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バンキュー疲れた

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それからシンジュとエメの2人は全く起きずに1日寝て過ごした。



シンジュが起きたのは次の日の早朝だった。ぐぅ~と手足を伸ばし、スッキリした気持ちで目が覚めた。

流石に前世ぶりのオールには身体が堪えた。ただ久しぶりに熟睡できたことで身体が軽く、思わず走りたくなるように気持ちになった。しかしこの世界で初めて行った慣れない揚げ物作りに手首は限界をむかえ腱鞘炎のような痛みが出た。

思わず「痛い」と声が出たが、エメは起きなかった。シンジュはハァ~とため息を吐きボンヤリと外を眺めながらエメが起きるまで今後のことを考えるのであった。



それから暫くしてエメが起きた。いつもより3時間以上早い目覚めだった。「エメ君おはよう?」と声をかけるとまだ眠いのか目を擦りながら欠伸をし、「むにゃむにゃ」と返事を返した。寝ぼけた様子を観察してるとそのまままた寝てしまった。

あまりに可愛いその様子にシンジュから『ふふふ』と笑みが出るのだった。



シンジュはまた寝てしまったエメを見ながらもう一度今後の予定を考えた。

本来なら鉱山都市に2.3日の滞在予定だったがもう4日である。後何日滞在しようか迷っていた。



そろそろお祭りが終わるため、早めに行動したいと考えていた。エメが起きたら鉱山ギルドに行き、今日中に鉱山ギルドへの情報を提供し、それ次第で明日には旅立とうと考えた。

右も左も分からないが空を飛んでいた時に、鉱山都市よりさらに北側に巨大な湖が見えた。前世では遠足で湖に行ったことがあったが、個人的な旅行では行ったことがなかった。

そのため今世は思いついたことは『行動に移そう』という新たな決意のもと、湖に行くことを決めた。



湖に行く決意するとワクワクしてきた。どんな生物がいるのかな?異世界にはネッシー?とかいるのかな、それとも普通にカニやエビかな?魚?釣りするのもいいな~などやりたいことがドンドン湧いてきた。





そんな事を考えていると、エメがやっと起きた。

するとタッタッタッとベットから降り駆け寄ってくると「なんだか、からだがギシギシ」と涙目で訴えてきた。



どうしたのだろう?昨日の筋肉痛?

鑑定魔法には身体の状態が分かる項目があったことを思い出し、シンジュはすぐに鑑定魔法で確認をした。

名前 エメ(エメラルドから名前を取った)

種族 竜人族

家族 なし

年齢 8歳

身長 132cm(2cmアップ)

体調 全身疲労、成長痛

ギルドランク なし

魔力量 20(10アップ)

体力  55(5アップ)

スキル 不明

備考欄 幻のベリーを食べたことで身体の中で変化が起きている最中。

急激な成長により激しい痛みあり。1ヶ月以内に身長が10cmアップ予定!



体調、魔力量、体力、備考欄の内容が変わっていた。

なんでこの短期間でアップするの??1ヶ月で身長10cmって竜は普通なのかな?ドワーフの隊長も身長伸び続けてたくらいだから、、、分からない。

エメにも情報を共有し、

「エメ君、今急激に成長してるみたい!身体が大きくなるためには、骨を伸ばす必要があるのだけれど、それが物凄く痛い···約1ヶ月痛みが続くみたい。」





「うぅぅ、わかったぁ。もうギシギシ、ヤダ。」

エメは何で身体がギシギシいうのか分からず怖かったが、理由が分かって少し安心した。しかし捨てられるのではないかと不安に陥っていた。



え?置いていかれる?すてられる?
急にパニックになりヒューヒューとエメが過呼吸を起こした。

それを見て慌てたシンジュがすかさず「大丈夫だよ、落ち着いて」と背中を擦りながら安心するような声掛けし、次にゆっくり呼吸をするように「吸って、吐いて、さらに吐いて」と吐くのを意識させるように何度も同じ言葉をゆっくりゆっくりと伝えた。

すると少しずつ落ち着いてきた·····シンジュはフゥ~と思わず声に出た。

今世で1番焦ってしまった···前世で咳が止まらず過呼吸になった時の経験が生きてよかった。じゃなければ間違った対処をしていたかもしれない。昔は袋で対処してたらしいけど、私の時はそれが駄目な対処方法で、やり方を覚えておいてよかった。

何がきっかけで過呼吸になったのかな?成長痛の痛みなのか、ストレスなのかこの原因が分からなければまた再発してしまうとシンジュは不安に思った。

正常に戻ったエメはさっきの出来事が怖くなった。
急に息ができなくなり、死ぬと思った。その怖さから涙が溢れ出てきた。ポタポタと涙が流れ、シンジュの服が濡れていく。それを気にしている余裕がないほど不安、恐怖、困惑で頭の中がいっぱいだった。

「ぼ、ぐ、ずでぇられりゅ?」と涙を流しながら必死に言葉に出した。

??シンジュは意味がわからなかった。

捨てるわけないのに···理解は出来なかったが私の言動や発言でエメに大きな負担を与えることが分かったため、たくさん愛情を伝えていこうと考えた。さっそく「捨てるわけないよ。どうしてそう思ったの?私はエメ君を離さないよ?」と伝えた。

それでもやっぱり不安なエメは「だって、ぼぐ、おぃてぐっで、、」

あぁそういうことか。『まってて』という言葉が『置いて行かれる』に変換されて過呼吸につながったのかな?とシンジュは考えた。
「置いてかないよ!エメ君の成長痛の助けになるようにご飯を作ろうと思ったの!でも今日はご飯作りはやめて部屋でゆっくりしようかな?ご飯はフルーツでも良い?」



「ゔ、ん、いっちょにいてくれるなら、なんでもいぃ。」

「分かったよ。一緒にフルーツ食べようね。」

エメは痛みと不安でいっぱいだったが、グゥーーとお腹の音がなった。お腹が空いてくることも気づかないくらいいっぱいいっぱいだった。シンジュ様に渡されたフルーツをバクバク食べていると···あれ?なんかおかしい?ギシギシ?

すると普通のフルーツでは何ともなかったが、幻のベリーを食べると痛みがサッと引いたのだった。



「シンジュ様 この赤いやつたべたら、いたくにゃい。」



え?痛みが引いたの?幻のベリーの力?
「じゃあどのくらいの時間痛みが消えるか調べてみようね。」

「うん。なんかビリビリいたくない。ギシギシちょっとだけ。」

痛みが引いたことに驚いたエメは不安な気持ちを忘れてしまった。



シンジュは不思議に思ったが、この後ベリーを1粒食べると痛みが1日無くなることが分かった。また自分の腱鞘炎の痛みも消えて物凄く驚いたのだった。
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