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第三章 最強娘を魔王が無視する理由(ワケ)
元魔王の最期
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俺とサラが辿り着いた部屋は、元々は目の前に座るカラカラに干からびた男、ヒューイの研究所であった。
自分を元・黄の魔王だと言うヒューイの話では、突然研究所にオットーは姿を現し、弟子を志願してきたのだという。
役割に関する研究に限界を感じていた所に、オットーの弟子入りという新しい風が入る事でに打破する可能性を期待して、快くヒューイは受けた。
オットー自身も既に役割に関してある程度研究していたようで、役割は変化する事も独自に調べて知っていた事には、ヒューイも驚いたらしい。
俺も役割の変化の話は一つ聞いて知っている。
“賢者の卵”イシューの父アイザックだ。彼は漁師から賢者の父へと役割が変化した。
ヒューイは、オットーから時折並々ならぬ役割への執着のようなものを感じていたらしい。
それは俺もサラも同感で、黄の魔王としてあったオットーからも微かにそれは感じ取れた。
「恐らくそれは汝等に対する怒りだろう。役割を果たしていない事に対するな」
「果たしていない?」
俺の持つ“最強娘の父”は兎も角、アラキの“勇者”やルナの“魔法使い”は、十分に果たしていると思う。二人は。
チラリとサラの下着姿を一瞥したあと俺は、思わずフッと息を漏らしてしまいサラから睨まれてしまった。
その後、役割を変化させるのではなく、役割そのものを奪えないかとオットーはヒューイにも隠れてコッソリと研究していたみたいだ。
結論から言うと奪うというよりかは、入れ替える事に成功したらしい。
その方法が、実に魔王らしいというか、オットーの性格をよく表していた。
入れ替えたい役割を持つ者の心臓を取り出したあと、その血液を摂取するという方法だと聞かされた俺達は、気分が悪くなる。
「ちょっと待って! それだとおかしいわ。だったら何故貴方は生きているの!?」
干からびた姿であるとはいえヒューイは今も此処に生きている。
“黄の魔王”という役割を入れ替えられたなら心臓は抜き取られたという事だ。
「ワシはもうすぐ死ぬだろうよ。今は生かされているだけだ」
ヒューイは、今にも倒れそうなほど弱りきった体で、ゆっくり背中を向けると、そこには鼓動する植物のような枝の塊が。
「これは?」
「神樹の実という。ワシがむかーし、会った神の役割を持つ者から渡されたものだ。今はこれが心臓の代わりをしてくれているが、それももう尽きようとしているのだ」
「待って。神と魔王って対立しているんじゃないの?」
サラの言うイメージが確かにある。
神は善、魔王は悪。それは記憶を失くした俺でも残っていた。
「違うのだ。神という役割は、世界を守る者だ。放っておけば世界が『0の世界』により戻されてしまう為にな」
「その事も聞きたい『0の世界』とはなんだ?」
俺がヒューイに問いかけると弱々しい声ながら発する。
「『0の世界』。今は、その力は半分に過ぎない。何故なら大昔の三人の魔王と神とで、半分は封じ込める事に成功したのでな。黒の魔王。彼だけは『0の世界』が生み出した尖兵のようなものだ……」
虚ろな目をしながらヒューイは遠くを見る。
「『0の世界』については、ワシより詳しい者がいる。……青の魔王に会え。彼女は、唯一、魔王としての記憶を何代にも引き継いでいるのだから」
椅子の手すりからヒューイの細く皺だらけの腕が落ちる。
「最後に……」
ヒューイは全ての生命力を振り絞るように震えながら無理矢理腕を伸ばし俺を指差す。
「お主……は、いずれ……選択することにな……る。世界の為に死ぬか……世界と……共に……」
操り人形の糸が切れたようにヒューイの腕がだらりと下がり、頭も大きく項垂れた。
「ねぇ、この部屋揺れてない?」
ヒューイの最期の言葉に気を取られていた俺はサラの言葉で地面だけでなく部屋全体が揺れている事に気づく。
「不味いな! 急いで、戻ろう!!」
詳しく部屋の中を調べる時間はなく、俺はサラを先に見送った後、本棚の本を適当に見繕い、密閉性の高そうな空きの箱に詰め込むだけ詰め込み施錠をしっかりして、一緒に水中へと潜った。
水中でも背後で部屋が崩れる音が聞こえて来て、俺は急いで、行きに通したロープを懸命に手繰り寄せながら、脱出するのであった。
戻って来た俺達は、その場にいる全員にヒューイの話を伝えた。結局、オットーの足取りは掴めなかったが、一つ分かるのは、黄の魔王の役割のせいか、オットーの性格からかはわからないものの、どうやら俺達が役割を果たしていない事が気に入らないようで、いずれ向こうから来る可能性は高い。
それならば、居場所の分かっている青の魔王を先にした方がいいかもしれない。
「パパ、この箱なんです?」
小さな鍵付きの箱をアリステリアは俺がうんともすんとも言う前に既に力づくで、こじ開けており、中に入っている本を見て、ガッカリしていた。
自分を元・黄の魔王だと言うヒューイの話では、突然研究所にオットーは姿を現し、弟子を志願してきたのだという。
役割に関する研究に限界を感じていた所に、オットーの弟子入りという新しい風が入る事でに打破する可能性を期待して、快くヒューイは受けた。
オットー自身も既に役割に関してある程度研究していたようで、役割は変化する事も独自に調べて知っていた事には、ヒューイも驚いたらしい。
俺も役割の変化の話は一つ聞いて知っている。
“賢者の卵”イシューの父アイザックだ。彼は漁師から賢者の父へと役割が変化した。
ヒューイは、オットーから時折並々ならぬ役割への執着のようなものを感じていたらしい。
それは俺もサラも同感で、黄の魔王としてあったオットーからも微かにそれは感じ取れた。
「恐らくそれは汝等に対する怒りだろう。役割を果たしていない事に対するな」
「果たしていない?」
俺の持つ“最強娘の父”は兎も角、アラキの“勇者”やルナの“魔法使い”は、十分に果たしていると思う。二人は。
チラリとサラの下着姿を一瞥したあと俺は、思わずフッと息を漏らしてしまいサラから睨まれてしまった。
その後、役割を変化させるのではなく、役割そのものを奪えないかとオットーはヒューイにも隠れてコッソリと研究していたみたいだ。
結論から言うと奪うというよりかは、入れ替える事に成功したらしい。
その方法が、実に魔王らしいというか、オットーの性格をよく表していた。
入れ替えたい役割を持つ者の心臓を取り出したあと、その血液を摂取するという方法だと聞かされた俺達は、気分が悪くなる。
「ちょっと待って! それだとおかしいわ。だったら何故貴方は生きているの!?」
干からびた姿であるとはいえヒューイは今も此処に生きている。
“黄の魔王”という役割を入れ替えられたなら心臓は抜き取られたという事だ。
「ワシはもうすぐ死ぬだろうよ。今は生かされているだけだ」
ヒューイは、今にも倒れそうなほど弱りきった体で、ゆっくり背中を向けると、そこには鼓動する植物のような枝の塊が。
「これは?」
「神樹の実という。ワシがむかーし、会った神の役割を持つ者から渡されたものだ。今はこれが心臓の代わりをしてくれているが、それももう尽きようとしているのだ」
「待って。神と魔王って対立しているんじゃないの?」
サラの言うイメージが確かにある。
神は善、魔王は悪。それは記憶を失くした俺でも残っていた。
「違うのだ。神という役割は、世界を守る者だ。放っておけば世界が『0の世界』により戻されてしまう為にな」
「その事も聞きたい『0の世界』とはなんだ?」
俺がヒューイに問いかけると弱々しい声ながら発する。
「『0の世界』。今は、その力は半分に過ぎない。何故なら大昔の三人の魔王と神とで、半分は封じ込める事に成功したのでな。黒の魔王。彼だけは『0の世界』が生み出した尖兵のようなものだ……」
虚ろな目をしながらヒューイは遠くを見る。
「『0の世界』については、ワシより詳しい者がいる。……青の魔王に会え。彼女は、唯一、魔王としての記憶を何代にも引き継いでいるのだから」
椅子の手すりからヒューイの細く皺だらけの腕が落ちる。
「最後に……」
ヒューイは全ての生命力を振り絞るように震えながら無理矢理腕を伸ばし俺を指差す。
「お主……は、いずれ……選択することにな……る。世界の為に死ぬか……世界と……共に……」
操り人形の糸が切れたようにヒューイの腕がだらりと下がり、頭も大きく項垂れた。
「ねぇ、この部屋揺れてない?」
ヒューイの最期の言葉に気を取られていた俺はサラの言葉で地面だけでなく部屋全体が揺れている事に気づく。
「不味いな! 急いで、戻ろう!!」
詳しく部屋の中を調べる時間はなく、俺はサラを先に見送った後、本棚の本を適当に見繕い、密閉性の高そうな空きの箱に詰め込むだけ詰め込み施錠をしっかりして、一緒に水中へと潜った。
水中でも背後で部屋が崩れる音が聞こえて来て、俺は急いで、行きに通したロープを懸命に手繰り寄せながら、脱出するのであった。
戻って来た俺達は、その場にいる全員にヒューイの話を伝えた。結局、オットーの足取りは掴めなかったが、一つ分かるのは、黄の魔王の役割のせいか、オットーの性格からかはわからないものの、どうやら俺達が役割を果たしていない事が気に入らないようで、いずれ向こうから来る可能性は高い。
それならば、居場所の分かっている青の魔王を先にした方がいいかもしれない。
「パパ、この箱なんです?」
小さな鍵付きの箱をアリステリアは俺がうんともすんとも言う前に既に力づくで、こじ開けており、中に入っている本を見て、ガッカリしていた。
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