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1章 スキル覚醒、始まりの『退職』へ

第8話 おやっ、社畜ジョブ「書記」の様子が、、

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 日々の多忙に追われ、気づけば20年。前世と変わらぬ年齢まで来てしまった。
 立場が変わらないので業務も大きくは変わらないのだが、流石に右も左も分からなかった異世界もきてからもう20年も経ったのだ。
 この世界の知識もある程度理解したので整理しておこう。
 
 まず今のステータスから

名前    :タナカ シンジ
年齢    :38
レベル:1
ジョブ:書記レベル9
HP       :290/300
MP      :10/10
STR     :1
DEF     :2
AGI      :6
INT      :120
DEX     :65
LUK     :25

ジョブスキル 
誤字添削 カルク 時計 翻訳 自動手記
図面作成 英雄譚作成 高速手記 強制証文作成

スキル
料理lv4  合気道lv3

 まず魔物との戦闘経験は一度もなく、通常レベルは上がっていない。
 結局、20年あっても戦闘スキルは身につかなかった。社畜生活では剣を振るう時間もなかったのだ。

 ただ、ジョブレベルは4年前に9まで上がっていた。 
 計40年にも渡る社畜生活は伊達ではなく、休日出勤に日に12時間を超える労働と、その間多くの時間にジョブスキルを使っていたのだ。

 ジョブスキルには魔力を消費するタイプの物もあるが、「書記」にはレベル9で手に入った「強制証文作成」スキル以外はHPを消費するだけだったので、取引先の錬金術師からお店に出せない粗悪なポーションを安く貰い、エナジードリンク代わりにキメて働き続けてきた。

 冒険者でもジョブレベルは7で1流、8は超1流であり、9はもう伝説クラスらしく、書記に限れば王都の議会に名物お爺さんがいて、その方が唯一のレベル8だとか。
 『高速手記』をもっているが齢70を超えてヨボヨボで、一般の書記と変わらないというオチがある。

 通常スキルとジョブスキルを説明すると、通常スキルはそれぞれlvがあり、効果も高くなっていく。
 ジョブスキルはジョブレベルが1つ上がると新しいジョブスキルを獲得し、こちらにはlvはなく効果が一定らしい。
 またジョブレベルが上がると関係する各ステータスにも反映されるが法則性などは曖昧みたいだ。

 一応スキルブックについても調べて見たが、まず分類上、赤と青のスキルブックとがある。
 赤はジョブスキル、青は通常スキルで特に赤は激レアらしくオークションにかければ金貨1000枚はくだらないとか。
 自身のジョブ以外のジョブスキルはスキルブックでしか取得できないのが主な理由だが、青は青で持っているスキルならば使うとlvが上がるので需要はあり、結局はスキル次第といったところが実情らしい。 
 
 が、それは貴族や豪商、高ランク冒険者の話だ。
未練たらしく調べて見たが俺には無縁の話だ、虚しくなる。
 俺ももう38だ、冒険者への夢などもう語れない。
仕事をやめてレベルの上がった料理人にでもとも考えたがこの世界は前世ほど外食産業が盛んではない。
 結局は宿屋や冒険者ギルド併設の酒場の雇われとなれば今と変わりはしない。この世界に料理人というジョブがなく通常スキルなのが証左だろう。

 手に入れたジョブスキルもとても独立できるようなものでもなかった。
 『強制証文作成』は流石レベル9で手に入れたスキルで強力だがリスクのあるもので、とても使い所が難しく、ろくに試せてもいない。
 『英雄譚作成』などもギルマスに連れられ有力者達のご機嫌取りに使われたがこの世界には「吟遊詩人」なるジョブもあり、とてもじゃないが物書きで独立などできない。
 あれは一部の人間の自己顕示欲を満たしただけだった。
 
 こうして俺は自身の心を整理……否、心を無にしていつもの仕事に戻ろうとしたところ、先程のスキルの使用で4年振りのジョブレベルupの感触が体に伝わる。
 とはいえ所詮、社畜ジョブ「書記」のレベルupだ。
期待しすぎないように自戒しながら一応ステータスを確認する。
 
 結局戦闘系のスキルブックを手に入れられなかった時点で俺の冒険は始まりすらしなかったのだ。と、皮肉な笑みを浮かべながらステータスを確認すると、その笑みは驚愕によって消えた。


名前    :タナカ シンジ
年齢    :38
レベル:1
ジョブ:書記レベル10
HP       :290/320
MP      :10/12
STR     :1
DEF     :2
AGI      :8
INT      :128
DEX     :70
LUK     :30

ジョブスキル 
誤字添削 カルク 時計 翻訳 自動手記
図面作成 英雄譚作成 高速手記 強制証文作成
   スキルブック作成

スキル
料理lv4  合気道lv3
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