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酒造り1

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隊長は正午を回っまたくらいにやってきた。

「今日はよろしくな?あとわりぃ。親父も参加していいか?」

「問題ないけど契約魔法を結んでもらうよ?」

「もちろんだ。どんな酒ができるのかドワーフとして見たいらしい。あとは弟子の活躍をこの目で確認するとか言ってたぞ?」

あぁそうだった。この庭に住処を移動した理由が、そもそも私を弟子にするためだった···忘れてた。
「一応弟子だったね···アハハ」


「おぃおぃ一応じゃねぇぞ。嬢ちゃんは俺の立派な弟子だぜぇ。明日は俺の工房に来てもらうからな?それよりも今日は酒だろ?早く飲もうぜ。それとな、もう指は切ってあるからいつでも血をもらってくれ。」



は?もう指を切ってあるって?隊長のお父さんいつの間に?

えぇぇぇ、血がポタポタと垂れ流されていた。
···うわわわあ、慌てて契約魔法の用紙を取り出して結んだせいで双子よりも強い契約を結んでしまった。

やっばーーーやらかした···

「ごめんなさい。話すと死ぬ契約魔法にしちゃった。」


「あ?問題ないぞ。それだけ機密が多いのだろう?俺達ドワーフも頻繁に契約魔法を使うぞ。じゃねぇと技術を盗んだ、盗んでないで揉めるからな。口約束なんて馬鹿がやることだ。」

「それはよかった。結んでくれてありがとう。」


「気にするな。むしろ厳しい契約魔法を結ぶということは俺達にとっては栄誉なことだ。楽しみで眠れなかったからな。早く飲ませてくれ。」


問題なくてよかった。ただ隊長のお父さんから何度か『飲ませてくれ』って聞こえたけれど···気の所為かな?今日は作るだけ····とりあえず「では教えていくので頑張って成功させましょう」と声をかけて酒造りを開始することにした。

手洗いうがいを全員に徹底させ、作りながら説明へ。


今回は2種類作る予定だ。

1つはエール(ビール)である。この世界のエールは美味しくないため自分が美味しいと思うエールを作りたい。

ビールの主原料は麦芽やポップ、水だ。それらに副原料を追加し作るのだが、全部が入っているからと言ってビールと名乗ることができない。
麦芽の量や副原料の量が厳しく制限されている。
海外ではビールと言われるものが、日本だと発泡酒になったりと日本の酒税法は厳しかった。
確か麦芽が50%以上だった気がする。


それに比べて発泡酒は麦芽の量が少なく済むので安価であった
ただし麦芽がビールと同等の量を使われているのもは、高いものもある。
私はそれを知らず、高い発泡酒をよく買っていた。


それに最近では、第3、第4のビールと言われる新ジャンルが流行って。
麦や麦芽を使用せず、えんどう豆や大豆を使って作るお酒や、発泡酒にスピリッツを入れ
そういや私が転生される前に酒税法が変わったはず···

なんだったかな。
確かビールは値下げし、新ジャンルと言われたものが発泡酒に組み込まれて実質値上げするって話だったような。

でも結局はビール系のアルコール飲料は統一されるって聞いた。


税率格差を公平にするためだったかな?それは忘れちゃった。
でも均一になったなら金額で選ぶ必要性がなくなるから、味で勝負になるよね?
以前なら美味しくなくても安いという理由で売れてた商品は、売れなくなるだろうな。
あまりビールは好きじゃなかったが、泡が出るビールは飲んでみたかったな。
結局飲めなかった···まぁいずれ作ればいいか。


そういやこの世界にあるもので作る計画を立てるのは本当に大変だった。

ホップとか無いんだもん。麦も質が悪いし、そもそも麦が大量にない、、、でも進化してる鑑定魔法さんが色々教えてくれたことで、作れることが分かった。

ホップに代わるものを知ることができた。

麦は妥協して品質は中の下あたりのものを使うことになった。そのかわり副原料として使うとうもろこしは品質の良い野生のトウモロコシをゲットすることができた。
なんでもこの世界でトウモロコシは家畜やミルクが採れる魔物の餌のようで、普通の人は食べない。
そのため市場に売っていなかった。
自分でわざわざ根から引っこ抜いてきて庭に植えて育てている。
するとなんと勝手に増えた···庭はトウモロコシで埋め尽くされてる。2階から庭を覗くとキレイなトウモロコシ畑。

「なんで家畜の餌で覆われてんだ」と朝起きたギルドマスターに怒られてたことがあるが、やっと今日トウモロコシが使える。
引っこ抜くと、すぐに生えるトウモロコシは繁殖力が強いようだ。


後は水は魔法で出したものを使用する。地下水は不味いからね···うん、これらを使って鑑定魔法を駆使しながらエールを作る。



2つ目は新ジャンルである発泡酒も作る。

なぜなら大豆が見つかったからだ。それも大量に見つかった。
本当にたまたま見つかった。
ギルドマスターが体調を崩した時に、蜂蜜を採取に行った際にたまたまキラービーの巣の近くに大豆がフサフサと実る場所を発見した。
あれには『Waoooooo』と叫んだくらい感動をした。

モミの木みたいな木に手のひらサイズの大豆が数え切れないほど実っていた。こちらも数本残して採ってきた。

たくさん収穫した立派な大豆を使って新ジャンルの発泡酒も作りたい。
魔法や魔道具を使いながら作るため、本来なら1ヶ月程度かかるところ2週間弱くらいでできることが分かっている。鑑定魔法様々だ。ありがとう!!!


説明しながら作り始めると、「こんな作り方知らねぇ。」と隊長のお父さんが愕然とし、口からヨダレが溢れている。

「味の保証は出来ないけど美味しいと思うよ?」と伝え、他の皆を巻き込みながらサクサクと作業を進め、2種類が準備できた。


あとはこれが完成するまで待つだけとなった。



次はエメが飲めるものを作るぞぉ!!!
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