50 / 52
50
しおりを挟む
翌日。司は目を覚まして起き上がると、隣で眠る栄之助の寝顔を見つめた。
(昨日はすごかったな……)
司は昨夜のことを思い出して頰を染める。結局朝までずっと繋がっていたせいで腰が痛いし、喉も枯れてしまった。
(僕……本当に女の子になっちゃったみたい……)
司は自分の胸に触れると、小さくため息をついた。のそのそとシャツを羽織る。
(でもこんなこと、いつまでも続かない…)
司はそのつもりだった。卒業までの期間限定の関係。栄之助には言えていないが司は別の大学へ進学するつもりだった。
(バレたら怒るかな…?怒りそう、コイツ)
司は苦笑する。そして栄之助の頰に軽くキスをした。そしてベッドから這い出て着替えようとすると、突然後ろから抱きつかれる。驚いて振り返ると、そこには眠そうな顔をした栄之助がいた。
「おはよ……」
「お、おはよう……起きてたんだ?」
司はドキドキしながら答える。しかし栄之助は気にせず司を抱きしめたまま言った。
「どこいくんだよ……?」
「えっと……先にシャワー浴びようと思って」
「……俺も一緒に入る……」
寝ぼけた様子の栄之助はそう言うと司の服に手をかけた。司は驚きつつも慌てて抵抗する。
「ダメだよ!絶対変なことするじゃん!」
「しないって……信じて……」
栄之助は半目になりながらそう言うと、司を抱き上げて浴室に向かった。そして脱衣所に着くと、そこで司の服を脱がせ始める。
「ちょ……ちょっとぉ……!」
司は恥ずかしそうに身を捩るが、結局されるがままになってしまう。全裸にされたところで浴室に連れ込まれてしまった。
「なあ司…」
「なあに?」
「勝手に居なくなったりすんなよ」
栄之助は真面目な口調で言う。司は一瞬何のことか分からずキョトンとする。
「なんのこと?変なの」
目を細めて笑うが、栄之助は真顔だった。
「…とぼけんなよ……俺から離れようとしたら、絶対許さない」
「そんな怖い顔しないでよ?」
司は栄之助を宥めるように言うが、彼は納得しないようだった。そしてそのまま司の体を洗い始める。司は仕方なくされるがままになっていたが、しばらくすると我慢できなくなったのか口を開いた。
「も、いいからさ…?ね?」
自分の甘えた声に栄之助が弱いのを理解している司は、精一杯の甘い声で囁くように言う。
「……続きは後で……ね?」
「っ!」
栄之助は顔を真っ赤にすると、司の体を洗い続けた。そしてシャワーで泡を流し終わると、司を抱き上げたまま湯船に浸かる。
「ふぅ……」
司は気持ちよさそうな声を上げた。しかし栄之助は黙ったままだ。司は不思議に思い顔を覗き込むと、彼は何か言いたげな表情をしていた。
「どうしたの?なんかあった?」
「……別に」
栄之助は拗ねたような声で言うと、司をぎゅっと抱きしめた。そしてそのまま首筋に顔を埋める。
「んっ……くすぐったいよぉ……」
司はくすぐったそうな声を上げたが、構わず首筋に吸い付いた。赤い印をつけると満足そうに微笑む。司は困った顔で栄之助を見上げた。
「もう……見えるとこにつけちゃダメって言ってるでしょ?」
「いいじゃん別に」
栄之助は開き直ったように言うと、司の胸に手を伸ばした。そして優しく揉み始める。
「女の子みたいに大きくないのに楽しい?僕の胸揉んで楽しい?」
「ああ、最高」
栄之助はそう言うと司の胸にしゃぶりついた。舌先で転がしたり甘噛みしたりする度に司はピクッと反応する。次第に甘い声を漏らし始めた。
「ふぁ……ぁ……♡」
司は気持ちよさそうに目を細めるが、やがて栄之助の手の動きが止まったことに気づくと不思議そうに彼を見た。
「ね…?どうしたの?変だよ、栄之助」
「…いや、なんでもねぇ…」
栄之助はそう言うと、司の体を洗い始めた。しかしその手つきは明らかに乱暴になっている。司は不思議に思ったが、特に気にすることなくされるがままになっていた。
「ねぇ……なんか怒ってる?」
「……別に怒ってない」
栄之助はぶっきらぼうな口調で答えると、シャワーで司の体を洗い流した。そしてそのまま脱衣所に向かうとバスタオルを手に取り司の体を拭いていく。しかしその間もずっと無言だった。
(やっぱり変だ)
司は不安になる。何か怒らせるようなことをしてしまっただろうか?
「ね、ねえ……なんかあったの?」
「…別に」
栄之助はまた同じ答え方をする。司は困惑しながら栄之助を見上げたが、彼は無表情のまま司の体を見つめ続けていた。そして突然口を開くと、低い声で言った。
「お前みてると不安になる。どっか行っちゃわないか、誰かのものになっちまわないかって……」
栄之助はそう言いながら司の腰を抱く。司はその言葉の意味がわからず首を傾げた。しかし栄之助は構わず続ける。
「だから、俺のものだって印つけとかないとな……」
「え?それってどういう……あっ♡」
栄之助は司の首筋を強く吸った。司は痛みを感じて声を上げるが、栄之助は構わず何度も同じ場所に強く口付けを繰り返す。そしてそのまま鎖骨や二の腕などにも同じように痕をつけていった。
「いたっ……!痛いってばぁ!やめてよぉ!」
司は抗議するが、栄之助は全く聞く耳を持たずに続ける。そしてようやく満足したのか口を離す。
「なあ、司…」
「なあに?」
「どこにも行くなよ…?」
縋り付くような大きな手は、微かに震えているようにも見える。その姿に、司は逆に不安になる。
(このままだと、僕が一緒にいると、栄之助はだめになっちゃう…)
だからにっこり微笑んでみせる。別れの予感を押し殺して、司は微笑み栄之助の耳元に囁く。
「…変な栄之助」
否定も肯定もしない、曖昧な言葉。
(ごめんね)
司は心の中で謝罪の言葉を述べると、彼の頰に軽くキスをした。そしてそのまま浴室を出る。そして服を着ると、まだ少し痛む首筋を手で押さえながらリビングへと向かった。
「えへ……痕いっぱい」
司は自嘲気味に笑いながら呟く。それはどこか悲しげで自虐的な響きを持っていたが、すぐにいつもの明るい表情に戻った。
(大丈夫、きっと忘れられる)
司は自分にそう言い聞かせて、冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取り出す。そして一気に飲み干すと、大きく息を吐いた。
(大丈夫……きっと忘れられる……)
自分に言い聞かせるように何度も心の中で呟く。高校卒業をきっかけに司は栄之助と距離を置くことにしていた。
だけど司は気づいていなかった。幼い頃からの感情を拗らせた栄之助が、自分に向けた執着心の深さと執念深さを。歪んだ劣情と狂気的な愛情を。
(昨日はすごかったな……)
司は昨夜のことを思い出して頰を染める。結局朝までずっと繋がっていたせいで腰が痛いし、喉も枯れてしまった。
(僕……本当に女の子になっちゃったみたい……)
司は自分の胸に触れると、小さくため息をついた。のそのそとシャツを羽織る。
(でもこんなこと、いつまでも続かない…)
司はそのつもりだった。卒業までの期間限定の関係。栄之助には言えていないが司は別の大学へ進学するつもりだった。
(バレたら怒るかな…?怒りそう、コイツ)
司は苦笑する。そして栄之助の頰に軽くキスをした。そしてベッドから這い出て着替えようとすると、突然後ろから抱きつかれる。驚いて振り返ると、そこには眠そうな顔をした栄之助がいた。
「おはよ……」
「お、おはよう……起きてたんだ?」
司はドキドキしながら答える。しかし栄之助は気にせず司を抱きしめたまま言った。
「どこいくんだよ……?」
「えっと……先にシャワー浴びようと思って」
「……俺も一緒に入る……」
寝ぼけた様子の栄之助はそう言うと司の服に手をかけた。司は驚きつつも慌てて抵抗する。
「ダメだよ!絶対変なことするじゃん!」
「しないって……信じて……」
栄之助は半目になりながらそう言うと、司を抱き上げて浴室に向かった。そして脱衣所に着くと、そこで司の服を脱がせ始める。
「ちょ……ちょっとぉ……!」
司は恥ずかしそうに身を捩るが、結局されるがままになってしまう。全裸にされたところで浴室に連れ込まれてしまった。
「なあ司…」
「なあに?」
「勝手に居なくなったりすんなよ」
栄之助は真面目な口調で言う。司は一瞬何のことか分からずキョトンとする。
「なんのこと?変なの」
目を細めて笑うが、栄之助は真顔だった。
「…とぼけんなよ……俺から離れようとしたら、絶対許さない」
「そんな怖い顔しないでよ?」
司は栄之助を宥めるように言うが、彼は納得しないようだった。そしてそのまま司の体を洗い始める。司は仕方なくされるがままになっていたが、しばらくすると我慢できなくなったのか口を開いた。
「も、いいからさ…?ね?」
自分の甘えた声に栄之助が弱いのを理解している司は、精一杯の甘い声で囁くように言う。
「……続きは後で……ね?」
「っ!」
栄之助は顔を真っ赤にすると、司の体を洗い続けた。そしてシャワーで泡を流し終わると、司を抱き上げたまま湯船に浸かる。
「ふぅ……」
司は気持ちよさそうな声を上げた。しかし栄之助は黙ったままだ。司は不思議に思い顔を覗き込むと、彼は何か言いたげな表情をしていた。
「どうしたの?なんかあった?」
「……別に」
栄之助は拗ねたような声で言うと、司をぎゅっと抱きしめた。そしてそのまま首筋に顔を埋める。
「んっ……くすぐったいよぉ……」
司はくすぐったそうな声を上げたが、構わず首筋に吸い付いた。赤い印をつけると満足そうに微笑む。司は困った顔で栄之助を見上げた。
「もう……見えるとこにつけちゃダメって言ってるでしょ?」
「いいじゃん別に」
栄之助は開き直ったように言うと、司の胸に手を伸ばした。そして優しく揉み始める。
「女の子みたいに大きくないのに楽しい?僕の胸揉んで楽しい?」
「ああ、最高」
栄之助はそう言うと司の胸にしゃぶりついた。舌先で転がしたり甘噛みしたりする度に司はピクッと反応する。次第に甘い声を漏らし始めた。
「ふぁ……ぁ……♡」
司は気持ちよさそうに目を細めるが、やがて栄之助の手の動きが止まったことに気づくと不思議そうに彼を見た。
「ね…?どうしたの?変だよ、栄之助」
「…いや、なんでもねぇ…」
栄之助はそう言うと、司の体を洗い始めた。しかしその手つきは明らかに乱暴になっている。司は不思議に思ったが、特に気にすることなくされるがままになっていた。
「ねぇ……なんか怒ってる?」
「……別に怒ってない」
栄之助はぶっきらぼうな口調で答えると、シャワーで司の体を洗い流した。そしてそのまま脱衣所に向かうとバスタオルを手に取り司の体を拭いていく。しかしその間もずっと無言だった。
(やっぱり変だ)
司は不安になる。何か怒らせるようなことをしてしまっただろうか?
「ね、ねえ……なんかあったの?」
「…別に」
栄之助はまた同じ答え方をする。司は困惑しながら栄之助を見上げたが、彼は無表情のまま司の体を見つめ続けていた。そして突然口を開くと、低い声で言った。
「お前みてると不安になる。どっか行っちゃわないか、誰かのものになっちまわないかって……」
栄之助はそう言いながら司の腰を抱く。司はその言葉の意味がわからず首を傾げた。しかし栄之助は構わず続ける。
「だから、俺のものだって印つけとかないとな……」
「え?それってどういう……あっ♡」
栄之助は司の首筋を強く吸った。司は痛みを感じて声を上げるが、栄之助は構わず何度も同じ場所に強く口付けを繰り返す。そしてそのまま鎖骨や二の腕などにも同じように痕をつけていった。
「いたっ……!痛いってばぁ!やめてよぉ!」
司は抗議するが、栄之助は全く聞く耳を持たずに続ける。そしてようやく満足したのか口を離す。
「なあ、司…」
「なあに?」
「どこにも行くなよ…?」
縋り付くような大きな手は、微かに震えているようにも見える。その姿に、司は逆に不安になる。
(このままだと、僕が一緒にいると、栄之助はだめになっちゃう…)
だからにっこり微笑んでみせる。別れの予感を押し殺して、司は微笑み栄之助の耳元に囁く。
「…変な栄之助」
否定も肯定もしない、曖昧な言葉。
(ごめんね)
司は心の中で謝罪の言葉を述べると、彼の頰に軽くキスをした。そしてそのまま浴室を出る。そして服を着ると、まだ少し痛む首筋を手で押さえながらリビングへと向かった。
「えへ……痕いっぱい」
司は自嘲気味に笑いながら呟く。それはどこか悲しげで自虐的な響きを持っていたが、すぐにいつもの明るい表情に戻った。
(大丈夫、きっと忘れられる)
司は自分にそう言い聞かせて、冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取り出す。そして一気に飲み干すと、大きく息を吐いた。
(大丈夫……きっと忘れられる……)
自分に言い聞かせるように何度も心の中で呟く。高校卒業をきっかけに司は栄之助と距離を置くことにしていた。
だけど司は気づいていなかった。幼い頃からの感情を拗らせた栄之助が、自分に向けた執着心の深さと執念深さを。歪んだ劣情と狂気的な愛情を。
3
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説
控えめカワイイ後輩クンにイケメンの俺が本気になる話
ずー子
BL
大学生BL。先輩×後輩。イケメン先輩が控えめカワイイ後輩男子にメロメロになっちゃって、テニサーの夏合宿の夜にモノにしようとする話です。終始ラブラブ。
大学3年の先輩×大学1年生のラブラブ話です。受クン視点も近々載せますね♡
私はこういう攻視点で受を「カワイイ」と悶えて本気でモノにするためになんでもしちゃう話がすきです。
お楽しみください!
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる