上 下
39 / 141

一触即発

しおりを挟む
(穴の中に居た者たち)



バリバリと何かが破れる音が穴の中に響き渡った。すぐさま家から出てきた者達が「何があった?」と警戒の声が上がった。

するとそのうちの1人ハーフエルフが「俺の張った結界が破られた」と言った。


「「はあ?」」と全員が驚きの声を上げた。


暫く皆唖然とした。それもそのはずである。いくらハーフエルフだと言っても魔力の量が多く、その魔力で作った結界はドワーフや普通の魔物ぐらいじゃ破ることが出来ない。破られたということは強敵が現れたということだ。


1人のハーフドワーフが声を上げた。

「ぉおおい本当に結界が破られたのか?」

「あぁ確実に破られた。ほら、俺の手を見ろよ?」

するとハーフエルフの両手が赤くみみず腫れように腫れ上がっていた。自分の魔力が破られた影響で怪我をしたのだった。

「お、おまえそれ大丈夫か?他の皆はそれぞれ武器を持て!!攻撃が苦手なものは盾を持て!俺が見てくる。」とハーフドワーフの掛け声のもと全員が武器を取りに家へ戻った。


「はぁ?何言ってんだ?俺も行くぞ!もちろんこいつもな!!」家に戻らなかったハーフエルフと巻沿いを食らったエルフが頷いた。

戻ってきた住民たちも『俺達も戦わせてくれ』と声を上げた。

「お前らは残ってろ。とりあえず3人で行く。もし危険が迫ったら合図を鳴らすから反対側の入口から逃げろ。わかったな?」
住民たちは自分達じゃ足手まといだと分かっていたため渋々頷き危機に備えるのだった。

それからハーフドワーフ、ハーフエルフ、エルフの3人は、結界が破られた入口へと向かった。

「なんか、怖いな。久しぶりだ、、、」とエルフがボソッと呟いた。やっと安泰を迎えたと思ったのに襲撃···怖かった


「あぁ、まだ魔物だったらいいが、エルフ達に殺されるのはごめんだ。」
同じくハーフエルフも嫌気が差していた···何で同種族から逃げなければならないのか···意味が分からなかった。


「それは俺もだ。魔物に殺される方がいい。今回は助かるかな、、、」とエルフとハーフエルフが話をしていると、
「やるしかないだろ。俺たちがいなくなれば、あいつ等だけじゃ生きていけないだろ。」とハーフドワーフが言った。
俺達が居なくなれば確実に生きることができない。今までのように何が何でも勝つしかなかった。


「あぁもうそろそろだな、着くぞ。武器を構えろ。」とハーフドワーフの声で気持ちを引き締め、ダダダダダダッと駆け上がりお互い背中合わせになりながら瞬時に周りを警戒するも······何もいなかった。

「なにもいない?」と弓を構えたエルフが言った。

「警戒を怠るな。罠化も知れない。」
ハーフエルフは信じられなかった···結界を壊したものがいなかったからだ。

「あぁそうだな。」とハーフドワーフも唖然としながら周りを見渡した。どういうことだ?と思った。
『何も出てこない??』と疑問に思いながらも辺りを警戒し続けた。


シンジュとエメは何が出てくるのか様子をうかがっていた。するとダダダダダダッと駆け上がってくる音が聞こえ、注意深く見ていると···服がボロボロの何の種族かわからない者達だった。
その者達はものすごく警戒しているようで武器を構えていた。

シンジュは困っていた。果たしてこの人達は安全なのか?それとも山賊のような者か····遠くて鑑定魔法も使えず種族も分からない···判断がつかなかった。

「シンジュ様、はなしかける?」


「迷っているの。武器を持っているでしょう?攻撃されるかも·····うーん」どうすればいいかな。見た目は痩せ細った山賊だから危険だよな···
でもなぁ私が結界壊しちゃったからね···


「あのひとたちぼくと同じ。」

??シンジュは頭にハテナマークが浮かんだ。
「どういうこと?」

「分かんにゃいけど、匂いが一緒。だからだいじょうぶ。ぼくがはなすよ?」

種族的な匂い?竜?
「危険かもしれないから私が話すよ!一緒に来てくれる?」

「うん。なにかあったらぼくがやっつける。」
両腕を上げてやっつけるポーズをとった。

「それは頼もしい。」とその様子を見て微笑んだ。
サクッサクッサクッと隠れているところから立ち上がり穴へ向かってゆっくり歩き出した。シンジュは何でこんな時に音草オトグサが生えてるの?とちょっと苛ついた。

するとすぐに音に反応した3人がこちらに気づき警戒をしかと思うと困惑した顔を浮かべた。



リーダーのような男が話しかけてきた。


「おまえハーフエルフか?人間か?隣のは竜人か?」と何の種族か分からない者に聞かれ、シンジュは「私は人間で、隣の子は竜人です。」と答えた。

すると人間と言った途端警戒され、
「何しに来た?竜人はお前の奴隷か?他に奴隷を探しに来たのか?」
と嫌悪、増悪、拒絶の視線を向けられた。

ハァ~とため息を付き話しだそうとすると、

「お兄ちゃんたち、、、シンジュ様はぼくを助けてくれだ!!!」とエメが涙をいっぱいためながら叫んだ。
エメは許せなかった···自分の大切なシンジュ様が侮辱されることを、悔しくて思わず叫んだ!


それにエルフとハーフドワーフ困った顔を浮かべたが、
「穢らわしい人間は竜人を洗脳でもしたか?消えろ。」
とハーフエルフの男が呟いた。


するとエメは「うわぁぁぁん」と泣き出し、「シンジュ様ごめんなさいぼ、く、が話そうっていわなきゃ、、、ぅぐ、シク、」


それを見たシンジュがエメの背中を撫でながら、3人に鋭い視線を向けた。

「貴方方に何があったのかは分からないですが、私も貴方達と仲良くなろうとは思ってないですし、子供の前でその態度は最低だと思いますよ!ただ結界を破ったのは私です。ごめんなさい。穴が開いてたから知能を持った魔物が住んでるのかと思ってました。本当にごめんなさい。ただまさかね···魔物より悪質だとは思いませんでした!魔物のほうがまだ良かった···捕まえたらお金になるのに···もう私達は迷惑かけませんので帰りますね。」と後ろを振り向いて帰ろうとした。

「は?お前が破った?嘘だろう!!人間に俺の結界が破れるわけない。低能な人間は魔力もなければ結界すらまとも張れないだろう!」とハーフエルフが怒鳴った。

帰ろうとしていたがブチッと何かが切れたような音がなった。シンジュは人間であるが魔力が豊富だ。魔力があるなしで相手を差別したことがない。ハーフエルフは隣に魔力なしのエルフがいるにも関わらず、魔力なしを差別したことに腹が立った。

「はぁ、低能に結界を破られた貴方はさらに低能ですね?赤ちゃんですか?生きてますか?貴方は人間にそっくりな性格ですよね?」

「ふ、ふっざけんな、、、人間と一緒にするな」と怒鳴り声を上げ、バチバチと魔法を放たれた。「後ろからおいやめろ」とエルフとハーフドワーフの声が聞こえたが、放たれた魔法はシンジュとエメに ドガーーーン、、バキバキバキッ と当たったのだった。あたり一帯は削れ土や草木が舞った···


「ぉ、おおおい!!大丈夫か君達」とハーフドワーフが慌てて土煙が待っているところに駆け出すと、平然としたシンジュとエメが出てきたのだった。
2人は高度な結界が張ってあるので影響ゼロだった。


「「は?」」
ハーフエルフを慌てて抑えていたエルフも驚き声を上げた。


「女と子供に魔法を放つなんて···ハーフエルフって野蛮ですね。ハーフの部分は人間だからでしょうね?もしエメに傷1つでもつけていたら返り討ちにしていましたよ。」

「もももももしわけない。」とハーフドワーフが慌てて謝った。子供に手をだすなんてありえない。しかも自分達より弱いとされている人間にだ·····

「どうでもいいです。じゃあ、私達行きますね!暫くこの辺にいますが、貴方方を刺激するつもりはないので···よろしくお願いいたしますね?そこのハーフエルフと同じようにもし誰かが次に何かを仕出かしたら問答無用で手を出します。では!!!」と興奮気味に言ったシンジュはエメに向かって「帰ろう」と呟き、来た道も戻るのだった。
エメは歩きながら大号泣である。シンジュを侮辱されたのが許せなかった、それよりもまさか攻撃されるとは思っていなかった。
怖くて怖くてブルブルと震えた···ぅグスッ

一向に涙が止まらないエメに「泣かないで?2日くらいこの辺りに居てまた移動しようか?それに私も強いよ!結界が破られることはないから大丈夫!」と安心させるようにシンジュが言った。

ブンブンとその言葉に頷いた。
竜人以外で怖い人に会うのは冒険者ギルドマスター以来だった。今まで魔法を使われたことはなかった。だから物凄く怖かった···だけれど絶対にやり返してやると誓ったのだった。

それから2人は食べ物を探しながら拠点に戻り、戻った頃には夕方になっていた。

新しく採取した物たち
名前 ミゾソバ
生息地 水辺
食用 可
特徴 柔らかい葉の部分が食べれるよ。
茎を乾燥させポーションの材料に使うとポーションが上級となる。


名前シソ
生息地 日当たりのいい場所、半日陰(日光時間が短すぎると成長に問題が起きる)
食用 可
特徴 殺菌効果がものすごく高い。そのまま生や乾燥で持ち歩き、いつでも使用できる状態にするのがおすすめ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生皇太子は、虐待され生命力を奪われた聖女を救い溺愛する。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

婚約破棄を望んでいたのでしょう?

稲瀬 薊
恋愛
伯爵令嬢リアナ・スティルマンには婚約者がいる。 名前はダグラス・パーシヴァル、侯爵家の息子である。 親が結んだ婚約でありそこに彼女達の意思はなかったが、リアナはパーシヴァル家に嫁ぐ為に必要な教養を魔法学園に入る前から学んでいた。 色々とリアナは我慢してきた。それを壊したのはルーシーという平民の女生徒と関係を育んでいたダグラスである。 「リアナを有責にした婚約破棄を計画する」 それを密かに聞いていたリアナは吹っ切れた。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

【R18】ひとりで異世界は寂しかったのでペット(男)を飼い始めました

桜 ちひろ
恋愛
最近流行りの異世界転生。まさか自分がそうなるなんて… 小説やアニメで見ていた転生後はある小説の世界に飛び込んで主人公を凌駕するほどのチート級の力があったり、特殊能力が!と思っていたが、小説やアニメでもみたことがない世界。そして仮に覚えていないだけでそういう世界だったとしても「モブ中のモブ」で間違いないだろう。 この世界ではさほど珍しくない「治癒魔法」が使えるだけで、特別な魔法や魔力はなかった。 そして小さな治療院で働く普通の女性だ。 ただ普通ではなかったのは「性欲」 前世もなかなか強すぎる性欲のせいで苦労したのに転生してまで同じことに悩まされることになるとは… その強すぎる性欲のせいでこちらの世界でも25歳という年齢にもかかわらず独身。彼氏なし。 こちらの世界では16歳〜20歳で結婚するのが普通なので婚活はかなり難航している。 もう諦めてペットに癒されながら独身でいることを決意した私はペットショップで小動物を飼うはずが、自分より大きな動物…「人間のオス」を飼うことになってしまった。 特に躾はせずに番犬代わりになればいいと思っていたが、この「人間のオス」が私の全てを満たしてくれる最高のペットだったのだ。

ポンコツ女子は異世界で甘やかされる(R18ルート)

三ツ矢美咲
ファンタジー
投稿済み同タイトル小説の、ifルート・アナザーエンド・R18エピソード集。 各話タイトルの章を本編で読むと、より楽しめるかも。 第?章は前知識不要。 基本的にエロエロ。 本編がちょいちょい小難しい分、こっちはアホな話も書く予定。 一旦中断!詳細は近況を!

さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~

遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」 戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。 周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。 「……わかりました、旦那様」 反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。 その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。

俺の名前『にゅめょりと』が変だとして、勇者パーティーから追放された。魔王がすぐそこまで来てるんですが…?

宮富タマジ
ファンタジー
「お前は名前が変だから追放する!」 勇者パーティのガルディアスが 勇者の『にゅめょりと』を睨みながら言った。 『にゅめょりと』は驚いて叫ぶ。 「え? なんで? 俺は勇者なのに?」 「お前の『にゅめょりと』って名前 変だし呼びにくいんだよ お前の名前 どう読めばいいか分からん!」 「そ、そんな…… 名前で追放なんて 理不尽じゃないか?」 「理不尽じゃないよ 戦闘中とか呼びづらくて困るんだよ」 「……」 「それに、みんな、お前の名前が嫌いなんだよ」 「え?」 「名前がひらがなでかっこ悪い お前の名前を呼ぶとき こっちが恥ずかしくなるんだ」 「い、言い方、ひどくないか……」

【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453 の続きです。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

処理中です...