再び入園式の準備に戻った。
私は、生徒会の役員ではない。ベルフォーネ様の侍女をしている為、そのベルフォーネ様に付いて来ているだけにすぎない。ベルフォーネ様が王太子殿下の婚約者であり、何かあってはいけない─と言う事で、侍女である私が生徒会室の出入りの許可が降りているだけなのだ。ただ待っているだけ─と言うのも気が引けるので、雑用などのお手伝いをさせてもらっている。
ベルフォーネ様達が準備をしている部屋の隣の部屋で、過去の資料に目を通している王弟殿下にお茶を持って行く。
「宜しければ、どうぞ。」
「ん?あぁ、ありがとう。」
資料から目を離し、お茶を一口飲む。
「あの…王弟殿下、以前仰っていた──」
丁度2人だけだから、大丈夫かと思い声を掛けようとすると
「試したくなったか?」
と、ニヤリと笑う王弟殿下と目が合った。
「……はい。やはり、魔力が少しでも回復する可能性があるのであれば、試してみようかと。“キリクス”としても…。」
「前から思っていたが…良い目をしているな。うん。試してみるか。お前は、ベルフォーネ嬢の王妃教育の時も、一緒に登城するのか?」
「はい。明日も一緒に登城予定です。」
明日は生徒会の作業も無い為、ベルフォーネ様の王妃教育の為、朝から登城する予定だった。そして、昼からは王太子殿下とのイチャラブタイムがある為、帰りは夕方になるだろう。
「なら、待っている間王城内にある俺の執務室に来れるか?そこでなら、何かあってもすぐに対処できるから。」
「分かりました。ベルフォーネ様をお送りした後、そちらにお伺いさせていただきます。すみませんが、この事をベルフォーネ様にお伝えしても…良いでしょうか?」
「勿論良いよ。隠す必要もないからな。俺も、レオナールには言っておく。とは言え、言いふらすのも良くはないから、その2人だけで良いだろう?」
「はい。後は、父と兄だけですね。それでは、明日、宜しくお願い致します。作業中に失礼致しました。」
「──あぁ…また明日な…」
と、王弟殿下がフワリと微笑んだ。
ー流石は王族様。微笑むと破壊力が半端無いー
そう思いながら、その部屋を後にした。
私はベルフォーネ様付きの侍女兼護衛なので、基本はベルフォーネ様と一緒にアルダートン邸で暮らしている。因みに─
『私は、シルが居なくても大丈夫ですわ!』
→シルが家族(お父様とお兄様)に会えないなんて!私なら寂しいわ!
と言う事で、週に1、2日程キリクス邸に帰っている。
「まあ!それじゃあ、明日はアシュレイ様の所へ行くのね!?」
「はい。それで、最悪の場合、他人の魔力が合わず倒れたりする事があるそうなので、その場合はベル様の事は王太子殿下にお願いしておくと、王弟殿下が仰っていました。」
「分かったわ。私の事は気にしなくて良いから。良い方向に進むと良いわね。」
“ツン”が無く、素直に微笑むベルフォーネ様は、本当に可愛らしい。今は寝る支度をしている為、軽く施してある化粧も落とした後で素っぴん状態。ベルフォーネ様は、素っぴんの方がより一層可愛らしくなる。
ー王太子殿下がこの素っぴんを見たら…間違い無く惚れ直す…と言うか、更に囲い込みが激しくなりそうだよねー
相変わらず、ベルフォーネ様の王太子殿下への“ツンツン”は激しいが、最近では王太子殿下も何となく、ベルフォーネ様の裏の意図を読める?様になったのか、私がフォローを入れなくてもニヤニヤとする事が増えた様に思う。
アヤメさん達が、既に王都のハイネル邸に戻って来て、エレーナとアーロンが入園の準備をしている。アヤメさんが言っていた通り、平民のままで2人とも試験を合格したそうだ。
エレーナ達が入園すると、いよいよアヤメさんが言っていた物語が始まる。既に本来のストーリーとは違って来ているとは言っていたけど、それが良い方へ転がれば良いけど、悪い方へと転がる可能性だってある。でも─
ー王太子殿下とベルフォーネ様には、絶対に幸せになってもらうわー
それが、私の唯一の願いだから、エレーナには負けない。
ここは生徒会室。
カレン先生の代行として、生徒会の顧問をする事になった王弟殿下が、入園式の準備をしている生徒会室にやって来た。
ユシール第二王子も、王弟殿下が教師として学園に来る事を知らなかったようだ。
「この学園での魔法騎士のカリキュラムの確認も兼ねているんだ。」
なる程。それなら、王弟殿下が適任だろう。
「現役の王城付きの魔法騎士副団長から学べるとは…魔法騎士希望者にとっては、これ以上無い喜びでしょうね。」
「そう思ってもらえると嬉しいがな。ま、兎に角、生徒会の顧問も俺がそのまま担当する事になったから、宜しく頼むな。」
「分かりました。宜しくお願いします。」
各々が軽く挨拶をした後、再び入園式の準備に戻った。
私は、生徒会の役員ではない。ベルフォーネ様の侍女をしている為、そのベルフォーネ様に付いて来ているだけにすぎない。ベルフォーネ様が王太子殿下の婚約者であり、何かあってはいけない─と言う事で、侍女である私が生徒会室の出入りの許可が降りているだけなのだ。ただ待っているだけ─と言うのも気が引けるので、雑用などのお手伝いをさせてもらっている。
ベルフォーネ様達が準備をしている部屋の隣の部屋で、過去の資料に目を通している王弟殿下にお茶を持って行く。
「宜しければ、どうぞ。」
「ん?あぁ、ありがとう。」
資料から目を離し、お茶を一口飲む。
「あの…王弟殿下、以前仰っていた──」
丁度2人だけだから、大丈夫かと思い声を掛けようとすると
「試したくなったか?」
と、ニヤリと笑う王弟殿下と目が合った。
「……はい。やはり、魔力が少しでも回復する可能性があるのであれば、試してみようかと。“キリクス”としても…。」
「前から思っていたが…良い目をしているな。うん。試してみるか。お前は、ベルフォーネ嬢の王妃教育の時も、一緒に登城するのか?」
「はい。明日も一緒に登城予定です。」
明日は生徒会の作業も無い為、ベルフォーネ様の王妃教育の為、朝から登城する予定だった。そして、昼からは王太子殿下とのイチャラブタイムがある為、帰りは夕方になるだろう。
「なら、待っている間王城内にある俺の執務室に来れるか?そこでなら、何かあってもすぐに対処できるから。」
「分かりました。ベルフォーネ様をお送りした後、そちらにお伺いさせていただきます。すみませんが、この事をベルフォーネ様にお伝えしても…良いでしょうか?」
「勿論良いよ。隠す必要もないからな。俺も、レオナールには言っておく。とは言え、言いふらすのも良くはないから、その2人だけで良いだろう?」
「はい。後は、父と兄だけですね。それでは、明日、宜しくお願い致します。作業中に失礼致しました。」
「──あぁ…また明日な…」
と、王弟殿下がフワリと微笑んだ。
ー流石は王族様。微笑むと破壊力が半端無いー
そう思いながら、その部屋を後にした。
私はベルフォーネ様付きの侍女兼護衛なので、基本はベルフォーネ様と一緒にアルダートン邸で暮らしている。因みに─
『私は、シルが居なくても大丈夫ですわ!』
→シルが家族(お父様とお兄様)に会えないなんて!私なら寂しいわ!
と言う事で、週に1、2日程キリクス邸に帰っている。
「まあ!それじゃあ、明日はアシュレイ様の所へ行くのね!?」
「はい。それで、最悪の場合、他人の魔力が合わず倒れたりする事があるそうなので、その場合はベル様の事は王太子殿下にお願いしておくと、王弟殿下が仰っていました。」
「分かったわ。私の事は気にしなくて良いから。良い方向に進むと良いわね。」
“ツン”が無く、素直に微笑むベルフォーネ様は、本当に可愛らしい。今は寝る支度をしている為、軽く施してある化粧も落とした後で素っぴん状態。ベルフォーネ様は、素っぴんの方がより一層可愛らしくなる。
ー王太子殿下がこの素っぴんを見たら…間違い無く惚れ直す…と言うか、更に囲い込みが激しくなりそうだよねー
相変わらず、ベルフォーネ様の王太子殿下への“ツンツン”は激しいが、最近では王太子殿下も何となく、ベルフォーネ様の裏の意図を読める?様になったのか、私がフォローを入れなくてもニヤニヤとする事が増えた様に思う。
アヤメさん達が、既に王都のハイネル邸に戻って来て、エレーナとアーロンが入園の準備をしている。アヤメさんが言っていた通り、平民のままで2人とも試験を合格したそうだ。
エレーナ達が入園すると、いよいよアヤメさんが言っていた物語が始まる。既に本来のストーリーとは違って来ているとは言っていたけど、それが良い方へ転がれば良いけど、悪い方へと転がる可能性だってある。でも─
ー王太子殿下とベルフォーネ様には、絶対に幸せになってもらうわー
それが、私の唯一の願いだから、エレーナには負けない。
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