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「次どこ行く?」
栄之助の声に、司は俯いていた顔を上げ、答える。
「え、えっと……その……」
司は少し口籠ると、意を決したように口を開いた。
「せ、折角だから、かわいい服とか……見に行きたい……」
司は恥ずかしそうに呟く。
「んだよ、乗り気になってんじゃん」
栄之助はニヤつきながら答えた。司は頬を染めながら目を逸らすと、ぼそぼそと言う。
「だって……せっかくだし……」
「ふーん?」
栄之助はにやにやしながら司の顔を覗き込んだ。司は焦ったように後ずさりするが、すぐに壁にぶつかる。そしてそのまま壁際に追いやられてしまった。逃げられないように手をついて逃げ道を塞がれる。するとすぐ目の前には栄之助の顔があった。
「っ……!」
司は息を呑んだ。
「すっかりオンナの顔してんじゃん?俺に抱いて欲しいって言ってくる女と同じ顔してるぜ?」
栄之助は耳元で囁くようにそう言った。司の顔はさらに赤くなっていく。そんな様子を楽しそうに見つめながら、栄之助はさらに続けた。
「あんな生意気チビの司がねぇ…?」
「なっ……!」
司は顔を真っ赤にすると、キッと睨みつけてきた。その目には涙が浮かんでいる。栄之助はその顔を見てゾクゾクとした感覚を覚えた。
(あーやべ、マジ可愛い)
栄之助は心の中で呟く。このまま完全に精神的にもオンナにしてやりたい。そしたら二度とあんな風に自分の手を振りほどくなんてこともないだろう。
「え…?」
ふ、と笑うと栄之助は距離を取る。どことなく残念そうな司の表情がたまらなく可愛い。
「はは、冗談だって」
栄之助は笑いながら言うと、再び歩き始めた。司はホッとしたような表情を浮かべると、小走りで後をついてくる。そんな様子もまた愛おしくてたまらなかった。
「ほら、早く行こーぜ?」
栄之助は司の肩を抱くと、そのまま歩き始める。司は大人しくされるがままになっていたが、やがて小さな声で呟いた。
「……ばか……」
それはどこか甘く響いたが、栄之助は特に気にしないことにした。
***
「う…やっぱり恥ずかしいかも…」
店員の「カノジョさん超カワイーですねぇ」
という言葉に顔を赤く染めながら司は呟いた。その格好はパステルピンクのひらひらしたミニスカートに、白のニットという可愛らしいものだった。足元は黒タイツに黒のショートブーツである。
「似合ってんじゃん」
栄之助はにやにやしながら答える。司は恥ずかしそうにもじもじしていたが、やがて諦めたように溜息をついた。
「うう……もういいよ、さっさと買って帰ろう……」
「何言ってんだよ、せっかく来たんだから色々見てこーぜ?」
栄之助はそう言って司の荷物を掴み他の店に向かう。こんなに可愛い美少女が実は男だと知ったら、一体どんな反応をするだろうかと栄之助は考えた。
「次はこーゆー系な?」
「え…」
所謂ギャルっぽい服を押し付けられ、司は動揺した。
「俺の好み」
栄之助はニヤリと笑うと、司の腕を引っ張って試着室へと連れて行く。司は不安そうな表情を浮かべながらも仕方なくそれに付いて行った。
「じゃあ着替え終わったら言えよ」
「う……わ、わかった……」
司はしぶしぶといった様子でカーテンを閉める。しばらくすると衣擦れの音やベルトを外す音が聞こえてきたので栄之助は興奮を抑えられない様子だった。
(あー……ヤバいなこれ…)
清楚な美少女そのものにしか見えない司が露出の高いギャル服に身を包んでいる。そのギャップがたまらない。
「着替え終わったか?」
「う、うん…見てくれる?」
「…ん」
栄之助はごくりと唾を飲み込むと、ゆっくりとカーテンを開いた。
「……」
栄之助は思わず絶句してしまった。
「……な、何か言ってよ……」
司は恥ずかしそうに顔を赤くしながら言った。栄之助はハッとすると慌てて口を開く。
「…悪ぃ、見惚れた」
「っ……」
司はさらに顔を赤くする。ほっそりとした足を存分に出したミニスカは、少しでも歩けばその中が見えてしまいそうなくらいだが見えそうで見えない。ダボッとした大きめのニットは逆に華奢さを、ショートブーツは少女とオトナの間のような、アンバランスな魅力を生み出している。
「はぁ……マジで可愛い……」
栄之助は思わず感嘆の声を漏らす。司は頬を染めたままじっと黙り込んでいた。その様子すらも可愛く思えてしまうのだからもう末期だと思った。
「じゃ、それ買うわ」
栄之助は短く言うと、店員を呼んだ。司は慌てて止めようとしたが、栄之助は聞く耳を持たないといった様子でそのまま会計を済ませてしまった。
「お前このままでいろよ?折角街まで来たんだし、他のとこも見てこうぜ」
「そ、それはちょっと……」
司は困った顔で抗議する。だが栄之助は全く気にしていない様子で司の手を取り歩き始めた。司は諦めたように溜息をつくと大人しく付いて行くことにしたのだった。
***
(うう……なんかすごく目立ってる気がする……)
司は慣れないミニスカートの丈を気にしながら歩いていた。すれ違う人々がちらちらとこちらを見ている気がするが気のせいではないだろう。
(まさかこんな格好させられるなんて思わなかった…)
ただの女装ではないギャル風というところがまた恥ずかしかった。栄之助はニヤニヤと笑みを浮かべながら司の方を見ている。司はその視線に耐え切れず俯きがちになった。
「あ、あのさ……もう帰ろうよ……」
「まだ来たばっかじゃん」
栄之助はそう言って再び歩き始めた。司は仕方なく後に続くが、すれ違う人たちの視線が気になって仕方がない。
(うう……早く帰りたいよぉ……)
「次は映画でも見ようぜ」
栄之助は映画館の前でそう言い出した。司は頬を引きつらせながら答える。
「え……映画って……」
司は嫌な予感を覚えた。栄之助はニヤニヤ笑いながら言う。
「暗い所の方が恥ずかしくなくね?」
「う!それは…」
(悪い顔してる…絶対変なことするつもりなんだ……)
司は頬を赤く染めて俯いた。栄之助はそんな司の様子を楽しむと、さっさとチケットを買ってしまった。
栄之助の声に、司は俯いていた顔を上げ、答える。
「え、えっと……その……」
司は少し口籠ると、意を決したように口を開いた。
「せ、折角だから、かわいい服とか……見に行きたい……」
司は恥ずかしそうに呟く。
「んだよ、乗り気になってんじゃん」
栄之助はニヤつきながら答えた。司は頬を染めながら目を逸らすと、ぼそぼそと言う。
「だって……せっかくだし……」
「ふーん?」
栄之助はにやにやしながら司の顔を覗き込んだ。司は焦ったように後ずさりするが、すぐに壁にぶつかる。そしてそのまま壁際に追いやられてしまった。逃げられないように手をついて逃げ道を塞がれる。するとすぐ目の前には栄之助の顔があった。
「っ……!」
司は息を呑んだ。
「すっかりオンナの顔してんじゃん?俺に抱いて欲しいって言ってくる女と同じ顔してるぜ?」
栄之助は耳元で囁くようにそう言った。司の顔はさらに赤くなっていく。そんな様子を楽しそうに見つめながら、栄之助はさらに続けた。
「あんな生意気チビの司がねぇ…?」
「なっ……!」
司は顔を真っ赤にすると、キッと睨みつけてきた。その目には涙が浮かんでいる。栄之助はその顔を見てゾクゾクとした感覚を覚えた。
(あーやべ、マジ可愛い)
栄之助は心の中で呟く。このまま完全に精神的にもオンナにしてやりたい。そしたら二度とあんな風に自分の手を振りほどくなんてこともないだろう。
「え…?」
ふ、と笑うと栄之助は距離を取る。どことなく残念そうな司の表情がたまらなく可愛い。
「はは、冗談だって」
栄之助は笑いながら言うと、再び歩き始めた。司はホッとしたような表情を浮かべると、小走りで後をついてくる。そんな様子もまた愛おしくてたまらなかった。
「ほら、早く行こーぜ?」
栄之助は司の肩を抱くと、そのまま歩き始める。司は大人しくされるがままになっていたが、やがて小さな声で呟いた。
「……ばか……」
それはどこか甘く響いたが、栄之助は特に気にしないことにした。
***
「う…やっぱり恥ずかしいかも…」
店員の「カノジョさん超カワイーですねぇ」
という言葉に顔を赤く染めながら司は呟いた。その格好はパステルピンクのひらひらしたミニスカートに、白のニットという可愛らしいものだった。足元は黒タイツに黒のショートブーツである。
「似合ってんじゃん」
栄之助はにやにやしながら答える。司は恥ずかしそうにもじもじしていたが、やがて諦めたように溜息をついた。
「うう……もういいよ、さっさと買って帰ろう……」
「何言ってんだよ、せっかく来たんだから色々見てこーぜ?」
栄之助はそう言って司の荷物を掴み他の店に向かう。こんなに可愛い美少女が実は男だと知ったら、一体どんな反応をするだろうかと栄之助は考えた。
「次はこーゆー系な?」
「え…」
所謂ギャルっぽい服を押し付けられ、司は動揺した。
「俺の好み」
栄之助はニヤリと笑うと、司の腕を引っ張って試着室へと連れて行く。司は不安そうな表情を浮かべながらも仕方なくそれに付いて行った。
「じゃあ着替え終わったら言えよ」
「う……わ、わかった……」
司はしぶしぶといった様子でカーテンを閉める。しばらくすると衣擦れの音やベルトを外す音が聞こえてきたので栄之助は興奮を抑えられない様子だった。
(あー……ヤバいなこれ…)
清楚な美少女そのものにしか見えない司が露出の高いギャル服に身を包んでいる。そのギャップがたまらない。
「着替え終わったか?」
「う、うん…見てくれる?」
「…ん」
栄之助はごくりと唾を飲み込むと、ゆっくりとカーテンを開いた。
「……」
栄之助は思わず絶句してしまった。
「……な、何か言ってよ……」
司は恥ずかしそうに顔を赤くしながら言った。栄之助はハッとすると慌てて口を開く。
「…悪ぃ、見惚れた」
「っ……」
司はさらに顔を赤くする。ほっそりとした足を存分に出したミニスカは、少しでも歩けばその中が見えてしまいそうなくらいだが見えそうで見えない。ダボッとした大きめのニットは逆に華奢さを、ショートブーツは少女とオトナの間のような、アンバランスな魅力を生み出している。
「はぁ……マジで可愛い……」
栄之助は思わず感嘆の声を漏らす。司は頬を染めたままじっと黙り込んでいた。その様子すらも可愛く思えてしまうのだからもう末期だと思った。
「じゃ、それ買うわ」
栄之助は短く言うと、店員を呼んだ。司は慌てて止めようとしたが、栄之助は聞く耳を持たないといった様子でそのまま会計を済ませてしまった。
「お前このままでいろよ?折角街まで来たんだし、他のとこも見てこうぜ」
「そ、それはちょっと……」
司は困った顔で抗議する。だが栄之助は全く気にしていない様子で司の手を取り歩き始めた。司は諦めたように溜息をつくと大人しく付いて行くことにしたのだった。
***
(うう……なんかすごく目立ってる気がする……)
司は慣れないミニスカートの丈を気にしながら歩いていた。すれ違う人々がちらちらとこちらを見ている気がするが気のせいではないだろう。
(まさかこんな格好させられるなんて思わなかった…)
ただの女装ではないギャル風というところがまた恥ずかしかった。栄之助はニヤニヤと笑みを浮かべながら司の方を見ている。司はその視線に耐え切れず俯きがちになった。
「あ、あのさ……もう帰ろうよ……」
「まだ来たばっかじゃん」
栄之助はそう言って再び歩き始めた。司は仕方なく後に続くが、すれ違う人たちの視線が気になって仕方がない。
(うう……早く帰りたいよぉ……)
「次は映画でも見ようぜ」
栄之助は映画館の前でそう言い出した。司は頬を引きつらせながら答える。
「え……映画って……」
司は嫌な予感を覚えた。栄之助はニヤニヤ笑いながら言う。
「暗い所の方が恥ずかしくなくね?」
「う!それは…」
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