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『あなたの子どもは成人までに番を見つけないと不幸になる』
そんな占いを告げる占い師もどうかと思うけど、真に受ける母さんも母さんだ。僕はもう子どもじゃないし、そんなバカバカしい占いなんて信じない。
そりゃ、まだ第二の性が分かってないときだったら良かったよ?僕がアルファで、可愛いオメガの番と出会って、二十歳までに結婚式を挙げて、夫婦になって、子どもを作って。
でも僕はもう大人だ。妄想は必ずしも現実にはならない。
母さんは分かってない。運命の番に出会ったアルファがどれだけ幸せで、運命と出会えないオメガがどんなに哀れか。
そして僕はオメガだ。オメガはアルファと番になって、子どもを産んで育てるもの。運命の番がいるオメガは幸せになれる、子どもをたくさん産んで幸せになれる。でもそうじゃないオメガは? 運命じゃないアルファに無理矢理襲われて、妊娠して。望まない出産と虐待で心を病んだオメガのニュースを僕はよく見る。
そんなことが自分の身に起こるなんて耐えられない。僕はアルファに好き勝手される人生を送るつもりは全くない。それなら一生独身でいい。
でも、でも!
『セイア、もうすぐ貴方の誕生日よ。二十歳になるのね』
「そうだね」
『番は見つかった?』
「……」
見つかってたら苦労してないんだよなぁ。
憂鬱過ぎる母さんとの電話をしながら僕は大学の学生寮で空を仰ぐ。運命の番どころか、僕オメガだっていうのにアルファが寄ってこなさすぎる。むしろ嫌われてる気がする。まあ幸いヒートの時はそれなりに勃ってはくれるけど。
『セイア、あのね…』
「い、います!いるいる!超いるよ!」
『そう?良かったわ!運命の番を見つけたのね』
「う、うん。実はそうなんだ……」
我ながら嘘が下手すぎる。でも母さんに真実を話したら、きっとお見合いをセッティングされてしまう。お見合いで会ったアルファと好きあって結婚するならいいけど、好きじゃないアルファと結婚するくらいなら一生独身でいたい。それが僕の正直な気持ちだ。
『今度是非会わせて?母さん、セイアの番に会いたいわ』
「あ、えっと、それは……ちょっと……」
『あら。なにか事情があるの?母さんには会わせられないの?』
だって存在してないから…!なんて言えないし。
「んー……母さんにはもうちょっと秘密にさせて?きっと驚かせると思うからさ」
『まあ、そうなの?じゃあ楽しみにしてるわ!』
ごめんなさい母さん、本当はそんな人いません。僕はアルファのモノになるつもりなんてありません。なんて言えるわけもなく。
「あ、あはは…ははは……」
僕は曖昧に笑って誤魔化すしかなかった。
★☆★☆★☆
「で、どうするんだ?『運命の番』問題は」
翌日。学食のテーブルを囲んでいるのはいつものメンバー合計3人だ。エディとユウ。2人はベータで中等部からの友達である。
「とりあえず偽の番は作るしかないかなぁって思ってる」
「偽の、って……」
「母さんには運命の番を見つけたからって安心して貰わないと行けない。でも僕、アルファの人に好かれないし」
「ああ……」
僕の言葉にエディは察したようだった。そうなんだよ。僕には運命の番がいると嘘をつくためには偽の番が必要なんだ。
「ヒートの時に抱いてくれるヤツはどうだ?」
「ダメ。本気になられたら堪らないから」
「うわぁ、ひっどい発言」
そう。ヒートのときに適当に相手を探すけれど本気にされたら面倒だから基本的にはワンナイトのみ。幸いそういう第二の性でお悩みの人向けのアプリで相手はすぐに見つかるし、ちゃんと避妊はしてくれる。一度ヤッたら彼氏面するやつもいるけど、そしたらブロック、あるいは着信拒否だ。
「でも偽の番を作ってもあんまり良くないと思うよ?ヒート時に別のアルファに抱かれに行くって、正直普通に浮気だし」
「そこはうまくやるさ。相手をベータに限定するとか、避妊薬飲むとか。あと僕の項を噛まないようにしてもらう」
「……本当に大丈夫なのか?心配になってきた」
あからさまなため息をつくエディを尻目に僕はスムージーを啜る。
「仕方ないだろ。偽装で番を作るのが1番手っ取り早いんだから」
「まあ、そうなんだけどさ」
「僕も何かできることがあったら言ってくれよ?」
「うん。ありがと、ユウ」
エディとユウには申し訳ないけど、これはオメガに生まれた僕の問題だ。ふたりを巻き込むわけにはいかないからね。僕は曖昧に笑って誤魔化したのだった。
★☆★☆★
「…なんつー匂いさせてんですか、アンタ」
「げ…!」
「げって、相変わらず失礼極まりないですね」
午後の授業があると言った2人を見送り、ぼんやり学食でずるずるスムージーを啜っていた僕に絡んできたのは、同じ学部の後輩ルカだ。初等部時代から知ってるけど昔はめちゃめちゃ可愛かった。本当に、めちゃめちゃ可愛かった。無愛想なのにいるだけでみんなめろめろになってしまうくらい可愛かった。絶対オメガだと思ってたし、仲良くしたくてベタベタしてたら「うっとうしいです」と一蹴されてしまった。でも仕方ない。可愛いもん。
「まさかヒートじゃないでしょうね?」
「まだだよ」
「……ヒート時の匂いじゃないですか、コレ」
僕の首筋に顔を寄せてスンスン匂いを嗅ぐルカ。なんだか恥ずかしくて僕はスムージーを掻き回して匂いを消す。
「そんなことないって。気のせいだよ」
「誤魔化さなくていいですよ。ちゃんと薬飲んでるんですか?」
「飲んでるよ」
「ならいいですけど」
そう言いながらルカは僕の隣の席に座る。え、隣に座るの?何?
「……な、なに?」
「いや、ちょっと聞きたいことがあって」
「僕に?」
「本人に聞くのが1番手っ取り早いんですよ。単刀直入に聞きますけど、番見つけたんですか?」
「ぶっ…!」
混ぜ混ぜしてたスムージーを噴き出して、僕はルカを凝視する。
「な、なんで知ってるの!?」
「あんだけ大声で言ってれば」
「嘘!そんな!?」
「やっぱり出来たんですか?」
「い、いないよ!」
慌てて否定したけど、ちょっと遅かったかもしれない。ルカはニヤニヤ笑っている。くっそう……カマかけやがったな……!
「いないんですね」
「……い、います」
「うそつき」
クスクス笑いながら僕の頭を撫で回すルカ。昔は抱っこしようとすると逃げてたのに、なんでこんなにフレンドリーなの?あと小さい子にやるようなのどうなの?僕のほうが歳上なのに。
ここは、初等部から大学までエスカレーターだ。寮を使ってもいいし、通学も可能。勿論途中で脱落する人もいるけど、成績が良ければ学費が免除とか半額になったりと、母子家庭の僕の家としてはとてもありがたい制度だと思う。
ルカは頭が良かったし、ずっと寮生活だった数少ない仲間だった。僕も仲良くしようと思って、色々と話しかけていたんだけど、いつからか疎遠になってしまった。それがここ数年でルカは変わった。今みたいに距離を詰めてくるとは思わなくて、面食らってしまった。慣れない。
「な、なんでわかるの……?」
「匂いですよ」
「そんなに匂う?」
「まあ俺はベータに擬態してるオメガの匂いも嗅ぎ分けられるので」
「あーうん…そっか…」
すごいね…僕はアルファの匂いしかわかりません。後別に擬態したってよくない?オメガでいることに、メリットなんてほとんど無い。
「…俺が番になってあげましょうか?」
「は?」
え?今なんて言った?この人。
「だから、俺が先輩の番になってあげようかって」
「……冗談でしょ?」
僕は笑って流そうとしたが、はっとした。
僕は独身でいたい。誰とも番になりたくない。
だけど母さんを安心させたいので嘘でもいいから番を作っておきたい。
でも本気になられたら迷惑だし面倒くさい。うっかり噛まれたら大変だ。
その点、ルカは最適だった。よく知ってて、僕のセフレじゃなくて、アルファじゃなくて、僕のことを本気で好きになったりしない人。
「そうか…!」
「わるくないでしょう?」
ニヤリとルカが笑う。だけど、僕は考える。コイツが絶対なんのメリットもなく、厄介事を引き受けるとは思えない。
「な、何が目的?」
「目的?」
「君がタダで引き受けるつもりだなんて思えない」
「……人聞きの悪い。見返りなんて求めてませんよ」
「信用できないね」
僕だってオメガに生まれたけど、プライドくらいある。何か思惑があるなら知っておきたいし、納得できる理由が欲しい。
ルカはうーん……と首をひねってから答えた。
「じゃあ俺にアプローチしてくる人たちに恋人ですって追い払ってください」
「……は?」
「勘違いされるんですよ。俺の容姿のおかげで寄ってくるもんだから」
「ああ……」
ルカは顔も綺麗だし、頭も良い。最近一気に背も伸びて、逞しくなった。そりゃアルファって勘違いされちゃうのも分かるかもしれない。
「女の子に迫られるのって疲れるんですよ。だから偽装番で良いんで恋人ごっこお願いします」
「……そのくらいならまあ……僕もメリットがあるし?」
「じゃあ交渉成立ですね」
ああでもひとつ言っておかないと。僕はニッコリ笑った。
「番になるのはフリだからね。ホントに噛ませたりしないから」
「……ケチだなぁ、アンタ」
「うるさい」
大体、ごっこで噛む必要ないじゃん、君アルファじゃないんだし。ね?
★☆★☆★☆
まあそんな経緯でルカと偽の番を演じることになったのだが、正直この作戦は大成功だった。おかげで僕は運命の番を待つお姫様でもなければ、好きでもないアルファに迫られる厄介事もないし、快適な大学生活が送れている。ただし弊害もあるわけで。
「ルカの好みって何なの?どんな子?」とか「紹介して!」とか「ルカ君から聞いてよぉ」とか、女の子たちに問い詰められることが増えた。
「どんなって言われてもね……」
僕はため息をつきながらオメガの女の子達からの猛攻を躱す。これ多分僕番だと思われてないぞー!
(アイツの作戦失敗では…?)
僕としては母さんが来るまでの間の契約番期間だからいいけど。
「セイア先輩ルカ君と仲良しですよね?」
「ルカ君、全然うちらと話してくれなくて」
「好みのタイプとか、先輩なら知ってるかなって」
「セイア先輩だけずるい!」
あーうるさいうるさい。女の子たちの甲高い声に耳がキーンとする。でもここでうまくやらないと、回り回って母さんの耳に入って疑われてしまうかもしれないので我慢だ。女子って怖い。
「ルカがあんまり話したがらないんだよね……」
「えーそうなんですか?」
「じゃあルカ君の好きな食べ物とか!好みのタイプとか知りませんか!?」
…好きなものって肉とかだし、女の子にはあまり興味なさそうだけどなぁ。
「あ、私好みのタイプは知ってる」
「えぇ!?ちょっと、教えてよぉ」
僕の目の前でなんか始まった。年下よりは年上で落ち着いてるけどちょっと頼りない感じなんだってさ!
「えーじゃあ可愛い系より綺麗系がいいんだ?むず…!」
「もう!絶対振り向いて貰うんだから!」
「セイア先輩、もし聞けたら教えてくださいね!」
女の子達がきゃっきゃ言いながら盛り上がる。盛り上がってるとこ悪いけど、多分一生無理だよ。ルカは僕のこと嫌いだから。最近でこそ一緒にいるけど、疎遠だったし、会えば嫌味だし、今はただの協力関係なだけだし。まあ言わないけど。言ったら面倒なことになりそうだし。
「……あ、僕ちょっと用事思い出したから行くね」
お目当てのものが得られなくてガッカリする女の子達を尻目に、僕は寮へと向かった。食材切れたし買わないとな、なんて思いながら。
★☆★☆★☆
「言えばよかったのに」
当たり前のように僕の部屋で焼いた肉を食べながらルカはそう言った。
「言うって、何をさ」
「アンタが俺の番だって」
「……言わないよ。そもそも嘘だし、バレたら困るでしょ」
「そうですか?」
ルカはニヤリと笑った。僕はそれを無視して肉にかぶりつく。うん、美味い。さすが高級焼肉店から買ってきただけあるな。食費2倍使えるのはありがたいかも。
「まあとにかく、母さん来るまでの間だから。それまで適当に恋人っぽいことしたらいいんだろ?」
「そういうことですね」
「あーあ、モテる男ってのも考え物だよね~」
「……そんなに嫌ですか?」
「ん?」
じっと僕の顔を凝視するルカ。
「俺と番だって思われるの、そんなに嫌ですか?」
「あー……別にそういうわけじゃないけど……」
そもそも僕たちは番じゃない。でも何故か、ルカは呆れた顔をする。
「じゃあなんで言わないんですか?そのほうが楽でしょ」
「……まあそれはそうなんだけどさぁ」
だって僕は誰とも番になりたくないんだよ。そもそも僕みたいなオメガがアルファとくっつくなんて無理に決まってる。僕アルファ嫌いだし。無理。
しかも相手はこのクソ生意気な後輩だぞ!僕なんかに勃つわけがない。無理無理。
「…もし偽装じゃなく本当の番になったら、どうします?」
「そんなことあるわけないじゃん」
あははって明るく笑ってご飯を口に放り込む。だって僕はベータなりすましのオメガだし、ルカはアルファに思われがちなベータないしオメガ。どうやったって『番』の概念には当てはまらない。
「それに言ったろ?僕はアルファ嫌いだもん。傲慢で偉そうで肩幅ゴツくて顎が尖ってて」
「最後の偏見ヤバすぎですよ」
「だって本当にそうじゃん?」
「まあそうですけど」
ルカが笑う。珍しく悲しそうだった。僕はそれを見て、胸の奥が少し痛む。
(あれ?)
なんで僕、胸が痛いんだろう。なんか変だな、僕。
「じゃあ明日からまた偽の番、お願いしますね」
「はいはい」
ご馳走様でしたと手を振って自室へ戻るルカを見送ると、僕は深々とため息をついた。なんなんだろう、この胸の痛みは。よくわからない感情を抱えたまま僕も眠りについたのだった。
★☆★☆★☆
ルカとは初等部との交流会で出会った。当時の僕はとにかく可愛いものが大好きで、生意気だけどかわいい後輩たちとの交流は全然苦じゃなかった。
「君も一緒に遊ぼうよ」
後輩たちに囲まれていた僕は、少し離れた所にいた子にも声をかけた。
「やめなよー!ルカ、全然かわいくないって」
「そうだよ、いつもひとりでいるんだから!」
女の子達に囲まれながらつまらなそうにしている男の子がルカだった。僕はなんとなく気になって近づいて話しかけたのだ。
「ほら、一緒に遊ぼう?」
そう言うと、彼はビックリしたように目を見開いた後、キッと僕を睨んで言った。
「俺はかわいくないからいい」
「!!」
そう言った顔がめちゃめちゃ可愛かった。こんなの反則だろ。こんな可愛い顔してたら女の子にモテまくるだろ、わかるぞ、うんうん。
「かわいーよ?ルカ君」
「かわいくない!」
「かわいいかわいい」
こっちにおいでって、僕はルカの手を握って女の子たちと引き離してあげた。小さい頃のルカは振りほどかずに素直に従ったが、その先に他の子達が居ることに気づくと、パシンと手を振り払って逃げ出してしまった。
「あー行っちゃった」
「かわいーなーあの子。照れちゃったのかな」
「ね、セイアはホント、かわいいもの好きだねー」
他の子たちはクスクス笑っているが、僕はあの生意気なルカのことが気になって仕方がなかった。最後に挨拶をして教室を後にする時も、ルカはじっとこっちを睨んだまま何も言わなかった。
「じゃあねセイア!」
「また一緒に遊ぼうねー」
「うん、みんなも元気でね」
僕は手を振って下級生の教室を立ち去った。本当にあの頃は可愛かった。それがあんなに捻くれちゃうなんて、人の性格ってわからないものだ。
★☆★☆★☆
目覚めたら身体がだるかった。発情期が近いのかもしれない。
(周期乱れてるのかも…)
薬はちゃんと飲んでるし、極力アルファの近くにもよらないようにしている。僕が可愛くて平和なものが好きなのは、本能的にアルファを恐れていると言うのもあるだろう。アルファは怖い。
「うー…」
ぽやぽやする。そのままベッドに横たわりたい。僕はぽちぽちとヒート対応のサイトを開いて予約をする。番をもたない、あるいは持つ気のないアルファとオメガは、企業介入のマッチングサイトを使ってお互いの発情期のタイミングを調整して、合意の上で発散したりする。たまにそこで運命の出会いとかあるみたいだけど、僕はそんなこと望んではいない。
「あーもう……だる……」
僕は枕に顔を埋めてぼやいた。絶対周期おかしい。前回も酷かったし、思春期はとっくに終わってるし、周期が整うはずなのに。
「んー……まあいっか」
風邪かもしれないし。僕はそのまままた目を閉じる。だけど、僕の予想は外れた。おかしい。やっぱりおかしい。体調がおかしくて頭がぼーっとしているし、身体中が熱いしムラムラするしで最悪の気分だ。
「予約、早めた方がいいかもだな…」
エディとユウには講義ノートお願いして…それから…適当なアルファに処理してもらおう。あーでもなぁ、また気持ち悪いのが続くのかな……うーん……
「先輩」
「……んあ?」
目を開けるとルカが僕を見下ろしていた。あれ、いつの間に寝てたんだろ。今何時だろ。頭がぼんやりしていてよくわからない。
「ヒートですよね」
「は……」
なんでバレてんの?と思いながらルカを見上げると、彼はため息をついていた。何その反応。なんでちょっと怒ってるんだよ。意味が分からないんだけど…僕はまだ覚醒しきってない頭でぼんやり考える。
「なんで言ってくれなかったんですか」
「別に、言う必要……」
「ありますよ」
ルカはそう言って僕の肩を掴むとベッドに押し倒した。熱のこもった潤んだ瞳と目が合う。そのまま近づいてくるルカの顔に思わずドキッとする。近い近い近い……なんかいい匂いするし……いやいや!何考えてんの僕!?これ今どういう状況!?
「ちょ、ちょっと!」
僕は慌ててルカの胸を押して顔を背ける。熱い吐息が首筋にかかってくすぐったい。
「俺はアンタの『番』なんだから」
「そ、それは…そうだけど……」
「『番』の発情期に頼ってもらえないなんて、屈辱ですよ」
「…なんでお前が悔しがるの?」
だって本当の番じゃないし。一瞬だけ苦しそうな表情をした彼は僕の耳元に顔を寄せて囁いた。
「先輩。俺が楽にしてあげますから……俺のものになってください」
「……は、はぁ!?」
コイツ何言ってんだ!?僕の顔から一気に血の気が引く。
「な、なに…?だって…ルカは…」
「アンタが好きだから」
「は……!?」
「昔からずっと。他のアルファにとられたくないんです」
そう言ってルカは僕の首筋をペロリと舐めた。まるで今から『食べる』という意思表示のようで、僕は震える。
「だって、君はアルファじゃ…アルファなんかじゃ…ない……」
「じゃあ『証明』しますね」
ルカは僕の顎を掴むと強引に口付けをした。熱い舌が入ってきて口の中を掻き回される。あ、やばい、これ気持ちいい……頭がボーッとしてくる……もっと欲しいかも……
「ん、は、はぁ……♡」
「……かわい……」
ルカは唇を離すと唾液の糸を引いた。それから僕のパジャマを脱がせ始める。待って待って待って!何する気!?
「ちょ、ちょっと待って…ルカ!」
「待ちません。俺のものになってください」
「だから僕は…君は…!」
頭がぼんやりしていてうまく働かない。言いたいことがまとまらない。だけど、僕は番なんて欲しくない、アルファのモノにはなりたくない。これは意地だ。でも、ルカはそんな僕の気持ちを見透かしたように微笑んだ。
「大丈夫ですよ、優しくしますから」
「ちが、そうじゃなくて……」
「先輩も俺のこと好きですよね?だってずっと俺のことを可愛いって言ってましたもんね」
「ちがっ……だからぁ……」
ルカの手が胸に触れる。僕はビクッと身体を震わせた。待ってって言ってるのに!なんでコイツ僕の話聞かないんだ!?
「あ、はぁ……♡だめ、やめ…なんで…?」
「好きでしょ?」
「ちがうぅ……」
ルカは僕の乳首を摘んでくりくりと弄ぶ。その度に甘い痺れが走って力が抜けていく。おかしい。なんでこんなに感じてしまうんだ?僕はオメガだけど、こんな敏感じゃなかったはず……それなのに、ルカに触れられたところが熱くて仕方がない。
「いい匂い…甘くて……頭がクラクラする……」
「やだ、やめろよぉ……」
ルカは僕の胸に顔を近づけるとペロリと舐めた。生暖かい感触が気持ち悪いはずなのに、何故か僕はゾクゾクと身体を震わせてしまう。
「先輩知ってました?先輩がヒートの時、他のオメガより全然いい匂いがするんです。ご馳走みたいな、ね」
「え……?」
「オメガのフェロモンを嗅ぐだけで理性がぶっ飛んじゃうんです。だから皆こぞって先輩をモノにしようとする」
知らなかった。だって、シェルターでも、普段でも、アルファは僕のことなんて…
「許せなかった。あんなに甘くていい匂い、他のアルファ連中なんかに嗅がせてたまるかって。だからマーキングして牽制してました。全然気づきませんでしたか?先輩、隙だらけですもんね」
ルカはそう言いながら僕の首筋に吸い付いた。またあの痺れが走る。僕は身を捩りながら甘い声を漏らすことしかできなかった。
「あぅ…やめて…ルカお願い…」
「はあ…かわいい…」
ちゅ、ちゅとキスを落とされる度に身体が熱くなる。僕はもう頭がぼーっとして何も考えられなくなっていた。
「先輩がアルファに人気ないのも当たり前です。他のアルファの匂いさせてるオメガに、近寄るアルファなんて居ませんからね?」
「ルカ…だって君は…」
「オメガかベータのはずだろ?ですか。生憎、俺はアルファです」
「なんで……」
ルカは僕のズボンを脱がせ始める。僕は慌てて手で隠そうとしたけど、ルカにやんわりと握られてしまった。
「なんで言わなかったのか、ですか?先輩のせいですよ」
「へ……」
ルカは僕の手を掴んだまま、僕のモノを扱き始めた。僕は思わず変な声を出してしまう。
「や、だ、だめ……」
「俺は昔から先輩のことが好きだったのに。アンタが『アルファが嫌い』とか言うから……」
ルカは僕の顔を見て微笑むと、僕の耳元に唇を寄せた。そして熱い吐息混じりに囁く。
「アルファは強引で傲慢で思いやりも協調性もなく、一方的にオメガを支配できると思い込んでる人種です」
「う……あ……」
「オメガはアルファに絶対服従させられる家畜。だからベータはみんな、自分がオメガじゃなくてよかったって安心している。そう言ってましたね?」
ルカは僕のモノを握る手に力を込めた。僕はその刺激に身体を跳ねさせる。するとルカがクスッと笑った気がした。
「でも俺は違います。他のオメガなんてどうでもいい。先輩だけが特別なんです。俺は先輩が可愛くて仕方ないし、大事にしたいと思ってる。誰にも取られたくありません。先輩だけが俺の特別です」
「あ、う……ルカ……」
「俺の発症が遅れたのも、無意識に嫌われたくなくてセーブしていたせいです。先輩アルファ嫌いですからね」
じわじわと、ルカのフェロモンが漂ってくる。頭がぼんやりして、身体が熱くて仕方ない。ルカの甘い声が頭の中で反響する。
「先輩は知らないでしょうけど、先輩がオメガだって気づいたアルファは何人も居ましたよ?でも全部俺が追い払ってきたんです」
「ん……あ……だめ……」
「なのに先輩は俺のことベータとかオメガだって思い込んで、油断して、フェロモンダダ漏れにしてたから……」
ルカはそう言って僕の額にキスをした。そしてゆっくりと身体を起こして僕を見下ろすように覆い被さると、妖しい笑みを浮かべた。
「ヒート処理の時に他のアルファに抱かれに行くのを、俺がどんな気持ちで見てたと思います?」
「あ……やぁ……」
「アルファだとバレたら、避けられる。だけど、アルファだと知らないから、他のアルファに抱かれるのを見てるだけ…」
ルカのフェロモンがより濃くなって、空気が重苦しい物に変わっていく。身体がどんどん熱くなって、頭がぼんやりしてくる。
「…嫉妬で気が狂いそうになりました」
ルカはそう言うと、僕の首すじに顔を埋めた。そのまま強く吸い付かれて、痛みが走る。
「あ……なに……?」
「マーキングです」
ルカは顔を上げると満足そうに微笑んだ。それから僕の唇にキスをしてくる。舌を差し込まれて絡められると、また頭がぼーっとしてくる。なんで?他のアルファとヒート解消のためでした時なんて、こんなことにはならなかったのに。
「ん、ちゅ……んん……」
「……先輩。そろそろ、楽になりたいんじゃないですか?」
「え……」
ルカは僕のモノを撫でながら囁いた。僕はぼんやりした頭のまま彼を見上げる。ルカは目を細めて微笑んでいた。その笑みがとても綺麗で、僕は思わず見惚れてしまう。
「俺なら先輩のこと大事にしてあげますよ」
ルカはそう言って僕のお腹を撫でた。子宮の上辺りを撫でられてお腹の奥がきゅんとする。
「あ……」
「わかりますか?先輩が、俺の子どもを孕めるところ」
ルカはそう言うと僕の下腹部に掌を押し当てた。その瞬間、僕はビクビクと身体を震わせてしまう。お腹の奥が疼いて仕方がない。
「あっ……あ……」
「ふふ……可愛い……」
ルカは僕の首筋に舌を這わせると、今度はそこに強く吸い付いた。チクリとした痛みが走ると同時に頭が真っ白になる。
(これはオメガの本能だ)
理性は恐怖を叫ぶが、本能は早くこの疼きを止めて欲しいと叫んでいる。もう僕ではどうしていいかわからなくて、縋るようにルカの服を掴む。
「せんぱい……?」
「……おねが、い……」
僕は震える声で懇願した。ルカはそんな僕をジッと見つめると、再び僕に覆い被さってきた。
「いいですよ。先輩のお願いならなんだって聞きます」
「ん……んぅ……」
ルカは僕にキスをしながら僕のモノを扱き始めた。さっきより強めに刺激されて、僕はすぐに達してしまった。するとルカは嬉しそうに微笑んで僕の耳元に顔を寄せてきた。
「気持ちよかったですか?」
「う……あ……」
「でも、もっと奥……気持ちよくなりたくないですか?」
耳元で囁かれる言葉に脳が蕩けそうになる。ルカは僕の手を掴むと、自分の股間へと導いた。そこには硬く張り詰めたモノがあって、僕は思わず息を飲む。
(アルファのフェロモン……すごい)
「先輩。俺に先輩をください」
ルカはそう言って僕を見つめた。僕は何も言えずに彼を見つめ返すことしかできなくて、彼はそんな僕を愛おしそうに見つめている。そしてそっと僕の唇にキスを落としてきた。触れるだけの優しいキス。こんな風にされてしまうと、僕はもう抵抗することなんてできなかった。
「はぅう…♡」
(こんなの…知らない♡)
ルカは僕の後孔に触れると、ゆっくりと中に入ってきた。圧迫感はあるものの痛みはなく、むしろ待ち望んでいたかのような快感が押し寄せてくる。
(僕……なんで?)
今までアルファに抱かれても、性欲処理としてただ事務的に抱かれていただけだった。それが普通だと思っていたし、何も感じなかった。なのに今は、ルカのフェロモンに当てられて頭がおかしくなりそうだった。
「はぁ……先輩……先輩の中、熱くてキツくて……最高です」
「やぁ……いわないで……」
「どうして?俺の言葉で感じてくれてるんですよね?」
ルカは僕の耳を舐めると、そのまま耳に舌を入れてきた。ぴちゃぴちゃという水音が脳に直接響いてきてゾクゾクする。
「俺のこと大好きだって伝わってきますよ…?柔らかいのに締め付けてきて、全身で俺のこと求めてくれてる……」
「あ、ちがっ……ちがうぅ……」
「違わない。先輩、俺のこと大好きですよね?」
ルカはそう言うと僕のお腹を撫でてきた。それだけで子宮がきゅんと疼いて、僕はビクビクと身体を震わせてしまう。
「せんぱい?教えてくださいよ」
ルカは僕のお腹を撫でながら甘い声で囁きかけてきた。それだけで頭がぼーっとして何も考えられなくなってしまう。
「あぅうう…♡ルカぁ…やぁあ…♡」
「あは、かわいい…こんなかわいい顔他のアルファに見せてきたんですね…?殺したくなるな…」
「んぅう!」
ぐっ!とナカに押し込られたルカのモノが、僕の子宮口を押し潰す。僕は悲鳴のような声を上げて身体を仰け反らせた。
「やだ……あうぅ……なんで、僕ぇ……」
「大丈夫ですよ?これからは俺だけを受け入れればいい…先輩のイイトコロずっと擦ってあげますし、とろとろになるまで甘やかしてあげますよ。キモチイイでしょ?俺とするの」
「んんう…イイ…キモチイイ…♡」
「でしょう?」
ルカは僕の頭を撫でて、額にキスを落としてきた。僕は嬉しくなってルカの首に腕を回す。ルカはそれに応えるようにぎゅっと僕を抱きしめた。
「ん、んっ……もっとぉ……」
「はい、先輩♡」
ルカは僕の身体を抱き上げると、対面座位の体勢になった。自重でより深くルカのものが入り込んでくる。僕はビクビクと身体を震わせながら、ルカにしがみついた。すると彼は優しくキスをしながら腰を揺らし始める。
「あっ♡あっ♡あっ♡」
「先輩、好きです。大好きです」
ルカの腰の動きに合わせて、僕の口から甘い声が漏れた。頭が真っ白になって何も考えられない。ただひたすら与えられる快楽に身を委ねることしかできなくて……
(これがオメガの本能……?)
「んっ♡んんっ♡」
「はぁ……かわいい……俺の、俺だけのオメガ……」
ルカは熱に浮かされたように呟くと、僕の唇を奪った。舌を差し込まれて絡められる。濃厚なキスに、僕の思考回路は完全にショートした。
「んちゅ……んぅう♡」
ルカのフェロモンがさらに濃くなって僕を包み込む。もう何も考えられないくらいに気持ちよくて幸せで仕方がない。
「はあ…かわいい…たまんねぇ…先輩、お母さんに挨拶しにいきましょうね?俺が運命の番だって、安心してもらいますから」
「んぇ……?」
ルカが何を言っているのかよくわからなかった。だけど、ルカが僕の首筋や鎖骨にキスマークをつける度に、僕は幸せな気分になって何も考えられなくなってしまう。
「先輩♡先輩♡」
ルカは僕の首筋に吸い付いたまま、腰を動かすスピードを上げた。子宮口をぐりぐりと抉られて、僕の身体が大きく跳ね上がる。
(だめ……これすごすぎる……♡)
頭が真っ白になって何も考えられない。ただひたすら気持ちいいということだけしかわからなくなる。僕はルカにしがみつくと、必死にキスマークをつけて彼のモノを締め付けた。するとルカは嬉しそうに微笑んで僕の首筋に強く吸い付いてくる。
「先輩、好き、大好き…」
「あぁああ……♡」
(気持ちいい♡もっと欲しい♡)
僕は自分からルカの唇を奪った。それに応えるようにルカも激しく僕を求めてくれる。舌を絡めてお互いの唾液を交換し合うような激しい口付けに、僕らは夢中になって溺れていった。
★☆★☆★☆
あれから2日後。
「うううぅ~~~……」
「先輩、そんな唸ってたらもっとヒート悪化しますよ?」
「だってぇ……」
僕はルカの部屋のベッドの上で蹲っていた。原因はもちろん、狂った発情期における一連の行為による後悔の念だ。まあ身体も熱いけど。それより、恥ずかしさが募る。
だけどルカはそんな僕を見ながらニコニコしていた。
「大丈夫ですよ。昨日からずっとこうしてますから」
「うん……」
ルカは僕を後ろから抱きしめるように座りながら、僕のお腹を撫でたりお尻を撫でたりしている。その手つきはとても優しくて心地良い。
(けど、やっぱり…!)
「ルカ…」
「なんですか?」
「その…いつ自分がアルファだと知ったの…?」
「あぁ、それですか」
ルカはそう言うと僕のお腹を撫でながら言った。
「16歳の誕生日にです」
「……そっか」
僕は12歳の時だから、大分遅い。だからルカはあんまりアルファぽくないのかもしれない。ゴツくて、傲慢で、身勝手な、所謂『アルファ』って感じでもない。
「分かったとき『やっぱりな』と言うのと『どうしよう』って言うのと、『良かった』って言うのでごちゃごちゃでした」
「どう言う意味?」
「先輩、アルファ嫌いでしょう?」
「うっ!…うん」
そこ突かれると痛い。僕は素直に頷いた。
「嫌われるのは嫌だった。だけど、先輩が他のアルファの番になるのはもっと嫌だった。だから、俺がアルファだって知って心の奥底では、ホッとしたんです」
ルカはそう言って僕の項に舌を這わせた。それだけでゾクゾクとした快感が背筋を走る。
「俺は先輩の、一番頼れるアルファになれるってことですから」
「ん…そっか…」
僕は嬉しくなって思わず微笑みそうになった。しかしそこでハッと我に返る。
(つまり、ルカって、ヤンデレ系ツンデレフェロモン大魔神ってことでは?)
そう思いながらルカの腕から逃れようと身じろぐ。
「先輩が鈍くて良かったです。俺のフェロモンつけてたお陰で他のアルファが警戒してくれてましたし、ヒートの相手も本気にならなかったでしょう?」
「え、え…」
アルファに人気がないと思ってたけど、それってコイツのせいでは…
「先輩のお母さんのおかげもありますけどね。20歳前に決心してくれて良かった…」
「いや待ってルカ、僕は……」
独身貴族オメガとして生きるつもりだったのだ。そもそもこの番契約は一時的なもので…
「挨拶しちゃえばこっちのモノですよ?ね、せーんぱい?」
うっ…こわぁ…何この子……
「ちゃんと幸せにしますから」
ルカはそう言うと、僕の唇にキスを落とした。僕は諦めて彼に身体を委ねることにする。だって、身体が熱くて仕方がないのだ。ルカのフェロモンにあてられて、もうどうにかなりそうだった。
「ねぇ、ルカ…」
もう1つ、聞いておかなきゃいけないことがある。
「いつから僕のこと好きだったの?」
くるんと振り返ってそう聞く。その瞬間、ルカのフェロモンがぶわっと強くなる。
「初めて会った時からです」
『君もこっちにおいで』
僕はルカのフェロモンに当てられてぼーっとしながら、あの日のことを思い出した。
「いたいけな子どもに可愛い可愛い言ってベタベタして…オメガのくせに警戒心無さすぎですよ。呆れる」
「それ、ただの脅し……」
「いやだなぁ、本当のことですよ?」
ルカはそう言うと僕の首筋に歯を立てた。その刺激にゾクゾクと背筋が震える。
「甘くていい匂いがして、その中心に先輩がいて。囲まれて、俺のことには気づきもしない。遠くからじっと見ることしか出来なくて、それがどれだけ辛かったかわかります?」
「え、わかんない……」
(というか、ルカって僕のフェロモン感じ取れたんだ)
あんな小さい頃に。そう思うとなんだか切なくなる。
「ふふ、わからなくて良いです。俺だけ知っていれば良い」
ルカはそう言うと僕の首筋に強く吸い付いた。ピリッとした痛みが走るが、それすらも今の僕にとっては快感にしかならない。
「ひぅ♡あ♡」
「今は俺のモノですから、ね?先輩」
ぎゅ、と力が込められる。僕はルカに抱きしめられたまま顔を埋められる。
「一生かけて、幸せにしますから」
「んん……♡」
(あぁあ…♡もう無理かも……)
僕はルカのフェロモンに当てられて完全に屈服してしまった。彼に愛されることを望み始めている自分に気づいて愕然とする。
(ヤンデレ系ツンデレフェロモン大魔神に、拗らせまで追加されて…これ、勝てっこないやつ…)
僕は観念したように目を閉じた。ルカはそんな僕を見下ろして微笑むと、再び僕の唇にキスをしたのだった。
★☆★☆★☆
そんな占いを告げる占い師もどうかと思うけど、真に受ける母さんも母さんだ。僕はもう子どもじゃないし、そんなバカバカしい占いなんて信じない。
そりゃ、まだ第二の性が分かってないときだったら良かったよ?僕がアルファで、可愛いオメガの番と出会って、二十歳までに結婚式を挙げて、夫婦になって、子どもを作って。
でも僕はもう大人だ。妄想は必ずしも現実にはならない。
母さんは分かってない。運命の番に出会ったアルファがどれだけ幸せで、運命と出会えないオメガがどんなに哀れか。
そして僕はオメガだ。オメガはアルファと番になって、子どもを産んで育てるもの。運命の番がいるオメガは幸せになれる、子どもをたくさん産んで幸せになれる。でもそうじゃないオメガは? 運命じゃないアルファに無理矢理襲われて、妊娠して。望まない出産と虐待で心を病んだオメガのニュースを僕はよく見る。
そんなことが自分の身に起こるなんて耐えられない。僕はアルファに好き勝手される人生を送るつもりは全くない。それなら一生独身でいい。
でも、でも!
『セイア、もうすぐ貴方の誕生日よ。二十歳になるのね』
「そうだね」
『番は見つかった?』
「……」
見つかってたら苦労してないんだよなぁ。
憂鬱過ぎる母さんとの電話をしながら僕は大学の学生寮で空を仰ぐ。運命の番どころか、僕オメガだっていうのにアルファが寄ってこなさすぎる。むしろ嫌われてる気がする。まあ幸いヒートの時はそれなりに勃ってはくれるけど。
『セイア、あのね…』
「い、います!いるいる!超いるよ!」
『そう?良かったわ!運命の番を見つけたのね』
「う、うん。実はそうなんだ……」
我ながら嘘が下手すぎる。でも母さんに真実を話したら、きっとお見合いをセッティングされてしまう。お見合いで会ったアルファと好きあって結婚するならいいけど、好きじゃないアルファと結婚するくらいなら一生独身でいたい。それが僕の正直な気持ちだ。
『今度是非会わせて?母さん、セイアの番に会いたいわ』
「あ、えっと、それは……ちょっと……」
『あら。なにか事情があるの?母さんには会わせられないの?』
だって存在してないから…!なんて言えないし。
「んー……母さんにはもうちょっと秘密にさせて?きっと驚かせると思うからさ」
『まあ、そうなの?じゃあ楽しみにしてるわ!』
ごめんなさい母さん、本当はそんな人いません。僕はアルファのモノになるつもりなんてありません。なんて言えるわけもなく。
「あ、あはは…ははは……」
僕は曖昧に笑って誤魔化すしかなかった。
★☆★☆★☆
「で、どうするんだ?『運命の番』問題は」
翌日。学食のテーブルを囲んでいるのはいつものメンバー合計3人だ。エディとユウ。2人はベータで中等部からの友達である。
「とりあえず偽の番は作るしかないかなぁって思ってる」
「偽の、って……」
「母さんには運命の番を見つけたからって安心して貰わないと行けない。でも僕、アルファの人に好かれないし」
「ああ……」
僕の言葉にエディは察したようだった。そうなんだよ。僕には運命の番がいると嘘をつくためには偽の番が必要なんだ。
「ヒートの時に抱いてくれるヤツはどうだ?」
「ダメ。本気になられたら堪らないから」
「うわぁ、ひっどい発言」
そう。ヒートのときに適当に相手を探すけれど本気にされたら面倒だから基本的にはワンナイトのみ。幸いそういう第二の性でお悩みの人向けのアプリで相手はすぐに見つかるし、ちゃんと避妊はしてくれる。一度ヤッたら彼氏面するやつもいるけど、そしたらブロック、あるいは着信拒否だ。
「でも偽の番を作ってもあんまり良くないと思うよ?ヒート時に別のアルファに抱かれに行くって、正直普通に浮気だし」
「そこはうまくやるさ。相手をベータに限定するとか、避妊薬飲むとか。あと僕の項を噛まないようにしてもらう」
「……本当に大丈夫なのか?心配になってきた」
あからさまなため息をつくエディを尻目に僕はスムージーを啜る。
「仕方ないだろ。偽装で番を作るのが1番手っ取り早いんだから」
「まあ、そうなんだけどさ」
「僕も何かできることがあったら言ってくれよ?」
「うん。ありがと、ユウ」
エディとユウには申し訳ないけど、これはオメガに生まれた僕の問題だ。ふたりを巻き込むわけにはいかないからね。僕は曖昧に笑って誤魔化したのだった。
★☆★☆★
「…なんつー匂いさせてんですか、アンタ」
「げ…!」
「げって、相変わらず失礼極まりないですね」
午後の授業があると言った2人を見送り、ぼんやり学食でずるずるスムージーを啜っていた僕に絡んできたのは、同じ学部の後輩ルカだ。初等部時代から知ってるけど昔はめちゃめちゃ可愛かった。本当に、めちゃめちゃ可愛かった。無愛想なのにいるだけでみんなめろめろになってしまうくらい可愛かった。絶対オメガだと思ってたし、仲良くしたくてベタベタしてたら「うっとうしいです」と一蹴されてしまった。でも仕方ない。可愛いもん。
「まさかヒートじゃないでしょうね?」
「まだだよ」
「……ヒート時の匂いじゃないですか、コレ」
僕の首筋に顔を寄せてスンスン匂いを嗅ぐルカ。なんだか恥ずかしくて僕はスムージーを掻き回して匂いを消す。
「そんなことないって。気のせいだよ」
「誤魔化さなくていいですよ。ちゃんと薬飲んでるんですか?」
「飲んでるよ」
「ならいいですけど」
そう言いながらルカは僕の隣の席に座る。え、隣に座るの?何?
「……な、なに?」
「いや、ちょっと聞きたいことがあって」
「僕に?」
「本人に聞くのが1番手っ取り早いんですよ。単刀直入に聞きますけど、番見つけたんですか?」
「ぶっ…!」
混ぜ混ぜしてたスムージーを噴き出して、僕はルカを凝視する。
「な、なんで知ってるの!?」
「あんだけ大声で言ってれば」
「嘘!そんな!?」
「やっぱり出来たんですか?」
「い、いないよ!」
慌てて否定したけど、ちょっと遅かったかもしれない。ルカはニヤニヤ笑っている。くっそう……カマかけやがったな……!
「いないんですね」
「……い、います」
「うそつき」
クスクス笑いながら僕の頭を撫で回すルカ。昔は抱っこしようとすると逃げてたのに、なんでこんなにフレンドリーなの?あと小さい子にやるようなのどうなの?僕のほうが歳上なのに。
ここは、初等部から大学までエスカレーターだ。寮を使ってもいいし、通学も可能。勿論途中で脱落する人もいるけど、成績が良ければ学費が免除とか半額になったりと、母子家庭の僕の家としてはとてもありがたい制度だと思う。
ルカは頭が良かったし、ずっと寮生活だった数少ない仲間だった。僕も仲良くしようと思って、色々と話しかけていたんだけど、いつからか疎遠になってしまった。それがここ数年でルカは変わった。今みたいに距離を詰めてくるとは思わなくて、面食らってしまった。慣れない。
「な、なんでわかるの……?」
「匂いですよ」
「そんなに匂う?」
「まあ俺はベータに擬態してるオメガの匂いも嗅ぎ分けられるので」
「あーうん…そっか…」
すごいね…僕はアルファの匂いしかわかりません。後別に擬態したってよくない?オメガでいることに、メリットなんてほとんど無い。
「…俺が番になってあげましょうか?」
「は?」
え?今なんて言った?この人。
「だから、俺が先輩の番になってあげようかって」
「……冗談でしょ?」
僕は笑って流そうとしたが、はっとした。
僕は独身でいたい。誰とも番になりたくない。
だけど母さんを安心させたいので嘘でもいいから番を作っておきたい。
でも本気になられたら迷惑だし面倒くさい。うっかり噛まれたら大変だ。
その点、ルカは最適だった。よく知ってて、僕のセフレじゃなくて、アルファじゃなくて、僕のことを本気で好きになったりしない人。
「そうか…!」
「わるくないでしょう?」
ニヤリとルカが笑う。だけど、僕は考える。コイツが絶対なんのメリットもなく、厄介事を引き受けるとは思えない。
「な、何が目的?」
「目的?」
「君がタダで引き受けるつもりだなんて思えない」
「……人聞きの悪い。見返りなんて求めてませんよ」
「信用できないね」
僕だってオメガに生まれたけど、プライドくらいある。何か思惑があるなら知っておきたいし、納得できる理由が欲しい。
ルカはうーん……と首をひねってから答えた。
「じゃあ俺にアプローチしてくる人たちに恋人ですって追い払ってください」
「……は?」
「勘違いされるんですよ。俺の容姿のおかげで寄ってくるもんだから」
「ああ……」
ルカは顔も綺麗だし、頭も良い。最近一気に背も伸びて、逞しくなった。そりゃアルファって勘違いされちゃうのも分かるかもしれない。
「女の子に迫られるのって疲れるんですよ。だから偽装番で良いんで恋人ごっこお願いします」
「……そのくらいならまあ……僕もメリットがあるし?」
「じゃあ交渉成立ですね」
ああでもひとつ言っておかないと。僕はニッコリ笑った。
「番になるのはフリだからね。ホントに噛ませたりしないから」
「……ケチだなぁ、アンタ」
「うるさい」
大体、ごっこで噛む必要ないじゃん、君アルファじゃないんだし。ね?
★☆★☆★☆
まあそんな経緯でルカと偽の番を演じることになったのだが、正直この作戦は大成功だった。おかげで僕は運命の番を待つお姫様でもなければ、好きでもないアルファに迫られる厄介事もないし、快適な大学生活が送れている。ただし弊害もあるわけで。
「ルカの好みって何なの?どんな子?」とか「紹介して!」とか「ルカ君から聞いてよぉ」とか、女の子たちに問い詰められることが増えた。
「どんなって言われてもね……」
僕はため息をつきながらオメガの女の子達からの猛攻を躱す。これ多分僕番だと思われてないぞー!
(アイツの作戦失敗では…?)
僕としては母さんが来るまでの間の契約番期間だからいいけど。
「セイア先輩ルカ君と仲良しですよね?」
「ルカ君、全然うちらと話してくれなくて」
「好みのタイプとか、先輩なら知ってるかなって」
「セイア先輩だけずるい!」
あーうるさいうるさい。女の子たちの甲高い声に耳がキーンとする。でもここでうまくやらないと、回り回って母さんの耳に入って疑われてしまうかもしれないので我慢だ。女子って怖い。
「ルカがあんまり話したがらないんだよね……」
「えーそうなんですか?」
「じゃあルカ君の好きな食べ物とか!好みのタイプとか知りませんか!?」
…好きなものって肉とかだし、女の子にはあまり興味なさそうだけどなぁ。
「あ、私好みのタイプは知ってる」
「えぇ!?ちょっと、教えてよぉ」
僕の目の前でなんか始まった。年下よりは年上で落ち着いてるけどちょっと頼りない感じなんだってさ!
「えーじゃあ可愛い系より綺麗系がいいんだ?むず…!」
「もう!絶対振り向いて貰うんだから!」
「セイア先輩、もし聞けたら教えてくださいね!」
女の子達がきゃっきゃ言いながら盛り上がる。盛り上がってるとこ悪いけど、多分一生無理だよ。ルカは僕のこと嫌いだから。最近でこそ一緒にいるけど、疎遠だったし、会えば嫌味だし、今はただの協力関係なだけだし。まあ言わないけど。言ったら面倒なことになりそうだし。
「……あ、僕ちょっと用事思い出したから行くね」
お目当てのものが得られなくてガッカリする女の子達を尻目に、僕は寮へと向かった。食材切れたし買わないとな、なんて思いながら。
★☆★☆★☆
「言えばよかったのに」
当たり前のように僕の部屋で焼いた肉を食べながらルカはそう言った。
「言うって、何をさ」
「アンタが俺の番だって」
「……言わないよ。そもそも嘘だし、バレたら困るでしょ」
「そうですか?」
ルカはニヤリと笑った。僕はそれを無視して肉にかぶりつく。うん、美味い。さすが高級焼肉店から買ってきただけあるな。食費2倍使えるのはありがたいかも。
「まあとにかく、母さん来るまでの間だから。それまで適当に恋人っぽいことしたらいいんだろ?」
「そういうことですね」
「あーあ、モテる男ってのも考え物だよね~」
「……そんなに嫌ですか?」
「ん?」
じっと僕の顔を凝視するルカ。
「俺と番だって思われるの、そんなに嫌ですか?」
「あー……別にそういうわけじゃないけど……」
そもそも僕たちは番じゃない。でも何故か、ルカは呆れた顔をする。
「じゃあなんで言わないんですか?そのほうが楽でしょ」
「……まあそれはそうなんだけどさぁ」
だって僕は誰とも番になりたくないんだよ。そもそも僕みたいなオメガがアルファとくっつくなんて無理に決まってる。僕アルファ嫌いだし。無理。
しかも相手はこのクソ生意気な後輩だぞ!僕なんかに勃つわけがない。無理無理。
「…もし偽装じゃなく本当の番になったら、どうします?」
「そんなことあるわけないじゃん」
あははって明るく笑ってご飯を口に放り込む。だって僕はベータなりすましのオメガだし、ルカはアルファに思われがちなベータないしオメガ。どうやったって『番』の概念には当てはまらない。
「それに言ったろ?僕はアルファ嫌いだもん。傲慢で偉そうで肩幅ゴツくて顎が尖ってて」
「最後の偏見ヤバすぎですよ」
「だって本当にそうじゃん?」
「まあそうですけど」
ルカが笑う。珍しく悲しそうだった。僕はそれを見て、胸の奥が少し痛む。
(あれ?)
なんで僕、胸が痛いんだろう。なんか変だな、僕。
「じゃあ明日からまた偽の番、お願いしますね」
「はいはい」
ご馳走様でしたと手を振って自室へ戻るルカを見送ると、僕は深々とため息をついた。なんなんだろう、この胸の痛みは。よくわからない感情を抱えたまま僕も眠りについたのだった。
★☆★☆★☆
ルカとは初等部との交流会で出会った。当時の僕はとにかく可愛いものが大好きで、生意気だけどかわいい後輩たちとの交流は全然苦じゃなかった。
「君も一緒に遊ぼうよ」
後輩たちに囲まれていた僕は、少し離れた所にいた子にも声をかけた。
「やめなよー!ルカ、全然かわいくないって」
「そうだよ、いつもひとりでいるんだから!」
女の子達に囲まれながらつまらなそうにしている男の子がルカだった。僕はなんとなく気になって近づいて話しかけたのだ。
「ほら、一緒に遊ぼう?」
そう言うと、彼はビックリしたように目を見開いた後、キッと僕を睨んで言った。
「俺はかわいくないからいい」
「!!」
そう言った顔がめちゃめちゃ可愛かった。こんなの反則だろ。こんな可愛い顔してたら女の子にモテまくるだろ、わかるぞ、うんうん。
「かわいーよ?ルカ君」
「かわいくない!」
「かわいいかわいい」
こっちにおいでって、僕はルカの手を握って女の子たちと引き離してあげた。小さい頃のルカは振りほどかずに素直に従ったが、その先に他の子達が居ることに気づくと、パシンと手を振り払って逃げ出してしまった。
「あー行っちゃった」
「かわいーなーあの子。照れちゃったのかな」
「ね、セイアはホント、かわいいもの好きだねー」
他の子たちはクスクス笑っているが、僕はあの生意気なルカのことが気になって仕方がなかった。最後に挨拶をして教室を後にする時も、ルカはじっとこっちを睨んだまま何も言わなかった。
「じゃあねセイア!」
「また一緒に遊ぼうねー」
「うん、みんなも元気でね」
僕は手を振って下級生の教室を立ち去った。本当にあの頃は可愛かった。それがあんなに捻くれちゃうなんて、人の性格ってわからないものだ。
★☆★☆★☆
目覚めたら身体がだるかった。発情期が近いのかもしれない。
(周期乱れてるのかも…)
薬はちゃんと飲んでるし、極力アルファの近くにもよらないようにしている。僕が可愛くて平和なものが好きなのは、本能的にアルファを恐れていると言うのもあるだろう。アルファは怖い。
「うー…」
ぽやぽやする。そのままベッドに横たわりたい。僕はぽちぽちとヒート対応のサイトを開いて予約をする。番をもたない、あるいは持つ気のないアルファとオメガは、企業介入のマッチングサイトを使ってお互いの発情期のタイミングを調整して、合意の上で発散したりする。たまにそこで運命の出会いとかあるみたいだけど、僕はそんなこと望んではいない。
「あーもう……だる……」
僕は枕に顔を埋めてぼやいた。絶対周期おかしい。前回も酷かったし、思春期はとっくに終わってるし、周期が整うはずなのに。
「んー……まあいっか」
風邪かもしれないし。僕はそのまままた目を閉じる。だけど、僕の予想は外れた。おかしい。やっぱりおかしい。体調がおかしくて頭がぼーっとしているし、身体中が熱いしムラムラするしで最悪の気分だ。
「予約、早めた方がいいかもだな…」
エディとユウには講義ノートお願いして…それから…適当なアルファに処理してもらおう。あーでもなぁ、また気持ち悪いのが続くのかな……うーん……
「先輩」
「……んあ?」
目を開けるとルカが僕を見下ろしていた。あれ、いつの間に寝てたんだろ。今何時だろ。頭がぼんやりしていてよくわからない。
「ヒートですよね」
「は……」
なんでバレてんの?と思いながらルカを見上げると、彼はため息をついていた。何その反応。なんでちょっと怒ってるんだよ。意味が分からないんだけど…僕はまだ覚醒しきってない頭でぼんやり考える。
「なんで言ってくれなかったんですか」
「別に、言う必要……」
「ありますよ」
ルカはそう言って僕の肩を掴むとベッドに押し倒した。熱のこもった潤んだ瞳と目が合う。そのまま近づいてくるルカの顔に思わずドキッとする。近い近い近い……なんかいい匂いするし……いやいや!何考えてんの僕!?これ今どういう状況!?
「ちょ、ちょっと!」
僕は慌ててルカの胸を押して顔を背ける。熱い吐息が首筋にかかってくすぐったい。
「俺はアンタの『番』なんだから」
「そ、それは…そうだけど……」
「『番』の発情期に頼ってもらえないなんて、屈辱ですよ」
「…なんでお前が悔しがるの?」
だって本当の番じゃないし。一瞬だけ苦しそうな表情をした彼は僕の耳元に顔を寄せて囁いた。
「先輩。俺が楽にしてあげますから……俺のものになってください」
「……は、はぁ!?」
コイツ何言ってんだ!?僕の顔から一気に血の気が引く。
「な、なに…?だって…ルカは…」
「アンタが好きだから」
「は……!?」
「昔からずっと。他のアルファにとられたくないんです」
そう言ってルカは僕の首筋をペロリと舐めた。まるで今から『食べる』という意思表示のようで、僕は震える。
「だって、君はアルファじゃ…アルファなんかじゃ…ない……」
「じゃあ『証明』しますね」
ルカは僕の顎を掴むと強引に口付けをした。熱い舌が入ってきて口の中を掻き回される。あ、やばい、これ気持ちいい……頭がボーッとしてくる……もっと欲しいかも……
「ん、は、はぁ……♡」
「……かわい……」
ルカは唇を離すと唾液の糸を引いた。それから僕のパジャマを脱がせ始める。待って待って待って!何する気!?
「ちょ、ちょっと待って…ルカ!」
「待ちません。俺のものになってください」
「だから僕は…君は…!」
頭がぼんやりしていてうまく働かない。言いたいことがまとまらない。だけど、僕は番なんて欲しくない、アルファのモノにはなりたくない。これは意地だ。でも、ルカはそんな僕の気持ちを見透かしたように微笑んだ。
「大丈夫ですよ、優しくしますから」
「ちが、そうじゃなくて……」
「先輩も俺のこと好きですよね?だってずっと俺のことを可愛いって言ってましたもんね」
「ちがっ……だからぁ……」
ルカの手が胸に触れる。僕はビクッと身体を震わせた。待ってって言ってるのに!なんでコイツ僕の話聞かないんだ!?
「あ、はぁ……♡だめ、やめ…なんで…?」
「好きでしょ?」
「ちがうぅ……」
ルカは僕の乳首を摘んでくりくりと弄ぶ。その度に甘い痺れが走って力が抜けていく。おかしい。なんでこんなに感じてしまうんだ?僕はオメガだけど、こんな敏感じゃなかったはず……それなのに、ルカに触れられたところが熱くて仕方がない。
「いい匂い…甘くて……頭がクラクラする……」
「やだ、やめろよぉ……」
ルカは僕の胸に顔を近づけるとペロリと舐めた。生暖かい感触が気持ち悪いはずなのに、何故か僕はゾクゾクと身体を震わせてしまう。
「先輩知ってました?先輩がヒートの時、他のオメガより全然いい匂いがするんです。ご馳走みたいな、ね」
「え……?」
「オメガのフェロモンを嗅ぐだけで理性がぶっ飛んじゃうんです。だから皆こぞって先輩をモノにしようとする」
知らなかった。だって、シェルターでも、普段でも、アルファは僕のことなんて…
「許せなかった。あんなに甘くていい匂い、他のアルファ連中なんかに嗅がせてたまるかって。だからマーキングして牽制してました。全然気づきませんでしたか?先輩、隙だらけですもんね」
ルカはそう言いながら僕の首筋に吸い付いた。またあの痺れが走る。僕は身を捩りながら甘い声を漏らすことしかできなかった。
「あぅ…やめて…ルカお願い…」
「はあ…かわいい…」
ちゅ、ちゅとキスを落とされる度に身体が熱くなる。僕はもう頭がぼーっとして何も考えられなくなっていた。
「先輩がアルファに人気ないのも当たり前です。他のアルファの匂いさせてるオメガに、近寄るアルファなんて居ませんからね?」
「ルカ…だって君は…」
「オメガかベータのはずだろ?ですか。生憎、俺はアルファです」
「なんで……」
ルカは僕のズボンを脱がせ始める。僕は慌てて手で隠そうとしたけど、ルカにやんわりと握られてしまった。
「なんで言わなかったのか、ですか?先輩のせいですよ」
「へ……」
ルカは僕の手を掴んだまま、僕のモノを扱き始めた。僕は思わず変な声を出してしまう。
「や、だ、だめ……」
「俺は昔から先輩のことが好きだったのに。アンタが『アルファが嫌い』とか言うから……」
ルカは僕の顔を見て微笑むと、僕の耳元に唇を寄せた。そして熱い吐息混じりに囁く。
「アルファは強引で傲慢で思いやりも協調性もなく、一方的にオメガを支配できると思い込んでる人種です」
「う……あ……」
「オメガはアルファに絶対服従させられる家畜。だからベータはみんな、自分がオメガじゃなくてよかったって安心している。そう言ってましたね?」
ルカは僕のモノを握る手に力を込めた。僕はその刺激に身体を跳ねさせる。するとルカがクスッと笑った気がした。
「でも俺は違います。他のオメガなんてどうでもいい。先輩だけが特別なんです。俺は先輩が可愛くて仕方ないし、大事にしたいと思ってる。誰にも取られたくありません。先輩だけが俺の特別です」
「あ、う……ルカ……」
「俺の発症が遅れたのも、無意識に嫌われたくなくてセーブしていたせいです。先輩アルファ嫌いですからね」
じわじわと、ルカのフェロモンが漂ってくる。頭がぼんやりして、身体が熱くて仕方ない。ルカの甘い声が頭の中で反響する。
「先輩は知らないでしょうけど、先輩がオメガだって気づいたアルファは何人も居ましたよ?でも全部俺が追い払ってきたんです」
「ん……あ……だめ……」
「なのに先輩は俺のことベータとかオメガだって思い込んで、油断して、フェロモンダダ漏れにしてたから……」
ルカはそう言って僕の額にキスをした。そしてゆっくりと身体を起こして僕を見下ろすように覆い被さると、妖しい笑みを浮かべた。
「ヒート処理の時に他のアルファに抱かれに行くのを、俺がどんな気持ちで見てたと思います?」
「あ……やぁ……」
「アルファだとバレたら、避けられる。だけど、アルファだと知らないから、他のアルファに抱かれるのを見てるだけ…」
ルカのフェロモンがより濃くなって、空気が重苦しい物に変わっていく。身体がどんどん熱くなって、頭がぼんやりしてくる。
「…嫉妬で気が狂いそうになりました」
ルカはそう言うと、僕の首すじに顔を埋めた。そのまま強く吸い付かれて、痛みが走る。
「あ……なに……?」
「マーキングです」
ルカは顔を上げると満足そうに微笑んだ。それから僕の唇にキスをしてくる。舌を差し込まれて絡められると、また頭がぼーっとしてくる。なんで?他のアルファとヒート解消のためでした時なんて、こんなことにはならなかったのに。
「ん、ちゅ……んん……」
「……先輩。そろそろ、楽になりたいんじゃないですか?」
「え……」
ルカは僕のモノを撫でながら囁いた。僕はぼんやりした頭のまま彼を見上げる。ルカは目を細めて微笑んでいた。その笑みがとても綺麗で、僕は思わず見惚れてしまう。
「俺なら先輩のこと大事にしてあげますよ」
ルカはそう言って僕のお腹を撫でた。子宮の上辺りを撫でられてお腹の奥がきゅんとする。
「あ……」
「わかりますか?先輩が、俺の子どもを孕めるところ」
ルカはそう言うと僕の下腹部に掌を押し当てた。その瞬間、僕はビクビクと身体を震わせてしまう。お腹の奥が疼いて仕方がない。
「あっ……あ……」
「ふふ……可愛い……」
ルカは僕の首筋に舌を這わせると、今度はそこに強く吸い付いた。チクリとした痛みが走ると同時に頭が真っ白になる。
(これはオメガの本能だ)
理性は恐怖を叫ぶが、本能は早くこの疼きを止めて欲しいと叫んでいる。もう僕ではどうしていいかわからなくて、縋るようにルカの服を掴む。
「せんぱい……?」
「……おねが、い……」
僕は震える声で懇願した。ルカはそんな僕をジッと見つめると、再び僕に覆い被さってきた。
「いいですよ。先輩のお願いならなんだって聞きます」
「ん……んぅ……」
ルカは僕にキスをしながら僕のモノを扱き始めた。さっきより強めに刺激されて、僕はすぐに達してしまった。するとルカは嬉しそうに微笑んで僕の耳元に顔を寄せてきた。
「気持ちよかったですか?」
「う……あ……」
「でも、もっと奥……気持ちよくなりたくないですか?」
耳元で囁かれる言葉に脳が蕩けそうになる。ルカは僕の手を掴むと、自分の股間へと導いた。そこには硬く張り詰めたモノがあって、僕は思わず息を飲む。
(アルファのフェロモン……すごい)
「先輩。俺に先輩をください」
ルカはそう言って僕を見つめた。僕は何も言えずに彼を見つめ返すことしかできなくて、彼はそんな僕を愛おしそうに見つめている。そしてそっと僕の唇にキスを落としてきた。触れるだけの優しいキス。こんな風にされてしまうと、僕はもう抵抗することなんてできなかった。
「はぅう…♡」
(こんなの…知らない♡)
ルカは僕の後孔に触れると、ゆっくりと中に入ってきた。圧迫感はあるものの痛みはなく、むしろ待ち望んでいたかのような快感が押し寄せてくる。
(僕……なんで?)
今までアルファに抱かれても、性欲処理としてただ事務的に抱かれていただけだった。それが普通だと思っていたし、何も感じなかった。なのに今は、ルカのフェロモンに当てられて頭がおかしくなりそうだった。
「はぁ……先輩……先輩の中、熱くてキツくて……最高です」
「やぁ……いわないで……」
「どうして?俺の言葉で感じてくれてるんですよね?」
ルカは僕の耳を舐めると、そのまま耳に舌を入れてきた。ぴちゃぴちゃという水音が脳に直接響いてきてゾクゾクする。
「俺のこと大好きだって伝わってきますよ…?柔らかいのに締め付けてきて、全身で俺のこと求めてくれてる……」
「あ、ちがっ……ちがうぅ……」
「違わない。先輩、俺のこと大好きですよね?」
ルカはそう言うと僕のお腹を撫でてきた。それだけで子宮がきゅんと疼いて、僕はビクビクと身体を震わせてしまう。
「せんぱい?教えてくださいよ」
ルカは僕のお腹を撫でながら甘い声で囁きかけてきた。それだけで頭がぼーっとして何も考えられなくなってしまう。
「あぅうう…♡ルカぁ…やぁあ…♡」
「あは、かわいい…こんなかわいい顔他のアルファに見せてきたんですね…?殺したくなるな…」
「んぅう!」
ぐっ!とナカに押し込られたルカのモノが、僕の子宮口を押し潰す。僕は悲鳴のような声を上げて身体を仰け反らせた。
「やだ……あうぅ……なんで、僕ぇ……」
「大丈夫ですよ?これからは俺だけを受け入れればいい…先輩のイイトコロずっと擦ってあげますし、とろとろになるまで甘やかしてあげますよ。キモチイイでしょ?俺とするの」
「んんう…イイ…キモチイイ…♡」
「でしょう?」
ルカは僕の頭を撫でて、額にキスを落としてきた。僕は嬉しくなってルカの首に腕を回す。ルカはそれに応えるようにぎゅっと僕を抱きしめた。
「ん、んっ……もっとぉ……」
「はい、先輩♡」
ルカは僕の身体を抱き上げると、対面座位の体勢になった。自重でより深くルカのものが入り込んでくる。僕はビクビクと身体を震わせながら、ルカにしがみついた。すると彼は優しくキスをしながら腰を揺らし始める。
「あっ♡あっ♡あっ♡」
「先輩、好きです。大好きです」
ルカの腰の動きに合わせて、僕の口から甘い声が漏れた。頭が真っ白になって何も考えられない。ただひたすら与えられる快楽に身を委ねることしかできなくて……
(これがオメガの本能……?)
「んっ♡んんっ♡」
「はぁ……かわいい……俺の、俺だけのオメガ……」
ルカは熱に浮かされたように呟くと、僕の唇を奪った。舌を差し込まれて絡められる。濃厚なキスに、僕の思考回路は完全にショートした。
「んちゅ……んぅう♡」
ルカのフェロモンがさらに濃くなって僕を包み込む。もう何も考えられないくらいに気持ちよくて幸せで仕方がない。
「はあ…かわいい…たまんねぇ…先輩、お母さんに挨拶しにいきましょうね?俺が運命の番だって、安心してもらいますから」
「んぇ……?」
ルカが何を言っているのかよくわからなかった。だけど、ルカが僕の首筋や鎖骨にキスマークをつける度に、僕は幸せな気分になって何も考えられなくなってしまう。
「先輩♡先輩♡」
ルカは僕の首筋に吸い付いたまま、腰を動かすスピードを上げた。子宮口をぐりぐりと抉られて、僕の身体が大きく跳ね上がる。
(だめ……これすごすぎる……♡)
頭が真っ白になって何も考えられない。ただひたすら気持ちいいということだけしかわからなくなる。僕はルカにしがみつくと、必死にキスマークをつけて彼のモノを締め付けた。するとルカは嬉しそうに微笑んで僕の首筋に強く吸い付いてくる。
「先輩、好き、大好き…」
「あぁああ……♡」
(気持ちいい♡もっと欲しい♡)
僕は自分からルカの唇を奪った。それに応えるようにルカも激しく僕を求めてくれる。舌を絡めてお互いの唾液を交換し合うような激しい口付けに、僕らは夢中になって溺れていった。
★☆★☆★☆
あれから2日後。
「うううぅ~~~……」
「先輩、そんな唸ってたらもっとヒート悪化しますよ?」
「だってぇ……」
僕はルカの部屋のベッドの上で蹲っていた。原因はもちろん、狂った発情期における一連の行為による後悔の念だ。まあ身体も熱いけど。それより、恥ずかしさが募る。
だけどルカはそんな僕を見ながらニコニコしていた。
「大丈夫ですよ。昨日からずっとこうしてますから」
「うん……」
ルカは僕を後ろから抱きしめるように座りながら、僕のお腹を撫でたりお尻を撫でたりしている。その手つきはとても優しくて心地良い。
(けど、やっぱり…!)
「ルカ…」
「なんですか?」
「その…いつ自分がアルファだと知ったの…?」
「あぁ、それですか」
ルカはそう言うと僕のお腹を撫でながら言った。
「16歳の誕生日にです」
「……そっか」
僕は12歳の時だから、大分遅い。だからルカはあんまりアルファぽくないのかもしれない。ゴツくて、傲慢で、身勝手な、所謂『アルファ』って感じでもない。
「分かったとき『やっぱりな』と言うのと『どうしよう』って言うのと、『良かった』って言うのでごちゃごちゃでした」
「どう言う意味?」
「先輩、アルファ嫌いでしょう?」
「うっ!…うん」
そこ突かれると痛い。僕は素直に頷いた。
「嫌われるのは嫌だった。だけど、先輩が他のアルファの番になるのはもっと嫌だった。だから、俺がアルファだって知って心の奥底では、ホッとしたんです」
ルカはそう言って僕の項に舌を這わせた。それだけでゾクゾクとした快感が背筋を走る。
「俺は先輩の、一番頼れるアルファになれるってことですから」
「ん…そっか…」
僕は嬉しくなって思わず微笑みそうになった。しかしそこでハッと我に返る。
(つまり、ルカって、ヤンデレ系ツンデレフェロモン大魔神ってことでは?)
そう思いながらルカの腕から逃れようと身じろぐ。
「先輩が鈍くて良かったです。俺のフェロモンつけてたお陰で他のアルファが警戒してくれてましたし、ヒートの相手も本気にならなかったでしょう?」
「え、え…」
アルファに人気がないと思ってたけど、それってコイツのせいでは…
「先輩のお母さんのおかげもありますけどね。20歳前に決心してくれて良かった…」
「いや待ってルカ、僕は……」
独身貴族オメガとして生きるつもりだったのだ。そもそもこの番契約は一時的なもので…
「挨拶しちゃえばこっちのモノですよ?ね、せーんぱい?」
うっ…こわぁ…何この子……
「ちゃんと幸せにしますから」
ルカはそう言うと、僕の唇にキスを落とした。僕は諦めて彼に身体を委ねることにする。だって、身体が熱くて仕方がないのだ。ルカのフェロモンにあてられて、もうどうにかなりそうだった。
「ねぇ、ルカ…」
もう1つ、聞いておかなきゃいけないことがある。
「いつから僕のこと好きだったの?」
くるんと振り返ってそう聞く。その瞬間、ルカのフェロモンがぶわっと強くなる。
「初めて会った時からです」
『君もこっちにおいで』
僕はルカのフェロモンに当てられてぼーっとしながら、あの日のことを思い出した。
「いたいけな子どもに可愛い可愛い言ってベタベタして…オメガのくせに警戒心無さすぎですよ。呆れる」
「それ、ただの脅し……」
「いやだなぁ、本当のことですよ?」
ルカはそう言うと僕の首筋に歯を立てた。その刺激にゾクゾクと背筋が震える。
「甘くていい匂いがして、その中心に先輩がいて。囲まれて、俺のことには気づきもしない。遠くからじっと見ることしか出来なくて、それがどれだけ辛かったかわかります?」
「え、わかんない……」
(というか、ルカって僕のフェロモン感じ取れたんだ)
あんな小さい頃に。そう思うとなんだか切なくなる。
「ふふ、わからなくて良いです。俺だけ知っていれば良い」
ルカはそう言うと僕の首筋に強く吸い付いた。ピリッとした痛みが走るが、それすらも今の僕にとっては快感にしかならない。
「ひぅ♡あ♡」
「今は俺のモノですから、ね?先輩」
ぎゅ、と力が込められる。僕はルカに抱きしめられたまま顔を埋められる。
「一生かけて、幸せにしますから」
「んん……♡」
(あぁあ…♡もう無理かも……)
僕はルカのフェロモンに当てられて完全に屈服してしまった。彼に愛されることを望み始めている自分に気づいて愕然とする。
(ヤンデレ系ツンデレフェロモン大魔神に、拗らせまで追加されて…これ、勝てっこないやつ…)
僕は観念したように目を閉じた。ルカはそんな僕を見下ろして微笑むと、再び僕の唇にキスをしたのだった。
★☆★☆★☆
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