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おじゃましまーす。

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シンジュとエメは危険が無くなった庭をスキップしながら屋敷に向かうと普通の貴族の屋敷で安心をした。屋敷の壁はグレーで塗装されておりとても落ち着いた色をしていた。
屋敷を眺めても目が痛くない。
ドマスの家のような奇抜な家じゃなくてよかった···と思ったのだがギルドマスターが扉を開けると先ほどと似たような現象が起きた。

「な、な、なにこれ??」と今度はエメが騒いだのだった。

慌ててシンジュはエメに「どうしたの?」と聞くと、「ぼぼぼぼぼく、足がいっぱいこわい。」と真っ青な顔で答えた。

足がいっぱい?エメが見ている先を目で追ってみると、あぁ随分と巨大な蜘蛛だね、、、確かに1.2.3.4.5...と数えてみると至る所に蜘蛛がいる。自分の身体より大きな蜘蛛の巣がそこら中にある···この家は蜘蛛屋敷かな??
「この巨大蜘蛛は飼ってるの?あとこの屋敷を手入れする人は?」


「蜘蛛なんて飼ってるわけねぇだろ。あの庭を見ただろ?逃げてきた蜘蛛だと思うぞ。手入れする者を募集したが庭の植物と俺のスキルが怖いという理由で誰も来なかった···」ッチ



これだけ広い屋敷を誰も手入れする人がいないと大変だよね。前世に住んでいた小さな部屋ですら簡単にホコリが溜まったのに···でもホコリは蜘蛛の巣が絡め取ってくれてたのかな?無駄にピカピカしてる···
そもそもギルドマスターってこの家に1度も住んでないよね?
まだ入口でこの状態は···ハアーと1度息を吐きだして、
「じゃあこの屋敷は私が魔法でキレイにするよ。あとギルドマスターのスキルは爪から毒液だよね?」


「それはありがたい。何で俺のスキルを知っている?」と急に冷たい雰囲気でギルドマスターが答えた。

「鑑定魔法で見たよ。」
私が鑑定魔法を使えるって知ってるよね?何でギルドマスターは驚いてるのかな?隠したかったのかな?

「ッチ仕方がない。ただお前も分かっていると思うがスキルは発動しない限り効果は出ないから安心しろ。常に毒は垂れ流ししてるわけじゃないからな?今俺の爪を触っても平気だぞ?それにこの毒は危険だから解毒薬も用意してある。だから安心して俺と住んで大丈夫だ。もし一緒に住んでいて身体で気になったことがあったら俺に言ってくれ。」


このギルドマスターは過去に何か言われたことあるのかな?
何故かスキルについて必死で説明してくる···スキルよりも家の掃除をどうにかしてほしいよ。ギルドマスターが言うようにスキルなんて発動しない限り平気なのに。
「スキルは問題ないよ。毒スキルなんて便利だね。」


「そんなことは初めて言われたぞ。大体怖がられる。過去に臨時で組んだメンバーからも近寄るなって言われたことがあるしな。今はギルド内で常に手袋をつけているからみんなが安心して近寄ってくるようになった。」


そうなんだ。みんなもスキルの仕組みを分かっているくせに、、、このギルドマスターが怖いと思われる原因は威圧だと思う。
「気にしなくていいと思うよ。私もクズスキルって言われてたからお互い似てるね。ギルドマスターの場合はスキルより威圧を気をつけたほうがいいよ。」

「お前もスキルで色々言われたことあるのに悪いな···それよりも威圧?」


「無意識に威圧を放っているから周りの人達が怖がるのかもしれない。自分で意識したほうがいいよ。」と言いながらいまだに蜘蛛を怖がっているエメのためにシンジュは魔法で一気に室内をキレイにした。

「エメ君これで平気?蜘蛛は全て消したよ?」とエメに伝えた。手のひらサイズの蜘蛛達は不憫すぎて転移魔法で湖があった森に逃がした。
鑑定魔法をちらっと見たら備考欄に以前住んでいたエルフに無理やり働かされていた可哀想な蜘蛛と書いてあったからだ···多分触らずに転移できたはず···



「うん。ありがとう。」
足いっぱい怖かった···シンジュ様すごい···


「部屋の掃除ありがとな。それと威圧は意識してみる。」と言ったギルドマスターは、その後各部屋やキッチンを案内されて、すべての部屋にいた蜘蛛は逃がした。
「あと何か必要なものはあるか?揃えるぞ。」


「服がほしいのだけど、どこに売ってる?」
流石にこのボロボロの服は買い替えたい···
メイドがどれだけ着たらここまで汚れるかって思うくらい汚い服と、エメも服に穴が開いてボロボロだった。


「お前らサイズの服はねぇな。大体ドワーフ仕様だからな、、、獣人国から職人を呼ぶしかねぇぞ。」



それは面倒だな。あ!「伝令魔法で背が大きな隊長を呼ぶことできますか?」確かスキルが裁縫だったはず。


「なんでだ?もちろんできるがな。明日呼べばいいか?」


「ありがとう。今日はもう夕飯を作るからキッチン借りるね。」と伝えてリビングからキッチンに移動した。


キッチンに移動すると無駄に広いキッチンがあった。
体育館ですか?と言いたくなるようなキッチンは壁に沿ってぐるっとキッチンスペースがあり、さらに真ん中には大きな大きな作業台があった。
この部屋はキッチン専用にしか使えないという勿体ない部屋だった。
真ん中にある作業台が折りたたみ式なら便利だったのに···
ただ地下もあるようで覗いてみると小麦や芋が保管できそうだと思った。

良かった点は冷蔵庫やオーブン、コンロなどこの世界の貴族が使っているようなものがほとんど置いてあった。全て魔力を使わなければ使えない器具だが幸い魔力は∞にあるので、使用できないものはなさそうだった。


それからシンジュは今日は何を作ろうか考えた。
小麦とトマトしか買ってない···

うーん···芋があるからニョッキを作ろう!!!鍋もコンロも作業台も使い放題使えるから使っちゃおう!


「エメ君今日はニョッキを作るよ。この部屋のものは全て汚いからまず1度全てクリーンをかけるね?」と伝えてクリーンをかけた。
次に蛇口をひねってみると水が出ない。魔力を大量に流したけれど全く出なかった···


慌てて「ギルドマスター!!!!!!」とシンジュが大声で叫ぶと「なんだ?どうした??」
水が出ないことを説明すると井戸が壊れていたそうで、「あぁ忘れてた。俺あんまり風呂入らないからさ。」と言われた。
虎は風呂が嫌いなの?とシンジュは思ったが、「明日中に井戸を直して。風呂も毎日入るようにね。」と伝えてここまで1時間費やしてやっと調理を始めた。



シンジュは水魔法をバンバン使ってたっぷりの水で芋を茹でたら、潰して小麦と混ぜて親指大に丸めていく。
コロコロ···コロコロと隣では真剣にエメが丸めている。
丸めた種をエメ特製フォークで跡を付けて茹でるだけだった。
「エメ君、頑張ってコロコロした物をこの大きな鍋で茹でてくれる?浮き上がってきたら取り出してほしい」と伝えて任せた。
その横でシンジュは角切りしたトメートを煮詰めて塩とノビルで味を調整し、トメートソースを作った。後は茹で上がったニョッキと絡めて完成!!


いつもなら調理時間に3時間ほどかかるが、今日は便利なコンロがあるおかげで時間を短縮することが出来た。
シンジュは何度も調理をしながら感動していた。
今まで石の上で調理していたシンジュにとって、ガタガタ揺れない、バランス安定、火加減バッチリのコンロに泣きそうになった。
いくら石を熱すれば料理ができると言っても火は強火しか使えなかった···さらに石はバランスが悪くたまに風に煽られてせっかく作った料理が食べられないときもあった。
毎回ご飯作りは命がけだった。それがこんな安心して作れるなんて···それになんと3口もある。ギルドマスターは好きじゃないけど遠慮なくキッチンを使わせてもらおうと思うのだった。

「シンジュ様できたよ?」


「ありがとう。そしたらこのトマトじゃなくてトメートソースをかけてほしいな。」


「え??」
初めて見る形に驚いたけれど、なんだか可愛い形に見えてきたエメは赤い汁をかけたくなかった。


「ぼぼぼくこのままがいい···」


「うん?いいよ。もしかしてトメートがいや?」


「いやじゃないけど、この子たちを入れたくない。」



「この子達??分かったよ。そしたらソースは自分の好きな量を自由に盛り付けられるようにしよう。」
もしかしてトメートが苦手だったかな?魔族しか食べないと書いてあったもんね···ギルドマスターももしかすると食べれないかもしれないなと思った。


その後エメには次の料理を任せた。
「じゃあエメ君は次に先程茹でたけど潰さなかった芋があるでしょう?それをフライパンで温めてバターとシソを絡めてほしい。」とお願いし、シンジュは砂糖とミルク、それにバターを煮詰めて異世界初の生キャラメルを作った。



煮詰めていると甘いいい香りが空腹を刺激しお腹がぎゅるるるとシンジュもエメも盛大に鳴るのだった。
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