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ツンツンデレ?

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「この3年、エレーナを見て来たんだけど…エレーナも、私と同じように…エレーナではなくなっているわ。それに、この世界が漫画の世界だと言う事を知っているわ。」

「それじゃあエレーナは、第二王子狙いと言う事?」

「それは、まだハッキリしていないのよ。ただ、本当に漫画とは全く違う流れになってるの。本来、漫画ではシルフィーちゃんが侍女になる事も護衛になる事もなかった。ベルフォーネ嬢とは、学園に入ってから友達になっていたの。」

それは…そうよね…。私が前を向いてキリクスの一族としての役割を果たそうと思えたのは、アヤメさんの存在があったからだから。

「漫画では、シルフィーちゃんは家族から愛されてない訳ではなかったのだけど、カルディアの事と傷痕のせいで、前向きになれなくてね。そんな時に出会ったのがマクウェル様。マクウェル様がいつも笑顔を向けてくれるから、シルフィーちゃんはマクウェル様を慕う─と言うより、依存していくのよ。でも、1年後に学園に入園して来たエレーナとマクウェル様の距離が近付いていって…シルフィーちゃんが嫉妬してエレーナにようになって…そんなシルフィーちゃんからマクウェル様の心が離れていってしまうのよ。」

確かに、病んでいた頃の私のままなら、そうなっていた可能性は否定できないよね。

「そうなると、ベルフォーネ嬢とシルフィーちゃんは、2人揃ってエレーナにキツく当たってしまって…結局、ベルフォーネ嬢が国外追放されたのと同時に、シルフィーちゃんも修道院に送られる事になるのよ。でも!本当におかしいわよね!?漫画では、シルフィーちゃんとマクウェル様は正式に婚約を結んでいたのよ!?マクウェルお前もか!!って、その時は漫画を叩き付けたわよ!!婚約者を蔑ろにしたのはお前だろう!!って!!!!────はっ!興奮してしまってごめんなさい!」

シュンと反省するように項垂れるアヤメさんは、本当に可愛いらしいなと思う。

「それでね、既に漫画のストーリーからは色々と違う流れになってる事は、エレーナも気付いてる。それに、あの子は、転生あるあるの、“チョロイン”でも“ヒドイン”でも無いのよね。」

「“チョロ”?“ヒド”?」

「転生あるあるではね、物語のヒロインは、その本のストーリー通りに進むと思って、何も努力せずに男達を誑かして恋愛だけをして、最後にはヒロインのくせに断罪されたりするのよ。」

ーえ?転生って…色々と怖いモノなのね!?ー

「でも、エレーナは違うのよ。それを分かっているみたいで…。一度、母親である私に文句を言いに来た事があったのだけど、それ以降は、今迄の我儘が嘘かのように、勉強やマナーレッスンを愚痴も零さず頑張っているのよ。」

未だ平民のままだけど、エレーナがマクウェル様の婚約者になった場合は、直ぐに伯爵家の籍に入れられて貴族になる可能性があるから、頑張る事は良い事なんじゃないのだろうか?

「えっと…頑張る事は良い事なのでは?」

「それが、純粋な気持ちによるモノならね。でも、違うのよ。あの子は、違う流れになっているストーリーを、元に戻そうとしているのよ。シルフィーちゃんとベルフォーネ嬢を…叩き落とす為に──。」

「叩き落とす……」

「そう。だから、今は敢えてエレーナからの、マクウェル様への過度な追い掛けはしていないでしょう?シルフィーちゃんを、マクウェル様に依存させるため為に。でも、それは大丈夫よね?シルフィーちゃんは依存どころか、婚約者にすらなりたくないと思ってるから。それと、エレーナは、シルフィーちゃんが侍女として働く事は知っているけど、武術を取得した事は知らないわ。」

それは、エレーナに限らず、私が武術を修得している事実を知っているのは極々少数だ。国王両陛下、祖父母、お父様、お兄様、宰相、影の盾の者達だけである。マクウェル様でさえ知らない。

「先ず、ベルフォーネ嬢の事なんだけどね?私の最推しは勿論シルフィーちゃんなんだけど、ベルフォーネ嬢も好きだったのよねー。だから、何としてもベルフォーネ嬢も、王太子と幸せになって欲しいの!!ベルフォーネ嬢は、ただ“ツンツンデレ”なだけで、本当はとっても可愛い子なのよ!!」

「ツンツン…デレ??」

本当に、アヤメさんからよく分からない言葉が偶に出て来るよね?

「ベルフォーネ嬢は、本当は王太子の事が大好きなのに、いつも恥ずかしくて素直になれなくて、ついつい冷たい態度をとってしまうのよ。それがまた、王太子が勘違いする切っ掛けにもなるのよ。だからね、シルフィーちゃんが、それとなくフォローしてくれると…何か変わるんじゃないかなって。」

「私が…フォロー?」

「そう。シルフィーちゃんは、人を見る目があるでしょう?空気を読むのも上手だから、きっと、シルフィーちゃんだったら、ベルフォーネ嬢と王太子の仲を上手くいくようにもって行く事ができると思うの。それに、ベルフォーネ嬢に会えば、彼女がとっても可愛らしい人だって事は、すぐに分かると思うわ。」

そう言うと、アヤメさんはニッコリと笑った。









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