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第一話(読み切り完結)
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ゆきぶかいちほうの、あるところに、
いっぴきのウシさんがいました
ウシさんはむかしぼくじょうでかわれていましたが、みちにまよい、はぐれてしまっておりました
たべるものもかれてきたやまみちをとぼとぼあるいていると、むこうからいっとうのウマさんがやってきました
ウマさんはかいぬしさんがいなくなって、ひとりたびにでたばかりでした
「こんにちは、きょうはいちだんとさむいですね。おなかがすきました、どこかよいえさばをごぞんじないですか?」
おなかぺこぺこでもていねいなウシさんのあいさつに、ウマさんもぺっこりおじぎをしてこたえました
「このあたりだと、にしのかわらにくさがよくはえていますね。まだすこしのこっているかも。いっしょにいきましょう」
おしえてくれたウマさんについていくと、きれいなおがわのみずと、みどりのくさはらがありました
おなかがすいていたウシさんは「これはありがとうウマさん、いただきます」と言って、とびつくようにしてたべました
ウマさんもそのよこでおきにいりのはっぱをたべます
ウシさんもウマさんも、ひさしぶりにだれかとたべるごはんということもあり、ぱぁっとげんきがみなぎりました
「ウシさん、みたところおひとりのごようす。よければわたしといっしょにいきませんか?」
「ありがたいはなしですが、いくとはどこへ?」
「どこへむかうわけでもありませんが、たびはみちづれですし、これもなにかのごえんです。いっしょに、よいえさばをさがしにいってみませんか?」
「わかりました、ごいっしょしましょう」
それからウシさんとウマさんは、ちがうしゅぞくながらなかよくいっしょにたびをしました
あめのひもかぜのひも、みをよせあってだんをとり、おいしいねとわらいあいながらいっしょにごはんをたべました
そしてたどりついた、おだやかなきたのくににすむことにきめました
ある、おだやかなこはるびよりのひのこと、ウシさんがうとうとまどろみながらいいました
「わたしたちはどうしてちがうしゅぞくなんでしょうね、こんなになかがいいのに」
ウマさんは、はんぶんゆめのなかにはいりながらこたえます
「わたしもおもっていました、でもそんなことはわたしたちにはせんなきことですよ、こうしてへいおんにせいかつができることこそしあわせなこと」
「そうですね」
そうこたえたものの、ウシさんはすこしだけさびしかったのです
もしウマさんとじぶんのあいだにこどもがいたならどうだったのかな、とかんがえていたからでした
かなしいことですが、どれだけなかがよくても、しゅぞくのちがうウシさんとウマさんではこどもはやってきません
(ウマさんとわたしのこどもなら、きっとりっぱなつのと、つよいあしのあるこなんだろう)
そんなことをかんがえてねむりについた、あくるひのこと
ウシさんとウマさんのところに、ふらふらあしでトナカイのこがやってきました
まるでじぶんたちのこどもみたいなすがただなぁと、ウシさんはおもいました
トナカイのこはサーカスだんでかわれていましたが、サーカスをおしまいにすることがきまって、しぜんにかえされていました
けれど、えさをとってたべることがわからなかったトナカイのこは、すっかりおなかがぺこぺこでした
むかしのじぶんたちのようでほうっておけなかったウシさんとウマさんは、トナカイのこをじぶんたちのこどもとしてそだてることにしました
おいしいえさばをおしえてあげたり、きれいなみずがのめるばしょをおしえてあげたり
さむいひはみんなでみをよせあってねむりました
そんなひびのことでした
とてもかなしいことがおきました
ウシさんがりょうしにうたれてつかまえられてしまいました
ウマさんとトナカイのこは、いつものえさばで、すこしあじけなくなったくさをたべますそしてウシさんのねむっていたばしょで、いっしょになきながらねむりました
ウマさんとトナカイのこが、ひさしぶりのながいながいねむりからめをさますと、はるのひざしがあたたかくさしこみます
ようやくふゆがあけたのです
ウマさんはすこしだけきぶんがあかるくなりました
そして、むかしウシさんといっしょにでかけた、きいろいはながさくかわらまでトナカイのこをつれていこうときめました
ウマさんはげんきにはねまわるトナカイのこをながめながら、「ウシさんとじぶんのこどもみたいだなぁ」とおもっていました
そしてトナカイのことであういぜんに、ウシさんが「わたしたちのしゅぞくはどうしてちがうのか」というはなしをしていたなぁ、とおもいだしました
そのとき、どこかさみしそうだったウシさんのきもちがすこしだけわかったようなきがして、ウマさんはウシさんのぶんまでトナカイのこをりっぱにそだてようときめました
そうしてつきひはながれ、トナカイのこもりっぱなつのとつよいあしの、おすのトナカイにそだちました
としおいて、ひとまわりからだがちいさくなったウマさんも、そろそろてんごくからのおむかえがちかいとしになっていました
「しゅぞくはちがっても、おまえはわたしとウシさんのこどもだから、りっぱにやっていけるよ」
ことばをきいたおすのトナカイは、ぽたりとなみだをこぼします
ウマさんは「わたしたちにしあわせをくれてありがとう、おまえもしあわせにいきるんだよ、ずっとずっとねがっているからね」といっていきをひきとりました
おすのトナカイはひとりになりました
けれどトナカイのこころのなかにはウシさんとのおもいでも、ウマさんのやさしいことばも、ちゃんとのこっていたのでさみしくありませんでした
そんなあるひ、おすのトナカイはべつのトナカイにであいました
「ここはおれのなわばりだぞ、よそものはでていけ」
はじめてであうじぶんいがいのトナカイに、おすのトナカイはあしがぶるぶるふるえました
けれどあたまのなかにウマさんとウシさんのすがたが、ことばがよみがえってきて、おすのトナカイは「がんばらなきゃ」というきもちになりました
ウシさんのつよいつのとからだ
ウマさんのつよいあしとひづめ
おすのトナカイにはどちらもありました
「まけるな!がんばれ!」
ウシさんとウマさんのことばがきこえたようなきがしました
おすのトナカイはりっぱにのびたつので、あいてのトナカイをみごとにうちまかしました
それからあらたになわばりのリーダーとなったおすのトナカイは、たくさんのかぞくをむかえて、にぎやかに、しあわせにくらしました
まかしたあいてのトナカイも、おすのトナカイはちゃんとなかまにいれてあげました
ときどきけんかもするけど、なかのいいともだちになりましたよ
なんてったって、ウシさんとウマさんのこどもですからね
めでたしめでたし
いっぴきのウシさんがいました
ウシさんはむかしぼくじょうでかわれていましたが、みちにまよい、はぐれてしまっておりました
たべるものもかれてきたやまみちをとぼとぼあるいていると、むこうからいっとうのウマさんがやってきました
ウマさんはかいぬしさんがいなくなって、ひとりたびにでたばかりでした
「こんにちは、きょうはいちだんとさむいですね。おなかがすきました、どこかよいえさばをごぞんじないですか?」
おなかぺこぺこでもていねいなウシさんのあいさつに、ウマさんもぺっこりおじぎをしてこたえました
「このあたりだと、にしのかわらにくさがよくはえていますね。まだすこしのこっているかも。いっしょにいきましょう」
おしえてくれたウマさんについていくと、きれいなおがわのみずと、みどりのくさはらがありました
おなかがすいていたウシさんは「これはありがとうウマさん、いただきます」と言って、とびつくようにしてたべました
ウマさんもそのよこでおきにいりのはっぱをたべます
ウシさんもウマさんも、ひさしぶりにだれかとたべるごはんということもあり、ぱぁっとげんきがみなぎりました
「ウシさん、みたところおひとりのごようす。よければわたしといっしょにいきませんか?」
「ありがたいはなしですが、いくとはどこへ?」
「どこへむかうわけでもありませんが、たびはみちづれですし、これもなにかのごえんです。いっしょに、よいえさばをさがしにいってみませんか?」
「わかりました、ごいっしょしましょう」
それからウシさんとウマさんは、ちがうしゅぞくながらなかよくいっしょにたびをしました
あめのひもかぜのひも、みをよせあってだんをとり、おいしいねとわらいあいながらいっしょにごはんをたべました
そしてたどりついた、おだやかなきたのくににすむことにきめました
ある、おだやかなこはるびよりのひのこと、ウシさんがうとうとまどろみながらいいました
「わたしたちはどうしてちがうしゅぞくなんでしょうね、こんなになかがいいのに」
ウマさんは、はんぶんゆめのなかにはいりながらこたえます
「わたしもおもっていました、でもそんなことはわたしたちにはせんなきことですよ、こうしてへいおんにせいかつができることこそしあわせなこと」
「そうですね」
そうこたえたものの、ウシさんはすこしだけさびしかったのです
もしウマさんとじぶんのあいだにこどもがいたならどうだったのかな、とかんがえていたからでした
かなしいことですが、どれだけなかがよくても、しゅぞくのちがうウシさんとウマさんではこどもはやってきません
(ウマさんとわたしのこどもなら、きっとりっぱなつのと、つよいあしのあるこなんだろう)
そんなことをかんがえてねむりについた、あくるひのこと
ウシさんとウマさんのところに、ふらふらあしでトナカイのこがやってきました
まるでじぶんたちのこどもみたいなすがただなぁと、ウシさんはおもいました
トナカイのこはサーカスだんでかわれていましたが、サーカスをおしまいにすることがきまって、しぜんにかえされていました
けれど、えさをとってたべることがわからなかったトナカイのこは、すっかりおなかがぺこぺこでした
むかしのじぶんたちのようでほうっておけなかったウシさんとウマさんは、トナカイのこをじぶんたちのこどもとしてそだてることにしました
おいしいえさばをおしえてあげたり、きれいなみずがのめるばしょをおしえてあげたり
さむいひはみんなでみをよせあってねむりました
そんなひびのことでした
とてもかなしいことがおきました
ウシさんがりょうしにうたれてつかまえられてしまいました
ウマさんとトナカイのこは、いつものえさばで、すこしあじけなくなったくさをたべますそしてウシさんのねむっていたばしょで、いっしょになきながらねむりました
ウマさんとトナカイのこが、ひさしぶりのながいながいねむりからめをさますと、はるのひざしがあたたかくさしこみます
ようやくふゆがあけたのです
ウマさんはすこしだけきぶんがあかるくなりました
そして、むかしウシさんといっしょにでかけた、きいろいはながさくかわらまでトナカイのこをつれていこうときめました
ウマさんはげんきにはねまわるトナカイのこをながめながら、「ウシさんとじぶんのこどもみたいだなぁ」とおもっていました
そしてトナカイのことであういぜんに、ウシさんが「わたしたちのしゅぞくはどうしてちがうのか」というはなしをしていたなぁ、とおもいだしました
そのとき、どこかさみしそうだったウシさんのきもちがすこしだけわかったようなきがして、ウマさんはウシさんのぶんまでトナカイのこをりっぱにそだてようときめました
そうしてつきひはながれ、トナカイのこもりっぱなつのとつよいあしの、おすのトナカイにそだちました
としおいて、ひとまわりからだがちいさくなったウマさんも、そろそろてんごくからのおむかえがちかいとしになっていました
「しゅぞくはちがっても、おまえはわたしとウシさんのこどもだから、りっぱにやっていけるよ」
ことばをきいたおすのトナカイは、ぽたりとなみだをこぼします
ウマさんは「わたしたちにしあわせをくれてありがとう、おまえもしあわせにいきるんだよ、ずっとずっとねがっているからね」といっていきをひきとりました
おすのトナカイはひとりになりました
けれどトナカイのこころのなかにはウシさんとのおもいでも、ウマさんのやさしいことばも、ちゃんとのこっていたのでさみしくありませんでした
そんなあるひ、おすのトナカイはべつのトナカイにであいました
「ここはおれのなわばりだぞ、よそものはでていけ」
はじめてであうじぶんいがいのトナカイに、おすのトナカイはあしがぶるぶるふるえました
けれどあたまのなかにウマさんとウシさんのすがたが、ことばがよみがえってきて、おすのトナカイは「がんばらなきゃ」というきもちになりました
ウシさんのつよいつのとからだ
ウマさんのつよいあしとひづめ
おすのトナカイにはどちらもありました
「まけるな!がんばれ!」
ウシさんとウマさんのことばがきこえたようなきがしました
おすのトナカイはりっぱにのびたつので、あいてのトナカイをみごとにうちまかしました
それからあらたになわばりのリーダーとなったおすのトナカイは、たくさんのかぞくをむかえて、にぎやかに、しあわせにくらしました
まかしたあいてのトナカイも、おすのトナカイはちゃんとなかまにいれてあげました
ときどきけんかもするけど、なかのいいともだちになりましたよ
なんてったって、ウシさんとウマさんのこどもですからね
めでたしめでたし
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