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料理と怪我の告白

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「眠いなぁ、まだ夜中の2時」とシンジュはつぶやきながら、
今持っている食材をテーブルに並べて何を作ろうか考えた。

芋、小麦、それに砂糖、バター、ミルク、はちみつ···
うーん本来今日はピニックの予定だったから少しでも気分が明るくなる朝食を作りたいと考えた。


まず始めに鍋をコンロにセットし、魔法でたっぷりの水を入れる。そこへなるべく大きな芋をドサッと入れて茹でていく。
茹で上がったら取り出しアイテムボックスへ仕舞っておく。食べる直前にバターとチーズをたっぷりかければ完成!!黒こしょうとかがあればアクセントになったがないので仕方がない。


あ!!!昨日採ったトリュフを乗せよう。
インパクトのある芋バターにしよう。
チーズとバターで高カロリーで背徳感マックスの料理は最高なはず。前世と違って太らないからたまには食べてもいいよね。


次は一緒に茹でた甘い芋の味見して···うん、やっぱり『さつまいも』だった。多分味は紅はるかかな?シルクスイートや安納芋のような甘さはしない。いつも食べていた定番の味がした。

シンジュは実家付近が芋で有名な地域だったため芋については詳しかった。さらに小学生の時は『干しいも』作りを学校でするほど芋に力を入れている地域だった。
そのため食べただけで品種を当てることができた。


味見をして甘い芋はサツマイモだと分かったが、鑑定魔法が使えない人は普通の芋と、サツマイモの見分けがつかないだろうな~と思った。味以外で区別のしようがなかった。


味見したあとは芋を潰してバター、砂糖、少しのミルクを混ぜてスプーンで掬ったものを天板で焼いてスイートポテトを作った。こんがり焼けたスイートポテトは甘い香りを放ち美味しそうだった。

出来上がったスイートポテトを見て「表面に卵黄を塗ればより見た目は美味しそうなのにな~」と考えた。

ただ昨日も市場で卵を見たが、貴族しか購入できないほど高く、腐っていた。それに卵の色が前世と違ってカラフルで手が出しにくい。もちろん中身もカラフルだ。

学園ではカラフル卵を当たり前のように何度も食べたが味は普通だった。

そういやもしかしたら祖国の市場なら新鮮な野菜や肉類など買えるのかな?学園で食べてた料理はお腹を壊さなかったし、腐った食べ物は実家で出された食事ぐらいだ。


もし転移で行けるなら行ってみようかな。髪色と見た目を変装してすればバレないと思うんだよな~と今後の計画を立てながら天板に乗らなかった残りのスイートポテトを焼いた。




焼いている最中に外では、
ガララララ···ガララララ·····ガアガア


ガラララララ······ガラララ···ガラ····ガァ

と早朝にだけ鳴く不気味な鳥の声が聞こえてきた。



調理に夢中で気付いたら日が昇っていたようだ。
不思議な生き物が朝になったら必ず鳴くため大体の何時が分かる。

このガララララって何の生き物なんだろう。湖や鉱山都市にはいなかったがどこの街にはいるようで、毎朝鳴き声が聞こえる。

しかし姿が全く見えない。


何度か鳴いたと同時に外に飛び出してあたりを見回したが、どこにも生き物がいなかった。
今日も朝から激しく鳴いているが1時間ほどで静かになった。時間が分かって嬉しいがいつか姿がみたい。

この鳴き声が止むと皆が次第に起きてくる。急いで残りの料理に取り掛かった。



トマトベースのスープにぶつ切りのトロール、適当な野菜を入れて塩で味を整えて本日の朝食作りが終わった。


あとは各自盛り付けしてもらう。ふぅーーー疲れた。
一息つくとダンダンダンダンと誰かが走ってくる音が聞こえた。

キッチンの扉がバンッと開かれると「何で起きてる?俺は寝てろって言っただろ?」と匂いにつられたギルドマスターが起きてきた。


自主的に早めに起きたシンジュだったが
「ごめん。早めに起きちゃった。」と言った。


テーブを見てハア~とため息を付いたギルドマスターは「昨日倒れたろ?そんな時は休んでくれ。別に毎日作らなくても家賃を要求することはないぞ。」

「作りたくて作っただけだよ。」

「それでもだ。もうやめてくれ。俺もみんなも心配する。お前は自分が人間だと分かっているか?俺達と身体の構造が違うぞ。少し怪我をすれば死ぬって分かるだろ?」



そうだった···皆は獣人や竜人だから身体が頑丈だった。私だけ早死か···嫌だな。今世は少しでも長生きしたいのに、自分のことが分かっていなかった。魔法がある世界だから何でも大丈夫だと思っていたが、人間は少し病気になったくらいで死ぬ可能性があるのに前世を思い出してから無理をしすぎた。
「本当にごめんなさい。そんなに心配すると思わなくて···」


「俺はな、人間よりは長生きだから人間の知り合いも居た。大体の人間は長く生きられない。何でもないような風邪で死んだりする。まだ生きているやつもいるがな。」



知り合いが亡くなるって辛いよね。私がいなくなった後のエメが心配だ。少しでも長生きしよう。
「今度から気をつけます。」

「小僧にも隊長にも謝れよ。」


謝るけれど、ここで怪我のことを言わないと不味いよね···
「あの、実は···」

「あ?なんだ??言いたいことがあるなら言え。」

「えーっとさ実は普通に歩いていたら躓いて足と手が痛い。」

「あ????」

怖い···虎···怖い、肉食動物って怒るとコワすぎる。



「怒らないから状態はどうなんだ?立てるか?」

「立てるよ。ただ力を入れることができない。」

「分かった。お前に触れるぞ?」と言うと持ち上げられて自分の部屋に連れて行かれた。

「鑑定魔法で自分の状態は見れるのか?見れるなら状態を教えろ。」

「えーっと足は捻挫で、手首が骨折です。」


「他に怪我したところや痛いところはあるか?」

「昔怪我したところはどうせ消えないし大丈夫だよ?」

「怪我とはなんだ?」

「うん?祖国に居た時の話だよ。あんまり良く思ってない人たちから怪我をさせられたくらいで、特に問題ないよ。」

「分かった。とりあえず手首だけ見せてくれるか?」
と言われたので手首を差し出すと夜中より腫れていた。


何でだろう?ほとんど動かしてないけどな?枝みたいに細かった手首が倍ほど腫れていた。あれ?でも腫れたほうが人間っぽくていい感じ!!!と思っていると、「もうこのまま大人しくしてくれるか?」と目で訴えられたため大人しく従った。

シンジュが頷いたのを確認するとギルドマスターは部屋から出て行った。

いつも怒鳴っているギルドマスターが物凄く冷静で怖く、何もせずに待機して待っていようと思うのだった。
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